未来の花   作:ZANGE

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第33話
Side: あまね


鬼殺の刀

「あまね。

 僕の部屋に飾ってある刀を持って来てくれないか?」

 

「分かりました」

 

 

 

鬼殺隊当主、産屋敷耀哉。

私の夫は生まれつき身体が弱い一族で、自室に飾られているこの二振りの刀も、一度として満足に振るう事は叶わなかった。

 

扱いが下手だとか、そういう話ではない。

持ち上げて、振り下ろす。

この単純な動作さえ病弱な身体に大きな負担となり、立てないほどに憔悴してしまう。

 

鬼殺隊の魂、日輪刀。

それを生み出せるのは、刀鍛冶の里の人間のみ。

 

その刀鍛冶の長、鉄地河原家でも有名だった人が、かつて鬼殺隊当主のために、特別に打ってくれた刀。

そして今代の長、鉄地河原鉄珍さんが、身体の弱い夫のために打ってくれた脇差。

 

私が持っていても仕方ないと、常々言っていた二振りの刀。

屈強な柱の人たちが扱うには、少し短く、軽いそれ。

 

大切に降ろし、丁寧に布で包む。

私には何も感じられないけれど、持つ者が持てば、この刀はその人の資質に合わせて色を変える。

 

久し振りに訪れてくれた客人、それも柱の方を待たせてはならないと、私は日輪刀を両手で抱えると、その場を後にした。

 

 

 

 

 

「さて、槇寿郎、瑠火。

 話しづらいことも全部話してくれてありがとう。

 それで、二人はこれからどうするつもりか聞かせてくれるかな?

 私としては、君たちの意見を尊重しようと思っている」

 

「それは・・・」

 

「それは私からお話しさせて頂きたく存じます」

 

「うん。

 良いのかい?槇寿郎?」

 

「お館様。私からもお願い致します。

 もし私が妻の立場なら、同じ事を言っていたでしょう」

 

「そうか。分かったよ、槇寿郎。

 瑠火、話してくれるかい?」

 

「はい、お館様。

 私は鬼に助けられ、一命を取り留めました。

 当然、この事実を快く思わない者もいるでしょう。

 人の心を持つ鬼達に救われて得たこの力。この命。

 これからは弱き人を守るため、鬼殺隊士として全うしたく存じます」

 

「・・・槇寿郎、柱として君の意見が聞きたい。

 瑠火は隊士として、どのくらい強くなると思う?」

 

「はい。

 今すぐ最終選別を受けたとして、問題なく突破できる実力はあります。

 その後、どこまで成長するかは正直なところ、私にも分かりません」

 

「すると、既に呼吸や型を幾つか使えるのかい?」

 

「はい」

 

「それは凄い。

 日頃から君の姿を見ていたとは言え、素質がなければ成し得ない事だ」

 

「はい。私も驚いております」

 

「瑠火。君の行く道は、険難な道だ。

 意思を貫き通すための、その力。

 私にも見せてくれないか?」

 

「はい、お館様。

 私は日輪刀を持たぬ身ですが、それでも宜しければーーー」

 

「実は、君がこの部屋を訪れた時から、必要になる気がしていたんだ。

 あまね。あの刀をここに」

 

「はい」

 

襖を開け、座礼。

二振りの刀を持ち、夫の元へと届ける。

 

珍しい事に、届けられた刀の封を、夫は手ずから解いていった。

 

「瑠火。こちらにおいで」

 

「はい!」

 

産屋敷家の持つ、二振りの刀。

『鬼殺』と銘打たれた、赫く力強い一振り。

『悪鬼滅殺』と銘打たれた、短く軽い脇差。

 

「これは、私が持っていても使い道のないものだからね。

 良かったらこれを使って見せて欲しい」

 

「恐れ入ります。

 それでは、拝借致します」

 

差し出された二刀を瑠火さんが恭しく受け取ると、夫は嬉しそうに微笑んだ。

 

「槇寿郎、瑠火。今はまだ日も高い。

 刀は預けておくから、また日没頃に見せて貰えるかな?」

 

「「はい」」

 

 

 

 

 

二人が退出したのを見届けると、私は夫を抱き寄せ、膝枕の体勢になって貰った。

 

「あなた、お疲れ様でした」

 

「ありがとう、あまね。

 少し、疲れたみたいだ・・・

 もう少しだけ、このままで・・・」




煉獄瑠火の強さは、夜に限って言えば、経験値の少ない現時点でも戊に匹敵します。
鬼は夜にしか出ないので、隊士として生きるには支障ありません。
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