Side: 猗窩座
「俺の家族に危害を加える者は、
腹を空かせているのは気の毒だが、
それ以上こちらに来れば、命を奪うこととする」
グオオォォーーーーー
その男に敵意を向けた熊の
『馬鹿な・・・
動きが見えなかった・・・』
仕留めたのは額に
幾度となく周りを見渡しても、他には誰もいない。
あの男がやったのだ。
視線の先にいる植物のような男。
右手に携えた、小さな
あんな小さな斧で、熊の太い首があんなにも
しかし現に、なす術もなく熊の首は落ち、大きな身体が雪の中へと倒れている。
背筋に
もし引き返すのであれば、ここが
しかし、最早遅かったーーー
「
ここは引き返しませんか?」
「もう遅い。既に見つかっている。
ここで逃げれば怪しいと教えるようなものだ。
それに、あの男に興味が湧いた。
少し、話をしてみたい」
「・・・いざとなれば逃げますよ?」
「分かっている」
ストンと木から飛び降り、植物のような男の方へ向かって雪道を歩いていく。
その間も、男の視線が外れることはなかった。
鬼の能力ならば、一足で間合いを詰められる距離まで近づいたところで、男から声をかけられる。
「
このような夜更けに何用ですか?」
優しい、穏やかな声音だった。
しかしその声を聞いた瞬間、まるで蛇に睨まれた蛙のように、そこから先へ一歩たりとも足を踏み出せなくなる。
久しく感じていなかった、強者との
無意識の内に、額から汗が流れ落ちる。
『
まずは対話だ。
この男が本物かどうかを知らなければならない。
もし本物ならば、不用意な攻撃は死に繋がる。
「そこの熊を追っていた。
お前が倒したのか?」
「そうでしたか。倒したのは私です。
突然の大雪で、あなた方もお腹を空かせているのでしょう?
もし私達に危害を加えないと約束して頂けるなら、
獲れた
植物のような男の瞳。
怒りも憎しみもなく、殺気も闘気もない。
不思議だ。
しかし、その瞳に全てを見透かされているかのような気がしてならない。
「連れと話がしたい。
少し時間をくれ」
「どうぞ」
視界から決して男の姿を外さないように、響凱へと言葉をかける。
「響凱、お前とはここでお別れだ」
「え、何故ですか!?」
「今の会話を思い出せ。この男は血肉と言った。
ああ見えて、俺たちのことを知っている。
そしてあの立居振る舞い。強者に違いない。
つまり、お前は
「そんなまさか・・・!
とても
しかし、確かにあの男は得体が知れません。
本当に人間なのでしょうか・・・?」
「響凱。
お前も五年後を目指しているのだろう?
俺もそうだ。至高の領域が目の前にあるならば、
我が幾百星霜の武の道は、前にこそある」
「正確にはあと四年と少しです。
・・・仕方ないですね。分かりました。
必ずまた
小生もまだまだ、強くなりますので」
「ああ、
その時は俺が殺してやる」
「殺すってそんな、冗談に聞こえませんよ・・・
冗談ですよね?そうですよね?」
「俺は嘘が嫌いだ」
「嗚呼、そうだ。
この人はこういう人だった・・・」
「
「さようなら、猗窩座様」
鬼の姿となり、背中の鼓を叩く。
と、一瞬にしてその場から響凱の姿が消える。
懸念が無くなったことで、俺は改めてこの不気味な男に向き直った。
当初のプロットだと、ここで猗窩座が炭十郎と戦う予定でしたが、キャラが勝手に動きました。
こういう時は、流れに身を任せます。