寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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最早、プロローグかのような序盤より、観光系な「魔物の国の歩き方」や本編の裏側で動いていた3人を描く「トリニティ」の方が良かったかなと思ったり。

皆様の感想、評価お待ちしております。


4.狼と懐柔

 

 

「あ、おい!? 迎え撃った方が良い!」

 

 

狼を懐柔しなくては。

狼のいる生活を得るべく腐肉を振り回し、腐臭を撒き散らしながら駆け出したクラフター。

しかし軽率だったと後悔した。

声の主らと出会えたのだが……違う。 いや狼なのだが、狼では無い。

 

 

「ほう。 人間がゴブリンを庇うか。 更にスライム風情とくる。 笑わせるばかりか出向いてくるとは。 覚悟は出来ているだろうな」

 

 

デカい。 牛くらいある。 黒っぽい。 しかも喋る。

2、3匹どころの群れでも無い。

いっぱいいる。 常識に住む狼とは全く異なり、クラフターは狼狽した。

狼とは足下位の純白4足歩行生物だと決まっているからだ。

ところが、どうだ。

ここまで大きく無いし、色まで違うときた。

鳴き声はワンワンかウーであり、間違っても村人の様にハァンハァン鳴かない。

 

 

「已むを得ない……外道! 推参なり! 者ども掛かれー!」

 

 

スライムも慌てる様に号令を出す。 応と前に出る。 えいやと振るった。 肉を。

 

 

「そこは剣を使えよ!? さっきの強そうな剣はどうした!?」

 

 

やぁやぁと肉を振るう。 どれ食べたかろうと。 デカくても所詮は狼。 懐柔出来る筈だ。

更に言えば、目の前の狼は格好良い。 大きさと見栄えはシンプルかつベストだ。

ぜひともお供にしたい。 ワンではなくハァンと鳴くのが致命的欠点だが。

 

 

「親父殿!? 人間どもが肉を振り回しながら突撃してきます! 腐ってる癖して美味そうです!」

「ええい、小賢しい真似を! 餌付けされるなど誇り高き牙狼族の恥と知れ!」

 

 

どうした? 狼よ。

ギラリとした眼光が隠せて無いぞ? ほれ食べたかろう?

唸りを上げて どこまで耐えようというのかね?

これ見よがしに食ってみせる。

不味い。 腐っている。 空腹異常が起きる。 唯一普遍を体感すると逆に安堵する。 異端な出来事が多過ぎて驚き疲れてきた故に。

 

 

「これ程までの侮辱は生まれて初めてだ! 我ら誇り高き牙狼族をコケにした事、後悔させてやれ!」

「はい親父殿! 噛み殺してやりますよ!」

 

 

ワッ、と一斉に飛びかかってきた。

よーしよしよしよし。

 

 

「ガブッ、ガブッ、これは……ハグッ、何の肉だ、ハグッ」

 

 

やはり狼だ。 与えた肉を喰らっていく。

 

 

「餌付けされてるではないか!? 誇りはどうした!」

「誇りで腹は膨れません!」

 

 

何故か敵対していた風だったが、今や昔。

腐肉は腐るほどある。 あいや腐っている。 故に惜しみ無く喰わせていく。 後は懐くのを待つだけだ。

 

 

「いやまぁ、良いけどね? 平和的に解決するならさ」

 

 

スライムが呆れた様にハァンと鳴いた。

何でも食うスライムの事だ。 欲しいのか。

貪欲だと此方も呆れた。 呆れつつ与える。 食糧自給が安定している現状、自ら消費する物では無い。

 

 

「いらねぇよ!?」

 

 

拒否された。 貪欲かと思えば偏食か。 生態がまるで知れない。

 

 

「お前達、裏切る気か……!」

「腹が減っては戦は出来ません」

「敵から餌付けされてどうする!?」

「親父殿も一緒に食べてはどうです」

「えぇい! 我だけでも村を滅ぼしてくれるわ!」

 

 

1匹だけ懐かない。 群れから飛び出して飛びかかってきた。

 

 

「親父殿!?」

 

 

敵対する行為をした覚えは無いのだが。

やはり知らない狼だ。 羊を襲うなら理解出来た。 だが此奴はクラフターを襲う。

 

まぁ、これだけいるし1匹くらい良いか。

 

脅威は排除する他無い。

已むを得ずダイヤ剣を出す。

世界を相手取る、馴染んだ右手に携える。

 

 

「なっ!?」「どこから剣を!?」

 

 

相手は空中にいる。 軌道変更は今更に無い。

えいやと振るった。 一撃だった。

飛斬によるジャストアタックで無いにも関わらずである。

 

 

「い、一撃……ッ!?」

「そんな、親父殿が……」

 

 

エンチャントダイヤだ。 良くある事だ。 効率が良い。

 

 

「おいおい、宴会から通夜みたいな空気になったぞ。 どうしてくれるんだよ」

 

 

スライムがまたも鳴く。 ダイヤ剣を食わす訳にはいかない。

ダイヤ自体もだが、気に入ったエンチャントを付加するのに かなり苦労する。

そうそう手放せない。 諦めて欲しい。 クラフターは首を横に振った。

 

 

「はぁ……残飯処理は俺の役目ってか。 分かったよ、その代わり他の分野は任せて良いよな?」

 

 

スライムが前に這う。 かと思えば倒した狼を飲み込んだ。

鮮度が良いものを好むか。 今度は蜘蛛の目でも与えてみるか。

 

 

「親父殿……」

 

 

次の瞬間、例によって狼そっくりに変身するスライム。 底が知れない。

そうして狼とハァンハァン鳴きあったかと思えば、狼達はスライムに平伏した。

此方が餌付けしたにも関わらずである。 スライムに懐くとは。

クラフターもハァンと鳴きたかった。




どこまでやれるかな(遠い目。
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