Side: あまね
刀同士が擦れ合う音が、辺りに響き渡る。
「・・・綺麗」
それは、剣の舞だった。
些かも手加減など感じさせない速度で斬撃を繰り出す槇寿郎様と、
柳に風と、いなし、躱し、受け流していく瑠火さん。
まるで未来が見えているかのように、軽い足運びでサラリと動いては、左右の刀で須く攻撃を受け流していく。
まだ刀に慣れていないのか、少しだけぎこちなさはあるものの。
緩急を付けて力強く、しなやかに、軽やかに、二刀を振るうその姿は、舞姫そのもの。
「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーー!!」
瑠火さんの口元から、先ほどよりもずっと力強い呼気が漏れる。
よく見ると、首元に玉のような汗が浮かんでいた。
病気になる前に、瑠火さんの舞を見せて貰った事がある。
ひらひらと蝶のように華麗に舞う姿が印象的だった。
あの時の舞が思い出されるような、華麗な舞踊。
私にはその凄さは分からないものの、何か物凄いことが起こっているに違いない。
そしてそれを信じているのでしょう。
槇寿郎様は攻撃の手を緩めないどころか、その剣戟は激しさを増していく。
必死な様子で、決して諦めず、瑠火さんも食らい付いていく。
凄まじい集中力。
何一つ見逃さないというような瞳。
その執念に痺れを切らしたように、槇寿郎様が距離を取った。
キンーー
納刀し、腰を深く落とした抜刀の構え。
口元から赤々とした炎の呼気が漏れる。
「炎の呼吸、壱の型ーーー」
「不知火!」
ダンッ!
瑠火さんもまた腰を深く落とし、真っ向から正面へと踏み込む。
「焔の呼吸、壱の型ーーー」
「焔心!」
キィィィン!!!
一瞬で二人の立ち位置が入れ替わる。
二人は抜刀したまま、互いに背を向けて残心の構え。
そうしてしばらくすると、槇寿郎様が夫の方を向き、立礼した。
「ふぅ」と息を吐き、少し疲れた様子の瑠火さんも、こちらを向いて立礼する。
「槇寿郎、瑠火。
二人とも、心が震えるような、見事な演武だったよ。
もし鬼殺隊が本懐を遂げたその時は、呼吸の技術は演舞と共に未来へ伝えていくのが良いだろうと、私の遺書に書いておく事にするよ」
その言葉に、私は虚を突かれた。
夫は普段、決してそのような冗談を言う方ではない。
それほどまでに二人の姿が、夫に大きな影響を与えたのでしょう。
「さて、それじゃあ、これからの話をしよう」
穏やかな音の中に、芯のある言葉が流れ込んでいく。
「瑠火、君の実力なら、今すぐにでも最終選別を突破できるだろう。
しかし、私たちは鬼殺隊という組織で動いている。
太陽という弱点を抱えたまま、一人で任務へ行くのは危険だ。
そして、その秘密を共有できる隊士も、他にいない。
そこで、槇寿郎」
「はッ!」
「瑠火が正式に隊士となった暁には、可能な限り君たち二人で任務に臨んで貰うことにするよ」
「はい!
しかし、お館様。それではーーー」
「瑠火、槇寿郎。
二人には、普段の任務の傍ら、私から極秘の任務をお願いしたい。
珠世さんのような、鬼の中から真に信頼できる者を味方に引き入れて欲しいんだ。
叶うことなら、狛治君も。
ただ、いきなりそれは困難だろうから、まずは彼の関係者を引き入れたい。
これは、彼らと出会った事のある君たちにしか出来ない任務だ。
どうだろう。引き受けてくれるかな?」
そう言って微笑む夫は、とても嬉しそうだった。
第二章 鬼の弟子-終-
Q:瑠火、強くなり過ぎでは?
A:不治の病を結核だと仮定しています。
肺をまるごと鬼の細胞で作り変えました。
その結果、修行なしでも全集中・常中が出来ます。
ただし、呼吸を使わない時は普通の人。
血鬼術も使えません。