Side: 槇寿郎
元々、悪に対しては負けん気の強い性格だったが、ここまであけすけに話す人柄だっただろうか。
そんな詮無い事を考えながら周りを見れば、俯きながら肩を震わせている
さりとてこの身に語ることもなし。
所在なく、手元の湯呑を空にしたところで、ホッとひと息を入れて落ち着いた。
そしてふと、場の空気が軽くなっていることに気付く。
過去には初対面のお館様に噛み付く者もいたと聞く。
瑠火は、その足りない部分を補ってくれていた。
『敵わないな』と苦笑が漏れる。
本人をチラと振り返れば、ニコリと笑顔で返してくる。
・・・やり方はともかく。
ならば私も、私の責務を果たそう。
「私も一人、気になる若者がいる」
そう語ると、笑いを堪えていた二人も空気を変え、話を聞く体勢を取る。
「一、二年ほど前、蛇のような鬼を斬った。
その際に危ういところを助けた若者が、今は剣士を目指している。
気になって様子を見に行ったが、独特の視点から相手の死角を攻める技術を持っていた。
まだ危ういところもあるが、あの腕なら今年中には剣士になるだろう」
口下手な私の言を補うように、妻が言葉を繋いでくれる。
「たしか、
白い蛇の相棒、
最初は驚きましたが、慣れれば可愛らしいですよね。
とても
忍の末裔が、その特殊な能力に興味を示した。
「へえ・・・なかなかやるな。
参考までに聞きたいんだが、
「ふむ・・・私なら、音を立てる。
その反響から位置を特定する・・・」
「マジかよ!?
地味にやべえことやってんな!」
逸れそうになる話題を、悲鳴嶼は冷静に戻す。
「・・・
その伊黒と申す者、聞けばまだ剣士ですらない様子。
柱まで上がって来ると感じたのは、なにゆえでしょうか?」
「・・・目、だな。
彼の目はきっと、この世界を憎んでいる。
五十やそこらの鬼など、簡単に斬り捨ててしまうだろう」
『或いは、自分すらも・・・』
「・・・ならば、
夜に強い者は、生き残り易い」
「ああ、その通りだ・・・」
隣で茶のお代わりを注いでくれている瑠火から湯呑みを受け取り、ひと口飲む。
『護るものなき者は、必ず戦いの果てに倒れる・・・
伊黒、お前の行く末が、そうならなければ良いが・・・』
湯呑みの中に浮かぶ自分の顔に、自暴自棄になっていた頃を思い出し、ゆっくりと被りを振る。
「伊黒さんは、きっと大丈夫ですよ」
その声に振り向くと、静かに微笑む瑠火の顔があった。
「・・・なぜ、そう思う?」
「勘です」
「ふっ、そうか・・・
それなら、大丈夫だろう」
戦いにおいて時折、予知染みた動きを見せる瑠火の言う事なら、本当にそうなのかもしれない。
「私の思い当たる人物は、それぐらいだ。
他に・・・悲鳴嶼、お前はどうだ?」
話を振ると、彼は一瞬言うべきか迷う素振りを見せたが、やがて重い口を開いた。
「
という名の姉妹がおります」
この章はひたすら鬼殺隊側の話が進みます。
戦いはまだまだ先になりますm(_ _)m