未来の花   作:ZANGE

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第14話
Side: 猗窩座


生殺与奪の権利

着地の体制から、ゆっくりと立ち上がる。

 

「人間。この先で鬼を見なかったか?」

 

『鬼』という響きに、

目の前の子供は明らかな反応を見せた。

 

どうやら当たりらしい。

 

「・・・知っているようだな。

 仲間を置いて一人だけ逃げ出したのか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

何も言わないところを見ると、これも当たりのようだ。

 

「お前に良いことを教えてやろう。

 残る仲間はもう、あと2人だけだ。

 2人を喰い終われば、鬼は必ずお前を追ってくる。

 逃げたところで、ほんの少し寿命が延びるだけだ」

 

子供の反応が無い。

先ほどから頭を押さえ続けているが、

恐怖で頭がおかしくなったのか?

 

目と目が合うと、ぽつりと呟いた。

 

「・・・アンタも、鬼、なのか?」

 

「・・・そうか、分かるのか」

 

どうやら、ただの子供ではないらしい。

変装は不要と、上弦の参としての姿を晒す。

 

すると、子供の変化は劇的だった。

目を見開いてわなわなと震えたかと思うと、急に地に伏せて頭を下げた。

 

「頼む!俺は強くなりたい!

 俺を鬼にしてくれ!」

 

『・・・今日は土下座をよく見る日だ』

 

うんざりしながらも、洞察力は悪くなさそうな子供に、ほんの少しだけ興味を寄せる。

 

一つ、試してみて、生き延びれば良し、

弱ければ死ぬのが少し早まるだけだ。

 

「・・・良いだろう。

 ただし、鬼に弱者は要らない。

 もし俺の攻撃を無事に避ける事ができれば、

 お前を認めてやる」

 

顔を上げた子供の顔面に向け、高速の突きを放つ。

鼻先で寸止めした瞬間、風が流れ、髪の毛が舞い上がった。

 

「次は当てる。構えろ」

 

急いで立ち上がろうとする子供。

頭は悪くなさそうだし、足腰も山で鍛えられていそうだ。

 

「そうだ。

 お前は子供だから、特別に手加減をしてやろう」

 

ゆるゆると身体が縮み、見た目は猗窩座のまま10歳程度の姿になる。

ずり落ちそうになる着物の腰紐をギュッと巻き直し、構える。

 

「服がぶかぶかで動き辛いな・・・」

 

ぴょんぴょんと飛んだり跳ねたりする姿は、可愛い子供そのもの。

ぶかぶかになった着物の裾がヒラヒラと舞う。

 

ダン!!

『術式展開・羅針』

 

そのままヒラリと舞い上がり、高速の攻撃を振るう。

『破壊殺・空式』

 

拳打!

掌打!

手刀!

蹴撃!

回し蹴り!

 

ドドドドドン!!!!

 

と、空気が破裂するような音が響き渡り、

遠くの方から木がメリメリメリと倒れ込む音が聞こえてくる。

 

ズシーーーーーン!!!

 

「・・・・・・・・・」

 

音のした方角から、子供の方へと視線を移す。

 

我が身可愛さに、たった一人で逃げて来た子供。

絶望的な力量差に慄くかと思いきや、顔色は変わっていないようだ。

 

これは思っていた以上に拾い物かもしれない。

 

左拳を引き、開いた右手を前に構えを取る。

 

「一撃だ。

 この一撃を避けられたら、お前を認めてやる」

 

見様見真似だろうが、目の前の子供は半身の構えを取った。

相手からの打撃面を減らすという意味では、良い判断だ。

 

ただし、もし避けられなかった時は、全身が挽肉になる。

そこまで考えているのかどうかは分からないが、少なくとも覚悟は決まったようだ。

 

右半身の構え。

右足を半歩前に、左手を引いた構え。

 

重心の位置など考えてもいないのだろう。

けれども、左右のどちらにも避けられるように、左右の中心に重心を置いているようだ。

 

『弱者が死ぬのは、弱いからだ・・・

 弱者は、強者の前では生き死にすら選択できない』

 

「全力を出せ!!!」

 

離れた位置から、大砲のような左拳を放った。

衝撃波が生まれ、構える子供へと真っ直ぐに突き進んでいく。




どう足掻いても逃げられない事を悟った獪岳。
強者の心理に敏感な彼にとって、猗窩座は鬼門。
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