未来の花   作:ZANGE

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第62話
Side: 猗窩座


柱と上弦

ブンブンブンブンブンーーーーー!!!

 

ソレは日輪刀(にちりんとう)と呼ぶには、あまりにも異質な獲物だった。

 

強いて言えば、武芸十八般が一つ、鎖鎌(くさりがま)に近い。

 

長い鎖に繋がれた、刺々しい鉄球と手斧。

鎖鎌のように、手斧を左手に構え、右手で鎖を持ち、先端の鉄球を振り回している。

人の顔より大きな鉄球が凄まじい勢いで回転する音が周囲に響く。

 

既に人払いは済ませていたのだろう。

周囲からは人気がなくなっていた。

 

悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)という、盲目の男。

鬼殺隊の黒い隊服の上から、南無阿弥陀仏と仏文字が刺繍された草色の羽織を羽織っている。

この一年、死ぬ気で鍛えたのだろう。よく視れば大きく、そして引き締まった筋肉が伺える。

 

軽い鎖鎌の分銅とは異なる、重量のある鉄球を軽々と振り回す姿。

今まで数多の鬼狩りを見てきたが、紛れもなく強者の一角。

行冥は、まさに柱と呼ぶに相応しい闘気を纏っていた。

 

「ふッ!」

 

僅かなひと呼吸の間に、鉄球が目の前へと迫る。

 

避けようと思えば避けられるソレを、両腕を眼前に突き出し、敢えて身体で受け止める。

 

ずざざざざーーー

 

あまりの威力に、思わず後ろへと圧されていた。

目を見張る成長に、心が躍り始める。

 

視線は行冥から逸らさないまま、呆けている馬鹿弟子へと叫ぶ。

 

獪岳(かいがく)!!

 沙代(さよ)を連れて離れろ!」

 

「分かりました!」

 

「かいがく!

 ひめじまさんがーーー」

 

「ごめん沙代。

 でも、ここにいたらダメだ!」

 

「ひめじまさーーーーん!!」

 

 

 

獪岳達が離れたことを確認すると、

受け止めた鉄球をそのまま投げ返す。

 

行冥は鎖を器用に操り、眼前に迫っていた鉄球を逸らすと、再び元のように回転させていた。

 

手のひらから流れてしまった血を舐める。

 

「久しいなァ、行冥。

 嬉しいぞ。お前の強さ。

 その練り上げられた闘気、柱だな?」

 

鬼殺隊と鬼、相対すれば戦闘は必至。

にも関わらず、過去の因縁が二人の間に会話を生んでいた。

 

「忘れる筈もない、その声。

 今なら分かる。貴方も鬼だったのか・・・」

 

「そうだ。

 改めて名乗ろう、俺は猗窩座(あかざ)

 

岩柱(いわばしら)、悲鳴嶼行冥だ。

 上弦の鬼が、一体何を企んでいる!?」

 

「企むだと?くだらん。

 企んでいるのは、貴様ら鬼狩りの方だろう。

 まさか、アレを利用されるとは思わなかったぞ」

 

「それはーーー」

 

「大方、あの馬鹿が、やらかしたのだろう。

 慶吾(けいご)は後でシメておくとして・・・

 行冥。あれからどれだけ強くなったのか、俺が興味があるのはそれだ」

 

「やり合う前に一つ聞きたい。

 獪岳と沙代を、どうするつもりだ?」

 

「どうもしない。

 あいつらが勝手に付いて来ているだけだ」

 

「・・・虚偽(きょぎ)は述べていないようだな」

 

「当たり前だ。

 嘘や卑怯は、弱者が使うもの。

 至高の強さを目指す俺には必要ない」

 

「そうか。

 しかしーーー」

 

「行冥。

 これ以上の問答は不要だ」

 

ダンーーー!!

地面を大きく踏みつけ、右掌を前に、左手を引いて大きく腰を落とす。

 

「ここから先は、力で押し通してみせろ」

 

素流の構えで、行冥と相対する。

 

 

「是非もなしーーー!」

 

ジャララララーーー

 

鎖が生き物のように行冥の周囲を舞う。

 

「!?」

 

気付けば、鉄球が目の前へと迫っていた。

しかも先ほどまでの生温い速度ではない。

 

受け止めれば腕ごと持っていかれそうな威力のソレを、後ろに飛んで避ける。

 

術式展(じゅつしきてん)ーーー』

 

血鬼術を発動させる間もなく、横から抉り込むような角度で手斧が首元へと迫っていた。

 

「ハッッ!!!」

 

闘気を込めた右の拳で、手斧を側面から叩き落とす。

しかし、手斧の硬度は非常に高く、武器破壊までは至らなかった。

 

ダンーーー!!!

 

地面を強く踏み締める音が響くーーー

 

「岩の呼吸、弐の型ーーー」

 

見れば、行冥の足が伸びる鎖を大地に縫い付けていた。

 

天面砕(てんめんくだ)き!!』

 

いつの間にか、空高く打ち上げられていた鉄球が、頭上から振り下ろされる。

 

破壊殺(はかいさつ)脚式(きゃくしき)ーーー」

 

驚嘆すべき事だが、行冥の攻撃には間というものがない。

鉄球、手斧、鎖が生き物のように蠢き、一つを避けたと思った瞬間には次の技が迫っている。

 

流閃群光(りゅうせんぐんこう)!!!』

 

その流れを断ち切るが如く、振り下ろされた鉄球へ、威力の高い乱れ蹴りを放った。

 

鉄球を再び空へと打ち返した好機に、行冥へ向かって走り始める。

 

鎖が生き物のように左腕に巻き付いて来る。

 

巻き付いた鎖ごと腕を切り落とす。

 

次の瞬間には左手が再生する。

 

トンーーー

 

瞬時の攻防を経てたどり着いた場所。

そこは既に、こちらの間合いだった。

 

「破壊殺・脚式ーーー」

 

行冥は後ろへと飛び退きながら、手斧と鉄球を見事に操っていた。

 

左右から挟まれるような形で二つの獲物が迫る。

 

だが、そんなものは関係ない!

 

飛遊星千輪(ひゆうせいせんりん)!!!』

 

右から迫る手斧を一歩で置き去りに

左から迫る鉄球を飛び越えて

空中へと回転しながら連続で飛び蹴りを放つ。

 

ガガガッ!!!

 

周囲に衝撃波が生じるほどの威力。

辛うじて鎖で受け止めたものの、行冥の身体は対岸へと吹き飛んでいった。




この二人、全然本気じゃありません。
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