未来の花   作:ZANGE

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第92話
Side: 悲鳴嶼


柱合会議 壱

天元(てんげん)。君は素晴らしい子だ。

 これからは音柱(おとばしら)として、人の命を守り、

 鬼舞辻(きぶつじ)を倒す一柱として、鬼殺隊(きさつたい)を支えてくれるかい?」

 

「はい!お館様(やかたさま)!!」

 

須磨(すま)、まきを、雛鶴(ひなつる)にもよろしく。

 これで柱合会議(ちゅうごうかいぎ)は終わりにしよう。

 槇寿郎(しんじゅろう)、あとのことは任せたよ」

 

「委細承知致しました」

 

 

 

お館様が退室された後、ポツリと声が溢れた。

 

「これで(はしら)も三人になったか・・・」

 

その囁きを、忍の末裔が耳ざとく拾っていた。

 

悲鳴嶼(ひめじま)さん、そりゃあどういう意味だ?

 ここには四人いると思うんだが・・・」

 

左目の周りに花火のような化粧を施した大男。

先ほど音柱を拝命した宇髄(うずい)天元(てんげん)の視線の先には、煉獄(れんごく)夫妻の姿があった。

 

「私は違うんですよ」

 

朗らかな笑顔で否定する和服の日傘美人を、宇髄は胡乱(うろん)な瞳で見つめる。

そんなバカな話があるかと、その態度は明らかに信じていなかった。

 

「・・・本当か?」

 

「宇髄、言葉を慎め。

 こちらのご夫妻はーーー」

 

続く言葉を、槇寿郎さんの意を感じて止める。

 

「宇髄、と言ったな。

 俺は炎柱(えんばしら)、煉獄槇寿郎だ」

 

「俺は音柱の・・・

 なんて、二度目の紹介は無用でしょう。

 なあ煉獄さん」

 

無礼な態度に、ピリッとした空気が流れる。

さりとて気にした風もなく、槇寿郎は言葉を続けた。

 

「これは妻の瑠火(るか)

 訳あって、私の補佐をして貰っている。

 柱合会議に出席したのは、お館様の許可を得てのことだ」

 

頷きはしたものの、それでも納得がいかない様子で、宇髄は質問を重ねる。

 

「ふーん。そォかい。

 アンタの嫁さんがこの場にいる理由は分かった。

 だが、派手に気に入らないな。

 炎柱の補佐官が、柱並に強いのはどういうことだ?」

 

短い付き合いだが、宇髄は冷静な男。

何か意図があって言葉を選んでいる事は明らかだった。

しかしさすがにこれ以上は看過できぬと膝を立てたところ、不意に槇寿郎さんの悲鳴が聞こえた。

 

「あ痛ッ!」

 

「あなた、いきなり新人の方を威圧するのは止めてください」

 

「コイツはお前を疑っているのだぞ」

 

「それはあなたの言葉不足が原因でしょう?」

 

「むう・・・

 だからって、つねることはないだろう?」

 

「口で言うより、効果的でしょう?」

 

「ぐ、むぅ・・・」

 

強者然とした立ち振舞いとは裏腹の、オロオロとした槇寿郎さんの様子に、宇髄はポカンと口を開けている。

 

一瞬即発とした雰囲気は、いつの間にか霧散していた。

 

『仲良きことは美しき哉・・・』

涙を流す私と対照的に、横にいた宇髄は破顔爆笑している。

 

苦しそうにお腹を抱えている宇髄へ、瑠火さんが直接声をかけた。

 

「この人は昔から言葉足らずですので、私の口からお伝えさせて頂きます。

 ただし、この事はお館様も認めた機密事項。

 柱である宇髄さん以外、他言無用に願います」

 

「お館様が?・・・なるほど、承知した。

 俺も忍の末裔。お館様の命は必ず守ろう」

 

「信じます」

 

瑠火さんの静かな言葉には、確かな重みがあった。

まるでお館様の奥方のような、凛とした雰囲気が漂う。

 

不思議と、宇髄からも揶揄うような言葉は出なかった。

 

「数年前、私は死の病を患っておりました。

 私自身、いずれ訪れる死は天命だと諦めておりました。

 珠世(たまよ)さんという、人の心を持った特別な鬼。

 長年の研究によって、人の生き血を必要としなくなった、誰よりも優しい医者の方に診て頂くまでは・・・」

 

「鬼」という単語が出た瞬間、宇髄の手は二振りの日輪刀へと伸びる。

と同時に発せられる殺気を、柳に風と流しながら、奥方の話は最後まで続いたのだった。




瑠火さんが剣士としての力に目覚めたら、槇寿郎は、全てにおいて頭が上がらないでしょうね。

という妄想でした(^^)
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