寝て起きてクラフト案件。【完結】   作:ハヤモ

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フォスの話。 トリニティ2巻参考。
日記にもトリニティ絡みと思われる話やシルエットが見受けられます。
今回の話は時系列的にはミョルマイルが来る少し前、といったところでしょうか。


92.狐娘と可能性

 

 

「遂にこの国の指南役のハクロウ様に個別指導してもらえるです!」

 

 

訓練場にて響く可愛いハァン声。

見やれば、いつかの狐娘である。 シズに扱かれた時は心配したが息災で何よりだ。

 

 

「あっ! いつもの人間さんもいるです! でも今日はハクロウ様に個別指導して貰うですよ。 せっかくゴブエモンさんが推薦してくれたです。 このチャンス無駄にはしないです!」

 

 

顔を合わせるなり元気に鳴かれた。 威嚇ではなく挨拶の雰囲気だ。

手合わせの様子じゃないが、取り敢えずお辞儀しておく。 挨拶は大事。 マルチでは尚の事。

一方、その声に釣られる様に帯刀村人……ハクロウがやって来た。 此方にもお辞儀しておく。

 

 

「おお主らに獣人族のお嬢さんは確か……」

「フォスです! 警備隊の全体訓練で何度か!! 今回は個別指導のほどよろしく頼むです!!」

「威勢がよい事はいい事じゃ。 どれさっそく始めるかの」

「はい!」

 

 

2人が開けた場所に移動する。

模擬戦か。 そういう場所だし当然か。

だとして狐娘は勝てるだろうか。 ハクロウはシズより強い。 いや分からない。 シズに扱かれてから大分経つ。 狐娘も強くなっている可能性がある。

 

果たして見ていると、その期待は当たった。

狐娘はより獣らしく毛を増やし、ハクロウと相対す。 雰囲気も前より強そうだ。

必見。 もしかしたら。 その可能性を僅かでも感じられるなら無性に嬉しいのも創造主。

 

 

「ほほう。 獣人族特有の獣身化か」

「全てを研ぎ澄ましてハクロウ様を捉えるです」

 

 

面白いものが見れそうだ。

その刹那を見逃すまいと刮目するクラフターだったが、次にはハクロウが消えた。

と思った次には狐娘の背後に現れる。 そのまま狐娘は脳天を叩かれた。 呆気なさ過ぎる。

 

 

「ぎに“ゃっ!!」

 

 

そのまま蹲ってしまう狐娘。

駄目だったか。 仕方ない。 ハクロウはシズやエンダーマンより強い。 掛け合わせてもここまで強くならない位強い。

 

 

「ぐうぅ、全身がっ、全身が痺れるですっっっ」

 

 

その後も諦めず何度も立ち向かう狐娘。

が、歯が立たない。 動きは前より良くなっている。 だが一撃も与えられず一方的にボコられた。 力の差は歴然。 無情なものだ。

 

 

「情けないです……こんなにも通用しないなんて……獣人族としてカリオン様に顔向けできないです」

「そこまで悲観せんでもよかろうて。 お嬢さんは筋は悪くないが、力に頼りすぎなんじゃよ」

 

 

シズに追いつけない時点でハクロウを追うのは困難だ。 我々もそうだ。 目で追えない。

何度剣に生きた者は格が違うと思い知らされた事か。 だが悲観しない。 我々は我々のやり方がある。 相手の土俵で戦わなければやり方はある。

持味を活かせ。 前もそうだった。

 

 

「ハクロウ様!! なんで気配が消えるです!? 追えないです!? そういう能力です!? 一瞬で間合いを詰めるなんて……」

 

 

エンダーパールで一気に間合いを詰め、斬り伏せようと試みた。

あの時は移動までは上手く行った。 最も剣を振り下ろした際に防がれてしまったので意味がなくなってしまったが。

 

 

「能力ではなく気闘法という技術の一種じゃよ」

「気闘法?」

「さよう。 体内の魔素を練って闘気とし、身体の強化など行う妖気を用いた武術じゃ。 相手の認識を遮る隠形法、瞬間的に移動する瞬動法、武器や拳を強化する気操法など様々な術があるぞ」

 

 

様々な戦法がある。 伊達に創造主を続けていない。 冒険と建築の過程で多くの化物を相手にしてきた。 だがどんな相手にも弱点や攻略法はあった。 ハクロウにもきっとある。

それに見せてない戦法も沢山ある。 諦めるには速算過ぎる。

 

 

「気配が追えなかったのはこれです!? それは私でも覚えられるです!?」

「もちろんじゃとも。 まぁ、それには厳しい訓練と根気強い努力が必要じゃがの。 まずは手足の強化から始めてみるが良かろう。 足を強化するだけでも瞬動法の基礎に繋がるしの」

 

 

先ず空腹には気を付ける事だ。

自然回復はしなくなるし、走る事すら出来なくなる。 これでは逃げる事も出来ない。 良い考えも浮かぶまい。

飯は大事だ。 常に携行し、食う事を怠らない事。 現に今も隙を見ては握飯を食っている。 見習え。

 

 

「これからもご指導のほどよろしく頼むです!!」

「うむ。 その心意気、楽しみにしておるぞ?」

「はい!」

「ホッホッホッ。 鍛えがいがあるのう」

 

 

狐娘も同じく思ってか、めげていない。

そうだとクラフターは頷いた。

人魔問わず全ての若者に言いたい。

頑張れ。 頑張れ。 物事を簡単に諦めては駄目だ。 我々は何度リスポーンしたか数え切れない。 食事中にクリーパーに爆破された時は悲しかった。 安全にも気をつかう様に。

 

 

「カリオン様! この国の指南役、ハクロウ様の気闘法という技術はすごいです! この技術を習得出来たのなら、この国の秘密がまた分かる気がするです!」

 

 

いずれ分かる時が来る。

 

負けたって良い。 逃げたって良い。

泣いたって良い。 失敗したって良い。

 

勘違いする事勿れ。

転ぶのが恥ではない。 そこから立ち上がらないのが恥なのだ。

他から理解もされず誤解されても、我々は笑われながら挑み続けた。 これからもそうだ。

好きな事を好きだと云い、やりたい事をやる人生であり続ける。

批難家なんて何処にでもいる。 奴等は土1個すら気に入らない。 それを我々が気にする必要性は微塵も無い。

だから消えないクラフターは何処までも消えないし、何時迄も世界を冒険し開拓する探求者で在り続ける。

誰かが消えて喜ぶしか、人生に価値が見出せぬ荒らし等は損してる。 詰まらない人生だ。

何でも良い。 シズやハクロウの様に剣でも良い。 クロベエみたいに鍛冶も良い。 我々がしている様な事も良い。 研究も素晴らしい。 のんびり釣り糸を垂らすのも上等だ。

 

 

「ワシは一服するかの。 お嬢さんは其方と相手してはどうかの?」

「へ?」

「もう有無を言わさず突っ込んでおるが」

 

 

そんな訳なので。

手の空いた狐娘に様々な戦法を仕込む様に試していく。

木剣は兎も角、水バケツで水流責め。 いつもの地面に潜ってからの不意打。 接近されたら雪玉乱射。 真上に土を積んで蜘蛛返し。 からの上からまた水バケツ。

飛んで来たら金床を脳天にお見舞いさせ地面に叩き落とす。

一応、これでも殺さない程度に加減中。 本気でやって良いなら溶岩バケツやTNT、ポーションを持ち出すが、狐娘には酷だろうし。

 

 

「ぎにゃあああ!?」

 

 

根を上げても良い。

また挑戦すれば良いのだ。

さあ寝ては起きろ。 そして生きろ。

人生をブッ作れ!

世界も君達も可能性に満ち溢れているのだから!




また酷い目に遭うフォスちゃん。
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