未来の花   作:ZANGE

42 / 97
第42話
Side: 猗窩座


第三章 鬼の血
素流の血脈


炎柱、煉獄槇寿郎。

その妻にして俺に一撃を入れた強者、煉獄瑠火。

 

長かった治療が終わり、二人の姿を見送った後のこと。

 

「槇寿郎。それに瑠火。

 あの二人はまだまだ強くなる。

 それにしても、随分と長居したな・・・」

 

見た目は人間そのもの。

紺色の着物を黒帯で結んだだけの、着流し姿で俺は呟いた。

 

「そうですね。

 愈史郎がいい加減に出て行けって言ってましたよ。

 師匠、次はどこへ行きますか?」

 

相槌を打つのは、初弟子にして、無尽蔵の発想を持つ男。

灰色の着物の上から藍色の羽織を纏って立つ、慶吾。

 

「猗窩座さん、俺も着いて行きます」

 

まだまだ未熟極まりない、押しかけ弟子の男。

黒い着物を青帯で結んだ着流し姿の、獪岳。

 

「はくじー、どこかいくの?

 ひめじまさんに会える?」

 

怖いもの知らずな、小さな子供。

無邪気に笑いながら、俺の体によじ登ろうとしているのは、沙代。

 

「あーもう。お前ら、うるさい。

 基礎は教えただろう。

 俺はしばらく一人で修行をする。

 お前らも好きなようにやれ」

 

「そんな事言わないでくださいよ。

 自由にって言うなら、師匠に着いて行きますよ」

 

「俺も」

 

「わたしもー」

 

どうしてこうなったのか。

生来、他人と深く関わることなんて、師と恋雪を除けば皆無と言える。

何がこいつらをそうさせるのか、全く理解できない。

 

盛大なため息が漏れる。

 

「仕方ない。ではこうしよう。

 お前ら一人一人に課題を課す。

 課題を乗り越えた時、上の領域に立っている筈だ。

 そうすれば、次の稽古を付けてやる」

 

そう言うと、あからさまに嫌そうな表情を見せる慶吾。

残りの二人は、頭に疑問符を浮かべていた。

 

「・・・分かりました、師匠」

 

「課題、ですか・・・?」

 

「勉強、キライ」

 

『勉強』という言葉を聞いて、口端がにやりと持ち上がる。

俺がそんな迂遠な道を選ぶわけがないだろう。

 

「安心しろ。勉強などと生温いことは言わん。

 素流の修行は実践あるのみ。

 ではまず慶吾から言い渡す。

 『一対一の戦闘で槇寿郎に勝て』

 お前の得意な罠に引き込んで、やつを捻じ伏せろ」

 

「師匠、質問があります!」

 

「言え」

 

「将棋や囲碁ーーー」

 

「却下だ。

 戦闘以外認めないから、そのつもりでやれ。

 しかし戦闘であれば、あらゆる手段を使う事を許す。

 お前の得意分野だろう?」

 

「はい。

 ソウデスネー・・・」

 

口から魂が抜け出ている。

普通なら年単位での研鑽が必要になるだろうからな。

それでも慶吾ならば、万が一がある。

この男は、通常の物差しでは測れない。

おそらくは、槇寿郎にとっても・・・

 

「次、獪岳」

 

「は?え?はい?」

 

「なんだ獪岳。

 言いたい事があるなら、とっとと言え」

 

「その、本気ですか?

 今言ったこと」

 

「無論だ。

 やりたくなければ、やらなくていい。

 そうなれば、もはや弟子でも何でもないがな。

 せっかく拾った命だ。好きに生きろ」

 

そう伝えると、獪岳は背筋を伸ばして直立の姿勢を取った。

分かりやすいことだ。

ある意味、大物だな、こいつは。

 

「は、いえ!

 分かりました!」

 

「ならばいい。お前は、

 『鬼殺隊に入り、甲(きのえ)階級まで昇り詰めろ』

 お前には格闘戦の才能がない。

 だが、型に沿った動きは悪くない。

 一度素流から離れ、実戦の中で自分の型を学び直せ」

 

そう伝えると、目を点にして固まる獪岳。

 

「・・・獪岳。

 やるか、やらないのか?」

 

「え、あ、はい!

 やります!」

 

「吐いた言葉は違えるなよ。

 お前はまだまだ未熟だが、化ける可能性がある。

 俺の弟子を名乗るなら、これくらいはこなして見せろ。

 俺と打ち合えるまで、闘気を練り上げて来い」

 

そこまで伝えて漸く、獪岳はやる気のある顔を見せた。

 

「はい!」

 

「よし。

 では最後に、沙代」

 

「はーい!」

 

「良い返事だ。

 お前には一番大事な役目がある。

 『もしこの二人が腑抜けていたら、俺に知らせろ』」

 

「わかった!」

 

「連絡にはこの花火を使え。

 慶吾、聞いていたな?

 この花火はお前に預けるが、沙代が使うと言ったら打ち上げろ」

 

「まだその花火あったんですね。

 いえ、分かりました」

 

「よし。ではーーー」

 

「はくじー?」

 

「なんだ、沙代」

 

「この花火をつかえば、はくじに会えるのか?」

 

「そうだ。

 ・・・慶吾、花火の数は限られている。

 無闇矢鱈と使わないようにな。頼んだぞ」

 

「それなんですが、師匠」

 

「なんだ」

 

「オレ、花火も作れるようになりました。

 まだまだ失敗作も多いですが、十個に一個は作れます」

 

花火師、という言葉が脳裏を過ぎる。

一体この男は、どこへ行こうというのだろうか。

一度その頭の中を見てみたいものだ。

 

「・・・お前は何でもありだな。

 それなら火薬の管理は任せるが、沙代に怪我をさせるなよ」

 

「分かりました」

 

「では最後に、俺からの頼みだ。

 青い彼岸花の情報があれば、知らせてくれ。

 詳しいことは分からないが、見た目が青い彼岸花だ。

 この世のどこかに咲いているらしい。

 それ以外のことは、好きにすればいい」

 

『これでいい。

 これで数年は自分の修行に専念できる。

 瑠火と立ち合った時の感覚・・・

 あの眼。まるで未来を視ているかのような、あの動き・・・

 あの技を会得できれば、また一歩、俺は至高の領域に近づけるだろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、珠世に別れを告げ、俺が屋敷を飛び出した直後のことだった。

 

「鳴女」

 

べん!!!




この章は鬼側の話になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。