Side: 響凱
「見事だ炭十郎・・・
俺の、完敗だ・・・」
猗窩座様が敗れたーーー
『そんな!?
そんな馬鹿な!!』
遠見のきく場所から二人の立ち会いを見ていたが、小生の目には何が起こったのか全く理解出来なかった。
思わず立ち上がり、猗窩座様のところへと向かおうとした刹那。
ふと気になって、少し離れた場所に立つ黒死牟様を見た。
『!??』
「あ・・・あ・・・」
溢れ出す獰猛な歓喜。
そこにあるのは、気の遠くなるほどの時を経て、漸く倒すべき獲物を見つけたかのような、汲めども尽きぬ歓喜の感情だった。
あの無表情なお方に、このような一面があったなどと、初めて知る。
歓喜と殺気がないまぜになったような濃密な鬼気が渦巻く。
「・・・縁壱・・・・・・」
すっと、腰元の刀に手をかける。
『月の呼吸、漆ノ型ーーー』
「月映え」
いつ抜刀したのか、分からなかった。
刀を振り下ろしたと思ったら、既に納刀していた。
そしてその視線の先には、あの人間の姿があった。
あの人間もまた、目にも止まらぬ速度で手斧を振り抜き、迫り来る剣圧を見事に逸らした。
しかし、気付くのがやや遅かったと見える。
今の攻防で傷を負ったのか、血を吐いていた。
猗窩座様が見ていない合間に起きた、
刹那の攻防だった。
「病に・・・侵されていたか・・・
しかしあの呼吸・・・危険だ・・・
ここで・・・殺しておかねば・・・」
ザッ、と。
一歩を踏み出しそうになったところで、黒死牟様は足を止めた。
視線の先には、負けたばかりだと言うのに、あの人間に手を貸す猗窩座様の姿があった。
何か少し話をしたと思ったら、その背に人間を乗せて歩き始めた。
その心の機微は、小生には分からないもので。
「そうか・・・お前は先に・・・
逝ったのだったな・・・」
何かを懐かしむような表情で二人を見つめる黒死牟様が、何を思っているのかも、何も分からなかった。
「・・・響凱・・・」
「ハッ!」
突然名を呼ばれ、地面に擦り付けるほどに頭を下げる。
「猗窩座に・・・伝えておけ・・・
血戦で・・・待っていると・・・」
「ハハッ!」
それだけ伝えると、以前に現れた時と同様に、その重厚な存在感が霧散するようにフッと消えていった。
顔を上げると、そこには足跡だけが残っていた。
「今のが鳴女の血鬼術・・・」
おそらくは無限城へと移動したのだろう。
そして無限城から、この国中へと瞬時に移動ができる。
小生の血鬼術では、まだまだ敵いそうにない。
あの人間を背負って歩く猗窩座様の姿を眺め見る。
「猗窩座様・・・
小生には、何が何だか分かりませぬ・・・」
しかし、黒死牟様の言付けだけは、確と伝えなければ。
「猗窩座様・・・
小生、今は会う顔がございませぬ。
黒死牟様の言付けは文を送らせて頂き、
しばらくは人の姿で野に下ろうと思います」
この暇つぶしに生まれた作品を見て下さっている方へ
今の忙しさに慣れるまで、しばらく週一回の更新とさせて頂きます。
理由は単純に、責任が増えたが故の、時間的なリソース不足です。
人間は慣れる生き物なので、その内慣れるかと思いますが、それまでは鈍亀の更新で気長にお待ち頂ければと思いますm(_ _)m