クラフト本編に戻らねば……。
94.襲撃と出撃
心躍る大都市から一転。
晴れやかな青空の下、クラフターは野原で模擬戦を行なっていた。
野外授業と称して郊外に来ているのだ。 メンバーは今やお馴染みのリムルとシズ、そして子供達である。
といっても前みたいにヤり過ぎてシバかれたら嫌だ。 故に回避や防御に専念中。
土を積み重ねて上に逃れたり、壁を作って防いだり、例によって穴を掘って地中に隠れたりしているところ。
「相変わらず先生達は変すぎだって!?」
「なんで土柱の根元を壊しても宙に浮いてられるの!?」
「重力を無視している!?」
「魔法?」
「リムル先生! シズ先生! あの人達は何者なんですか!?」
「……先生にも分からない事ってあるんだよ」
「……ははは」
因みに。
郊外へは地下道を掘り、這い出た経緯がある。
普通に都市内を闊歩しようものなら騎士団に襲われるからだ。
ネザーのピッグマンの如き面倒な連中だ。 別に危害を加えてないのに。
この世界はナニが敵対行為になるか判ったものじゃない。 エンダーマンは目線が合うと敵対するが、彼等は何だろうか。 テリトリーを侵害すると駄目なのか。 一種のガーディアンか。 思えばウィッチモドキも不明だった。
だがそれしきの事で止められる我々ではない。
水中に沈む海底神殿の攻略等は確かに難儀した。
行動制限が掛かり息も出来ぬ。 採掘も時間が掛かる。 視界劣悪な水中世界。 そこをテリトリーとするガーディアンは電撃を放ち遠方からも攻撃してきた。 取り巻き含め強敵だった事は認めよう。
だが目覚めた洞窟で隠遁しなかった様に、常に前へ前進した。 そして勝った。 失敗は数え切れないが、どうにかなるものだ。
具体的にはあの時、水中用のポーション等をクラフト、駆使して攻略を敢行した。
ネザー要塞やジ・エンドにおけるエンダードラゴン戦では別口だったが……やはりクラフトは偉大だった。
その思考は今も脈々と続いている。
だからこそ、異界の地……遠路はるばるこの国にやってきてもクラフトは続く。
シズとリムルの為でもあるが、我々の為でもある。
思えばこの世界での最初の友はリムルだった。 暫くして出逢えたシズも意思疎通が出来る友となった。
そして両者を基点にする様に、新鮮な創造の日々が始まったのである。
或いはリムルとシズに出逢う為にこの世界に来たのかも知れない……クラフターはそんな事まで考えた。
少なくともリムルはそうだ。 こんな珍妙なスライムは他に見つけてないし。
「はいそこまで。 みんなお昼にするよー!」
「やったー!」
そして今回も勝つ。 勝った。 以上。
後は待ちに待った飯の時間だ。 シズに呼ばれて皆と共に駆け寄った。 今日はサンドイッチである。 もう頭の中は料理だけ。
これは平たいパンの間に様々な具材を挟んだ料理だ。 簡単そうで奥がある。 最近は我々も真似出来ないか試みている。 クラフターたるものだ。 奥を探究したいと思った時に既にクラフトは始まっている。 ころころ転々と。
「くぁーっ! やっぱ運動のアトの飯うめーっ」
尚、コレはかのデカい狼が都市より運搬してきた物だ。 狼なのに運べるとは。 ラマか。 いやラマ程有用ではない。 だが戦闘も出来る面は捨て難い。
取り敢えずサンドイッチは美味い。 以上。
「ねぇ、先生と勇者様どっちが強いかな?」
「そんなの勇者様に決まってるじゃないの」
「私は先生の方が好き!」
「こんなヘンテコ連中にマサユキ様が負ける筈ないもん!」
「アリス、こんなとか言っちゃ駄目よ」
「そうだぞ。 言って良いのは俺だけだぞ」
「リムル……」
これのクラフターに是非謁見したい。
都市にて甘味をクラフトして取引している事を生業にしている者だ。
「マサユキってのが勇者の名前なのか?」
「リムル先生、勇者様を知らないの!?」
「とても強いんですよ!」
「金髪でね、すっごくカッコイイんだから!」
「金髪なのか。 日本人っぽい名前なのに」
ヨシダという名らしい。 顔も知れぬが仲間の気分だ。 鬱陶しい騎士団がいる所為で挨拶も碌に出来ないが。 難儀なものだ。 だが諦めなければきっと会える。
そう。 同じ空にいるのだし……と、青空を見上げたら。
───グギャアアアアッ!!
なんか飛んでた。
ナニアレ。
ドラゴンだ、アレ。
いやドラゴンだろう。
ドラゴン以外何だというのだ。
「ドラゴン!?」
『天空竜(スカイドラゴン)です。 脅威度は災厄級。 カリュブディスと同じランク帯の上位龍族(アークドラゴン)です』
「レッサードラゴン亜種のワイバーンとは異なり、元竜の血を濃く受け継ぐアークドラゴン! 脅威度は特A、カラミティだ!!」
「大変! 街に向かってる!」
久し振りに見たなぁ。
妙な懐かしさすら感じて、創造主は目を細める。
エンダードラゴンを討伐して久しいし、目覚めの洞窟にいたドラゴンも直ぐにいなくなったし。 後者はリムルの所業だが。
取り敢えず久し振りにドラゴン退治といこう。
奴は都市に向かっている。 放置すれば立派で美しい都市が破壊されかねない。
クラフターとして、創造物が荒らされるのは見過ごせない。 リムルとシズも同じ想いだろう。
「大都市の結界はそう簡単には破れないさ」
「でも相手はドラゴンだよ!?」
「あそこは俺達の家なんだ! ヨシダのおっちゃんに食堂のおばちゃんに教頭先生に学園の皆……黙って見てられるかよ!」
「家、か……そうだな。 待ってる人がいるもんな……ん? あれ? ユウキは?」
「兄ちゃんはなんか平気そう」
ダイヤモンドフル装備完了。
俊足ポーションも飲んだ。 今にも駆け抜けられる。 模擬戦で動きも温まっている。 いつでも動ける。
「副担が青く輝く鎧と剣を一瞬で……!?」
「おっと俺も行かせて貰うぞ。 王都に入ろうとしてた人達が狙われてる」
「先生ぇ……あの人達、死んじゃうの?」
「そんな事にならないよ……私も行く。 皆はランガと待っててね」
やはりリムルとシズも来るらしい。
子供は戦力として心許ないからか、狼と留守番命令を下される。
「倒しに行くの?」
「なによバカじゃないの! かっこつけて勝手に死ぬとか絶対許さないわよ!」
「大丈夫だよ。 それに副担はとっても強いんだから。 それこそやられても何度でも起き上がれるくらいに」
IRPはこの場に無いが……座標伝達。
可能なら支援砲撃を要請した。
だが過信しない。 クラフターは右手のダイヤ剣を、弓矢を見つめる。
やはり最後に頼れるのは己の技術、創造だ。
「今日も助けてくれる?」
当然だ。 創造主は即答した。
スカイドラゴン戦へ。
クラフト要素が足りない気がしてきてしまう時も。