未来の花   作:ZANGE

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第86話
Side: 獪岳


最終選別 弐

「久し振りの美味そうな獲物だ」

 

「オイ、俺が先に見つけたんだから、コイツは俺の獲物だ」

 

「馬鹿言うな、先に獲った方が喰うに決まってる」

 

醜い顔の鬼共が、醜い争いをしながら此方に近付いてくる。

 

一歩間違えれば自分もこうなっていたと考えると、悍ましさに唾を吐きかけたくなる。

 

「・・・雑魚共が、いきがるなよ」

 

唾棄すべき、醜く成り下がってしまった鬼達へ聞こえるように、言葉を発する。

 

すると鬼共が一斉にこちらへと向き直り、口々に汚い言葉を発してくる。

 

「ああ?

 それは俺らのことか!?」

 

「舐め腐った小僧だ!」

 

「生きたまま喰ってやる!!」

 

鬼共が一斉に飛びかかってくる。

 

スゥッと息を吸い込み。

刀の柄に手をかけ、深く腰を落とした刹那の間に、勝負は決まった。

 

 

「カスが」

 

刀に付着した血を振り落とし、鞘に仕舞う。

 

雷の型を使うまでもない。

 

周囲には首と胴がお別れした小鬼が三体倒れている。

何も見えないまま首を斬られたのだろうその瞳は、驚愕に見開かれている。

 

小鬼の身体はやがて、霧のように霧散していった。

 

『コイツらは雑魚中の雑魚だな』

 

開始早々に襲いかかってくるような小鬼である。

空腹という感情のまま、何の備えも考えもなく、ただ視界に入って来た人間を狙ってきたと考えられる。

 

ここ藤襲山の中でも、とりわけ弱く知恵もない鬼だったのだろう。

 

「こんなヤツばかりなら、楽なんだがな」

 

最終選別(さいしゅうせんべつ)は、鬼を倒した数を競う場ではない。

別に急ぐこともないと、右手で刀の頭を撫でながら、ゆっくりと歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

襲いかかってくる鬼共を斬り捨てながら道を歩くこと数刻。

強くもない鬼との戦闘にも飽きてきた頃、休むのにちょうど良い木が目についた。

 

木の幹をコンコンと叩く。

病気もなく、年輪の詰まった良い音が返ってくる。

 

見上げれば、ちょうど木と木の葉が重なり合って見えなくなる位置に、人一人が隠れられる隙間がありそうだった。

 

周囲を見渡すと、ちょうど罠を仕掛けやすそうな場所が見えてくる。

万が一、鬼が襲撃してきても対応できるよう、兄弟子仕込みの罠を張り巡らせていく。

 

「これでよし」

 

誰かが接近すれば鳴子(なるこ)が音で知らせてくれ、更に近付いてくれば罠が作動するようになっている。

これで少なくとも、仮眠中にいきなり襲撃を受けるようなことはないだろう。

 

「さて、少し休むか」

 

 

仮眠を取ろうと背を幹に預けて少し経った頃、小さな剣戟の音を耳が拾った。

 

キィンーーー

 

『!?』

 

すぐさま意識が覚醒する。

 

誰かが鬼と戦っているらしい。

 

手を耳に当てて、耳を澄ませる。

剣戟の音から、おそらくかなり強い剣士が戦っている様子だが、それでも押されているようだ。

どうやら、それなりに強い鬼が潜んでいたらしい。

 

刀を握ると、すぐに音のする方へと走り出す。

 

眠りを妨げられた恨みはなかった。

今はただ、強い鬼との戦闘に心を躍らせていた。

 

『ようやく、ようやくだ。

 今の俺はどこまで強くなれたのか。

 (きのえ)との差はどれほどなのか・・・』




ちょっと強くなって直ぐに意気がる、かわいい獪岳さん
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