未来の花   作:ZANGE

27 / 97
第27話
Side: 槇寿郎


炎柱の葛藤

い草の香る和室に、綺麗な声色が響き渡る。

 

「槇寿郎。あなたが無事で本当に良かった」

 

その言葉を耳にするだけで、心地良さに心を揺さぶられる己がいる。

 

綺麗な顔立ちに、14とは思えぬ佇まい。

着物に羽織姿の若い男が目の前に座している。

 

稀代の鬼殺隊当主、産屋敷耀哉。

まるで未来を見通すかのような人並外れた直感と決断力で、資産を大きく伸ばし、鬼殺隊を非公式ながら政府にも認めさせた傑物。

その頭脳は全ての隊士の顔と名前を記憶しており、声の持つカリスマ性も相まり、クセの強い隊士達や柱達の心の支えとなっている。

 

「百年以上、情報すら掴めていない上弦の鬼。

 その参と交戦したと聞いて、ずっと心配していた。

 さあ、私にも元気な顔を見せてくれないか?」

 

尊敬すべき主人の言に、じっと下げていた面を上げる。

 

「じゃあ、聞かせてくれるかな。

 ここ数日で、あなたの身に何があったのかを」

 

「はい、実は・・・」

 

一度は失ったはずの両足と右手。

下弦の鬼とは比べ物にならない強さを持つ、真の上位者。

圧倒的な強さに加え、驚嘆すべき再生力を持つ上弦の参。

 

義手義足ではない、本物の自分の手足の感覚。

それを施した珠世という鬼と、そこで見た信じられない出来事について、槇寿郎は詳らかに話した。

 

信じられないけれども、事実として起こったこと。

それに伴って生じた心の変化。

 

悩みに悩んで、それでも答えの出ない問いを、ずっと心に問いかけながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の見たことは、以上になります」

 

全てを語り終えると、槇寿郎は剣士の命とも言うべき刀を目の前に置き、再び頭を下げた。

 

「私の処分は如何様にも。

 ただし、家族には寛大な処置を賜りますよう、伏してお願い申し上げます」

 

目の前に置かれた刀を、産屋敷耀哉は大事そうに撫でた。

 

「ありがとう、話を聞かせてくれて。

 槇寿郎の話を、私は全て信じるよ」

 

「しかし、お館様ーーー」

 

産屋敷耀哉は口に人差し指を当てて、槇寿郎の言い分を遮ると、ゆっくりと話し始めた。

 

「今から話すことは、時が来るまでは、私と煉獄家だけの秘密にして欲しい。

 実は、珠世さんの存在は産屋敷家にも伝わっているんだ。

 始まりの呼吸の剣士がいた時代、彼女はどうやってか無惨の呪いを解いたらしい。

 そして今も、鬼舞辻無惨に復讐するために、この国のどこかに潜んでいると」

 

「そんな、まさか・・・

 しかし、そう考えれば腑に落ちる点が・・・」

 

「私は槇寿郎の話を聞いて確信したよ。

 珠世さんは鬼だけど、私たちの敵じゃない。

 無惨討伐に際しては、寧ろ協力し合える余地がある」

 

「しかし、彼女もまた鬼です」

 

「そう、その通り。だから、槇寿郎。

 時が来るまでは内緒にしておいて欲しい。

 直接見た君はともかく、他の柱は納得しないだろうからね」

 

「はい。ことは隊の士気に関わります。

 それに、彼女は例外中の例外でしょう。

 彼女のような存在が他にもいるとはーーー」

 

「そう、まさにそこなんだよ、私が聞きたいのは。

 次は私から質問をしてもいいかな?」

 

「はッ!何なりと」

 

「上弦の参、猗窩座。

 彼は、私たちの敵なんだろうか?

 それとも、味方になり得るのか?

 直接交戦した君の率直な意見が聞きたい」

 

「お館様、それはーーー」

 

それは悩みの中心の、正に核心だった。

意を決し、お館様に話を切り出そうとした瞬間ーーー

 

 

 

トントントンーーー

 

 

 

襖が叩かれる音がして、あまね様の声が聞こえてきた。

 

「お話中、失礼致します。

 煉獄瑠火様がご到着されました」




煉獄瑠火さん。
公式情報が少な過ぎて、妄想の産物になりそう。
割り切って、進めるしか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。