未来の花   作:ZANGE

23 / 97
第23話
Side: 沙代


本当の言葉 肆

ぐるぐると目の前が回って、何も考えられなくなる。

 

『ひめじまさんは、わたしのせいで・・・?』

 

ぐるぐる、ぐるぐると落ちていく。

 

『わたしのせいで、殺されそうになったの・・・?』

 

ぐらんぐらんと、地面が傾いていく。

 

『わたしのせいで・・・みんな・・・』

 

ぐわんぐわんと、耳鳴りがひどくなる。

 

『みんな・・・みんなが・・・』

 

目の前が赤く染まっていく。

 

『助けてくれた、あの人まで・・・』

 

声が出ない。

 

『ダメ・・・!』

 

何も話せない。

 

『ダメ・・・!!』

 

何も言えない。

 

『ダメ・・・!!!』

 

何も伝えられない。

 

『みんな助けて!!!』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・えっ?」

 

まただ。

また、気付いたらお墓の前にいる。

 

でも周りにはなんにもない。

 

真っ白な場所。

 

なんだか、世界がふわふわしてる。

 

「沙代」

 

聞こえるはずのない声に、思わず振り向いた。

 

『えっ?』

 

「沙代・・・

 悲鳴嶼さんなら、元気にしているよ」

 

『どうして・・・?』

 

「悲鳴嶼さんは、優しい人のところにいるよ」

 

『・・・みんな?』

 

「・・・・・・大丈夫」

 

『みんな!』

 

「さーちゃん、ずっと一人でこわかったねー」

 

『みんな!みんな!』

 

「でも、その人はこわくないよ」

 

「全然こわくない」

 

『お姉ちゃん!』

 

「沙代。

 悲鳴嶼さんは心配いらないわ・・・

 だからもう、あなたは我慢しなくていいの」

 

『待って!みんな、どこ!?』

 

「じゃあな、沙代」

 

「はくじって人にもよろしく」

 

「・・・・・・生きて」

 

「さーちゃん、ばいばい」

 

「ばいばーい」

 

「元気でね」

 

「その人を、頼んだわよ」

 

その世界は薄く薄く、真っ白に包み込まれ、

真っ白に弾けたーーー!

 

『狛治さんを、頼みます・・・』

 

 

 

 

 

 

 

「だめえええええええええええええええ!!!!!」

 

「な!?」

 

閉ざされていた音が、響いた。

 

動かなかった喉が、震えた。

 

諦めていた声が、届いた。

 

スーーーッと

鬼気の食人衝動が周囲から薄れていく。

 

「・・・沙代、お前・・・」

 

「絶対にだめなの!!」

 

「お前、声が・・・」

 

「食べちゃだめなの!!!

 わかった?」

 

「・・・ああ、分かった。

 こんなクズは、もう食わない」

 

掌の上のモノを、放り投げる。

ぽっかり開いた穴。元々あった場所に、ストンと落ちる。

 

「約束する?」

 

「ああ、約束だ」

 

「嘘付いたら?」

 

「別にどうもしない。

 鬼は嘘吐きだからな」

 

「はくじさん!

 約束をやぶっちゃ、だめなの!!」

 

「ーーー!?」

 

「大事な約束は、やぶっちゃだめ!」

 

「沙代?

 お前・・・?」

 

「約束は守るものでしょ!?」

 

「あ・・・ああ、そうだな。

 約束は、守らないとな・・・」

 

「む〜〜〜〜〜〜〜」

 

「・・・・・・なんだ?」

 

「む〜〜〜〜〜!

 うそつきのにおいがする!」

 

「!!?」

 

「あなたからは、うそつきのにおいがします!

 だから、うそをつかないように、これからはわたしが見張ります!」

 

「・・・好きにしろ」

 

「好きにする〜〜〜」

 

「気のせいか・・・?

 ・・・はぁ、子守は苦手だ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「獪岳、キライ」

 

「・・・猗窩座さん、どうして沙代がここに?」

 

「・・・なりゆきだ」

 

「ふっくくく。

 しかし、ずいぶん懐かれてますね・・・」

 

「・・・言うな。俺は知らん」

 

猗窩座の頭の上から、元気に顔を覗かせる沙代。

 

「しかし、あの人見知りの沙代が、こんなにも人に懐く姿は、悲鳴嶼さん以外で初めて見ましたよ」

 

「人見知り?

 コイツはそんなタマじゃない。

 初めから馴れ馴れしかったぞ?」

 

「そうですか?

 では、よほど好かれたんでしょう。

 それで、連れ帰ったということは、育てるんですか?」

 

「・・・コイツのおかげで行冥が無事な事も分かった。

 その過程で、行冥と沙代を殺そうとした地主を殺した。

 いまさら、帰るところもない。

 それに、気になる事もある・・・」

 

「気になること?

 沙代がですか?」

 

「そうだ。それが分かるまでは、しばらく預かろうと思う。

 俺がいない間は、獪岳。お前に任せるぞ」

 

「・・・嘘、ですよね?

 顔を見るなり、ひと言目がキライ。ですよ?

 聞いてましたよね?」

 

「獪岳、キライ!」

 

「ほら!」

 

「獪岳、お前は心が弱い。

 だから最初はそこらの鬼の巣に放置してやろうと考えていた・・・」

 

「えッ!?」

 

「しかし、お前は運がいい。

 沙代が元気に育っている限り、お前に修行を付けてやる事にしよう」

 

それを聞いた獪岳。

見惚れるような、綺麗な土下座ポーズを決める。

 

「分かりました。

 謹んでお受けしましょう。

 ・・・沙代、俺を許せとは言わん。

 だが今だけはよろしく頼む」

 

「絶対、いや!」

 

「・・・やっぱり無理そうです」

 

「馬鹿野郎、それくらいで折れるな。

 ・・・行冥が許したんだ。

 心を尽くせ。いつか許してくれるさ」

 

「い〜や〜な〜の〜!!」

 

 

 

「ほらね、愈史郎。

 私の言った通りでしょう?

 あの男は、鬼舞辻や他の鬼とは違う」

 

「たしかに、少し変わってますね」

『ああ、珠世様は今日もお美しい・・・』

 

 

 

 

 

幕間 本当の言葉-終-




幕間の内容は、元々のプロットだと二話くらいで終わる予定でした。
後半はノリと勢いで生まれています。
さて、どうなることやら・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。