未来の花   作:ZANGE

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第57話
Side: 響凱


小生、十二鬼月の末席を汚す者 肆

「見事だ炭十郎・・・

 俺の、完敗だ・・・」

 

猗窩座様が敗れたーーー

 

『そんな!?

 そんな馬鹿な!!』

 

遠見のきく場所から二人の立ち会いを見ていたが、小生の目には何が起こったのか全く理解出来なかった。

 

思わず立ち上がり、猗窩座様のところへと向かおうとした刹那。

 

ふと気になって、少し離れた場所に立つ黒死牟様を見た。

 

『!??』

 

「あ・・・あ・・・」

 

溢れ出す獰猛な歓喜。

 

そこにあるのは、気の遠くなるほどの時を経て、漸く倒すべき獲物を見つけたかのような、汲めども尽きぬ歓喜の感情だった。

 

あの無表情なお方に、このような一面があったなどと、初めて知る。

 

歓喜と殺気がないまぜになったような濃密な鬼気が渦巻く。

 

「・・・縁壱・・・・・・」

 

すっと、腰元の刀に手をかける。

 

『月の呼吸、漆ノ型ーーー』

 

「月映え」

 

いつ抜刀したのか、分からなかった。

刀を振り下ろしたと思ったら、既に納刀していた。

 

そしてその視線の先には、あの人間の姿があった。

 

あの人間もまた、目にも止まらぬ速度で手斧を振り抜き、迫り来る剣圧を見事に逸らした。

 

しかし、気付くのがやや遅かったと見える。

今の攻防で傷を負ったのか、血を吐いていた。

 

猗窩座様が見ていない合間に起きた、

刹那の攻防だった。

 

「病に・・・侵されていたか・・・

 しかしあの呼吸・・・危険だ・・・

 ここで・・・殺しておかねば・・・」

 

ザッ、と。

一歩を踏み出しそうになったところで、黒死牟様は足を止めた。

 

視線の先には、負けたばかりだと言うのに、あの人間に手を貸す猗窩座様の姿があった。

 

何か少し話をしたと思ったら、その背に人間を乗せて歩き始めた。

 

その心の機微は、小生には分からないもので。

 

「そうか・・・お前は先に・・・

 逝ったのだったな・・・」

 

何かを懐かしむような表情で二人を見つめる黒死牟様が、何を思っているのかも、何も分からなかった。

 

「・・・響凱・・・」

 

「ハッ!」

 

突然名を呼ばれ、地面に擦り付けるほどに頭を下げる。

 

「猗窩座に・・・伝えておけ・・・

 血戦で・・・待っていると・・・」

 

「ハハッ!」

 

それだけ伝えると、以前に現れた時と同様に、その重厚な存在感が霧散するようにフッと消えていった。

 

顔を上げると、そこには足跡だけが残っていた。

 

「今のが鳴女の血鬼術・・・」

 

おそらくは無限城へと移動したのだろう。

そして無限城から、この国中へと瞬時に移動ができる。

 

小生の血鬼術では、まだまだ敵いそうにない。

 

あの人間を背負って歩く猗窩座様の姿を眺め見る。

 

「猗窩座様・・・

 小生には、何が何だか分かりませぬ・・・」

 

しかし、黒死牟様の言付けだけは、確と伝えなければ。

 

「猗窩座様・・・

 小生、今は会う顔がございませぬ。

 黒死牟様の言付けは文を送らせて頂き、

 しばらくは人の姿で野に下ろうと思います」




この暇つぶしに生まれた作品を見て下さっている方へ

今の忙しさに慣れるまで、しばらく週一回の更新とさせて頂きます。
理由は単純に、責任が増えたが故の、時間的なリソース不足です。
人間は慣れる生き物なので、その内慣れるかと思いますが、それまでは鈍亀の更新で気長にお待ち頂ければと思いますm(_ _)m
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