Side: 獪岳
最終選別 壱
山の中腹へと続く石段を軽やかに登っていく。
左右には季節外れの藤の花が咲き乱れ、花の香りが鼻腔を吹き抜ける。
懐かしい香りを全身に吸い込みながら、長い階段を登り切る。
「よっ、と」
最上段の左右に立つ木柱を潜り抜けると、そこには年の近い男女が思い思いに立ち並んでいた。
パッと見ただけで、強そうなヤツも、大したことなさそうなヤツもいる。
その中でもひときわ目立つ、変なお面を被った二人組が視界に入る。
『あの変なお面は・・・
ジジイの言っていた
鱗滝という
一人前の剣士として認められる前の段階で、
そもそも、引退まで生き抜くことのできる柱が少ない。
数多いる鬼の中でも上澄みの強者、
あのとんでもなく強い鬼と遭遇すれば、柱でも命を落とす危険は大いにある。
それを聞いた時も、納得しかなかった。
『
数合打ち合えるだけでも化け物なのに・・・』
元柱に育てられたということは、あの二人組も何かしらの才能を見出されたのだろう。
とりわけ、右頬に傷跡のあるキツネ面を被った男は、相当にやるようだ。
立ち姿を見れば分かる。全く体幹がブレていない。
こんなところにいる鬼など、ものの数ではないだろう。
『アイツは、まず生き残るだろうな』
同門と思われる、もう一人の方は・・・
お面を顔ではなく髪にかけ、ぼーっと突っ立っているだけのように見える。
正直、何を考えているのか分からない。
ただ、凪いだように静かな両目の奥から、ありふれた筈の悲しみが垣間見えた気がした。
「・・・チッ」
目を逸らし、改めてこの場に集った面々を流し見る。
この場に集った全員が腰に刀を
全員、ここにいる意味は理解しているのだろう。
さすがに今更震えたり、泣いたり、縮こまる者は見当たらなかった。
そこへ、どう見ても剣士には見えない和装の男が現れる。
「やあ、みんな集まってくれたようだね」
その穏やかな声を耳にした瞬間、不思議な心地よさが全身を突き抜けた。
思い思いに集っていた面々が、急に静かになる。
「この
君たちが見て来た通り、山の
男は集った皆を慈しむように目を細める。
しかしその左の瞳は白く濁り、片目しか映していない様子が窺える。
「そして、ここから先には、藤の花はない。
ここまでたどり着いた君たちなら、この意味は分かるね。
ここで、今日から七日間、生き残って欲しい」
病に侵されているのだろう。
その額から上は紫色に変色していたが、痛みも苦しみも感じさせないほど、自然な佇まいだった。
その半歩引いた位置には、陰から支えるように女性が立っている。
「七日後の夜明けまで生き残ること。
それが
では、行っておいで」
ほぼ全員が同じような心地よさを感じていたのか。
その言葉を皮切りに、思い思いに集っていた面々がハッと気付いたように駆け出していく。
『最終選別』
鬼殺の剣士として認められるための、最後の試験が今、始まる。
唐突なお館様の登場。
もし元気だったらと仮定すると、案外来ちゃうんじゃないかと思うんだ。
『うん、彼が噂の子だね・・・』