未来の花   作:ZANGE

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第36話
Side: 獪岳


幕間 弟子達の挽歌
弟子達の挽歌 壱


「チッ!」「クソッ!」「カスが!」

 

偏頭痛がする度に、荒れた言葉が吐き出される。

 

黒い振袖が汚れるのも気にせず、目の前の木を蹴り付ける。

人生で未だ嘗てないほど文句を垂れながらも、修行には真剣に取り組んだ。

 

何故なら、俺は弱い。

弱いままでは、奪われる。

弱いままでは、馬鹿にされる。

弱いままでは、いつか死ぬ。

 

それが俺には、耐えられない。

 

意気込みだけでは、強くはなれない。

俺が強くなれる方法を見出さなければ・・・

 

 

 

師匠の猗窩座さん。最強。

いまだに強さの底が見えない。一番の目標。

仮に鬼にして貰っても、勝てる気が全くしない。

修行は死ぬほど厳しいが、今の俺には丁度いい。

女には優しい一面がある。

 

兄弟子の慶吾さん。変態。

師匠に一矢報いる事の出来る唯一の人間。

あり得ない発想の持ち主。

勝負において、あれほど頭が回るものかと驚愕する。

ただし、この人の技は全く参考にならない。

 

珠世さん。凄い医者のお姉さん。

失った右腕を治してくれた。

偏頭痛の薬もくれた。

人間を食べないし襲わない鬼。本当に鬼?

強いのか弱いのか分からない。

でも、絶対にこの人と戦おうとは思わない。

 

愈史郎。強い。

ムカつく野郎。珠世さんの金魚の糞。

珠世さん同様に人間を食べない鬼。鬼って何だ?

口でも力でも敵わない。

珠世さんが絡むととても面倒くさい。

 

槇寿郎さん。化け物。

鬼殺隊の炎柱。柱とは最強の称号らしい。

師匠と一対一でまともに戦える。

人間の中では最強。ただし慶吾は除く。

俺が目指す強さに近い気がする。

 

瑠火さん。攻撃が当たらない。

槇寿郎さんの奥さん。美人。

病気が治ったと思ったら、急に強くなった。

息を吸うと強くなれるらしい。呼吸法?知りたい。

師匠に一撃入れるのが目標らしいと、沙代が教えてくれた。

信じられない。本気だろうか?

 

沙代。

師匠が甘い。

悲鳴嶼さんと生き延びてくれて良かった。

嫌われているのは仕方ない。

 

 

 

その沙代と今、墓参りに来ている。

師匠命令。強制だった。

 

猗窩座さん曰く

「向き合え」

 

愈史郎曰く

「邪魔だ。とっとと行け」

 

槇寿郎さんからは筆を渡された。

「後悔のないように」

 

瑠火さんからは墨を渡された。

「ちゃんと行って来なさい」

 

特に瑠火さんの有無を言わさぬ笑顔には、背筋が寒くなった。

 

でも、考えてみれば良いタイミングかもしれない。

そうでもなければ、自分からは動かなかっただろうから。

 

「ここ」

 

沙代の指差す先には、

名もない七本の板が野ざらしになっていた。

 

「ここか・・・」

 

やり方なんて知らないけれど、一応拝んでおく。

 

『恨みたいなら恨め、許せなんて言わない』

 

そして、名もない木の板を抜いていく。

 

筆で名前を書いた常磐木を一本一本立てていった。

 

向きを変え、真っ直ぐ立つように調整する。

 

多少はお墓っぽくなっただろうか。

 

その俺の様子を、沙代はずっと見ていた。

 

『そんな目で見られてもな・・・』

 

こうしてお墓の前に立っていても、

故人を悼む気持ちは、特に湧いてこない。

 

『お前らも、俺も、何も変わらない。

 死ぬのは、弱いからだ。

 生きるには、強くならなければならない。

 ああ、強いと言えば』

 

「悲鳴嶼さんは、強かったよ・・・」

 

「獪岳」

 

「沙代?」

 

いつの間にか俺の側に立っていた沙代が、俺の手に触れた。

 

瞬間、死んだアイツらが目の前に立っていたような気がした。

 

「ーーーーー!」

 

思わず目を擦ってもう一度見る。

 

しかし、そこにはもう、誰もいなかった。

 

気のせいかと、沙代の方を見る。

 

だが、その瞳はどこか遠くを見つめていて、

目の前の景色を映してはいなかった。

 

不思議に思って、もう一度お墓の方を振り返る。

と、急に突風が吹き抜けた。

 

「ぐっ!」

 

細めた視界の先に、またアイツらの姿が見えた。

 

「ーーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かいがく、いこう」

 

沙代が俺の手を引いて歩き出す。

俺は頷いて、沙代と一緒に歩き始めた。

 

一度だけ、振り返ってお墓を見る。

 

「お前らは、そこで待っているんだな・・・」




登場人物の紹介回。

今回の幕間の時系列としては、
槇寿郎と瑠火が鬼殺隊に戻る直前となります。
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