Side: 慶吾
「ここは・・・?」
ぼんやりする頭で辺りを見渡していると、突然大きな声が響いた。
「うむ!ここは煉獄家だ!」
驚いて声の方を見る。
と、燃えるような髪型をした子供が、姿勢の良い正座姿で座っていた。
「・・・どなたですか?」
それにしても、どこかで見たような髪型だな。
とぼんやりと考えていると、再び溌剌とした声が返って来た。
「申し遅れた!
俺は煉獄杏寿郎と言う!」
「ああ、これはどうも。
オレは素木慶吾です」
子供ながら、とても真っ直ぐに挨拶をされたので、思わず真っ直ぐに返してしまった。
「うむ!慶吾殿、すぐに父上を呼んでくる!
少し待っていて欲しい」
「あ、ああ・・・」
畳の上に敷かれた布団の上に、自分は横になっていた。
全身がズキズキと痛む。
それは、師匠との地獄の鍛錬を思い出すような、懐かしい痛みだった。
『ここはどこだろう?』
回らない頭でぼんやり考えていると、その男は襖を開けてやって来た。
「ようやく目を覚ましたか」
さっきの子供が、修練の果てに強くなったとしたら、こんな大人になるのだろうか。
存在感がまるで違う。
強者の放つ覇気に当てられ、オレの頭脳はようやく少しずつ思い出していった。
「・・・槇寿郎さん?」
「そうだ。記憶はあるようだな。
あの後、お前は三日三晩も眠っていたのだ。
身体に不調はないか?」
「ああ、手当てをして下さったのですね。
ありがとうございます。
不調と言っても・・・特には。
全身の痛みはありますが、慣れてますので」
痛みを堪えながらも、身体を起こして槇寿郎さんの方に向き直る。
「そうか。頑丈な身体をしているな」
その傍らに腰を落ち着けると、槇寿郎さんは単刀直入に切り出してきた。
「約束通り、聞かせて貰うぞ。
お前を鍛えた鬼の事を」
「そうでしたね。
しかし・・・お腹が空きました。
食事をしながら話す、というのはいかがでしょう」
「分かった。そうしよう。
半刻後には昼餉の時間だ。
お前も一緒に食べるといい」
そうして訪れた食事の場。
家族団欒の席に飛び入り参加の体で招かれたオレは、食事を取りながら、鬼に家族を殺されたところから起きた全てを話した。
「・・・・・・」
しばらく無言の時が流れる。
その静寂を破ったのは、幼い赤子を抱いた、顔色の白い奥方だった。
「あなた、今よりもっと強くなりたいのなら、
鬼殺隊に入る気はない?」
「瑠火、なにを!?」
「もしそれで強くなれるのでしたら」
「慶吾!お前もか!?」
「それは良い!
そうなれば、慶吾殿は先輩という事になるな!」
「あーうーあー」
楽しい家族だ。
皆が揃ってて、何より明るい。
そして、とても懐かしい。
目頭が緩むのを瞬きで隠しながら、オレは言葉を続けた。
「師匠からは、別れ際にこう言われたんです。
『お前は自由だ。自由に生きるために、強くなれ』って。
だから、鬼殺隊に入る事が、自由に強くなるための道なら、オレは進んでその道を行きましょう。
オレみたいな犠牲者を出さないために、人喰い鬼を殺す事にも、躊躇いはありません。
ただ、力及ばずに死ぬのは構いませんが、もし明らかに死ねと命令された時は、一も二もなく抜けさせて頂きます」
この家族は、良い人達だ。
しかも、強い。
こんな人達がいる組織なら、そこで強さを磨くことも悪くない。
そう思えた。
「良かった・・・
私はもう、医者から長くないと言われています。
あなたのような強い方が加われば、この子達も安心です」
「・・・え?」
「・・・母上?」
「瑠火・・・」
慶吾の過去編は、ここまでです。
どうせ助かるのですから、湿っぽい話はなしで。
ここから紆余曲折を経て、槇寿郎は上弦討伐を決意します。
それにいち早く気付いた瑠火が、慶吾に助けを求める。
そんな流れになります。