未来の花   作:ZANGE

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第45話
Side: 猗窩座


下弦の陸

猗窩座(あかざ)殿!」

 

「・・・・・・」

 

ヒョイ

馴れ馴れしく触ろうとする童磨(どうま)の手を避ける。

 

「猗窩座殿との血戦(けっせん)はいつ以来だろうか!

 五年後が楽しみだ!」

 

「俺は・・・」

 

視線を童磨の、その更に奥、最凶の剣士へと向ける。

 

「必ずお前を殺す」

 

ゾワリーーー!!!

瞬間、濃密な鬼気が周囲を覆うように溢れ出す。

 

「そうか・・・

 励む・・・ことだ・・・

 待っているぞ・・・」

 

息が詰まるような殺気と共に、

フッと、黒死牟(こくしぼう)は姿を消した。

 

「さよなら、黒死牟殿!」

 

「・・・・・・」

 

ふと、手を開くと、

じわりと、汗ばんでいた。

 

『まだまだ遠いな・・・』

 

「あれぇ?

 君たち、もう疲れちゃったのかい?」

 

童磨の声にふと振り返ると、下弦(かげん)の鬼の大半が倒れていた。

どうやら今の殺気に耐えられなかったようだ。

 

しかし僅かながら、耐えている者もいる。

 

着物姿の小柄な女、下弦の(いち)姑獲鳥(うぶめ)

彼女は額に汗を浮かべながらも、どこか嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

西洋のスーツとやらを着た男、下弦の()魘夢(えんむ)

姑獲鳥同様、あの殺気の中でも立ち上がる実力を持ち、周りの鬼が倒れているのを恍惚とした表情で見下ろしていた。

 

見たところ、仮に柱と相対したとしても、一対一なら負けない程度の実力はあるようだ。

とは言え、その程度であれば、五年後まで生き残れるかどうかは分からない。

 

『相手が槇寿郎と瑠火だったとしたら、

 勝ち目は無いだろうな』

 

地に這いつくばっている残りの有象無象(うぞうむぞう)は、そもそも五年後まで生き残れるかどうかも怪しい。

 

特に情けないのが、下弦の(ろく)響凱(きょうがい)

身体中に埋め込まれた小鼓を鳴らすことで、周囲の空間に斬撃を飛ばすという血鬼術を持つ新参者。

 

ヤツの血鬼術(けっきじゅつ)は、この無限城(むげんじょう)を根城に無惨様の信頼も厚い、鳴女(なきめ)の能力と非常に似通っている。

 

そう考えると、恐ろしい可能性を秘めているのかもしれないが・・・

あまりにも弱い。弱過ぎる。

泡を吹いて倒れているあの様では、五年後まで生き残っているかどうかも怪しい。

 

鳴女よりも弱い鬼などが、どうして下弦に選ばれたのか理解できない。

仮にも無惨様が選ばれたのだから、何か可能性を秘めているのかもしれないが・・・

 

「・・・起きろ、響凱」

 

腹を蹴り上げ、無理やり意識を覚醒させる。

 

「グッ!

 痛ッッッ!」

 

「雑魚が、この程度で倒れるな。

 仮にも十二鬼月に選ばれたのなら、少しは無惨様の役に立て」

 

「グッ・・・あ、猗窩座様!?

 あ痛ッッ!」

 

「響凱。

 貴様も十二鬼月の端くれなら、あらゆる手を尽くして強くなれ。

 弱者には何も守れない。何も成せない。

 お前が自分に自信を持てないのは、お前が弱いからだ」

 

そこへ、珍しいものを見たかのように、童磨が話に割って入ってきた。

 

「猗窩座殿?

 一体どういう風の吹き回しかな?」

 

「・・・無惨様は、十二鬼月の強化をお望みだ」

 

「あー!

 なるほどね!」

 

「響凱、貴様は雑魚だ。反吐が出るほど弱い。

 その様子では柱ですらない鬼狩りにも勝てない。

 五年後と言わず、俺が今すぐ殺してやりたいほどだ・・・」

 

俺の言葉に響凱の顔がどんどん暗く俯いていく。

強面で図体も大きい癖に、思いの外繊細なヤツだ。

 

「だが、その能力は悪くない」

 

その言葉に光明を見出したのか、顔を上げてこちらを見つめてくる。

 

「・・・小生(しょうせい)は・・・

 小生は、どうすればもっと強くなれますか!?」

 

「・・・匂いで分かる。

 人間を喰って強くなるには、限界があるのだろう?

 ならば、そこから先は頭と技を鍛えることだ。

 自分の能力を深く理解し、勝つために自らを鍛えることだ」

 

喰えないからと言って、それが弱い理由にはならない。

そう呟いて踵を返す。

 

手がかりは与えた。

あとはその能力を、どう磨き上げるか。

 

『所詮は下弦の陸。

 明日、鬼狩りに敗れたとしても不思議はない』

 

そう思い、鳴女を呼ぼうとしたところ、背後から名前を呼ばれた。

 

「猗窩座様!

 どうか小生にご教示頂けませんでしょうか!?」

 

どうやら、少しは根性があるようだ。

 

思わず口端がニヤリと弧を描く。

 

「・・・・・・・・・言ったな?」

 

振り向いて、一歩を踏み出す。

場にどよめきが走り、様子を見ていた他の下弦も、童磨も、一歩下がって道を開ける。

 

これは悪魔の契約だ。

相手は強くなりたい。

俺は技を試したい。

 

相手は鬼。

手足を消し飛ばそうが、頭を引きちぎろうが、決して死にはしない。

 

今まで人間の弟子では試せなかった事が、コイツ相手なら遠慮なく出来る。

 

座して頭を下げる響凱に、笑顔で声を掛ける。

 

「立て、響凱」

 

「はい!」

 

「俺は、お前が泣こうが喚こうが容赦はしない。

 その代わり、お前は必ず強くなる。

 それでも付いてくるか?」

 

「・・・はい!」

 

弱者は嫌いだ。

弱い奴は正々堂々とやり合わない。

勝てないからと醜い手を使う。

弱い奴は辛抱が足りない。

 

だが、強くなろうとする弱者は、嫌いではない。

 

響凱。

こいつは地獄を見ることになるだろう。

その代わり、その心を忘れない限り、必ず強くしてやる。

 

「鳴女!

 俺たちを一緒に、どこかの山奥へ飛ばしてくれ」

 

べべん




その後・・・

姑獲鳥「おバカさんねえ」

魘夢『あれは死んだかなぁ』

半天狗「怖ろしい怖ろしい・・・」

童磨「猗窩座殿、楽しそうだったなぁ」

妓夫太郎「良いなぁ。俺も鍛えて貰おうかな・・・」

堕姫「お兄ちゃん!?」
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