未来の花   作:ZANGE

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第94話
Side: 槇寿郎


柱合会議 参

瑠火(るか)

元々、悪に対しては負けん気の強い性格だったが、ここまであけすけに話す人柄だっただろうか。

 

そんな詮無い事を考えながら周りを見れば、俯きながら肩を震わせている(はしら)が二名。

さりとてこの身に語ることもなし。

 

所在なく、手元の湯呑を空にしたところで、ホッとひと息を入れて落ち着いた。

 

そしてふと、場の空気が軽くなっていることに気付く。

 

鬼殺隊(きさつたい)の柱になるような暴れん坊が、お館様(やかたさま)ご不在のこの場で、簡単に大人しくする筈がないのだ。

過去には初対面のお館様に噛み付く者もいたと聞く。

瑠火は、その足りない部分を補ってくれていた。

 

『敵わないな』と苦笑が漏れる。

 

本人をチラと振り返れば、ニコリと笑顔で返してくる。

 

・・・やり方はともかく。

 

ならば私も、私の責務を果たそう。

 

「私も一人、気になる若者がいる」

 

そう語ると、笑いを堪えていた二人も空気を変え、話を聞く体勢を取る。

 

「一、二年ほど前、蛇のような鬼を斬った。

 その際に危ういところを助けた若者が、今は剣士を目指している。

 気になって様子を見に行ったが、独特の視点から相手の死角を攻める技術を持っていた。

 まだ危ういところもあるが、あの腕なら今年中には剣士になるだろう」

 

口下手な私の言を補うように、妻が言葉を繋いでくれる。

 

「たしか、伊黒(いぐろ)さんと仰いましたね。

 白い蛇の相棒、鏑丸(かぶらまる)くんといつも一緒の。

 最初は驚きましたが、慣れれば可愛らしいですよね。

 とても夜目(よめ)がきく方で、闇夜に隠れていたあなたにも気付かれたのをよく覚えています」

 

煉獄家(れんごくけ)の者がいかに目立つ髪色をしているからと言って、照らすものがなければ見える筈もなし。

 

忍の末裔が、その特殊な能力に興味を示した。

 

「へえ・・・なかなかやるな。

 参考までに聞きたいんだが、悲鳴嶼(ひめじま)さんなら同じことができるのか?」

 

「ふむ・・・私なら、音を立てる。

 その反響から位置を特定する・・・」

 

「マジかよ!?

 地味にやべえことやってんな!」

 

宇髄(うずい)の意見には同意するが、今言うべきことではない。

 

逸れそうになる話題を、悲鳴嶼は冷静に戻す。

 

「・・・槇寿郎(しんじゅろう)殿。

 その伊黒と申す者、聞けばまだ剣士ですらない様子。

 柱まで上がって来ると感じたのは、なにゆえでしょうか?」

 

「・・・目、だな。

 彼の目はきっと、この世界を憎んでいる。

 五十やそこらの鬼など、簡単に斬り捨ててしまうだろう」

 

『或いは、自分すらも・・・』

 

「・・・ならば、(きのえ)までは早いでしょう。

 夜に強い者は、生き残り易い」

 

「ああ、その通りだ・・・」

 

隣で茶のお代わりを注いでくれている瑠火から湯呑みを受け取り、ひと口飲む。

 

『護るものなき者は、必ず戦いの果てに倒れる・・・

 伊黒、お前の行く末が、そうならなければ良いが・・・』

 

湯呑みの中に浮かぶ自分の顔に、自暴自棄になっていた頃を思い出し、ゆっくりと被りを振る。

 

「伊黒さんは、きっと大丈夫ですよ」

 

その声に振り向くと、静かに微笑む瑠火の顔があった。

 

「・・・なぜ、そう思う?」

 

「勘です」

 

「ふっ、そうか・・・

 それなら、大丈夫だろう」

 

戦いにおいて時折、予知染みた動きを見せる瑠火の言う事なら、本当にそうなのかもしれない。

 

「私の思い当たる人物は、それぐらいだ。

 他に・・・悲鳴嶼、お前はどうだ?」

 

話を振ると、彼は一瞬言うべきか迷う素振りを見せたが、やがて重い口を開いた。

 

胡蝶(こちょう)ーーー

 という名の姉妹がおります」




この章はひたすら鬼殺隊側の話が進みます。
戦いはまだまだ先になりますm(_ _)m
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