弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
第12話です、お楽しみください
ツール家の屋敷、庭にて…
「ずあっ!」
街路樹より一回り小さな木に昨日よりも磨きのかかった掌打を叩き込む
木といっても大人が金属バットで数回殴れば折れてしまいそうな木だが傷は付いていない、彼の放った一撃により打ち込まれた衝撃は木を傷つける事なく幹から根へ、根から地面へと逃がれ、大地を揺らす
「…ふむ、今日はよく揺れる」
衝撃を『気』に見立てた八極拳の鍛錬だ、実際にこのような鍛錬があったのかは知らないが…私にはこれが1番合っている
「じいや!鍛錬はもう終わったのか!?」
屋敷の中からミラが走ってくるのが見える
「ああ、終わったよ」
私が師から教わった練習方法は1日1撃、木を傷つける事なく掌打を打ち込む…というもの
故にすぐ終わるが、その1回分にその日の鍛錬が全て詰まっているので初めの頃は打つだけで神経がすり減ったものだ
「なーじいや、ミラにも八極拳教えてよー」
「こればかりは何度頼まれても無理だ、諦めなさい」
ぶーたれるミラの頭を撫でて、ふといつも持ち歩いてるはずの緑色のボールがこの子の手に無いことに気付いた
「そういえばミラ、もしかして何か遊ぶ以外に用があったんじゃないか?」
ボールを使うにしろ使わないにしろ、遊ぶ時は必ずボールを持っているのがミラだからだ
「あっ!そうなんだ!今神父様が来ててじいやを呼んできてって、今玄関に────じいや?」
「…ああ、ありがとうミラ、すぐに出るよ」
神父様、か…
「…ミラ、少し待っててくれ」
「うん?うん、分かった!」
暖かな日差しの差す庭にミラを待たせ、屋敷に入って玄関に向かう
「…」
玄関に近付くに連れて足取りが重くなる
…日本で聖杯戦争があったのは知っている、そして終わって殆ど時間も経っていないこの時期に教会が人が寄越すというと────
「今も昔もあの教会は変わらんな」
どう考えても良い話ではない、早々に引き取ってもらおう
開けたく無い心境を押し潰して扉を開け、外に出る
「…おや、神父様に教徒の方々お揃いで…?教会を空けてまでいらっしゃってこんな老いぼれに何の用かな?」
「回りくどいのは性に合いません、単刀直入にいいますよフーレンさん」
先頭に立った神父が言う
「聖杯戦争に参加していただきたく、お迎えにあがりました」
「開口1番それかね、断ると言ったら?」
「申し訳ありませんが
彼の言葉に思わず頭をかかえる
…全く、舐められたものだ
「もはや剥がれた化けの皮を被り直すこともしなくなったか、エナ・アルバート…君の祖父とは確かに教会の監視下に入るという約定を交わしたが服従するなどと言った覚えはないぞ?」
言葉だけでなく、50年前の約束は書類にも残っている。もちろん見返したところで服従、もしくはそれに準ずる言葉は書かれていないし、浮かび上がってもこない
だが怯むことなく神父は言葉を続ける
「応じて頂けないのであれば代行者を差し向けることも厭いません、触媒はこちらで用意しました。サーヴァントを召喚し、聖杯戦争への参加を。」
「断る、老い先短い人生を馬鹿げた殺し合いで縮めたくはないのでね、第一に代行者を差し向けられること自体が疑わしい」
そう言うと神父はため息を吐いてそれを否定した
「実際に、こうして連れてきていますよ?」
即座に神父の後ろの教徒から放たれる強烈な殺気、そしてそれと共に繰り出される打撃の1撃を見てから受け流し、扉をノックするよりも軽い力でその教徒の胸を叩く
「…!?かっ…!…ッ…!!」
寸分違わず打ち込んだ衝撃は肺を麻痺させ、呼吸を止められた教徒はその場に崩れ落ちる──が、手加減したこともあってかすぐに立ち直る
ふむ、代行者だったか…
「次は完璧に止めよう、それでも良いというならば向かって来なさい」
力まず、だが決して殺気は抑えず、神父含めた教徒達を睨みつける
「師から賜った八極拳の真髄、
鈍器を叩き付けたような殺意の嵐を浴びせられた代行者は少なからずたじろいでいたが、その中で神父だけが動じることなく変わらぬ口調で語りかけてきていた
「確かに神に仕える者としては下の下ともいえる手段ですが…聖杯が現れるとあっては教会としても動かない訳にはいかないのです、一応保険としてキャスターのマスターもこちらに付けていますが…あのマスターは様々な意味で3流もいいところ、貴方のような
「…私の知ったことでは無い、参加はしな──」
「代行者を差し向ける対象は、何も
「──」
瞬間、
ガンッ!
「いきなり殴りかかってくるとは…怖いですよフーレンさん?」
「黙れ」
ビリビリと鉄を殴りつけた反動が拳を伝う
なんだこれは…盾か?いったいいつから持っていた…?
いや盾だけでは無い、左手に構えた真っ赤な盾とは別に彼の右手には刃渡り70センチはある盾と同じ真っ赤な
…?この剣以前見たような──今はそんなことどうでもいい、重要なのは──
ギリ…と自分の歯軋り音がやけに大きく聞こえ、脳裏にミラの顔が過ぎる
「貴様…それでも神父か?」
「一応は、ですね?まぁそんなことをすればもはやこちらもただでは済みませんが…それ程までに切迫しているとお考え下さい」
…
ただ代行者と戦うだけなら負けはしないだろう、だが暗殺者の如く四六時中ミラを狙われては流石に守り切れない
「冬木の聖杯戦争で優秀な魔術師の大半は死亡してしまいましたからね…1年未満という異常な
「…」
…選択の余地無し、か
「…分かった」
そう答えると剣と盾が消え、また神父の顔がただの不快な笑顔からニンマリとこの上なく不快な笑顔に変わるのが見なくても分かった
「ありがとうございます、ではこれを」
「これは?」
神父が差し出したのは布に包まれた細い棒状の何かだった、形から推測するに筒のようなものに見える
「触媒です、霊脈の位置はまた後ほど連絡させていただきます」
最初と同じ笑顔に戻った神父はぺこりと一礼をし、教徒達を引き連れて去っていくのを──私は引き留めた
「…待て」
「おや?如何されましたか?」
どうしてもこの男に聞きたいことがあったのだ
「…そこまでして何故聖杯を求める?いくら聖堂教会でも最初からここまで無茶はしないだろう
それを押してここに来たということはこの行動は貴様の独断によるものだ、違うか?」
そうだ、聖堂教会はあくまで
「それに、だ」
何故聖杯を求めるのか?その質問をしてもう一つの疑問が生まれた
「何故私にやらせる?ここまで派手にやるくらいならひっそりと自分が参加すればいいだけの話ではないのか?私が勝ったところで聖杯は貴様を認めはしないと思うが」
これだ、聖杯を求めるというのなら他人任せにする時点で間違っている、だから質問した──だが
「何故だ?答えろエナ」
「…そんなことですか、簡単ですよフーレンさん」
振り返って笑う彼の口から出た言葉は耳を疑うものだった
「
「…なに?」
そもそもとして聖杯を渡して欲しいなんて言ってないと思うんですがね?と頭をかきながら神父は言う
「どう言う意味かな?」
「今回の聖杯戦争には『異物』が混じっています、本来聖杯なんて誰の手に渡っても私には関係ありませんがその『異物』だけは例外です、絶対に聖杯を渡すわけにはいきません」
しゅいん、と電子的な音を立て神父の手に先の剣が現れる
「『異物』がいくつあるか、女神──いえ神はお答えになりませんでしたが…しかし『異物』である以上は倒すべき『悪』であり『敵』です、ご安心下さいフーレンさん」
淡い緑色に発光する赤色の剣を振りかざし、神父は言った
「私は世界を救う『勇者』ですので」
「…そうかい」
そこで今度こそ神父は教徒達と共に去っていった
…私には神父が言っていることは殆ど理解出来なかったが──
「…私とキャスターのマスターは囮か」
恐らく何らかの形で神父も参戦してくる、という事実はなんとなく理解できた
信用できぬ奴ではあるが…もし『異物』とやらの正体が50年前の『化物』のような存在ならば共闘も考えなければならんか…今、できることをしておくかな
神父達の姿が完全に見えなくなったのを確認し、触媒を包んでいる布を解いて中身を確認する
これは──
「…笛?」
〜
3日後、自室にて…
「精度は…お世辞にも良いとは言えんな」
教会から送られてきた使い魔のカラスをぼんやりと見ながら1人呟く
…まぁマスターが揃った時、教会から知らせを受け取るためだけの使い魔だ、精度を求める必要は無い、か
ふと、窓から庭の方を見る
「すごいすごい!」
「ふふん、凄いでしょう!」
会って1日も経っていないというのにライダーとミラはまるで昔からの友人のように遊んでいる、幸い屋敷の庭は四方を高い塀に囲まれている、ライダーが実体化していても何も問題はない
…歴史に名を残した英雄に失礼かもしれないが、孫がもう1人増えた気分だ
実際のところ、ミラと一緒になって子供の様に遊んでいるライダー…牛若丸に彼の心は助けられていた
もし召喚した時点で牛若丸が英雄らしい態度や振る舞いであったのならば、彼はきっとサーヴァントに仕えていたかもしれない…それくらいに英雄を、英霊という存在を認識していた
「ライダー!私もやりたい!」
「いいですよ!じゃあまずは1枚から挑戦してみましょう!」
「む…」
皿回しをしている牛若丸とそれを憧れの目で見るミラ
皿回しと殺しの技では大きく違うが…その構図はふと50年前を思い出させた
『師匠!やっぱり師匠のパンチは最強です!』
『また来たのか、麓の教会に行くようにとあれほど…第一に弟子とした記憶は無い』
「どのような形となっても、人を魅了して止まないのは英雄共通なのだな…む?」
山登りの様子を映していたテレビから嫌なアラーム音がし、画面が切り替わる
『速報です、F地区○○ブロックの路地裏にて爆発が発生。付近にいる方はただちにその場を離れ自宅、もしくは付近の指定避難所へ避難するようお願いします。テロの可能性もあり非常に危険です、繰り返します。ただちに避難して下さい』
「…」
そのニュースの内容に彼の表情は険しいものへと変わる
…遠くは無いな
しばらく考え、やがて席を立つ
まだ報告書の記入は終わっていないが…なに、どうせ提出先はあの教会だ、別に構わんだろう
ペンを置き、庭へと向かう
聖杯戦争のような殺し合いで無くとも生きている以上は死ぬ危険がある、そう頭が認識してからの行動は早かった
「あ、じいや!」
「主人殿!業務が終わられたのですね!」
出迎えてくれる2人、その2人に自分でも分かるくらい自信に満ちた表情で答える
「ふ、実は全く終わっていない」
「「え!」」
「だが仕事なら夜でもできるだろう、私も息抜きがしたくてね…仲間に入れてくれないか?」
年甲斐もなく、久しぶりに遊びたくなった。何せ明日無事か分からないこの命だ、今を楽しんでおきたい
「「もちろん!」」
降り注ぐ暖かな日差しの下、広い庭を走る
鍛えているとは言え年齢もあって20分も持たなかったが…その時の私はとても幸せだったと思う
「聖杯戦争、か」
それから少しの間、私は…いや、私達は聖杯戦争のことを忘れて過ごしていた。別に教会の意に背いてやろうなんて思っていない、聖杯を渡さなければいいのだからこちらから攻め込む必要は無い
…だが事はそう上手くも行かないようでその2日後、とある来訪者が運命の針を動かし始める
「やー、こんにちは?おじいさん、多分マスターだよね?」
「…ライダー」
「…ッ」
咄嗟に臨戦態勢に入る私達を見て目の前の男は慌てて静止しようとする
「待て待て待ってくれ、オジサン戦いに来たんじゃないんだ、交渉しに来たんだよ!」
「…交渉すると言うのに名も名乗らない者の戯言など信用できるとでも?」
ライダーが刀を抜きつつ言い放つ
「あーそりゃそうだ、うん。オジサンはランサー、真名をヘクトール…んでその証拠としてこの槍、どう?信じてくれた?」
「────」
〜
G地区 とあるオフィスビル前にて…
「…ここが密会場所か」
断るつもりだった、災害の獣なんて言われたところで私にはそれが真実かどうか分からない、だが──
「ゆくぞライダー」
「はっ…」
英雄が命を掛けてまで伝えに来た話を、私はどうやっても否定することができず、今ここにいる
『近々ゼロリスクっていう団体がパーティ開くみたいでね、そこなら人に紛れてこっそり会うこともできるんじゃないかってオジサン思ってね』
「…」
令呪隠蔽の白手袋を確認し、建物に入る
…もう、後には退けそうにない
夏ジャンヌ30連で来ず絶賛絶望中の作者のルルザムートです、ハイ。
なんとかお山の工事前に書き上げられた…今日(11/6)から1週間何もできなくなるので申し訳ありませんがしばらく更新が止まります、宜しくお願いします