鬼の教導官は日記ネタ。
違和感あるかも知れませんが、感動の再会へ。
はてさてどこまで行けるやら(遠い目。
86.教え子と再会
「シズ先生が戻られて、皆も喜びます」
寝て起きた。 つまり翌日。
トリオと別れた後、我々はまたも立派な建物へ赴いた。
そこは簡素化した城の風貌だ。 横に平たい印象を受ける。 土地は大きく使い、中〜大規模建築に分類出来た。
「鬼の教導官にユウキ理事長紹介の補佐も加わり、正に金棒といったところですかな」
「もう。 その呼び名はやめて下さい」
「シズさん、一体何をしていたんだ……?」
今は建造物内。 その外壁に沿う長い廊下をひた歩いた。 先頭は此処の住民らしき村人だ。
ややふくよかな体型に対して態度に余裕が無い。
仕方ないとクラフターは思った。
徒党を組んで建造物に侵入しているのだ。 武力行使していないとはいえ、威圧感はある。
リムルとシズなんて何故か黒服だし。
「あの時と変わらずS組は此処です……ああっ、またあんな悪戯を!」
余裕のないハァンが廊下に響く。
視線を追えば、扉の隙間に小さな長方形アイテムが挟まっているではないか。
ナニか。 砂や砂利の類か。 重力落下式トラップの雰囲気だ。
「はははっ、可愛いじゃないですか」
或いはTNTの様に危険物かも知れない。
見たところワイヤーや感圧板は見当たらないが、扉に連動して発動する型の可能性がある。
「案内はこれで。 ワシはここで失礼します」
「後は任せて下さい」
リムルは呑気だが、創造主は臨戦状態に。
幾多の修羅場を潜り抜けた猛者足る創造主だ。
ピラミッドや地下遺跡の件がある。 死は眼に見える形に留まらない。
落下先の感圧板を踏み抜いてのTNT爆発。
シルバーフィッシュが潜むブロック。
或いは振り向いた先のクリーパー。 ここも照度計算が怪しい。
「開ける時は気を付けて」
「そうだな。 わざと引っ掛かりウケを狙うか、舐められない様に避けるか」
「ううん。 そうじゃなくてね……」
経験から警戒心を露わに。
ブラフだな、アレ。
構えよ。 本命は別だ。
対クラフター戦なら十分あり得る手法。
防衛優先。 右手に丸石、左手に盾を装備した。
リムルはどうでも良いが、シズは守らねば。
「ちーっす、今日から君達の担任に───」
リムルが無防備無警戒に扉を開けた。
刹那。
「どおりゃああああああっ!」
突如、子供村人が飛翔斬!
ジャストアタック狙い!
武装はエンチャント鉄剣、炎を纏う!
やはりか、どけ!
「うおっ!?」
反射的に防衛行動。
判断は一瞬。 行動は迅速に。
リムルに体当たりする様に視界から退かし、丸石の壁を素早く構築。
続けて丸石から木剣に切替え盾を構えた。 その間に秒で鎧を着込み耐火スプラッシュポーションを足下で割り次に備える。
「ちょ、やり過ぎ! いや生徒側もだけど!」
リムルの非難の声を無視。
ストレージ把握、空間意識、間合確認。
体力満タン。 満腹状態。 金林檎はナシ。
全て一瞬、五感を研ぎ澄ます。
構えた木剣の先、姿勢は微塵もブレない。
創造主、歴戦の動き。
だが、ここまでしても死ぬ時は死ぬが。
我々は万能では無い。 この非情な世界の裁量で生かされている。
それを肝に銘じているつもりだ。
だからこそ残心の構えをするし、それでも手が届く範囲で人生を謳歌する。
その眼差しは鋭い。
今は守ると決めた者達の為に創造している。
その背中は岩盤より頼もしい。 盤石の安心感だ。
「急に壁が!?」
幸いな事に、相手の剣は丸石を一撃で破壊する程の威力は無かった。
クラフターの常識では当たり前の事だ。
低威力なら連撃しなければ壊れない。
だが世界は摩訶不思議な事ばかり。 常識が通用しない。
特にこの異世界。 かのピンキーストームが野に解き放たれている時点で色々ヤバいのだ。
「俺の剣がッ!」
「剣ちゃんの剣が折れた!?」
「必殺技が防がれた!」
「詰めが甘いわね! 防がれたじゃないの!」
石壁の向こうで幼いハァンが聞こえる。
クラフターは作業台を設置。
石壁を加工してハーフブロックでトーチカを造り、向こうを覗き見た。
子供村人を5人確認。 前情報通り。
この子達がシズの教え子か。
が、一応戦闘中なので隙間から弓矢を構える。
相手が子供でも生徒でも敵なら容赦しない。
世界の厳しさと優しさは早々知るべきだ。
その前に殺されるのは御免だし。
子供だと侮れない。 子供ゾンビの初遭遇時は戦慄ものであった。 ジョッキーも。
「余命僅かなんじゃなかったの? 元気いっぱい敵意剥き出し、学級崩壊してんじゃん!」
「うんうん。 いつも通り元気でよかった」
「いつも通りなの!?」
リムルは興奮し、シズは嬉しそう。
流石シズ。 余裕が違う。 リムルは見習え。
「そ、その声は……シズ先生!?」
急に驚愕のハァン。
石壁を回り込み子供達が顔を覗かせる。
すかさずシズの前に立ち盾を構えた。 シズ狙いか。
現在、シズは非武装だ。 守らねば。 使命感。
「もう大丈夫だよ"クラフター"さん」
云われて構えをゆっくり解く。
シズが云うならそうなんだろう。
「し、シズ先生……ッ!」
「本物よね……? 嘘じゃないのよね?」
「うん。 本物」
「本当に本当!?」
「本当に本当」
武装解除。
丸石をツルハシで撤去。
子供達は涙目だ。
……もう大丈夫だろう。 なんとはなしに。
「「シズ先生ーーッ!!」」
子供達が一斉にシズに抱きつく。
シズはそれを受け入れた。 我々だったら土で上に逃れていた。 条件反射で。
しかしまぁ。
泣いている。 わんわん泣いている。
よく見ればシズの目元も光り輝いていた。
我々はシズではない。 だから子供達とシズの思い出は想像出来ても分からない。
作ったのは他ならぬシズと子供達なのだから。
「今までどこ行ってたのさぁ!」
「見捨てられたかと! 二度と会えないかと!」
「もう……もう何処にもいかないで……!」
「急に出て行って酷いんだから……!」
「でも信じてました! 必ず帰ってくるって!」
久しい感動の再会なのは分かる。
リムルも我々と共に見やる。
仮面越しに感傷に浸っているのだろう。
……子供達同様、泣いているのかも知れない。
でも良いか。 嬉しそうだし。 我々含めた全員が。
「ごめんね、みんな……本当にごめんね……」
暫くシズと子供達の抱擁は続いた。
初日だしクラフトの教授は良いか。
落ちている折れた鉄剣を拾う。
クラフターは人知れず直し、微笑んだ。
感動の再会でした。
作者は知識、文才が無いので違和感があるかもです。
その時は申し訳ないです……。
本編の漫画にて。
模擬戦の後、ケンヤがシズ先生が見捨てた事を言っています。
ですが転スラ日記の方では、ゲイルが必ず戻ってくる様な事を言っています。
作者(ハヤモ)としては信じる気持ちもあったでしょうし、一方で心の何処かでは「見捨てられた」とも思っていたと考えています。
余命を知った上での現実を考えた子供達……心中はきっと辛かったでしょう。