弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
…第105話です、お楽しみください
C地区 レストラン街にて…
「あああああ!!!」
「おおおおお!!!」
激しく殴り合う、いや茨木童子が一方的に殴り続け、避け続けている。アサシンも攻撃してはいるが怒りのあまり眼中に入らないのか防ごうとすらしていない
有効打になり得そうな酒の宝具もあいつから噴き出す魔力の嵐で全部吹き飛ばされていて届いていないようだ
令呪のブーストをかけるか?だがもし仕留め損ねたら
(心配せんでええよマスターはん)
アサシン…?
と、こっちの考えを読んだのか令呪本を通してアサシンの声が聞こえる
(もうすぐ終わる、
「──なるほどな」
どうやらアサシンにも分かっているらしい
「シーさん…?」
「バーヴァン・シーだ、次そんな腑抜けた呼び方したらぶっ殺すからな
あと遥、お前の出番はまだ終わってねぇ」
齧り取られた部分の治療をしつつ伝えるべきことを頭の中で簡単に整理してから伝える
「…今度はあっちの鬼の方にも食べさせるってこと?」
なにを早とちりしたのかアサシンにも自分の肉を喰わせる気らしい、これだから影月家の奴はムカついてしょうがねぇな
「違ぇよマヌケ。お前も影月家の人間だったなら多かれ少なかれ伊吹童子の呪いを受けていたハズだろ
…どうやって解いた?」
60年前、伊吹山という特異な環境だったとはいえ影月に掛かった呪いはお母様でも解けなかったが目の前のコイツにはそれが無い、多分鍵になるのはそれだ
「呪いは、確か──」
「あううっ、うう〜っ!」
こっちはもうクタクタなのに目の前のコイツは全然平気と言わんばかりにひたすら殴りかかってくる。抜かれた骨を再生する暇も無い
「ふははは!緩い!緩い!緩いぞォ!そんなものか影月 彼方!」
「ちょう、調子に乗るな!」
全身から魔力を放出し手当たり次第に吹き飛ばす。これのおかげで酒の宝具は私に届かないが大したダメージにはなっていないようだ
「な、なんで…!」
この鬼はお姉ちゃんの肉を食べて強くなった、それは間違いない。しかしいくら強くなったところで殴ることしかしてこない鬼に負けるのなんておかしい
「はふ、はぁ、はっ」
なんだか、へんなかんじ、この気分、どこかで…?
「下がっとり茨木」
! また酒の宝具──
「わっぷ!…え?」
手を振った風圧で吹き飛ばそうとしたものの思ったような力が出ず、もろに酒を受けてしまった
「え、え?…え?」
「中身が乳臭い小娘だったんが悪かったんかなぁ、えらい時間かかったわ」
蕩けそうな快感が全身から力を奪い、気を抜けば眠ってしまいそうだ
「ど、どうして???」
今食らったから力が抜けた?ちがうちがうちがう、力が抜けたから宝具を避けられなかった!
「宝具は全部吹き飛ばしたのに!」
「いややわぁ、小娘うちの杯でさっき飲んだやないの」
さっき…?あ。
確かにさっきレストランの中でお酒を飲んだ、まさかあれも宝具…!?
「だました…!」
「騙す?鬼相手に何を期待しとるん、だいいち人間でも『今から毒飲んでくれ』なんて言う奴おらんやろ、おっかしいわぁ」
「んぐ!」
まともに動けない私へ酒呑童子は更にお酒を飲ませてくる
おいしい…ね、むい…
フラフラの身体を殺意でなんとか制御しつつ草薙を杖代わりにバランスを取る
「ふー…」
「ま、そんだけ飲んだら動けんやろ、うちだって動けんくなったんやし
茨木。…この小娘、どっか吹き飛ばしてくれへん?」
もう関心は無いと言うばかりに杯片手に酒呑童子が下がる、そして──
「茨木、童子…!」
「貴様がなぜ負けるのか、特別に教えてやろう」
どうやらもう勝ったつもりでいるらしい
…ふざけるな
こいつはお姉ちゃんの肉を喰った、ゆるせるものか、ゆるせないゆるさない、なにがあろうと
「おまえだけはしね…!」
『
「ぴきゃっ」
怒りと殺意で強引に草薙を振り回そうとした瞬間、突き破るように生えてきたよく分からない棘が身体の内側から自分を串刺しにした
お酒のせいか痛みもない、だが磔にされては痛み以前に動けない
「前置きとかどうでもいい!トドメ刺せ!」何するか分かんねえぞ!
あいつは…
異郷の魔術師のむすめ…?もしかしてアサシンを喚んだのは──
「ええい空気の読めない魔術師め、手出し無用だぞ!貴様が酒呑を召喚してなかったら八つ裂きにしているところだ!」
「…!」
魔力の流れが変わった、宝具がくる…!──あ、あれ?
「…貴様の敗因を教えてやる」
いつの間にか再生の力も、鱗の防護壁も、声すら出ない
燃える右腕、いや両腕を携え茨木童子が歩み寄ってくる
「それは貴様が『人間』である故よ」
「…っ?」
どういう──
「見るがいい、恐れるがいい!今一度、真なる鬼の姿を見せてやろう!十を数え、骨となるがよいわ!」
両腕が激しく燃え上がる、だがさっきのように巨大化はしていない
「ひとつ!ふたつ!」
1撃目が顎を下から掬い上げ、続く2撃目が私の身体を空中に追放する
「みっつ!よっつ、いつつ!」
空中できりもみ回転しながら吹き飛ぶ身体に追いついた彼女の灼熱の拳が地面につくことを許さない
「むっつ、ななつ!」
だが当の私には地面に戻ろうなんて考えはその時なかった
──人間、私が、人間。
「やっつ!ここのつ!」
最初の一撃から2秒も経っていない内に叩き込まれ続けた炎の連撃、小柄な女性の身体の中で行き場を失った灼熱が至る所から漏れ出している。そんな中でも
私は──
「矮小な人間の分際で!鬼を語るな小娘ぇ!」
『
10発目の攻撃の瞬間、身体の中に押し込められていた熱とエネルギーが一気に膨張し全身から炎を吹き出しながら吹き飛ばされる
ここまでされても痛みは無い、故に落ち着いて考えることができたんだ
『人間』という言葉の意味を──
「
静かな神秘に包まれた草薙を拾い上げ、既に見えなくなった影月 彼方への勝利宣言。
…そしてこの勝利の影響は他の戦場でも出始めており──
〜
G地区 オフィスビル跡地にて…
「山南さん報告が!大蛇の包囲網が全て…」
──よし綱さんがやってくれたみたいだ
「大蛇対応の隊士全員を呼び戻すんだ!戻ってくる彼らと僕らでシャドウサーヴァントを一掃する!」
「っしゃあ!行くぞおい!!」
アヴェンジャー不在によって戦力を分割せざるを得ず、劣勢にあった戦局は7体の大蛇消滅と共に完全に逆転。
あらゆる時代、世界から集められた万夫不当の英霊達と言えど今はただの操り人形であり、旗の元に集まった剣士たちには及ばず確実に数を減らしていったのである
「──ふむ」
彼方さんが死にましたか、予定通りとはいえまさか綱さん以外にアレを殺せる存在が出てきたのは想定外でした
妖精騎士トリスタン…いえ、魔術師バーヴァン・シー、彼女をモルガン陛下のオモチャとばかり思っていたのは間違いだったようですね
「うおおおお!!」
「────」
マシュさんを吹き飛ばした土方さんが好機とばかりに特攻してくるのを避けつつグレネードランチャーを撃って距離を取る
それにしても聖杯持ちだったとは…直接見たわけではありませんがここまでの無茶苦茶を可能にするにはもう聖杯しか無いでしょう
おそらくこの世界の物ではなくモルガンさんが作ったもの…
なんとしても回収したいところですがタイムリミットが迫っている
「これは…ちょっと無理そうですねえ」
空を見上げ、いずれ現れるであろう場所を見ながらコヤンスカヤは1人呟いた
〜
C地区 レストラン街にて…
「──勝った、のだな?」
もう起き上がって来ない、であろうな?
実を言うと内心少し、本当に少しだけアレに対する恐怖が残っているものの4つ程ビルを巻き添えにして吹き飛んだ彼方にその気配は無かった。どうやら今度こそ死んだようだ
「よ、よし…!よし!ふっ、思い知ったか!我らの力を!」
昂っていた霊基状態を元に戻す
「おつかれさん茨木」
「酒呑!…もう何度助けられたのか分からぬ、改めて礼を言う」
本人は否定するだろうが生前から何度も何度も酒呑は我を助けてくれた。…まさか現代で巡り合うなどとは思っていなかったが
「ええって、うちも茨木のお陰で現代で美味い酒、呑めそうやし」
「2人とも…怪我は無い?」
若干フラフラの遥が路地裏から出てきた
「我らを誰だと思っている、あるわけなかろう!…それより貴様の方が酷い顔をしているぞ」
女神…アルテミスとやらの力を今まで休みなく使い続けてきたのだ、なんの神かは知らんが人の身に過ぎた力というのは分かる
「ホント…?あっ…「っと、少しは足元見ろマヌケ、コンクリートとキスするつもりかよ?」
倒れかけた彼女を子猫をふん捕まえるように掴んで支えるバーヴァン・シー、隠してはいるようだがこっちも限界が近そうだ
「ありがとう」
「勘違いすんなよ。…まだ終わってないからな」
「…うん」
どうやら残っているシャドウサーヴァントとNFFウェポンと戦うつもりらしい、あれでは足手纏いになりそうだが…
「──茨木」
「ぬ!?」
聞き覚えのある忌々しい声…!
「綱か、まだ死んでおらんかったとはな」
こっちもこっちでミラ・ツールの肩を借り、足を引きずってこっちに来たらしい
「綱さん」
「…ここでいい、離れていてくれ」
文字通り足から崩れそうな死に体をコンクリートの壁にもたれかかる彼は…あと1分もあれば消え去るだろう。…その死にかけの男が今更何の用か?
「そして…酒呑童子、今回は「礼言うためだけに消えかけの身体引きずってきたんとちゃうやろ?礼が欲しくてやったやんやないし早う用件言っとき」
「…その通りだ、見ての通り俺はすぐに消えるだろう、これ以上この戦いに貢献できそうにない。だから「『代わりに戦って欲しい』…ってこと?いややわ、断る」
あっさりと一刀両断する酒呑童子だが綱も綱で『予想はしていた』といった表情
しかし出来ることがあるのならやらずに終わるのは間違いだ、武士としての責任感もそうだが何より己のミスで一般人とそう変わらなかったマスターを死なせてしまったことも後押しになっているだろう
「我もだ!断固断る!」
「…そうか」
…とはいえ彼女の力を借りるに値する対価を持ち合わせていない以上、交渉は続かない。こればかりは諦めるしか無いだろう
「ただまぁ…武士の代わりとしてやなく鬼としてなら、木っ端の十や二十、片付けてやってもええ」
「酒呑!?」
「酒呑童子…」
「興味無いとはいうても折角現界したさかい、戻る前に適当な肴見つけて酒を呑んでもええやろ。…至る過程で出た邪魔物は、なぁ?」
どうやらあと少しだけ戦ってくれるらしい彼女の言葉、現界時から殆ど表情の変わらなかった綱の口元が僅かに安堵の角度に吊り上がった
もちろん相手は鬼だ、気まぐれに攫い、犯し、喰らう悪。トドメに自分はもう何もできない、彼女が悪事を働いたとしても止める役目は他に押し付けることになるだろう
「ありがとう」
だがそれを推してなお、一時だけとはいえあの酒呑童子が味方に付いた。彼方が倒れた今、八方塞がりだった戦局は大きくこちらに傾いたはずだ
この場で唯一彼女の実力を知る人間である綱は、生前ではあり得なかった鬼への感謝の言葉を口にした
「────」
茨木にも声をかけようかと一瞬思ったが…俺が何を言ったところで彼女にとっては不快でしかない。このまま黙って「おい綱、我への言葉は無しか?」
そういうわけにもいかないらしい
「…お前と酒呑童子、バーヴァン・シーの機転で俺達は救われた。ここにいる者だけではない、人類全てが」
「うむ」
比喩でもなんでもない、ここで彼方を止めなければ地上にいた米魔術師連合軍は全滅。結果人類の未来は早々に絶滅へと確定していただろう
「だから」
「だから?」
礼を言ったところで茨木には火に油だ、だが酒呑童子の時と同じく彼女に返礼として返せる物は無い、だから。
「──死ぬな、生きろ」
「んな!貴様がそれを言うのか!?」
鬼か否か、それを決めるのは出生ではなく生き方だ。どんな動機であろうと彼女は10年間、米軍内で人間を守るために生き、戦ってきた。ならば彼女は『鬼ではない』のだろう。
生前に犯した罪は消えない、反英霊の彼女だ。しかしこの10年、守った分だけでも報われて欲しいという願いを込めてこの言葉を。
「──!────!」
当然怒り狂う茨木童子、もう目も見えず聞こえないが…少し、悪いことをしたな…
〜サーヴァント セイバー 渡辺綱 退去〜
「ええい待て!まだ終わっておらんぞ!綱ァ!
…おのれ、勝手に死におって!」
「茨木」
最後の最後で言いたいことだけ言って逃げられ、かなり腹の立っている茨木だったが唯一尊敬する彼女の言葉で我に帰る
「む、すまん酒呑」
「ええって。で、これからどうすん?」
「? どう、とは…」
「うちは酒呑みに邪魔なりそうな木っ端を潰してくるつもりやけど…来る?残る?」
!!!
生前と変わらぬ蹂躙の誘いに怒りなどあらぬ空へ、特に差し出されてもいない酒呑の手を握り締めて答える
「勿論!酒呑と共に行くぞ!」
「そ。…そんなら久しぶりに、2人で行こか」
「うむ!!!」
何を考えているか分からない酒呑童子と嬉しさが隠しきれない茨木童子が崩壊した街を駆けて基地の方へ
「ったく自由な連中だな、アタシも人のこと言えねぇけど」
杖に少しだけ体重を任せながらバーヴァン・シーが呟く
正直今すぐ倒れ込んでしまいたいがまだ終わっていない、まだやるべきことが残っている
「ミラ、お前はそこら辺に隠れてろ。アヴェンジャーが死んだ今お前が前線に出てくる意味も無くなったしな」
「え、でも「言っとくがにわか八極拳で戦おうなんて考えるなよ?ここの連中はどいつもこいつもお人好しばかり、ピンチの奴は放っておかない
…下手なことをして敗因を作りたくはねぇだろ?」
キツい言い方だったかもしれないがミラは年齢の割に周りがよく見えている。少なくとも上司を信じて全く疑わず命賭けてる米軍よりは冷静だからこれで良い
「分かった」
「よし…行くぞ遥」
「うん」
互いにボロボロの身体を支え合って基地、とは反対方向へ歩き出す
影月彼方に、眠りを。
上司が姑すぎてNFFに転職したい作者のルルザムートです、ハイ。
さむいよお、またまた出張中のワタクシですが室内のくせに気温が3度…1週間ここで過ごせと!?
あと茨木✖️綱のエミュ難しいネ