Side: 猗窩座
大地に足を付け、剣を大きく振りかぶる。
「炎の呼吸、伍の型ーーー」
『炎虎!!!』
その太刀筋が生み出すは烈火の猛虎。
燃え盛る虎が、敵を切り刻まんと牙を剥く。
「素晴らしい闘気だ!槇寿郎!」
素流の構えから、無数の突きを繰り出す。
『破壊殺・乱式!!!』
その全ての拳に闘気を乗せて爆発させる。
圧縮された拳圧が、無数の衝撃波を生み出す。
ドドドドドン!!!!!
ぶつかり合った衝撃が、周囲の木々を大きく揺らす。
舞い上がった土煙が晴れていく。
「ハァ、ハァ・・・」
全身から血を流しながらも、一つとして致命傷を負っていない炎柱の姿がそこに立っていた。
「・・・槇寿郎、お前は強い。
今まで出会った柱の中でも別格の強さ。
しかも、本調子ではない」
「ハァ、ハァ、ハァ・・・ふぅ」
「槇寿郎、何を焦っている?
俺たちは、強い者には敬意を払う。
それが自然の摂理だからだ。
見ろ。お前の力強い斬撃も既に完治した。
怪我も病気も、鬼ならば瞬く間に治せる」
「!?」
「鬼になろう、槇寿郎。
お前も人間の限界を感じた事はあるだろう。
鬼になればもっと強くなれる。限界を超えられる。
報復を恐れるなら、お前の家族は俺が守ってやる。
だからーーー」
「くっ・・・否!断じて否!俺は炎柱!
炎柱の煉獄槇寿郎!!
鬼になるくらいなら、俺たちは共に死を選ぶ!」
「・・・そうか、残念だ。
何がお前を悩ませているのかは分からないが、
俺は全力のお前と戦いたかった・・・」
「要らぬ世話だ!
鬼に心配される筋合いなどない!」
「そうか・・・
ならば速やかに制圧し、
慶吾の行方を聞き出すとしよう!」
心静かに、構えを取る。
より深く深く、根を張るように大地を踏みしめ、腰を落とす。
目を閉じ、鬼気を集中させていく。
「ォォォォォオオオオオオオ!!!!」
まるで冬景色のように、雪の結晶が周囲に舞い降りる。
綺麗な景色に見えたのも束の間。
恐ろしい風切り音が空から鳴り響く。
『術式展開ーーー』
ドォン!!!
ダウンバースト。
猗窩座を中心に極度の冷気が空から降り注ぎ、周囲を凍てつかせていく。
草木も枝葉も、大地さえ、雪の結晶に包まれていった。
炎柱は目の前の事象を呆然と眺め、背筋が凍るのを感じていた。
燃え盛るような特徴的な髪が、毛先から凍り付いてゆく。
「ああ、そうか・・・。
許せ、杏寿郎、千寿郎。
大した才能もない己は、ここまでのようだ」
瞳を閉じる。
大切な人の顔が浮かんでは消えていく。
心の奥に小さく残ったもの。
それは、ちっぽけな男の矜持に過ぎない。
この身は炎柱。
心を燃やしてこそ、炎。
『お館様、御免!』
剣を肩に担ぐようにして大きく身体を捻り、奥義の構えを取る。
「すぅ〜〜〜〜〜」
ゴオッ!!!
周囲に陽炎が揺らめく。
赤熱した炎が全身から立ち昇る。
「炎の呼吸、奥義!!!」
『瑠火、先に逝く』
「玖の型 煉獄!!!」
大地を蹴り、目にも止まらぬ速さで突き進む!!!
「終わりだ、槇寿郎!!」
両の拳に闘気を圧縮させ、散弾銃のように爆発させて撃ち出す。
『終式・青銀乱残光』
無数の光がパッと花開いたかのように流れる。
それは、超高速で繰り出される、百発もの連撃だった。
瞬間、懐かしい声が響いた。
「師匠〜〜〜!!!
ストップ!ストップ!!ストップ!!!」
戦闘終了。