Side: 猗窩座
「青い彼岸花はどうした?
鬼狩り共はどうした?
産屋敷一族はまだ生きているぞ」
無惨様の出現に、全ての鬼が頭を垂れる。
下弦の鬼共は座礼の姿勢を取り、上弦の鬼は銘銘の姿勢で膝を着いて礼を尽くす。
「私が十二鬼月を作った理由は何だ?
答えよ猗窩座」
膝を着き、視線を下げたまま答える。
「はい。強い鬼を造ること。
無惨様のご期待に応えることが十二鬼月の役目です」
「それなのにお前たちは何故何百年も見つけられぬ。
強い鬼は十二体も必要ないということか?」
ビキビキーーー
あまりの怒りに、青筋を立てる音が無限城に響き渡る。
「ヒイイッ!
御許しくださいませ!」
「返す・・・言葉も・・・ない・・・」
「如何したものか・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「申し訳ありません無惨様。
吉原にも情報は・・・」
「私は、貴様らを甘やかしすぎたようだ。
柱にやられるような弱い鬼も、向上心のない鬼も必要ない。
これからはもっと死に物狂いでやってもらう」
そこから先の無惨様の話は、まさに青天の霹靂だった。
「今より五年後・・・
最強の鬼、序列を決める血戦を行う。
上弦の鬼全員で入れ替わりの血戦を行うと心得よ。
その前座として、下弦も同数の上弦に挑んで貰う。
これはふるいだ。
私が言ったことが理解できないような者は、十二鬼月には必要ない」
それは、未だ嘗てない発言だった。
面を上げぬまま、その場に伏せる皆に動揺が走る。
「黒死牟、些細を」
「ハッ!」
無惨様の信任を受け、黒死牟が立ち上がる。
この場で立ち上がるなど異例の事だが、黒死牟は特別だった。
根底にあるのは、異次元の強さ。
強い者にのみ許される特権。
「お前たち・・・無惨様の言葉を、とく心得よ・・・
私からは・・・内容を伝える・・・
まず前座として・・・下弦の鬼には・・・
同数の上弦の鬼に・・・挑んで貰う・・・
下弦の者は・・・勝てぬまでも・・・
無様な戦いなど・・・見せぬことだ・・・
無惨様のお言葉に反する者は・・・
十二鬼月を・・・剥奪する」
下弦の鬼共から、息を呑む音が聞こえた。
弱い者は死ぬ。
強き者だけが生き残る。
淘汰されるのは自然の摂理に他ならない。
黒死牟は続ける。
「そして上弦は・・・まず陸と伍が戦い・・・
そこで勝った方が・・・肆と戦う・・・
更に勝った方が・・・参と戦い・・・弐と戦い・・・
最後に・・・この私、壱と戦う・・・」
『なるほど。
下の階級の陸から順に入れ替わりの血戦を行うということか。
問題は決着方法だが・・・』
「分かった。
勝敗はどうやって決める?」
「良い質問だ・・・猗窩座。
此度の血戦は・・・無惨様の肝入り・・・
それゆえ・・・私が立会人を務める・・・
本人が・・・負けを認めた時・・・
私が・・・勝敗を判断した時・・・
無論だが・・・無惨様の許可なく・・・
吸収することは・・・決して許さぬ・・・」
「黒死牟殿!
ではあなたの立会人はどなたが務めるので?」
「童磨。それは・・・」
「良い。構わぬ、黒死牟。
最後は私が立ち会おう」
「無惨様がですか!?」
「黒死牟の血戦は過去数百年にも三度しかなかった。
私としても興味がある。
それに、私以外には務まるまい。
判断が必要な戦いになるとは思えぬが・・・」
その時、無惨様の目線が一瞬、こちらを向いたような気がした。
おそらく気のせいだろう。
「もしも黒死牟を倒すような強者が現れた時は、
その者の願いを一つ、何でも叶えてやろう」
おそらく事前の話もなかったのだろう。
黒死牟が珍しく慌てていた。
「無惨様!?」
「何か不安でもあるのか?」
「・・・ございませぬ。
必ずや・・・勝ってみせましょう!」
「それでいい。
上弦の壱と言えど、甘えは許されぬ。
無論、下弦も、在野の者も、五年後までに入れ変わりの血戦を挑み、勝てば参加資格を得られ、負けた者は失う。
あるいは鳴女のように有用な者は、負けても罷免することはない。
せいぜい私の役に立て」
べん
その琵琶の音を最後に、再び唐突に無惨様は姿を消した。
おおよその心持ち。
無惨『黒死牟が乗り気なので、任せておけば大丈夫だろう』
黒死牟『無惨様のお言葉は絶対。五年後を目指し、はげめ』
童磨『あれ?猗窩座殿、なんだか強くなってない?』
半天狗『玉壺はともかく、猗窩座はおそろしい・・・』
玉壺『そんな御無体な・・・でもそこがいい・・・』
妓夫太郎『困った。俺はともかく、堕姫をどうしよう・・・』
堕姫『わーん!助けて、お兄ちゃん!』