Side: 猗窩座
鬼の弟子
夜闇に紛れ、剣戟の音が山奥に響き渡る。
「小賢しい鬼だ!
姿形を変えたとて、鬼殺隊の目を逃れることなどできぬと知れ!」
「ほう。素晴らしい闘気だ。
貴様、柱だな!!」
豪快で力強い太刀筋。
しかも隙が無い。
決して手を抜いているわけではない。
しかし、あと一歩が踏み込めない。
間と隙の作り方が抜群に上手い。
戦いの最前線で磨き上げられたものだということが分かる。
鬼の不死性を活かし、無理やりもう一歩踏み込んだ。
殴った筈の腕が斬り飛ばされる。
思わず口端が上がる。
「良いぞ!!
ならこれはどうだ!?」
空に飛び上がり、瞬時に復元した両拳を振るう。
『破壊殺・空式』
無数の衝撃波が空から剣士を襲う。
対する剣士は、ここで初めて呼吸を技に乗せた。
「炎の呼吸、肆の型ーーー」
『盛炎のうねり』
ガガガガガッ!!!
全ての衝撃波を、炎波打つ渦状の斬撃が撃ち落とした。
ストンーー
その様を見ながら、静かに大地に立つ。
「素晴らしい技だ。
炎の呼吸の柱と出会うのは初めてだな」
「お前のその強さ、十二鬼月だな。
しかも人間の格好をしている・・・」
「これは失礼した。
弟子が服装にはうるさいんだ」
右手で顔を覆い、和装を脱ぎ捨てる。
上弦の参として、男の前に立ちはだかった。
「俺は猗窩座。
お前の名は何と言う?」
「煉獄槇寿郎だ」
「では槇寿郎。
どうしてここへ来た?
ここは俺ともう一人しか知らぬ、死者の眠る地。
お前のような柱が来る場所ではない」
「そのもう一人から聞いたのだ。
この地に強い鬼がいたとな。
その強さ、お前がそうだな?」
「そうか・・・あの馬鹿が。
それで、アイツは鬼狩りになったのか?
それともーーー」
「鬼に教えるはずがないだろう!
貴様の首は、ここで俺が貰い受ける!」
「・・・なぜだろうな?
柱たちはみな、人の話を聞かない」
「当然だ。鬼は殺す。
それ以外はない」
「槇寿郎、お前は強い。
だが、この闘争に集中し切れていない・・・
問うが、何を焦っている?」
「!!!」
力強い剣線が煌めき、斬られた手足が瞬時に再生する。
「愚問だったな、良いだろう!
ならば、お前を倒して聞けば良いだけのこと!」
腰を落とし、右掌を前に、左拳を引く素流の構えを取る。
『術式展開』
足元へ、雪の結晶の紋様が浮かび上がって消える。
『破壊殺・羅針』
鬼気が高まり、瞳が金色に輝く。
『破壊殺・砕式ーーー』
右手を振りかぶり、思い切り大地を砕く。
『万葉閃柳』
大地が砕け、円環紋様のひび割れが走る。
「チッ!」
咄嗟に飛び上がって避けた相手の動きを、金色の瞳が追いかける。
『破壊殺・脚式ーーー』
大地から気を吸い上げるように、右脚に気を込める。
『流閃群光』
一、二、三、四、五!!!!!
上方向に向け、瞬時に五度。
蹴り上げられた脚先から気が爆発する。
「炎の呼吸、参ノ型ーーー」
身動きの取れない空中。
間断なく襲い来る爆発的な闘気の圧に対し、剣士は次の技を放つ。
『気炎万象』
振り下ろされる太刀筋は弧を描き、炎の軌跡が閃光を撃ち落とす。
「これが上弦の強さか!!」
受け身では勝てないと見たか。
大地に着地するや否や、そこから剣士は攻勢に出た。
燃え上がる炎のような羽織を風にはためかせ、一直線に突き進む。
「壱の型、不知火!」
一閃。
袈裟斬りに斬り込む。
「良いぞ!槇寿郎!
もっとだ!
全力を出せ!!」
ドン!!!
技と技が真正面からぶつかり合う。
空気が、震えた。
この親父、昔はカッコ良かったんですよね・・・
というわけで、
『ダメ親父を今一度、洗濯いたし申し候』