未来の花   作:ZANGE

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第48話
Side: 猗窩座


雪山の遭遇

ザク、ザク、ザクーーー

 

足を踏み出す度、雪を踏み締める音が辺りに響く。

 

「・・・・・・寒い」

 

「分かりきったことを言うな」

 

綿の詰められた着物に羽織を纏った人間姿の鬼が二人、雪に埋もれながら夜の山道を歩いていた。

 

 

 

 

真夜中から日中にかけて、雪が降り続いた。

日が沈んだ後、ようやく外に出ようとするも戸が開かない。

 

戸ごと、降り積もった雪を蹴り飛ばした先には、一面の雪景色が広がっていた。

江戸の時代を思い出すような、綺麗な銀色だった。

 

「・・・・・・」

 

吐息が白に染まる。

初めて目にする一面の雪景色に、思わず目を奪われていた。

 

「嗚呼、猗窩座様!なんてことを!」

 

無地の着物に、花柄の羽織を纏う大柄な男。

人間の姿をした響凱が、吹き飛んだ戸を見るなり声を荒げていた。

 

変身は鬼狩りに見つからないよう覚えさせたのだが、

人間の記憶が強く残っていたため、習得は思いの外早かった。

 

本人が言うには、想像するのは慣れているらしい。

 

「この雪では鍛錬ができない。

 響凱、下山するぞ」

 

「また急ですね・・・

 少々お待ちください。

 保存食をまとめて用意します」

 

「そうか。任せる」

 

響凱という男は、頭は悪くないがプライドが高く根暗な鬼だった。

そのプライドを木っ端微塵に砕き、磨り潰し、吹き飛ばした後に残ったのは、割と頭の回る有能な男だった。

 

 

 

 

 

 

「・・・?」

 

ふと僅かな闘気を感じた。

 

「どうされました?」

 

進行方向から少し逸れた先を見つめる。

 

「この先に大型の獣がいる」

 

「それは良いですね。

 捕らえて食糧にしましょう。

 方角は?」

 

「こっちだ。行くぞ」

 

「はい」

 

目立たぬようにと、遅々とした歩みを止め、高い木々の枝を足場にしながら、二人は山上を一気に駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・おかしい。

 何だ?この奇妙な気配は・・・?」

 

この先に大型の獣の闘気を感じる。

その近くにあった人間の気配が、急に消えた。

 

拭えぬ違和感に立ち止まり、意識を切り替える。

 

『術式展開・羅針』

 

慶吾との修行で身に付けた、罠を見破るための血鬼術を使う。

 

探知に引っかかる者がいる。

確実に何者かがいるーーー

 

しかし、いる筈の場所から闘気を感じない。

こんなことは初めてだった。

 

『獣に殺された可能性もある。

 しかし、本能が違うと告げている』

 

このまま進むべきか否か。

未知の事態に、本能が警鐘を鳴らしていた。

 

『赤子にすら薄い闘気があった。

 こんなことは初めてだ』

 

「響凱」

 

「何でしょうか?」

 

「この先に、得体の知れない存在がいる。

 もしもの場合は、お前は血鬼術で逃げろ」

 

「・・・まさか、柱ですか?」

 

「違う。柱ならば闘気で分かる。

 その闘気が全く感じられない。

 そこにいるはずのない、異物のような何か・・・」

 

「既に死んでいるのでは?」

 

「・・・いや、違う。

 俺はこの違和感を突き止めに行く」

 

「分かりました。

 何かあればすぐに撤退しましょう」

 

「いざという時は、迷うなよ」

 

「分かっております」

 

人間姿のまま、意識を戦闘状態に切り替える。

 

響凱もまた、同じように意識を切り替えたことを確認すると、俺たちは再び夜山を駆け抜けた。




という訳で、鳴女に飛ばされたのは雲取山でした。
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