3度目となりますが、忘れかけているIRP絡みや星の世界の方向へ。
魔国連邦の地下。
私は今、ここを拠点にクラフトの研究をしている。 ここのクラフターは気前が良く、新参の私に嬉々と知識や部屋を与えてくれたから、居心地が良くなったのもある。
落ち着いた後に"彼"の話をして、彼を知る者達から同情されたり励まされたのもあるだろう。 正直言えば嬉しかった。 想像以上に私の事も、消えてしまった彼を想ってくれる者が多くいた事に。
私は此処に来て漸く、仲間と呼べる者達に囲まれたのだ。
───彼の支えは発展の礎だった。
消えたのは残念だが、彼は多くのクラフトを残したと云って過言ではない。 君も含めて。
その後も彼の話をされていく。
如何に彼が陰ながら皆を支えてきたか、そして私も支えられていたか。
だからだろう。 彼や、彼に支えられたクラフターに貢献出来ればと考える様になったのは。
「私も皆とクラフトしたい」
そうして研究を始めた。
ここにある……村人が機龍と呼ぶTNTキャノン移動ユニットのIRPについてや、その動力になっている謎多きBB。
これを同志と協力して研究している。
BBは高出力とRSを凌駕する伝達能力のある動力源としてではなく、高度な集積回路である他、組み込まれた創造物を自動で理解、様々な演算処理を行う事は資料で読んだけど……中々進展が無いのが悔やまれる。
だけど。 僅かでも解明されれば様々な分野で役立つ事が期待できるのだ。
BBをクラフト出来ればRS回路に代わる革命に成り得るし、大型建造物を動かす事も出来る様になるかも知れない。
寝る間も惜しみ、レポート作成に勤しむ仲間達。
その表情は生き生きとして楽しそうで、とにかく嬉しそうだった。
純粋な創造主は皆こうなのかも。 私も負けてばかりいるつもりはないけど、いつの間にか寝落ちして研究室の床で何度も寝ては起きて。 時々同志にベッドに担ぎ込まれる度、羞恥心に襲われ熱くなる。
だけど劣情も嫉妬も湧きはしない。 私は私。 彼が彼だった様に。
ただ私が研究する理由が、彼が話してくれた星の世界を目指すからと答えたら……皆は笑うだろうかとは気にする。
この地下からじゃ見えない、数多の輝き。 手を伸ばしても届かない世界。 あるかどうかも分からない。 それでも彼が憧れたであろう世界。 その光景を私は知りたい。
しかし……ここに篭ってどれくらい経ったのだろう。
時計を見る事でしか昼夜が分からないから、時々陽や月の明かりが恋しくもなる。 セピア色に染まる記憶が、胸を締め付ける。
そんな時だ。 仲間に声を掛けられたのは。
───根を詰め過ぎてはないか?
それをクラフターが言いますか。
返すと苦笑された。 不思議と腹は立たない。
「上手くいかなくても、きっと意味がある。 私がここにいる事も。 そう思うと気持ちは重くないですよ」
───そうか。 強いのだな、君は。
「それより何かあったんですか? どこか嬉しそうですね。 キモいくらいに」
───その通り。 実は研究していた新型砲弾が完成したのだ。 喜べ。 祝え。 歓迎せよ。
「哀しみ呪い、ベッドに送還したいんですが」
新型砲弾……TNTとは別の砲弾を開発していたのは聞いていたけれど、完成したとは。
資料によると着弾地点を中心に猛毒を拡散させる危険な砲弾。 いうなれば拡散範囲が広大な猛毒スプラッシュポーションを遠方に発射するというもの。
なんでもシオンという村人がクラフトした猛毒を原料にしているのだとか。
ただし、この原料自体は創造主にも中々クラフト出来ないらしく、この者に頼る他無いらしい。 なんにせよ物騒な話である。
「やめて下さいよ。 どこかの村を実験台にするのは」
一応言っておく。
クラフターは個人差があるが倫理観に問題がある。
それこそ酷い場合、村どころか国やバイオーム丸ごと岩盤まで吹き飛ばすレベル。 それも個人で成し遂げる。 犠牲は気にしない。
───問題ない。 駆け出しでなし、やらないよ。
「なら良いです」
───代わりに密室に同志を押し込めて試した。 効果は抜群。 全員即死。 実験は成功だ!
「流石クラフター。 惨い事を笑顔でやりますね」
ほらね? 笑顔で犠牲を出すんです。 仲間でもお構いなし。
クラフターはリスポーン出来るとはいえ、経験値なるものや持ち物をロストします。
そうでなくても、苦痛を感じない訳ではないので良い事ではない。
───そんなに褒めるな。 腐肉しか出んよ?
「褒めてませんし、いらないです」
感性も全く違います。
村人達はもっと怒って良いと思います。
───後、喜ぶべき事が他にもある。
碌でもない話な気がして、警戒心を強める。
「新型エンチャントでも編み出しましたか」
───それは別件で同志が研究している。 そうではなく、我がIRP班に村人を加えようと思ってね。
「えっ!? でも通訳はシズという方……」
私は驚いた。
まさか村人を研究班に入れようなんて。
感性云々の前に、言葉が互いに通じないのに。
これはかなり致命的だ。 レポートは読み合えないし、意見交換も出来ない。
シズという村人のみ、どういう訳かクラフターと会話が出来るらしいけど……。
仮にも研究部門に身を置く私としては、この案は反対だ。 危ない。 色んな意味で。
「確かに村人の技術者を招集し、互いに刺激し合い……この世界の技術を取り込めたら良いと思います。 ですが言葉の壁は? どう突破するんです。 唯一通訳のシズという方は遠征中じゃないですか」
───ナニを言っている? 君がいる。
「えっ?」
───村人語を話せる、君がいる。 問題ない。
「えっ……ええええっ!?」
今日だけで何度目の驚きか。
そういえばクラフトの日々で忘れてた。 私は村人と意思疎通が出来るんだった!
……ただ殆ど話した事がない。 湖底研究所に幽閉されていた時に、村人語の本やらで実験され、暫定的に通訳にされただけ。 実績は皆無。 あるとしても、彼と暮らしていた頃に商人と僅かに会話した程度だろう。
「いやいやいや! 私、村人と話なんてとても!」
───期待しているよ辛辣同志。
「肩を叩いてニッコリすんじゃねーです!」
───君の為でもある。 君が目指すものは判らないが、助けになるのではないか?
「…………分かりましたよ。 失敗しても恨まないで下さいね」
───大丈夫だ。 取り敢えず我々が目醒めた洞窟へ向かえ。
そこに白衣を着た連中がいる。 普段はポーション作りに励んでいるが村人の技術者だ。 声を掛けてくれたまえ。 興味を持ってくれれば我々に協力してくれるだろう。
こうして、私はクラフターと村人の間を取り持つ事になる。
どこまで上手くいくかなんて全然分からない。
だけど、この世界の人々の協力を得られるチャンスなのは違いない。
そして。 私にとってもそれは変わりないのだ。