未来の花   作:ZANGE

59 / 97
第59話
Side: 響凱


小生、十二鬼月の末席を汚す者 陸

『潮時か・・・』

 

このまま続ければ、お互い無事には済まない。

仮に勝ったとしても、何かを失ってしまうような予感がする。

 

伏せた手はまだ残っている。

しかし、男の分析力は末恐ろしいものがあった。

 

これ以上は続けるべきではない。

 

それに何故だか、奇妙な感覚が芽生えていた。

 

小生はまだ強くなる。

それはこの男と戦ってみて分かったこと。

 

そして、この派手な男もまだ強くなる。

 

不意に、師匠が人間の剣士と戦う姿がフラッシュバックした。

 

『人間でありながらその強さ、敬意を表する』

 

「・・・猗窩座様・・・」

 

 

 

「ハッ!次々に奇妙な技を使いやがる!

 だがなぁ、人間様を舐めんじゃねえ!!」

 

二振の大刀を繋いでいた鎖を断ち切る。

 

更にリーチの長くなった獲物を振り回しながら、派手な男が迫る。

 

しかしーーー

 

ポポンッ

ポポンッ

 

右肩、左肩、左大腿部、右肩大腿部の小鼓を次々と打つ。

 

「クソッ!またか!!」

 

決して小生に近づけはしない。

上下左右、あらゆる方向に重力が変化する手札を、次々に切っていく。

 

男は重力の変化するままに、軽やかに飛び回りながら体勢を崩すことなく耐えていた。

 

果たしていつまで続ける気だろうか。

目の前の男は、諦めることをしなかった。

 

「人間、お前の名は?」

 

効果範囲の狭い血鬼術。

その範囲から外れ、元の重力へと戻る度、男は何度でも立ち向かって来た。

 

「チッ!いい質問だから答えてやる!

 俺は忍界隈で派手に名を馳せた男・・・

 宇髄、天元様だ!」

 

男は再び後ろへと飛ばされそうになった瞬間、地面に大刀を突き立てた。

 

その大刀を足場に、瞬時にこちらへと跳ぶ。

 

鎖の端を持ち、極限まで伸ばされた大刀が、首を切り落とさんと迫る。

 

ポンッ

 

「宇髄天元」

 

右手の鼓枹が、背中の小鼓を打っていた。

 

「小生、響凱と申す者」

 

その対象は、宇髄天元。

 

男の姿がパッと消える。

再び現れた場所は、身動き一つ取れない空中だった。

 

今の一瞬で、藤の花の毒を塗られた針を打たれていたらしい。

痺れて動かない右腕の代わりに、左手で腹の小鼓を連続で打つ。

 

「十二鬼月の末席を汚している」

 

ポポポポポンッ

 

『音の呼吸、肆の型ーーー』

 

「響斬無間!!!」

 

ドガガガガガッ!!!

 

わずかひと振りとなった大刀を目にも止まらぬ速度で振り回し、四方からほぼ同時に迫る全ての斬撃を、生み出す爆風が逸らしていく。

 

この人間の最も恐ろしいところは、その超人的な聴覚だった。

 

ほぼ同時。

つまり、ほんの僅かな出がかりの差。

真空が生み出す僅かな音から、全て的確に対処していた。

 

「ハッ!この程度の攻撃でーーー

 この宇髄天元様をやれると、思うなよ!!」

 

元気な声とは裏腹に、天元の全身からは血が噴き出している。

どれほど防ごうとも、小生の斬撃は空間ごと斬り裂く。

 

しかしこの男は、傷に構わず防御を捨てて攻撃を選んだ。

 

『こいつ、痛みが無いのか!?』

 

周辺に小さな何かをばら撒きながら、男の大刀が鎖鎌のように空中から放たれる。

 

『今のは、藤の毒針。

 転移対策か!?

 しまった!!逃げ場がーーー』

 

 

 

「響凱!目を閉じるな!!

 耳を澄ませ!活路を開け!!」

 

ありし日、猗窩座様に扱かれた日々が脳裏を過ぎる。

 

 

 

大刀が首元に迫る。

 

左手が叩けるのは一度きり。

 

ポンッ

 

キィンーーー

 

斬撃が弾いたのは、男でも毒針でもなく、迫り来る大刀だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!派手に逃げられたな!

 アレが十二鬼月か、地味にやるじゃねえか!」

 

宇髄天元は木の幹に腰掛けながら、全身に負った切り傷を手当てしていく。

 

「天元様ーーーーー!!!」

 

昇りゆく朝陽の向こう側から、愛する嫁達がやってくるのが見えた。

 

「早いな。さすが俺の女房だ。

 ・・・俺も派手に修行するか。

 十二鬼月が相手でも、譜面を完成させられるようにならないとな」




更新が遅くなって申し訳ないです。
今しばらくは亀の歩みになりそうです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。