政治の場だと「おいクラフトしろよ」状態になるので省略方向へ。
視点は別人へ。 リムル達不在の魔国連邦での同志の様子です。
でもナニか違和感が。
「こんばんは。 玄関がガラ空きでしたよ」
郷愁に似たモノを感じる言葉に振り返った。
そこには小柄なクリーパーが、いや村人……いやいや。
マインクラフターが佇んでいる。 何故か違和感を感じる。 背丈やスキンだけではないのは確かであるが。
何にせよ挨拶だ。 地下組は腰を屈めた。
ようこそ小柄な同志よ。 見ない顔であるな。
クリーパー柄の服を着込んでいるが。 新参かね?
「そうです。 湖底の屑共に、この地で馬鹿の見聞を広める様にと。 ナニが学べるってんです? 玄関ガバガバだから頭もガバガバそうですが」
そうか。 歓迎するぞ辛辣同志よ。
ここはリムル不在の魔国連邦地下である。
「知ってます。 凄い地下空洞ですね、流石はガバガバ頭達です」
拡げたばかりだからな。 空き地は多い。
しかしその言動からして現在、リムルとシズもいないのは周知の話であるか。
なら今更に説明はしない。
当然、荒らしのミリムもいない。 ではやりたい放題かと言えばそうでもない状況下に置かれている。 我々は困り顔だ。
「そうですか。 塵ほどの思考はあるんですね」
そうなのだ。
都市防衛思想からなるTNTキャノンの増産や調整、改造、火薬調達、TNTクラフトに同志が割かれてしまっている。
森を切り拓くにも例の植物村人が邪魔する所為で地上はさほど拓けていない。
地上で他にやる事と言えば、ビルディングの内装工事や村人式建築様式の見学、他国への道路の脇道に家を建設したりアート制作。
最近は地図での見栄えも良くする為に屋上の外装を改める工事もしている。 キャノンに対する偽装、迷彩を施す意味もある。
具体的には緑化……キャノン上部に草ブロックを施す。 その為、更新された魔国連邦上空地図は周辺の森林に大雑把ながら溶け込んでいる。
この世界には空飛ぶ村人もいるからな。 対空とは攻撃のみならず偽装も必要なのだ。
これは元の世界においてもそれなりに意識する者もいたが、この世界では重要度が増した。 最もビルディングは側面が肌けているので高高度を飛行している相手くらいにしか効果は望めないとされる。
それでもやらないよりマシだ。 何よりやりたいからクラフトしている。
「滅茶苦茶やってるじゃないですか。 噂通りやりたい放題ですね」
そうでもない。
だが思う様にいかない事を思う様にしていくのが楽しいのだ。
「人生楽しそうで何よりです。 ですが私を巻き込まないで欲しかったですね」
無理に地下労働しろと誰も言わんよ。
クラフターとは各々が自由であるべきだ。
「……その自由が誰かを不幸にすると考えないんですね。 勝手なんですよ……」
だが折角だ。
そんな湿気た顔せず見学していくと良い。
めくるめく創造の世界は良いものだ。
ほら地下は更に広がった。 ツルハシを振り回した結果である。 地上で退屈し始めた整地厨の鬱憤が幾ばくか晴れた事だろう。
「私の気持ちは晴れませんが。 どちらにしても勝手に動いたら処分されそうですし。 その意味では無理を言われてるんですよ」
我々もだ。 リムルやシズに咎められるし。
だが不自由の中に自由を求めるのは勝手だ。
だから手が余った者は地下へ潜り、地上とのアクセス効率化や環境改善、防衛力強化の為のクラフトに精を出す。
「そうじゃないんですけどね……ですが羨ましいですよ、その自由奔放さが」
ああ楽しき創造の日々かな。 今日もツルハシとスコップを振るい、RS回路組み、土を敷いて耕し種を撒く。
片やIRP研究は行き詰まり、されど邁進する。 この世界の村人達の技術を更に組み込めば更なる飛躍を遂げるに違いない。
「そりゃ良かったですね。 その為にも通訳が必要って訳ですか」
そうだな。 だが自力でクラフト出来るならやってみたくも思う。
ああ現状でも実に良き。 充実している。
やりたい事が山積みだ。 素晴らしい。
IRP研究にエンチャント研究。 地上で賑わう村人の技術吸収。
独創性に固執せず、柔軟に対応する事が必要だ。 さすれば我々のクラフトバリエーションも賑わいを見せ続ける事に違いなし。
「その為のひとつとして、湖底班ゴミ屑IRPにBBを貸与しないのですか?」
その件は伝達した通りだ。
少なくともリムル達が帰還するまで譲渡等は出来ない。 首都防衛力低下を防ぐ為だ。
「歩く黒曜石の塊が、このバケモノだらけの世界で役に立つとは思えませんがね。 キャノンだって通用するか怪しいじゃないですか」
同感だ。 故に研究を続けているのだよ。
対抗する術はきっとある。
最近はエンチャントに期待している。 何とかIRPにも付加したい。
研究は瑞々しくあるものでありたい。
「不可能じゃないですか、そんなの」
そうだろうか?
誰しもが不可能だと思う事を、平気で実現出来たら愉快爽快、痛快である。
「どうせ失敗します」
失敗と感じた中にこそ、誰もが見逃す発見が隠れている気もする。
それに。
誰も試行錯誤していない事の方がよっぽど新しい発見があると思わないか?
これは絶対間違いない真理だ。 確信出来ずとも、どこか誇らしい自信が湧いてくる。
「……勝手にすれば良いですよ。 私は知りませんから」
ありがとう。
「でも」
なんだい。
「どうして続ける事が出来るんですか。 何故諦めないんですか。 全部無駄になるかも知れないのに。 大切なものが壊れてしまうかも知れないのに。 二度と取り返せないかも知れないのに」
愚問だ。
君もマインクラフターだろ?
「……良いから答えろです」
これは出来るのが当然と思ってクラフトを続けてきたから……だから簡単に諦められないでいる。
「…………」
確かに抽象的に思考した事ごとが、現実との狭間で試され続けている。
勝手な空想だけではいけない。 君が危惧するのはその辺か?
「そうじゃない、ですが……」
…………。
だが我々の発展は無限だ。 クラフトする事に対しては、ある種の信奉さえしていると言っても過言ではない。
その取り組みは間違いなく世界と人生を楽しむ魔法になる。
……この世界の本物の魔法と比べたらショボい魔法かも知れないがねと付け加えておくが。
「…………」
標準的な理論を越える行為をすると、時に君がした様に馬鹿にされる。 罵倒される。
だが驚きの発見や革新的知識を得て、前人未到の域へ赴く行為でもある。
そうして得られた礎が、より多くの創造に役立てられていく。 そう考えると喜ばしい。
なにより。
面白いと思える事なら何でもやりたい。
先程も述べたが、君に何かを強要しない。
己が本当にやりたいと思う事をやると良い。
そうすれば、直ぐに結果が出なくても続ける事が出来る。
「それが"マインクラフター"なのね」
最も人によるがね。 誤解なきよう。
皆が皆ではない。 荒らしがいる様に。 趣味嗜好が色々あるように。
自分のクラフトを見つけなさい。
それが己であり我々である。
村人語を話すクラフター……?
ヒント:本と羽ペンの章「焚書処分」
以後、再登場するかは不明(殴。