Side: 猗窩座
一陣の風が吹いた。
白い風ーーー
ほとんど足音も立てず、木々をすり抜けるように流れ、大地を駆け抜ける。
草木も、枝葉も、羽虫もーーー
遮るものなど何もない。
最後に、見上げるような高さに折り重なった木々の壁を一足飛びに乗り越えーーー
その風はもう一つの決戦の大地へ降り立った。
「
「
すみません。毒は取り除きましたが怪我が酷くて・・・」
倒れ伏す馬鹿弟子を見る。
見た目は五体満足ではあるものの、出血がひどく、骨も何本か折れてそうだった。
解毒が効いたのか、顔には薄らと血の気が戻ってきている。
口元に手を当てると、手のひらに微かだが呼吸を感じられた。
「まだ生きている。
俺は急いでコイツを医者に連れて行く。
生きていれば、修行は改めてつけてやる。
妓夫太郎、それで構わないな?」
「はい・・・
やり過ぎてしまい、すみません」
「気にするな。
そう簡単に死ぬような男じゃない。
それより、コイツは強かったか?」
全身血だらけの慶吾を背中に背負いながら、妓夫太郎へと声をかける。
「・・・
「そうか」
そう言って立ち去ろうとしたところ、側で静かに座っていた
「待って!」
「何だ?」
今は一刻を争う。
強い言葉と共に、ジロリと睨みつける。
堕姫は一瞬怯んだ様子だったが、キッと強気に睨み返してきた。
『・・・』
今まで見たこともない反応だった。
その気概に免じて話を聞く姿勢を取る。
「どうした堕姫?
用件を早く言え」
「・・・もう終わったわ」
背負っていた慶吾の姿が消え、堕姫の手には梅色の一本の
「この中にいれば、これ以上血を流すことなく、安静に運ぶことができるわ。
治療の際は、帯を切れば元に戻るから」
「便利な
どういう風の吹き回しだ?」
渡された帯を眺める。
その中には確かに、瀕死の怪我をした慶吾の姿が映っていた。
「そ、そんなの、どうだっていいじゃない!
ソイツが死んだら、兄さんが困るでしょう」
堕姫はぷいっとそっぽを向いていた。
鬼が人間を助けようとするなど、確かにおかしな話だ。
「ああ、そうだよなぁ。
俺の妹にここまでさせといて、
こんなところで死んで貰っちゃあ、困るよなぁ」
「・・・堕姫、感謝する。
望むなら、妓夫太郎と一緒に強くしてやる」
それだけ言い残すと、師と弟子はその場から消えるように空を駆けていった。
「・・・慶吾とか言ったな。
アイツ、人間にしては強かったなぁ」
「・・・・・・」
無言。
その空間が居た堪れず、妓夫太郎は頭をガシガシと掻きむしる。
そして大きな溜息を一つ吐くと、仕方ないとばかりに口を開いた。
「猗窩座さんの話だと医者がいるらしい。
あの様子なら、死にはしないだろ」
「・・・ほんとうに?」
堕姫がゆっくりと顔をあげる。
まるで、怯える子供のように。
「大丈夫だ。アイツは強い。
それに、お前の血鬼術もある」
「・・・うん」
うっすらと世界が青く色付いてくる。
あと一刻もあれば太陽が昇るだろう。
「・・・・・・じゃあ、帰るか」
妓夫太郎が手を差し出す。
「あれだけ言われてたのに・・・
ごめんね、お兄ちゃん」
「これから強くなればいい。
そうだろ?」
「うん」
差し出された手を取る。
ヒュウウウウウウウウーーーーー
突風が吹き抜ける。
二人の影も消え、後には何も残らなかった。
堕姫との戦闘シーンはカット。
様子を伺っていた妓夫太郎。
その力が100%乗った状態の堕姫。
柱とも単独で戦える強さにパワーアップした堕姫と互角に戦う慶吾。
このまま日が昇りかねないと妓夫太郎が手を出して終了。
首を切られて生きているとは想像もしなかった慶吾の負け。
( ゚д゚)『上弦って首を斬っても死なないの!?』