未来の花   作:ZANGE

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第39話
Side: 慶吾


弟子達の挽歌 肆

「ここは・・・?」

 

ぼんやりする頭で辺りを見渡していると、突然大きな声が響いた。

 

「うむ!ここは煉獄家だ!」

 

驚いて声の方を見る。

と、燃えるような髪型をした子供が、姿勢の良い正座姿で座っていた。

 

「・・・どなたですか?」

 

それにしても、どこかで見たような髪型だな。

とぼんやりと考えていると、再び溌剌とした声が返って来た。

 

「申し遅れた!

 俺は煉獄杏寿郎と言う!」

 

「ああ、これはどうも。

 オレは素木慶吾です」

 

子供ながら、とても真っ直ぐに挨拶をされたので、思わず真っ直ぐに返してしまった。

 

「うむ!慶吾殿、すぐに父上を呼んでくる!

 少し待っていて欲しい」

 

「あ、ああ・・・」

 

畳の上に敷かれた布団の上に、自分は横になっていた。

全身がズキズキと痛む。

それは、師匠との地獄の鍛錬を思い出すような、懐かしい痛みだった。

 

『ここはどこだろう?』

回らない頭でぼんやり考えていると、その男は襖を開けてやって来た。

 

「ようやく目を覚ましたか」

 

さっきの子供が、修練の果てに強くなったとしたら、こんな大人になるのだろうか。

 

存在感がまるで違う。

強者の放つ覇気に当てられ、オレの頭脳はようやく少しずつ思い出していった。

 

「・・・槇寿郎さん?」

 

「そうだ。記憶はあるようだな。

 あの後、お前は三日三晩も眠っていたのだ。

 身体に不調はないか?」

 

「ああ、手当てをして下さったのですね。

 ありがとうございます。

 不調と言っても・・・特には。

 全身の痛みはありますが、慣れてますので」

 

痛みを堪えながらも、身体を起こして槇寿郎さんの方に向き直る。

 

「そうか。頑丈な身体をしているな」

 

その傍らに腰を落ち着けると、槇寿郎さんは単刀直入に切り出してきた。

 

「約束通り、聞かせて貰うぞ。

 お前を鍛えた鬼の事を」

 

「そうでしたね。

 しかし・・・お腹が空きました。

 食事をしながら話す、というのはいかがでしょう」

 

「分かった。そうしよう。

 半刻後には昼餉の時間だ。

 お前も一緒に食べるといい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして訪れた食事の場。

家族団欒の席に飛び入り参加の体で招かれたオレは、食事を取りながら、鬼に家族を殺されたところから起きた全てを話した。

 

「・・・・・・」

 

しばらく無言の時が流れる。

その静寂を破ったのは、幼い赤子を抱いた、顔色の白い奥方だった。

 

「あなた、今よりもっと強くなりたいのなら、

 鬼殺隊に入る気はない?」

 

「瑠火、なにを!?」

 

「もしそれで強くなれるのでしたら」

 

「慶吾!お前もか!?」

 

「それは良い!

 そうなれば、慶吾殿は先輩という事になるな!」

 

「あーうーあー」

 

楽しい家族だ。

皆が揃ってて、何より明るい。

そして、とても懐かしい。

 

目頭が緩むのを瞬きで隠しながら、オレは言葉を続けた。

 

「師匠からは、別れ際にこう言われたんです。

 『お前は自由だ。自由に生きるために、強くなれ』って。

 だから、鬼殺隊に入る事が、自由に強くなるための道なら、オレは進んでその道を行きましょう。

 オレみたいな犠牲者を出さないために、人喰い鬼を殺す事にも、躊躇いはありません。

 ただ、力及ばずに死ぬのは構いませんが、もし明らかに死ねと命令された時は、一も二もなく抜けさせて頂きます」

 

この家族は、良い人達だ。

しかも、強い。

こんな人達がいる組織なら、そこで強さを磨くことも悪くない。

そう思えた。

 

「良かった・・・

 私はもう、医者から長くないと言われています。

 あなたのような強い方が加われば、この子達も安心です」

 

「・・・え?」

 

「・・・母上?」

 

「瑠火・・・」




慶吾の過去編は、ここまでです。
どうせ助かるのですから、湿っぽい話はなしで。

ここから紆余曲折を経て、槇寿郎は上弦討伐を決意します。
それにいち早く気付いた瑠火が、慶吾に助けを求める。
そんな流れになります。
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