弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
第10話、お楽しみください
G地区 オフィスビル屋上にて…
「狐もどきが!」
「タヌキに言われたくねーってんですよ!」
──今の彼女に普段の余裕は無かった
先程目が合った倉庫街のサーヴァントのことではない、原因はそれであるのだが、焦っていたのはもっと近くのことだった
く、よりによってワタクシがこのようなミスを…!
『撃て』
その一言で、私は引き金に掛けた指の力を込め、撃発。それで敵サーヴァントの注意を引く…それだけでよかった、のに──
普通こんなとこまで追ってきますかホント…呆れた執念というか…ああもう!
一瞬、一瞬気を取られてしまった。それによりリスク無しで勝利できる絶好の機会を逃してしまった結果、起こるはずのなかった戦闘が進行している
「いい加減駆除されてくださいませ!」
右手に握ったショットガンから、マシンガンのようなありえない連射速度で散弾をばら撒いて敵サーヴァントと間合いを維持しつつ、グレネードを投擲する
「小細工を!」
敵サーヴァントが散弾を弾き、グレネードを両断し、こちらの眼前に迫った頃にはショットガンの再装填が完了、再びショットガンとグレネードで間合いを取る…という教材のようなイタチごっこが続いていた
弾薬、爆薬は半永久的に尽きないとはいえ『今の』霊基では埒が開かないですねぇ…しかしどこかしらにグランドクラスが来ているとなると下手にあの姿を出す訳にも行きませんし…
宝具を使ったところでこのサーヴァントの真名から考えればミサイルからミサイルに飛び移って近付いてくることも充分考えられる
っ…忌々しい!
目の前の狸でも異世界からの来訪者でも無く、下らないミスをした自分自身に苛立つコヤンスカヤ、その表情には普段の彼女からは考えられない焦りの感情が浮き上がっていた
一方そのころ、ザイルの方は…とてもコヤンスカヤ側の戦況を気にできるほど、余裕は無かった
コヤンスカヤと敵サーヴァントは互いに譲らず
「ぎっ…!」
スコーピオン*1の連射のような速度で繰り出され続ける打撃の嵐。
顎、首、みぞおち、脇下、膝といった急所狙いのそれらは一撃でも当たれば致命傷となり得るもの。死なないにしても戦闘行為に致命的な支障が出るのは間違いない
ザイルはひたすらそれをコンバットナイフ1本と義手で捌き続けるという荒技を繰り返していた
厄介だ…!
作戦では否幻想弾2連射にコヤンスカヤの近距離狙撃を上乗せして速攻でマスターを排除するという計画だったが…どういう訳かコヤンスカヤの狙撃が遅れ、否幻想弾は2発ともマスターに防がれてしまった
起きたことはもう覆らん、コヤンスカヤには後で事情を聞くとして今この状況をなんとかしなければならない。
せめてホルスターのデザートイーグルか懐の、もう一本のコンバットナイフを出したいところだが…
「今──」
心臓を狙った掌打を回避し、牽制のナイフを振るう
この老人から一瞬でも目を逸らせば終わりだ…!
やれやれ…
サーヴァントが居ることは分かっていた。
マスターを特定できたのはついさっき、こいつが倉庫街の方を見下ろしていた時だ。
それがまさかフーレン・アジャイルとは…
──フーレン・アジャイル──
表向きはツール家という一般の金持ちに仕える使用人兼用心棒。
今年の末に65歳となる
出場した武術大会等でほぼ優勝、準優勝を飾っており、その一切無駄のない動きは年齢を感じさせない、世界的にも有名な人間だ。だが──
…ここから先は切嗣からの情報ではなく教会の、代行者の知人から、酒の肴に聞かされたものだ(知人と言っても散々殺し合って結局決着が付かなかっただけだが)
50年ほど前、詳しい場所は知らんが日本の山奥に住む、とある少年が秘匿されるべき魔術の何かを見てしまったらしい。
当然のように教会は代行者を差し向け、少年を殺そうとした。
だが最初に派遣された代行者は返り討ちに遭い死亡、続けて派遣した2人目は重症を負って帰還。最後は治療を終えた2人目と新しく派遣された2人の代行者、計3人を組ませるという暴挙とも言える行動に出た聖堂教会だったが3人全員がやはり死亡している
その後しばらく身を潜めていた少年は何を思ったのかふらりと教会を訪れてこう言ったらしい
『僕はただ、師の技を、人生を、思いを、色々な人に知って欲しいだけ。師に誓ってここで知った神秘を口外しないと約束する。必要なら君らの都合の良い場所にでも引っ越そう』
だから僕に、世界中の人と関わることを許してくれ。と…
結局少年は教会の監視下に入り、戸籍や名前も変更。当時教会の一部構成員が住んでいた家に使用人として住み込みで働き始めたと言う。その少年の今の名前が──
「フーレン…アジャイル…!」
やれやれ、面倒なことになったな…そもそもとしてマスター候補にすら上がっていなかったコイツがどうやって聖杯戦争に参加できたんだ…?
突破口が見出せず、焦りと苛つきを覚えていたザイルとコヤンスカヤ。だが焦っているのは彼らだけではなく──
〜
「はぁっ!!」
微量ながら魔力を込めて突き出した拳がスティーブン…目の前の、右腕が義手の男の頬を掠める
「チィッ!」
義手の男はナイフを持ち直し、突き出した私の左腕を串刺し…いや、斬り飛ばそうと振るってくるのを空いた右手で妨害する。するとその妨害を分かっていたかのように私の足を踏み砕かんと間合いを詰めてくる。
近付いてくるのであれば対処はできる、はっきり言って近接戦闘にのみ絞れば私の瞬間戦闘力はサーヴァントであるライダーのそれを上回ることは実証済みだ。
が、しかし、ここぞという好機が訪れる瞬間振った拳は虚しく空を切るのみ、義手の男の…もはや予知能力を疑えるような戦闘能力にフーレンは密かに冷や汗を流した
ここまでやって攻めきれんとは…!
50年前、師より賜った八極拳の極意…かつて目の当たりにした師匠の技には遠く及ばないとはいえ、1日たりとも鍛錬を怠らなかったこの拳に曇りは無い。
間違いなく昨日よりも磨きのかかったそれが、全くと言って良いほどこの男に当たらないのだ
ナイフのせいで思ったように打ち込めていないというのもあるだろうが、それを差し引いても義手の男の対応力が高い。
一応、大きな反撃を許さず攻撃し続けることができているのは有利な点だが、それも長く続かないだろう
「ふっ…ふっ…」
『一撃、それで事足りる』
そう、鍛錬のたびに口にしていた師の言葉通り、この拳は初撃で終わらせることが前提となっている暗殺拳…故に持久戦には向かないのだ
結局『気』を上手く扱うことができなかった私はそれを魔力で代用しているが、私の魔術適性及び魔術回路は非常に弱い上に今はライダーというサーヴァントがいる…今の私は残り少ない燃料のレーシングカーを出力全開で動かしているようなものだ、老いという壁もある私に時間は無い
「せああああっ!!」
「く、おおお!」
ナイフと拳が空を
だめだ、やはり攻めきれん!かくなる上は…
50年前、師が見せてくれた光景が脳裏によぎる
あの、師を英雄たらしめる奥義…私も使えない訳では無い。あれならば──
「…」
だがそれを使うと言う事は50年前の誓いを破る事になる。
誓いに魔術的束縛は無いが、どちらにせよ使えばただでは済まないだろう
「ッ!!」
く…!?
ヒュッ、とナイフの切先が僅かに腕を掠める
私が遅くなったのか、向こうが慣れたのかは分からないが…もう時間が無いのは火を見るよりも明らかだった。
そしてその事実が、私の背中を押した…!
「──」
私は、決断した。
…ミラよ、血の繋がりが無いにも関わらず私を祖父として呼んでくれてありがとう、もうボール遊びは出来なくなるかもしれんが…まぁ部屋で一緒にお茶を飲むくらいはできるだろう。
「…!?」
ズシャッ、と右手から聞こえる不快な音、そして義手の男が声にならない驚愕の声を上げる。その隙を突き、男の義手接合部目掛けて衝打撃。機能不全を誘発させる。
「主人殿っ!?」
「騒ぐな!」
ライダーを一蹴し、ふと手元を見る
右手は…もう使い物にならんな、分かってはいたが…
ナイフが深々と手の平から甲へ貫通し、直後に先とはまた違った不快な音を立てて中指と薬指の間から真っ二つに裂け、血が噴き出す
だが、そんな些事など構わない。少しの間この男の動きを止めればいい
まだ動く3本の指で男の拳を捕らえ、私が唯一使える術式を50年ぶりに展開する
「術式展開…魔術回路偽造…」
牛若丸よ、常時の呼び名はライダーだったとはいえ、私だけでなくミラにも名を明かして接してくれたこと、私を主と呼んで付き従ってくれた事に感謝する。
「…ッ!!!コヤンスカヤ!!どんな手段を使っても構わん!コイツを吹き飛ばせ、早く!」
これから使う技の気配を感じ取ったのだろう、義手の男が叫ぶ
だが此処まで来て邪魔されてなるものか
「ッ!『霊裳重光──「令呪を持って命ずる!牛若丸!宝具解放!敵サーヴァントを止めろ!」
一画目の令呪が消え、ライダーの動きがほんの一瞬痺れたように固まる
「なっ…!?主人殿!今そんなことをすれば主人殿が──ううっ!?──『
「令呪を…!」
「神経系偽造、筋組織偽造、骨組織偽造、血管系偽造、血液偽造、リンパ腺偽造、臓器偽造──」
「くっ!『レオレオ!防御機能全開!!』」
「偽造完了確認、令呪解放…!」
申し訳ありません師匠…私は禁を破ります。全て私が未熟だった故、弁明の余地はありません。…お許しください。
二画目の令呪が消え、膨大な魔力が身体へと入ってくる。それはさながら、全身の穴という穴から溶岩が流し込まれるような感覚、身体が爆散するのではないかと誤認するほどの…だが──
「があっ!」
怯む事なくコンクリートの地を踏み鳴らし、体内に押し込めた令呪の魔力を全身から解き放つ
アサシンも、そのマスターも…!
長く生きた経験から来る直感か、武術家としてそのような何かを感じ取ったのか、本人すらそれは理解できていなかったが…確信はあった
貴様らはここで、
解き放った魔力がドーム状に広がり、半径数mを満たす
「かっ…!?」
範囲内にいた義手の男はもちろん、雨粒も、血の雫も、空気までもが、広がる魔力の塊に飲まれた瞬間、時間が停止したかのように固まる、そして──
「七孔噴血 撒きて死ね」
残った全ての力を左腕に回し、その硬直した身体の心の臓めがけて──
「『
───────一撃、打ち込んだ───────
狐?のお面が追いかけてくる夢を見て地味に怖かった作者のルルザムートです、ハイ。知人に指摘されたんですがザイル以外プロフィール書かないの?って言われて全く書いてない事実に最近気付きました、1話使ってキャラ設定集でも書こうかどうしようか…?
あと作者は銃火器に関する知識がうろ覚えというかにわかなので間違ってる可能性がありです。