弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》   作:ルルザムート

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連続投稿ドドン!
第106話です、お楽しみください


第106話 はるか

米軍基地 正門前にて…

 

 

「ふははは、ははははは!!どけどけ人間共!巻き込まれても知らんぞォ!」

 拮抗状態にあった正門前の戦場は突如現れた茨木童子並びに謎のアサシンにより文字通り崩壊。そのまま滝を登るようにNFFウェポンの群れの中を逆走してコヤンスカヤと新撰組が戦っているG地区へと向かっていった

 

 

「嵐みたいな2人組だな…ウェイバー、どうなってる?」

『影月彼方と大蛇の反応が消えた、今お前達を救ったのは恐らく彼方を抑えていた戦力だろう

 ただ現地にハルカとバーヴァン・シー以外の魔力反応は未だに無い…』

「…そうか」

 

 

 セイバーのマスターはコヤンスカヤにレールガンで撃ち殺されたらしく、単独行動を持っているわけでも無いセイバーは恐らく生きてはいない、また彼方から感じた先の異常なパワーアップも伊吹童子が取り込まれたのなら説明がつく、アヴェンジャーとミラは…ここからでは分からないな、生きているといいが

 

 

「休んでる暇は無い…!隊を再編、基地の守りを固める!残っている脅威はアルビオンとオリオンだ

ウェイバー、アルビオンに有効打を与えられそうな手段を探してくれ!土方達が戻るまでここを死守する!

カドック、俺の部下を頼む!」

 

 

 あれだけ戦い続けた後でどこにそんな気力があるのか、アサルトライフル片手にクライムが基地内へと駆けて行く

「中将…!お、俺達も──「待て、お前達は医務室行きだ」少し休め

 立ちあがろうとした兵士の肩を抑えて止める

 

 

「ぎっ…痛っ…!」

「そんな状態じゃ足手纏いだ、休んでろ」

 

 

 改めて再認識するが米軍、特にクライムの直下部隊は彼の分身みたいな連中が大勢いる。魔術師にも多少狂ってる奴は居るが──いや、居ないな。他人のために躊躇なく自身の命を削れる奴は魔術師に居ない

 

 

 見習うべき…ではないだろう。およそ彼の部下には何か人として大切な物が欠落している、中心に居るのは勿論クライム中将だろう

「アスクレピオスが『病気』だと言い切った以上、まともじゃない…」

「? 何の話ですか?」

「なんでもない、それより死傷者の数と度合いの確認をしてくれ。応急処置しつつ医務室に向かおう」

 

 

 今も残っているといいが…

 

 

G地区 アパート屋上にて…

 

 

「…はぁ、やっぱり足りませんよねぇ」

 破壊されたレールガンを捨て、超至近距離での銃撃の応酬を繰り広げながらコヤンスカヤは呟いた

『時間』が来たのである

 

 

「誠に残念ながらこちらの戦場はワタクシらの敗北になりそうです」

「…っ?なんの話をしてやがる」

 お前まだまだやれるだろうが、と言いたげな土方さんを無視して全シャドウサーヴァントを撤退させ、NFFスペシャルは即時再生のみ停止。退却の時間稼ぎにはこれで充分です

 

 

「本当はもっと色々考えて戦うつもりだったんですがあなた方がみーんな戦闘狂ばかりで全部いらなくなってしまいました」

 はてさて良いやら悪いやら

 

 

「…もしもし慎二さん?ええ、彼方さんが死んだ以上は残るべきでは無いでしょう。()退()()()

 これ以上潰しあったところでもう利は無い、タダ働きなどごめんである

 

 

 意外なことに土方さんからの引き留めや質問の類は一切なかった。こちらの動きを怪しんでいるようですが…まぁ辿りつくことはないでしょう

「では皆さま、ごきげんよう♡」

 

 

『単独顕現 EX』

 

 

「………」

 コヤンスカヤは本当に撤退したらしい、意図は分からないが余力が尽きたということだけは絶対に無いだろう

「…考えるのは後だ」

 

 

 今は残存敵戦力を潰すことを最優先、無駄死にを減らすべきだろう

 無人となった屋上を後に、土方歳三は仲間の元へと合流。基地方面より現れた2騎のサーヴァントと共に残ったNFFウェポン殲滅にかかった

 

 

米軍基地 医療棟近辺にて…

 

 

「くそっ、時間切れか」

 先程までその場に居なかったはずの男の声、半狂乱になりながらもその方向に向けてガラティーンを薙ぎ払う

 

 

「フーッ!フ、ヴ…!」

 (理性)どころか全身までバラバラになってしまいそうな感覚を抑え付けながら前を見る

 

 

 間粡、慎二…?

「おめでとう、キミたちの勝ちだ。ただ抑止力に呼ばれて出てきただけのサーヴァントには無い『守るべき物』があったお陰でかな?

とにかく僕らは撤退するよ」じゃあね

 

 

 さっきまでの凶暴性はどこへやらアルビオンは借りてきた猫のように大人しくなり、バーサーク・オリオンと間桐慎二を乗せて離脱。周囲はあっという間にこれまでの平穏を取り戻した

 

 

「が、ぐ…!れ、がりお、さ…」

 車椅子の上の彼にはもう右腕と頭を繋ぐ僅かながらの胸部しか残っていない。僅かずつ再生してはいるものの──

 

 

 だめだ

 いくら泥の魔力で不死になっていたとしてもこれ以上捕食すればそもそも再生する身体が無くなってしまう

 抑えろ、抑えるんだ。私は妖精騎士、『後を頼む』と陛下から託された最優の妖精騎士だ。黒犬じゃない

 

 

 身体が勝手に、虫の息の彼へと吸い寄せられて行く

「ああっ…」

 拒絶してくれ、だめだと言ってくれ、理性が保たない。

 

 

 折角守り切ったのにこんな仕打ちは

「逃──」

 

 

 彼の身体に手が触れる

「──ああ」

 なんて美味しそうな「オラァ!!!」

 

 

 !!??

 普通の人間なら粉々になるような一撃に吹き飛ばされた

「バー、ヴァン・シー…」

 何かの魔術を使ったのか、もしくは彼女が無事だったことで安心したのか。少し、ほんの少しだけ理性が戻った。…気がする

 

 

「ったく、危なかったな。とりあえずお前の食欲はあたしが代わりに抑えてやる。いいな?()()()()()()()()()

 …どうやらかつて陛下がしてくれたのと同じようにギフトを使って抑えてくれるらしい。彼女曰く15分も保たないらしいが魔力さえあればレガリオさんが再生しきるのは不可能じゃない

 

 

「他の、戦場は…?」

「礼の一つも無ぇとはそれでも騎士かよ?…まぁいい、影月 彼方は死──いや排除した。コヤンスカヤもここと同じように撤退し始めた

あたしたちの勝ちだ。…今のところはな」

 

 

 ──そうか

 

 

 犠牲が出ている以上手放しには喜べないが…そうか、勝ったか

「よかった…む?」

 安堵の息を吐きながら寝そべったままの身体から力を抜いて、ふと気付いた

 

 

「太陽が…2つ…?」

 

 

予備司令室にて…

 

 

「影月彼方の反応消失。大蛇も消滅。

またコヤンスカヤ、並びに残存していたシャドウサーヴァントの完全撤退を確認。バーサーク・オリオン、間桐慎二、アルビオンも同様。残っていたNFFウェポンは新撰組と茨木童子、詳細不明のアサシンによって撃滅されました」

 

 

「正体不明のアサシン、か…分かった。安直に考えたくはないが味方だという予想が合っていることに期待しよう。

謎のアサシンについては新撰組に一任、司令部の人間でHOPEボーダーとの通信復興。それ以外は負傷者の手当と生存確認だ

 急げ、まだ戦いは終わっていない」

「はっ、ただちに!ベルベット参謀長!」

 

 

 …慣れないな

 

 

D地区 街跡にて…

 

 

 バーゲストのただならぬ気配によりバーヴァン・シーが彼女を救うために離脱したのは幸運だったかもしれない

 

 

 最初の一撃で粉々になったD地区の街はもはや瓦礫すら無く、この場所だけこの世から削り取られてしまったかのような更地が広がっていた

 人も動物も植物も、文化の欠片すらない更地を歩いてゆく

 

 

「やっぱり、居た」

 自分と瓜二つの顔をした、それでいて別人の彼女。影月 彼方が倒れている

 

 

 鼓動は無い、呼吸もしていない。間違いなく死んでいる彼女の身体が少し動いている

伊吹山山頂で見たようなケガレが欠損した足を治し、抉れた内臓や燃え尽きた眼球を治そうと蠢いている

 

 

「………」

 

 

 もしあれが影月 彼方という人間だったのなら、恐らく伊吹童子もここに居ただろう。だが霊基は消滅、力だけが残った

 神でも人でもない、渡辺綱が首を斬った瞬間に鬼としても既に死んでいる彼女の正体は──

 

 

「おや、こんなところで会うとは奇遇ですねぇ」

「──コヤンスカヤ」

 

 

 撤退したと思っていたがコヤンスカヤもこっちに来たらしい、目的は…彼方の回収だろうか

 …ここまで来て邪魔されるわけには行かない

 

 

「まぁまぁそんなに身構えないで下さいませ、ワタクシはただ彼方さんの死亡を確認しに来ただけ。少なくともこれ以上ここで戦うつもりはありません。…それよりも()()、いったいどうなっているんです?」

 

 

 どうやらコヤンスカヤは分かっていないらしい、それもそうか。ついさっきこうなったのだから

「彼方は、もう死んでる。でも伊吹童子が影月家に掛けた呪いは消えてない」

 目印として影月家に染みついた神の呪い。私のはアルテミスちゃんが打ち消してくれたけど彼方のは違う

 

 

「打ち消せるほど強い加護か、もしくは影月家が潰えない限りこの呪いは終わらない。これまで影月彼方として存在していたのは影月彼方の意思を持った『呪いそのもの』なんだ

 

 

 コヤンスカヤの用意した空っぽの肉体に『要らないもの』としてザイル・ニッカーが吐き捨てた『人への殺意』『神秘』『呪い』『影月彼方』…それがここに居る彼女の正体」

「ワタクシも知らないことを…」

 

 

 当然だ、変わったばかりというのもあるがこればかりは実際に呪いを受けた人間にしか分からない。実際呪いに引っ張られるカタチで鬼化していたし。

 

 

「それで彼方に何の用?死んだことを確認するだけならわざわざ来ないでしょ」

「いえ、ホントに確認するだけで、はい

『感知した結果死んでました』では感知できない者にとっては不充分なんですよ。

業務報告というものは受ける側が納得する方法で調べた情報でなくてはなりません。…それにほら、実際今動いてますし」

「…そう」

 

 

 意外と仕事人なんだこの獣…

 ひとまず戦う意思が無いことは伝わったので一安心。無情、冷徹であれど約束を破る人物で無いのはNFFボーダーに乗った時から知っている

 

 

「今度はこちらから質問をば。…何をするおつもりでここに?」

「それは…」

 ──別に、話してもいいだろう

 

 

「彼方を、完全に殺すため」

「具体的には?」

「彼方に憑いてる伊吹童子の呪いを私の中の月女神の力で打ち払う。私の呪いは月女神の加護で打ち消せたから出来るはず」

「ふぅむ」

 

 

 邪魔はしないでね、と釘になるか分からない言葉を刺して彼方の元へ

 …意識は、無いみたいだ

 

 

 話したいことがあった気がするし、意識が無くて良かったと思ってもいる。しかしここまで散々選択を後回しにしてきたのだ、どちらを望むにしても今更虫が良すぎるだろう

 

 

「解呪、開始」

 かろうじて人の形を保っている彼方を抱き抱える

 大丈夫だ、できる。10年前を思い出すんだ

 

 

 月女神の力をそのまま月光に変換するようなイメージ、ゆっくりと暗い部分を、影になっている部分を光で塗り潰すように

「ギッ、ガギ、ギャアアアアッ!?」

 

 

「うわっ!なんですこれ!?」

「ここにいる彼女は呪いそのもの、私がやろうとしてるのはそれを消し去ることだ。…有り体に言えば私はこの子の心臓を握り潰そうとしてることになる

 我慢して彼方…!楽になれるの、もう誰も憎まなくていい!憎まれなくていい!今度は一緒だから…!」

 

 

 再生しかけのボロボロの肉体では流石に抜け出せないらしいがそれでも力の限り暴れ、必死になってもがく彼方

 速く終わらせないと…

 

 

「っ…深すぎる」

 だがそう上手くもいかないらしい、私の時は上手く行ったはずの解呪ができない

 どうして…?アルテミスちゃんの霊基を貰った時どうやって呪いを解いたのかの記憶も貰っている。方法は合ってるはずだ

 

 

 言葉にするのは難しいが『月の光で打ち払う』という手段は間違っていない。それなのに何故…?

 先の見えない洞窟をひたすら進んでいる感覚、それがいつの間にか足踏みだけしている感覚に変わっていく

 

 

 呪いを摘出する?…いやザイルがやったようにただ追い出すだけではダメだ、消し去らない限り呪いのしわ寄せ彼方に戻る。でも、どうしたら──

「助言、いります?」

 ふと緊張感の無いコヤンスカヤが口を挟んだ

 

 

「お金なんて持ってないよ」

「お金はいりません、しかしワタクシ側の誰も彼方さんを殺しうる手段を持っていないのですよ

 ワタクシ達にとっても影月彼方は邪魔なので利害の一致、というやつです」

 

 

 もはやコヤンスカヤ達にとっても彼方は邪魔者らしい。…もう、居場所はないらしい

「──教えて」

 

 

 返答は早かった。ビーストと取引したら周りがなんで言うかなんて考えている余裕はないしあったとしても考えない。

本当に守りたいものを守るため、他の誰かを気にして迷うのはもうやめたんだ

 

 

「遥さん、貴女の呪いを解いたのは貴女自身ではなくサーヴァントアーチャー…オリオンに着いてきた月女神アルテミスですね?」

「そうだけど」

「なら原因はそれです。霊基を譲り渡さねばならぬほど力を使ったのなら少しでも月女神本来の霊基に戻す必要があります

 具体的には月女神の力を行使するにあたって()()()()()()()()()()()()()んです」

 

 

 …!

 それは考え付かなかった、でもそうだとして

「そんなの、どうしたらいいの?」

 10年間ずっと内包してきた月女神の霊基はもはや身体の一部になっている。今更元に戻すのは難しい

 

 

「考えている通り元に戻すのは不可能。しかし近い形に掘り出すことは可能です」

「余計な前置きはいらない、どうしたらいいの!」

 

 

 未だ苦しみ続けている彼方の前に感情が昂る、方法があるならさっさと答えてほしい

「ふむ、では結論から。遥さん、可能な限り貴女から人間としての部分を削ぎ落とします

 

 

 

 

「霊基復元は不可能、ですが不純物さえ無くなればかつての月女神と同じ力の行使が可能なはずです」

「削ぎ落とすには!?」

「うわっ、どうどう。落ち着いてくださいまし。自分で自分を削ぎ落とすなんてできませんよ、故にワタクシがヒトとしての貴女を削ぎ落とす──いえ、噛み砕きます

 

 

 ナイフで縦に裂いたような金色の瞳が怪しく私の眼を見通す

 10年前もたしか──

 

 

「ワタクシ、こう見えてビーストですので♡ヒトだけ殺すことなら右に出る者は──居るかもしれないですけどそうそう居ませんので♪」

「………分かった、やって欲しい」

「わあ即答、少しは危機感持つと思いましたが」

 

 

 おちゃらけた様子のコヤンスカヤだが商人としてか、はたまた揶揄うためか言葉を続ける

「逆恨みされてもイヤなので言っておきますと成功率はかなり低いですよ?影月遥という器が壊れたらアウト、月女神の霊基が呪いに押し負けてもアウト、妹を救いたいという想いが砕かれてもアウト、その他もろもろ失敗の要因になる要素は多く予想されます

 

 

 ──後悔、しませんね?」

 

 

 恐らくこれが私の、影月遥としての最後の選択だ。だが何度も何度も先延ばしにしてきたこれまでとは違う

「しないよ。…やって」

「ふむ、かしこまりました♪…では。

 前触れなく発生、肥大化した狐の尾が私と彼方を包み込む

 

 

 月明かりの導くまま、その手を伸ばした──




つい最近千和様の生誕祭があったと聞いてコヤンの下僕失格だと思い詰めていた作者のルルザムートです、ハイ。
2日連続登校、やったぜ。凍てつくような出張先でできることなんてスマホくらいしかないからネ!
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