寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

88 / 175
避けられぬ重要イベント、ユウキとの面談へ。
シズさんの記憶や経験問題どうしようと思いましたが、進める事に。
意見等ありましたら宜しくお願いします。

だいぶ間が開きました。
リアルがツライさん。
いつまで出来るか分からない中、投稿。


83.若人と面談

 

 

合流してから翌日。

クラフターは当初の予定を果たしても尚、燻る不満があった。

原因は知れている。 行動制限だ。 元よりこの手は苦手な我々だ。 抑圧感は否めない。

 

 

「助けに来てくれたのは嬉しいけど、騒ぎを起こしちゃ駄目だよ」

 

 

等とシズに注意されてしまったばかりに。

屋根だってシルクタッチを心掛け直したのだけどなぁ。

事松明に至っては褒められてこそすれ、責められる謂れはない筈だ。

 

 

「その場所、その国のやり方があるの。 貴方達もそうであるように」

 

 

真面目に論されては頷くしかない。

最も透明化の所為で見えていないだろうが。

ただこの距離だ。 伝わるものは伝わる。

 

 

「……アイツら俺らの近くにいるの?」

「いるよ。 影や足音に気を付ければ、スキルが無くても把握出来るはず」

「逆にスキルに頼って探すのは難しいか」

「場合によるかも。 熱源探知とか、それこそ音や影に絡むものであれば……」

「取り敢えず魔力感知や結界は駄目そうだ」

 

 

しかし何処に向かっているのだ。

なんとはなしに行動を共にしているものの、行く先に何が待ち構えているのか。

事と次第によっては抜剣の事態だ。

海底神殿やネザー要塞に挑む面持ちになる。

 

 

「ギルド本部に向かっているの。 そこの1番偉い人、自由組合総帥(グランドマスター)のユウキに会いに行くの」

 

 

親分、つまりボスか。

討伐対象なら容赦しない。

 

 

「ただ話し合うだけだよ。 そんな物騒な事にはならないから……見守っていて」

 

 

相分かった。

それでも警戒。 最悪は助太刀する。

透明化もどこまで通用するか分からないが、出来る限り側で守ろう。

 

やがて立派な建物の前に来た。

如何にも、といった様式だ。

 

 

「これまた立派な建物だな」

 

 

探索したい衝動に駆られるが我慢した。

松明だって刺すまい。 また攻撃されても困る。

 

 

「……大丈夫」

 

 

代わりに透明化ポーションを再使用。

護身用のノックバックエンチャントを施した木剣を、直ぐに抜剣出来る位置にスロットしておく。

攻撃そのものが通用しなくても、吹き飛ばせる自信がある。

それ故のダイヤではなく木剣だ。

コストの問題もあるが、攻撃がそもそも通用するかも分からぬ。

ダメージ量の高い剣を振り下ろしても意味がないなら、こうするべきだ。

ミリムがそうであったように。

そうでなくても殺して良いかどうか分からない村人相手ならば、峰打ちの意味で低威力の剣を使用する、という意味合いもある。

 

 

「……話し合うだけだから」

 

 

シズが言い聞かせる様に再三語る。

或いは己自身に対して。

我々とは真逆に不安そうだ。

 

 

「シズさん、俺だけで行こうか?」

「ううん、私も行く。 無事な姿を見せたいし、子ども達の事は私の問題だから」

 

 

シズ空元気。

クラフターはまたかい、と首を振りつつ笑う。

気負うな。 普段通りで良いと我々は云う。

仲間だろう。 リムルは……悪食な所や荒らし誘導は時々引くが、それでも仲間に違いない。

皆、シズを助けたくてこの場に立っている。

 

 

「あまり気負う事は無いさ。 俺やみんなが助けるから。 問題児のアイツらも……一応仲間に違いないし。 さぁ行こうシズさん、教え子達に会うんだ、堂々していれば良い」

「うん……皆、ありがとう」

 

 

シズの緊張は幾らか解れた様子。

良し。 改めて決心を固め、我々は建物へ。

と、臨戦態勢を緩める創造物を目の当たりにしてしまった。

 

 

「マジか、自動ドアかよ」

 

 

出入口はなんと両開き、それもピストンの様にスライド式のガラス製自動ドアであったのだ。

 

おお。

これは感動ものだ。

 

我々も自動ドアはRS回路やピストンを用いて作る事はある。

だが着目すべきは感圧板やスイッチの類も無しに開閉する点だろう。

日照センサーの類だろうか。 ワイヤー類か。

いや見当たらない。

或いは隠蔽施工されているだけか。

是非とも解体して仕組みを解明したいが……我慢だ。 今はシズだ。 ここは敵地である事を忘れてはならない。

 

 

「ようこそ。 本日はどのようなご用向きですか?」

「あ、ああ。 グランドマスターに会いたい。 これが紹介状」

「確認して参ります。 こちらにて少々お待ち下さい」

「あ、はい……今の俺は夜の店でのゴブタと大差ないな」

「…………………夜の店?」

「ナ、ナンデモナイヨ?」

 

 

今リムルがちょこんと座っている椅子も気になる。

シズも今述べていたが、これは夜の店で見た椅子に似る。 アレも高価そうであったが、これも高価に見える。

羊毛と組み合わせればクラフト出来るだろうか。 難しいか。 だが家具のバリエーションが増える事は我々も求めるものだ。

内装あってこその建物とも思う。 つい外装に拘りがちだが、内部もしっかりしてこそ愛があるといえよう。

現にこの玄関口も随分立派だ。 最奥には高価な雰囲気のカウンターがあるし、そこに至るまでの道は横幅の広い絨毯が伸びていた。

クラフターは満足気に頷いた。 ここのクラフターは色々と分かっている。

 

 

「大変お待たせしました」

 

 

そうこう考えていたらハァンが響く。

見やれば耳が長く、胸部が膨らんでいる村人が鳴いていた。

これまた夜の店で見た村人に類似する。 そういう種族なのだろう。 今更に驚かないが。

そんな村人だが、向こうから我々は見えていない筈。 だからリムルとシズに鳴いているのだが……いかんな。

気を引き締めねば。 建造物や内装に見惚れて透明化が解けてバレましたじゃ笑えない。

 

 

「リムル様とシズ様、ここからは専属の秘書である私がご案内します」

 

 

親分の所に案内してくれるのか。

リムルとシズは耳長について行く。

我々も少し間を置いて尾行。 戦闘なら兎も角、隠れんぼとは。

これまた滅多にやらない。 懐古の感覚だ。 ついついスニーク姿勢になってしまう。

遊びではないのに、つい楽しんでしまう我々は罪な人生を送っているものだ。 つい微笑んでしまう。 ついが多い時間である。

 

 

「こちらの部屋でお待ち下さい、では」

 

 

部屋に案内され即、扉を閉められてしまう。

間髪入れず見渡した。 ボス部屋にしては良い内装だ。 こんな所で戦闘は展開したくない。

 

 

「あ、どうも……素気ない人だな……」

 

 

ここも中々良い内装だし。

家具や本棚を置いても圧迫感の無い空間。

モザイク風カーペットも高評価だ。

 

 

「……グランドマスターが敵になれば魔国連邦が人間に認められるのは厳しいだろうな」

「ちゃんと話せば分かってくれるよ」

「"先生"が言うんだ、俺も信じよう……うん、真の姿でいくか」

「"クラフター"は……任せるね。 信じてるから」

 

 

相分かったと頷く。 内装鑑賞続行。

帰ったら内装や建築様式を取り入れよう。

 

 

「お待たせしました」

 

 

また新手のハァンだ。

見やると若そうな村人が立っている。

 

 

「僕がグランドマスターの神楽坂 優樹(ユウキ・カグラザカ)です。 僕のことは気楽にユウキと───うわスライム!?」

 

 

今度は驚いている。 目線を追えばリムルがスライムになっていた。

無理もない。 知らない人が見たらそうなる。

変幻自在の水色スライムだ。

我々も初見以降も驚愕させられてばかりであった。

この場でスライム化した理由は分からないが、多分アレだ。 政治絡みだ。 然しもの創造主も察してくるものがある。

分からない時は取り敢えず政治だろう、という風潮もあった。

真に理解出来ずとも考えず察する事も時には大切だ。 アレも政治、コレも政治なのだと。

 

 

「初めまして。 テンペストの盟主リムル=テンペストという。 俺のこともリムルと呼んでくれ。 そして……」

「久し振り、ユウキ」

「シズ先生……ッ!?」

 

 

驚きのハァンを連呼する若人。

ボスにしては迫力に欠ける反応だ。 先程から今に至るまでそうなのだから、ずっとこの調子かも知れない。

だが癇癪起こして襲われたら堪らない。 抜剣の姿勢と心掛けはしておかねば。

 

 

「フューズに聞いてはいましたが、無事で良かった……」

「スライムさん……リムルが助けてくれたの」

「そうでしたか。 何と礼を言って良いのか」

「いや俺は……大した事はしていないさ」

 

 

今度は安堵しつつ会話を始める。

リムルは何処か言い淀みつつ話している様子だ。

探りの思考をしつつ故か。 迂遠な言い回しもしているとみた。

アレもソレもコレも政治。

 

正直に述べる。 面倒臭い。

 

幾度と思い辟易しては仕方ないが……。

我々の世界にまで侵食しない事を切に願うのみ。

正直者は損をする。 誤魔化しも苦手。 だがまだ飲み込める。

一方で嘘は嫌いな創造主だ。 政治とやらが嘘吐きなら、いよいよ好きになれない。

 

 

「しかしリムルさん、一体どうやってここに入ったんです? この建物の入り口には結界があるので魔物は入れないはずなんですが」

「ああ、自動ドアの前のセンサーか。 ひとつはシズさんから借りている仮面。 これでオーラを抑えている。 それから人に擬態した」

「……えっ? なっ!?」

 

 

また驚愕のハァンを上げる若人。

リムルがシズに擬態した事への反応だった。

我々は見慣れた事も、他はそうではない。 だから見せて反応を楽しんでいるのだろう。

リムルは驚かすのが好きなスライムだ。 我々もそうであるが。

この共通点に関しては共感出来た。 嫌いじゃない。

 

 

「その姿は……」

「シズさんを食……真似てな。 普通にしていれば人間に見えるから」

「成る程、実に巧みな擬態と言えます。 警備が強化されている中、バレずに移動出来る程でしょうから」

 

 

それに比べて、どうだ。

若人は今や疑念の眼光をしているではないか。

好きにしてと思うが。

それと同様に我々も好きにするから。

どんな目を向けられようと我々は我々であり其方は其方だ。

無理に仲良くなる必要は無い。 大切なのは上手く付き合う事だ。

同志の趣味趣向も千差万別。 故に喧嘩もする。 時に荒らしも生み出す。

それでも今日まで発展して来られたのは、押し付け合い過ぎない事に起因する。

この世界もそうだ。 人魔がいて国がある。

力の差はある様に思えるが、それでも今すぐ蹂躙し合う間柄ではない。

 

 

「……シズさんとの出会いから話そう」

「聞かせて貰いますよ」

 

 

それぞれの道を歩めば良い。

形は他者と違って良い。 自己で意思決定出来るのは良い事だ。

ただ荒らし行為は処す。 度し難いので。

 

 

「…………という訳だ。 俺はシズさんの教え子を救うべく、一緒に来たんだ。 剣があるとはいえ、イフリートの力を失ったのもあるからな。 護衛の意味や補助の為に行動している」

「リムルの言っている事は本当だよ」

「……シズ先生が言うなら本当でしょう。 しかし簡単な話ではないですね。 信じ難いというよりかは受け入れ難く……」

「それに……俺は『悪いスライムじゃないよ』」

「ぶふっ!? そ、その言葉……」

 

 

若人が突然吹き出した。

感情豊かだ。 結構。 演技だとしても悪いとは思わない。

 

 

「元ネタを知っているよ。 某国民的ゲームのだよな」

「もしかしてリムルさんも日本人?」

「そうだよ。 信じて貰えないなら、君が望む物を出そうじゃないか」

 

 

今度はリムルが本を吐き出す。

それ自体も今更に驚かないが、注目すべきは別にあった。

 

 

「これは!? はがぬの錬金術師の最終巻!」

「漫画かな?」

「そうだシズさん。 現代日本の素晴らしい文化のひとつだよ」

 

 

表紙には絵が描かれている。

クラフターは首を傾げた。

アレか。 絵本の類か。

シズは今『漫画』と述べたが。

エンチャント本の雰囲気はないが、内容が気になる。

手に取り読みたいが、先に若人に取られた。

 

 

「もう読めないと思っていたのに!」

「お望みとあらば、他にも出そうか」

 

 

危なかった。

透明化を維持しているとはいえ、流石に本を取ったらバレる。

隠密行動は苦手だ。 せめて装備品も全て透明化すれば良いのに。

村人の中には出来る者がいるらしいから、その点においても我々は遅れている。

かといって悲観はしない。 出来る事をするだけだ。

 

 

「といっても紙のストックが無くてな。 布に転写するけど我慢してくれ」

「紙!? 紙ですね! ありったけの紙を今すぐ用意します!」

 

 

若人の一喜一憂も飽きてきた創造主は、申し訳程度に部屋を品評した。

が、もう終えている様なものなので漫画について注目してみる。

直接手に取れないので、若人の背後から開かれた漫画とやらを見た。

 

ふむ。

文字より絵が大半を占めている。

その点だけ見れば絵本形式だ。

 

しかし相違点として、大中小の不規則なグリッドで絵が区切られているではないか。

文字が読めないので絵から想像するしかないが、これは絵本の発展型なのかも知れない。

1枚のページで、より多くの絵が見られる訳だし。

本の厚みや大きさ、絵の温かみも知り得る絵本と異なる。

ともすれば、濃厚な物語を効率良く描く手法とも取れる訳だ。

逆に絵に色彩が無い。 大半が白黒だ。 それでも情景が伝わるのは凄い。

是非持ち帰り、研究したいところだ。 あいやシズ越しにリムルに頼もうか。

 

 

「ああ幸せです。 師匠と呼ばせて下さい!」

「お、おう」

「漫画って凄いんだね……」

 

 

我々も負けていられない。

この世界から学ぶべき事は数多ある。 息を整える暇もなく与えられる新技法。

嗚呼、生きているとは素晴らしい。 驚きの連続だ。 我がクラフト道は栄光に輝いている。

 

 

「……さて、そろそろ本題に入ろう」

「そうですね、僕とした事が。 やはり帰還方法を探しているとか?」

「いや、シズさんの心残りを解決しに来た」

「……そうですか。 シズ先生が同席している時点で察するものはありましたが」

「簡単じゃない事は分かっている。 シズさんから色々聞いたからな。 だが決めた事だ」

「分かりました。 そこまで覚悟を決めているのでしたら、託してみようと……ん?」

 

 

あ、ヤバい。 透明化切れた。

管理を怠ったのが原因だった。

 

 

「あっ」「あぁ」

 

 

一斉に見られた。

シズは気まずそうに此方と若人の顔色を見て、リムルは疲労感が押し寄せた様な声を発する。

 

 

「……何となく違和感はありましたが。 やはり誰かいましたか。 最近噂の人間集団の一部ですね?」

 

 

いけない。 若人の警戒の目が痛い。

取り敢えず木剣を右手に持ってみる。 ついでに左手で握り飯を食う。 腹が減っていた。

 

 

「あ、あのねユウキ。 悪い人じゃないんだよ?」

 

 

シズが釈明。

こういう時、通訳がいて良かった。 しかし若人の態度は若干和らぐに留まる。

 

 

「シズ先生が言うならそうなんでしょうね。 ですが得体の知れない者に違いありません。 人間とはそういった魑魅魍魎を恐れる生物です。 分かりますよね?」

「……分かってる」

「既に彼等は騒ぎを何度か起こしています。 悪意は無いにせよ、容認し難い事。 西方教会は魔物扱いにして敵認定しています」

 

 

なんだか空気が重い。

そこに一石を投じるはリムルだ。

 

 

「ユウキ。 シズさんを助けたのはな、本当はコイツらなんだ。 俺は手伝っただけだ」

「えっ?」

「イフリートを失うと同時、シズさんの気力は尽きた。 だけど健康体となって"此方側"に還ってきたんだよ。 それをしたのはな、コイツらのお陰だ」

「……一体どうやって?」

「さぁな。 それは俺も分からん。 コイツらも詳細は分からないらしい」

 

 

何とも形容し難い顔を向けられた。

どうしたものか。 取り敢えずお辞儀しておく。

 

 

「はぁ……分かりました。 謎で危険な存在……ですが、リムルさんやシズ先生が味方する人達。 なら僕も協力するしかないじゃないですか」

「ユウキ……ありがとう」

「ですが出来る限り見張って下さいよ。 取り返しのつく事とつかない事があるのですから」

「勿論だ。 とうにしている」

「子ども達の件も頼みます。 自由学園への手続きはしておきますので……」

 

 

話は纏まった様子。

良かった。 クラフターは胸を撫で下ろす。

 

 

「創造者……いや、"創造主"含めてね」

 

 

一瞥された時、妙な感覚があったが。




違和感あるかも知れません……。
引き続きご意見、感想等、お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。