弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
…第107話です、お楽しみください
「────」
とめたいと思っていたけれど
それでもとめられなくて
終わったはずの報復を
果たしたはずの復讐を
延々と繰り返し続けている
分かってる、ひどい八つ当たりだ。
でもこれをやめたら私は何を目指して生きればいい?
死にたくない、だが生きたくもない
姉に嫌われたくない、でも目的を失いたくない
これだけ無関係な人たちを殺しておいて無責任で虫のいい話なのは分かってる
でも私は幸せになりたい。ハッピーエンドがほしい
──もう殺したくない
「────」
皮肉にも姉以外で私を人間だと認めてくれたのはあの2人の鬼だけだった。もっと早く彼女達と会えていれば、結果は違ったのだろうか
「…今さら、どうにもならないよね」
人間どころか鬼としても生存できないような欠損を負った身体、それを主を失ったケガレがしつこく治している
もう自分ではどうにもならない力の塊を、まるで第三者が交通事故を遠くから眺めるように見ていた、その時
──た
「………?」
普通なら聞き逃してしまいそうな小さな音。どこかの誰かが針でも落としたような小さな音がケガレの向こうから聞こえた気がする
気のせい…?
「──ーな」
いや、確かに聞こえる。断続的に削り取るような音が。少しずつ大きくなりながら聞こえてくる
「──なた」
声のようなものも混じっている。くぐもってとても聞こえづらいが確かに──
「っ〜!!!っア…!」
全身が硫酸の海に取り込まれてるように熱い、獣の尾に生えた目から覗く捕食者の視線が視神経を通って脳を焼き、獣の唾液が喉を通って内臓の中で針山がのたうちまわるように跳ねている
目元から、耳から、鼻から、口から10年前より酷い量の血が出ている。
記憶も曖昧になってきた。苦しみのあまりか、実際に頭の中を噛み砕かれているのかはわからない
私はもうじき死ぬだろう。それでも──
「っ…かなた!!!」
自分自身が何者か忘れ始めていてもこの記憶だけは消えさせない
ようやく選んだ選択肢、死んだって手放すものか
さっきまでケガレに押し負けていた月の光が少しずつ強くなる。
人としての終わりが近づくにつれて彼女に少しずつ近づいて行く
もう少し、もう少し
「かなた!…っぐえ…!う、あああ!!」
千切れ飛んだ脇腹が月女神の霊基に置き換わる。それを皮切りに次々と私の人間だった部分が獣に抉り取られ、神のものへと置き換わる
──だからどうした
自分が誰なのかもうほとんど分からない、でも何をやるべきなのかは分かっている
「…伊吹童子、あなたに落ち度は無い。始めたのは私の先祖だ」
もう全て置き換わった、髪も瞳も身体も在り方も、影月 遥から月女神アルテミスへ。
…この記憶以外は、全て
「でも、もういいでしょ?もう放っておいて」
月の光に塗り潰されかけたケガレが明確な敵意を持って向かってくる
それを黄金の矢で切り払い、10年前と同じように弓を携え──
「いい加減に…!私の妹から出ていけぇ!」
『
月の光と家族への愛を乗せた最初で最後の1矢が、ケガレを完全に切り裂いた──
〜
D地区 街跡にて…
「ふむ?」
どうやら成功…したんですかね?少なくとも彼方さんは今度こそ完全に死んだみたいですが。
元々、影月 彼方の身体は人間というよりホムンクルスがベースである。ようは劣化のさらに劣化…
彼女の身体は人間ベースで作られたホムンクルス…を元に作られていた。…それならばすぐにガタがくるかと思ったもののこんな遠回りするとはコヤンスカヤも予想外だった
で、問題は遥さんですけど
「────」
姿形は今のところ影月 遥のままだが気配は完全に女神のものでありコヤンスカヤの殺戮技巧も反応が無い
むしろあれだけ人間の部分を溶かしたのにヒトの姿を留めているだけでも凄いことですよ、愛されてたんですねぇ彼方さん♡
…さて
動き出さないか警戒しつつ遥の脈を測ってみる…
「んー、こっちも死んでますね」
だからって動き出さない保証はないですけど
最悪の場合、月女神アルテミスが再臨して向かってくる可能性も考えられますが…ひとまずこれでいいでしょう
例の作戦、全人類生存権剥奪戦争が
とはいえ月女神の霊基が目の前に落ちているのならそういうの関係なしに欲しいと思うのもコヤンスカヤである
なにせ仕入れ先を考えたり交渉するまでもなく、道端に落ちているものを拾うだけで利益に繋がるのなら尚更だ
「…いえやめましょう」
約束したばかり、と首を振って伸ばしかけていた手を引っ込める
一度した約束は違えない、おそらくこの信用があったからこそ遥さんもワタクシに話したんでしょう。人間ならここで裏切る場面でしょうが生憎とワタクシは約定を守りますので♡
踵を返してその場を去ろうと振り向いた瞬間
「おっと」
顔面目掛けて飛んできた鉄球を蹴り返す。もちろんお気に入りのハイヒールが傷つかないように丁寧に
「帰るつもりでしたのに」
こちらの存在を察知したのか単純にたまたま見つけただけなのか知らないが怒り心頭といった様子でアマゾネスの女王さんがこちらを睨みつけている
「彼女に何をした!?」
うわぁすごい剣幕、鎖を握り潰す勢いですねぇ。ただまぁ意思疎通ができるのでバーサーカーでもマシですね
「彼女の頼みで不純物を取り除きました。それ以外は特に何も?」
再び飛んでくる鉄球をそこに落ちてた彼方の遺体でガード…しようとしたが粉々になったため1発目と同じように蹴り返す
あ、これはマズい!
「!!!」
パッキンと嫌な音がして鉄球が持ち主に返っていく
ヒールが欠け──
「──て、ませんね、モロに接合部に当たったと思ったんですが」
どうやらこのハイヒールを作った人物は相当優秀な人材らしい、戦争に巻き込むのが惜しいですし回収したいですがどこの誰だか分からない職人を今から探して間に合うのか…
「コヤンスカヤっ!」
「ん?ああはい、居ましたねそういえば」
彼女を相手にする必要は皆無ですしこのままサヨナラするとしましょう。…それにしてもワタクシの対戦成績って対バーサーカーが多くありませんかねぇ?
『単独顕現 EX』
「くそっ!逃げられたか!」
付近に獣の気配は無く、今度こそコヤンスカヤは撤退したらしい
それよりも…
眼下にあるのは倒れたまま動かない影月 遥と既に殆ど朽ち果てて塵になっている影月 彼方の遺体…
──ここで何があったというんだ…?
「遥様…」
嫌な予感がして脈を測る
直接会うことはついぞ無かったもののアルテミス神殿で召喚された時、私は聞いた
『この子の力になってあげて』
…アタランテも同じ声を聞いたのかは分からないがあの神殿で聞こえる女性の声など1人しか思い浮かばない
「!」
脈は無かった、呼吸も止まっているし心音もしない
「…っ」
守り切れなかった、アルテミス様は私とアタランテを信じて招んだのであろうに
「私は──「大丈夫?」
!?
ありえないはずの声に釣られて顔を上げる
「遥、様?」
影月 遥が海のように透き通るような瞳でこちらを覗き込んでいる
そんなバカな、今も呼吸をしていない、身体もこんなに冷たく──
「…もしかして貴女と私は知り合いだったのかな、だとしたらごめんね
もう何も分からないんだ。自分の名前も、ここにいる意味も、この力のことも」
何も分からない、何も思い出せない、でも。
何をやるべきか、それだけは分かってる
「────」
「っ…?今なんと──」
「ごめんね、私、行かなきゃ」
ふわりと重力を無視して遥の身体が浮き上がる
空を飛ぶ魔術というのは本来そう簡単にできるものでは無い、それはペンテシレイアも知っていた
だが遥はそんなこと意に返さずそのままふよふよと幽霊のように空を飛んで、行ってしまった
…見失うわけにはいかん、追いかけよう
基地の仲間に無断で離脱したペンテシレイアだったが、その頃基地では彼女の存在が忘れられている程の異常事態が起こっていたのだが──
「かなたっ!」
全てのケガレを打ち払って転がり込んだのは…あの伊吹山だった
あ、あれ?
伊吹山のはずなのだが、どこか自分の知る伊吹山と違う気がする。
解呪のための記憶障害だろうか、だとしたら何故自分にはここが伊吹山だと分かったのだろうか
気持ちのいい風が太陽のない青空の下に吹き焦れて、林に囲まれている草原がそよそよとなびく
…ああ、わかった。違和感の正体が
草原の中央で楽しそうにお喋りしている2人の少女、1人は分からないがもう1人のことはよく分かる
「ねぇ彼方にとって
「…ある意味、そうなのかも」
多分始めから居たんだろう、私の宝物、この世で1番大事な妹、影月 彼方が隣にいた
「嫌なこと、辛いこともたくさんあったけど、お姉ちゃんが毎日一緒に居てくれたから、毎日連れてきてくれたこの原っぱが、私は好きだよ」
にこやかにそう言う女性にはいつか見た、神の力に犯されて狂っている姿は無い
「追いかけっこして、泥団子作って、トカゲとか捕まえて、永遠にこの時間が続けばいいのにって思ってた」
2人の視線の先には記憶の幻視…楽しそうにくすぐり合う彼方と少女がいる
多分今くすぐっている方がかつての私…なのだろう
「私もだよ、でも」
結局、交わした約束を果たせないままここまで来てしまった
「私はあなたを迎えに来れなかった」
あの時ああすれば良かったとずっとずっと、何回も何回も、様々な場所で後悔を重ねてきた
「ごめんなさい彼方、あなたがこうなった原因を作ったのは私よ」
今謝らなければ、今言わなければそのまま妹が消えてしまいそうな気がして、ずっと会えなかった『ごめんなさい』を伝える
「うん、知ってる。正直あのままだったらずっと恨んでたかも」
「う…」
ばっさりと言われてしまって顔が見れない
いや私が悪いんだから当然だけど──…?あのままだったら?
?が浮かぶ私の頭をずいっ!と抱き寄せて彼女は笑う
「でも今こうして迎えに来てくれたじゃん、お姉ちゃんは約束を守ってくれたよ」
「っ…!?」
それでいいじゃない、と微笑んでいる彼女の顔が。まるでぐしゃぐしゃのフィルターがかかったように見えなくなる
「私、あなたを見捨てたよ?」
「うん」
「それから何度も、あなたの前から逃げ出したよ?」
「うん」
「わたし、わたしは」
「あなたは私のお姉ちゃん、だいすきなだいすきなお姉ちゃん!ずっと前からそうなんだよ!」
恨まれていると思っていた、約束を破って見殺し同然に置いていった彼女に、でも…ああそうか
思えば一度だってかなたは私を本気で攻撃してきたことなんてなかった、互いに神の力を持っていたとはいえ元々親和性の高い伊吹大明神の力と後からもらった月女神の力じゃ勝負になんてなるはずがなかったのに
「あ。でも鬼に自分の身体を食べさせたのはちょっとイヤだったな」
「ご、ごめん、あの時はもう手段なんて考えてなかったから…」
「…うん、いいよ、許す。全部許した!これでこの話はおしまい!ね、いいでしょ?」
「っく、えぐ、かなた…!わたし、は」
いつだったかの記憶とは反対に、溢れ続ける涙を彼方が、私の妹が拭ってくれる
「ほらほら泣かない!笑顔笑顔!ぐわーっと笑顔!笑えー!」
「わっ!ひゃっ!?ちょ、あははははっ!くすぐった…わはははは!」
いったいどこから取り出したのかねこじゃらしみたいな草で的確に私の脇をくすぐってくる彼方
「あはははっ!」
「えいえいー!わっははは!」
原っぱの真ん中にいる姉妹と同じように笑って、遊んで、この時間がずっと続けばいいと思い始めたころ──
「ははっ、ふう、お姉ちゃんはこれからどうするの?」
「え?私?私はえっと…」
正直何も考えていなかった、だってここで死ぬつもりだったし──
そう思うが早いかバチコーン!と擬音が飛び出しそうな勢いでおでこを引っ叩かれた
「あう」
「…死ぬつもりだったんだね、まったくもう」
「う」
ぐ、地味に痛い、言葉もビンタも…
「どうひっくり返ったって私に、影月 彼方にこの先は無いし生きるつもりもない」
あっさりと言ってしまう彼女に思わず食い下がる
「待って、私は今コヤンスカヤと取引したの!何か助かる方法が「仮に助かったとしても魔術師達や米軍は私を許せないよ、私は無関係な人たちをあまりにも多く殺しすぎた
特にクライムって人は私が生きていると知ったら全力で殺しにくると思うし」
「…」
それは…
「でもお姉ちゃんは違う、妹の私と敵対してまで米軍や魔術師達のみんなを守ろうとしたしアマゾネスのバーサーカーを始めたくさんの英霊がお姉ちゃんのことを知ってる。まだ…命を捨てるには早すぎるよ」
目の前の、かなたの身体が崩れていく
「かなた」
「お姉ちゃんにはお姉ちゃんを支えてくれる人がたくさんいるよ、だから死ぬなんて言わないで、私の分まで生きて、楽しんで」
足先から、塵なのか土くれなのか分からないものになって消えてゆく
「ま、まって…!」
「しわくちゃのお婆ちゃんになるまでこっちに来ちゃダメ、私はお姉ちゃんが来るまで──えっと、あるかどうか分からないけど地獄の閻魔様?のところで償うよ。…それが終わったらまた一緒にお喋りしよう」
じゃあね、とまるで遊びに出かけるように軽い一言と共に彼女が消える、消えてしまう
ひどいよ、かなた…置いていくなんて
今度こそ一緒に居ると決めていたのに
「ねぇお姉さん」
ふと私とよく似た少女が私の手を引いているのに気付く
「あの、妹を探してるの。私に似ててちょっと怖がりな子、見なかった?」
いつの間にか原っぱからも『妹』が消えていたらしい
「──ここには居ないよ、それとその子は怖がりなのかもしれないけど…この世の誰よりも姉を大事にする、とても、良い子だと思う」
こんなことを言ったって気休めにもならない、だが選択する前の自分がそこにいるのだから、言わずにはいられなかった
「だから、だからあなたも妹を大切にしてあげて、妹を裏切らないで、かなたを、助けて」
涙の枯れ果てた瞳で、精一杯訴える。少女は終始困惑していたが妹を助けてほしいと言うのは伝わったのか「うん!」と、今の私には無い元気を持って答えてくれた
「──ありがとう。」
それが聞ければ、もうここに居る理由は無い
まだやるべきことがある
「幸せになる前に、もう1人の家族を、ザイルを止めなくちゃ」
「っ…?今なんと──」
「お姉さん、どこにいくの?」
「ごめんね、私、行かなきゃ」
ここが心象風景だからなのか、身体が自分の意思で簡単に浮かび上がる
「あの、お姉さん!」
ん…?
「私、妹を、彼方を守るから!」
「────うん、お願い」
もう1人の私に託し、私は向かう。行くべき場所へと
〜影月 彼方 死亡〜
〜
米軍基地 予備司令部にて…
「ベルベット、参謀長…なにか、策は、」
「策でどうこうできる次元じゃ、無い」
司令部にいた米軍、魔術師、後からやってきた新撰組隊士、その全てが小さなノートパソコンのいち画面に釘付けになっており、やがて1人、また1人と凝視の対象が窓の外の景色へと移ってゆく
「キリシュタリアさんは、ボーダーのみんなはどうなったんだよコレ…」
「さぁな、宙の仲間は全員無事で、応答が無いのは機材の故障と決めつけたいが。」
魔術師と米兵が半ばヤケクソ気味に話している中、私はただ茫然と画面に表示された残り時間を見ていた
「────これ、を」
これを、どうしろと言うんだ?
窓から空を見上げれば見えるのは2つの太陽。…うち1つはどんどん大きく、いや近付いてきている
それは太陽ではなく、太陽よりもっと小さく、恐ろしいもの。かつて地球の支配者だった恐竜を絶滅させた物と同質のもの。
『彼』の臣下としてウェイバー・ベルベットに諦めるという選択肢は存在しない、が。この状況で即座に動ける程の精神力は無かった。当然だろう、なんなら気絶した魔術師もいたくらいであるし強い方である
「──っ、突っ立っている場合じゃないな…!基地内にある全ての車両と航空機の所在を1分以内に明らかにしろ!ここを離れる!」
そんな中どうにか正気を取り戻し、放心状態のみんなに指示を飛ばす
「し、しかしあの規模は──」
「ならお前はそこで何もせず突っ立ってればいい!どれだけ絶望的だろうと何もしないでいい理由にはならないだろう…!クライムを呼ぶんだ、急げ!」
その言葉を聞いた人間、魔術師、サーヴァントが弾けるように動き出す
そうだ、まだ終わっていない
「諦めてたまるものか…!」
:《
残り予測時間…あと10分09秒
銭湯で風呂上がりにコヤンスカヤと温泉牛乳を飲みたい作者のルルザムートです、ハイ。
このくそったれシフトを設定したやつの家宅を捜索したらぜったい◯リファナ出てくるだろ!?という地獄の中書いており、ひとまずナルガクルガは中断してますがそれでも更新速度が下がると思います、後少し、後少しなんだ…!