未来の花   作:ZANGE

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第55話
Side: 響凱


小生、十二鬼月の末席を汚す者 弐

これは後から聞いた話ーーー

 

鳴女と呼ばれる鬼は、血鬼術で異空間・無限城(むげんじょう)を創り出した。

 

鬼の拠点。

これだけでも十分有用な能力なのだが、彼女の本領は寧ろここから。

その無限城の内部構造を自在に作り替えること。

無限城を基点とした、現世と無限城との瞬間転移(しゅんかんてんい)

この転移が強力無比な能力で、十二鬼月以外では唯一、無惨様の側近として気に入られている。

 

つまり鬼も人も、あの琵琶女(びわおんな)が把握する限り、どんな場所へも瞬間移動が可能になるということ。

人間だった頃、何かの書物で『四次元空間では二点間の距離が零になる』と読んだことがある。

正しくそのような能力なのだろう。

 

他のどんな鬼よりも無惨様のお役に立っている、唯一無二の能力。

同じ楽器を扱う鬼として、嫉妬(しっと)羨望(せんぼう)がないまぜになった負の感情を心に認めざるを得ない。

 

べんっ!!

 

 

 

小生は猗窩座様と共に、見知らぬ山奥に立っていた。

 

「響凱、血鬼術を使ってみろ」

 

そこから始まった、血反吐を吐くような地獄の特訓。

鬼でなければ、いや、鬼であるからこそ実現可能な、絶え間ない死の円舞曲。

 

「死ね」

あまりにも楽しそうに(つむ)がれるひと言が、全て本気で、全て現実に容易く行われるとは、思いもしなかった。

 

死んでは死に、また死んでは死ぬ。

何度も、何度も。

正直、地獄の責め苦でさえ、あそこまで酷くはないだろう。

 

猗窩座様を相手に、小生にも僅かながら有利な点がある。

当初はそう思っていた。

 

その唯一の利点。

攻撃の間合いを活かし、凌ぎ続けるしかない。

 

猗窩座様は徒手空拳(としゅくうけん)

対して小生の斬撃は任意の空間に届く。

 

速度も威力も、全てが及ばない小生唯一の希望はしかし、残酷なまでに木っ端微塵に砕け散った。

 

『破壊殺・空式!!』

 

遠く離れた距離から、凄まじい拳圧が飛んでくる。

威力で劣る小生の斬撃で相殺できるはずもなく。

迫り来る拳圧を、小生はただ呆然と見上げていた。

 

文字通りの百殺し。

抗いようのない濃密な死の経験が、小生の身体に鬼というものの存在定義を否応なく刻み込んだ。

 

そして小生にとっては、そのような訓練が、ぐうの音も出ないほど効果的だった。

 

僅か数時間の特訓で、小生の鼓の数は一つから六つに増えていた。

その内の四つは、相手の重力を垂直方向に傾けるもの。

残りの一つは、あれほど羨んだ転移能力だった。

 

この瞬間、小生の師は猗窩座様と決まった。

祖は無惨様であることは言うまでもないが、師は猗窩座様である。

 

まさか大量の人間も食わず、無惨様の血を分けて頂く以外の方法で、こんれほど短時間で鬼血術が進化するとは。

信じ難いが、実際に目の当たりにすれば、納得せざるを得なかった。

 

ポンッ!

ポポン!

 

「面白い血鬼術だが、あまい!

 転移も攻撃に使え!」

 

嗚呼、今日も猗窩座様の地獄の特訓が始まる・・・




もうちょっと続きます。
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