Side: 無惨
ピチョンーーー
ピチョンーーー
赤い血が溜まる透明な試験管へ、別の紅い液体が流れていく。
新鮮な赤い血へ、紅色の血が触れた瞬間ーーー
後から入った紅色が赤色を物凄い勢いで侵食し、やがて赤色は消え去ってしまう。
混ざり合った血は、ほんの僅かではあるものの、元の紅色とも異なる亜紅色に変化していた。
「何故、私の血液のみが鬼を生み出すのかーーー」
ピチョンーーー
ピチョンーーー
亜紅色の血を、新鮮な赤い血に垂らしていく。
しかし、もう二度と侵食は起こらない。
亜紅色に変色した血が他の血を侵すことはない。
決して混ざり合わず、境界線をくっきりと浮かび上がらせながら、二つの血が同じ試験管内に在る。
「鬼と化した者の血と、何が異なるのかーーー」
ピチョンーーー
亜紅色の血に、再び紅色の血を垂らす。
亜紅色の血がより鮮明に輝いた瞬間、黒ずんでボロボロに焼け爛れたようになってしまった。
「血の量に耐え切れぬ者は、細胞が壊れる」
赤黒い塵がこびり付いた試験管を破棄し、また別の試験管へ視線を送る。
亜紅色の血が入った試験管が立ち並ぶそこへ、枷とも呪いとも言うべき思念を送る。
するとカタカタと試験管が揺れ、血が沸騰し始める。
管の底から大きな気泡がブクブクと溢れ、湯気が立ち上っていく。
「ひとたび血が暴走すれば、血管を破り、皮膚を膨らませ、やがて身体中から溢れ出す・・・」
血から目線を外すと、ただの液体に戻る。
まるで何事もなかったかのように、静かに試験管が立ち並んでいる。
その血は黒ずみ、ただの血に戻っていた。
「この血が孕む絶対服従の制約ゆえ、私が死ねば全ての鬼は滅びる。
そうだとしても、全ての決定権は私にある・・・」
「決して老いず、病にも侵されず、怪我もせず、四肢の欠損すらも瞬時に治る。
この力、限りなく完璧に近い生物だ。
何百年も経とうと言うのに、今もこの身を焼く、忌々しい傷跡・・・
それも太陽を克服すれば、癒えるだろう」
朧気な記憶の奥底にある『青い彼岸花』。
病を治し、人を鬼に変えた成分を持つ、特殊な花。
何百年も、一千年近く探しているが、見つからない花。
あるいは、何百と生み出した配下の鬼から、奇跡的に太陽を克服する者が出てくるかとも考えたが、いまだそのような鬼は現れない。
「そして、猗窩座・・・」
上弦の鬼でありながら、制約を自らの力で乗り越え、鬼という枠を超えつつある者。
これまで制約を外せた者など、長い生の中でもーーー
いや、もう一人だけいたか。
太陽を克服できなかったとしても、可能性は拡がるかもしれない。
人間の科学の進歩は凄まじい。
特に西洋の技術には目を見張るものがある。
それは、生きるために闇に潜み、死を恐れない鬼にはないものだ。
鬼としての可能性を、科学で読み解くことができれば・・・
「・・・それに、響凱。
猗窩座の監査役として使えると思っていたが、肝心な時に離れるとは・・・
だが、これでまた猗窩座の元へ向かうだろう」