弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》   作:ルルザムート

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9月になってしまった。
第122話《A》です、お楽しみください


第122話 A『勇者の死』/B『新しき支配者』

F地区 路地裏にて…

 

 

時は少し遡りザイル達がいるかもしれない美術館へ向かう途中のこと。

 

 

「…なぁ、土方」

「なんだ」

「俺は…部下達とその家族達の希望になれていたのか?

 俺はあとどれだけ戦うんだろうか」

 

 

部下の前では決して見せないクライムとしての人間の顔、怯えていたり怖がっているようにも見える普通の表情を貼り付けた彼がすがるように彼に質問した

 

 

「…さあな」

「俺はもう、戦いたくないんだ」

「………」

 

 

別に、特段理由があったわけじゃ無い。誰にだってふとした拍子に今の自分に対して深く考えることがあるだろう。今のこれもそれと同じ類のものだ

 

 

「自分が傷つくのはどうでもいい、だが部下が、仲間が…俺に希望を見たまま命を投げ出すことに、もう耐えられない」

 

 

10年前、あいつは言った

『国民もアメリカも弟も、もうどうでも良くなってるんじゃないか?』

 ああ、確かに殆どお前の言った通りだった

一つ違う点があるとすれば──

 

 

「俺が守りたかったのは国でも国民でもない。

…エナだ」

 俺が守りたかった宝物はずっと前に死んだ

 

 

「あいつがどうやって死んだのかも、俺は知らない、知りたくもない」

 今思えばザイルはエナを殺していなかったかもしれない、俺と違ってエナを狙う理由は無かっただろうしもし殺していたのならもっとそれをネタに揺すりをかけてきていただろう

 …なんにせよエナはもう戻らないが。

 

 

「………」

土方は何も言わない、路地裏の向こうに見える美術館の裏口を背にただクライムの話を聞いている

 

 

「宝物を失ったまま、死んだ部下の宝物を背負い、国のためだと、国民のためだと、自分を騙して戦ってきた。

 …この戦いはいつ終わる?この戦いが終わったとして、次は何と戦うんだ、人間か?獣か?」

 

 

この怯えも震えも、いざ戦いが始まればきっと『クライム中将』という勇者に押し潰されて消えるのだろう

人らしさが消えるのが分かっていても前へ進まなければならないのは10年経っても、いや歳を重ねるごとに辛くなるばかりだ

 

 

「もう俺には生きる理由も戦う理由も無いんだ

だがクライム・アルバートは背負ったアイツらの希望を捨てられない、他人から背負った希望だけで戦っている」

「…そうだ、それが軍人だ」

「軽く言ってくれるな、お前みたいに愚直になれれば良かったんだが」

「………」

 

 

10年間付き添ってくれた部下でも市民でも無い彼は次の言葉を待っている、きっと言いたいことが分かっているのだろう。だがそれは誰かに促されて言うものでは無い

 

 

「──土方」

「なんだ」

 

 

 自分の中の勇者がただのクライム殴っている。言うべきじゃないと、そんな資格は無いと、既に消えかけているクライムに馬乗りになって殴り続けている

 

 

黙れ…黙れ…黙れ…

 

 

「………」

既に痛みを感じなくなったはずなのに酷く頭が痛い、吐き気もするし目眩もする

10年以上戦い続けた勇者が願いを否定している、それを口に出すということはその全てを裏切ることになると「お前、歳はいくつだった?」

 

 

「…?」

 

 

いきなり飛んできた素っ頓狂な質問に殴り続けていた勇者の手が一瞬止まった

 

 

「な、は?なんの話──」

「質問に答えろ、歳は?」

「…34だ、最も死んだ身体でそう名乗っていいのかは分からないが」

 

 

「そうか、好きな食べ物は?」

「おいなんのつもり「いいから答えろ、料理を知らなくても甘いものが好きとか答えられるだろう」

 いったいなんなんだ…

 

 

おかしくなったのかと聞き返したくなるもののいつにも増して威圧感を前面に出している土方に渋々答える

「…特に無いが強いて言えば刺激の強いもの、辛いものと酸味のある食べ物は好きだな」

「そうか」

 

 

「いい加減に答えてくれ、なんのつもりだ」

「悪く思うな、こうでもしなければお前は勇者として俺と会話していただろうしな」

 …!

言われてみればさっきまでの不快感が消えていることに気が付いた

 

 

「少し、俺も独白すると近いうちにお前は死ぬだろうと前から思っていた

いやむしろもっと早く死んでいた」10年前に。

「………」

 

 

「それに待ったをかけたのは俺だ、ミラ・ツールの持っていた聖杯の片割れで俺とお前を復活させたのは俺だ。だが勘違いするんじゃねぇぞ

 俺はそれが間違いだったとは思わない、その選択を否定はしないし誰にも否定させない。

 

 

 他が何と言おうとあの行動が正しかったと俺が認めているんだ

 でも正しさが全てじゃない、間違っているとわかった上で選ぶ奴もいるだろう。人それぞれなんだ、選ぶ基準は。

 …だから今選ぶんだ、お前の道を」

 

 

「おれ、の…?」

「そう、お前の道を。お前が選びたいと思った道を言え

今は、今だけはサーヴァントではなく、新撰組副長としてでもなく、

ただの男としてお前と向き合おう

お前の選択は──いや、お前の願いはなんだ」

 

 

「────」

 

 

『誰にだって1つくらいワガママを言う権利はあるのよ?』

 

 

 …ああ、確かにそうだ。これは俺の我儘だ、正しさなんてカケラも無い我儘。

「──聞いてくれるか?」

「ああ」

 

 

 俺は、

「俺はもう、楽になりたい…!戦いたくない!希望にされたくない!銃も仲間も部下も魔術師も英霊も!何も見たくないし関わりたくない!何もせず立ち上がらず、今すぐ死んでしまいたいんだ…!」

 

 

気付けば子供の時ですら殆ど流れなかった涙が

ぽつぽつと顔を濡らしていた

 ああなんだ、死体になっても涙は出たのか。それにしても──

 

 

「それが答えか、分かった。なら──」

 

 

言った。初めて…初めて自分の本音を。仮面の中に囚われていた錆びついた本音を彼に伝えた

 例え軽蔑されても、呆れられても、粛清されたとしても、俺はこの行動は『して良かった』と思える…特に確証は無いがそんな気がする晴れ晴れとした気分だ

 

 

「…クライム、今日ここで死ね」

「──お前は、俺を許してくれるのか?」

「ああ。お前はもう充分だ、充分戦った。新撰組でもねぇのによくこれだけ戦い続けた」

「…ありがとう」

 

 

「マスターが戦う事を放棄するなんて土方歳三は許せねぇだろうが…」

 っ…

 

 

「しかし今の俺はお前と10年一緒にいただけの男だ、だから…お前の願いを叶えるのに協力はしてやる。」

「…!」

 

 

「だが最後の責任は果たすんだ、お前はお前の願いを叶えるために全てを捨てる覚悟を持て。

その覚悟を持って──何がなんでもザイルを殺せ、あとのことは俺に任せろ」

「土方…」

「お前の背負う希望と戦いは、俺が引き継いでやる」

 

 

 

 

 

この令呪を切れば、俺は死ぬ

ようやく終わる、ああそうか

 

 

「ありがとう、土方

俺は…もう死んでもいいんだな…」

 

 

 

 

 

「──!────!?」

「〜〜〜!?──ッ!」

 

 

ミラ・ツールの悲鳴、部下の助けを求める声、何かを切り裂く音、もはや今の俺にはなんの感傷も湧かない…というと嘘になる。だがもう迷わない

 

 

 許されたいとは思わない、正しいことだとは思わない、これは俺の願いであって正しさなんてない。…でもどうしてだろうか

 

 

声が聞こえなくなった、ミラも部下も、全てが屍へと変わったのだろう

…最後の令呪が足を腕を、体の全てを動かす

 

 

 ──これで最後。

 

 

《ケリをつけよう、ザイルと。そして俺自身に。》

 

 

F地区 美術館跡地 地下施設

擬似鋳物工場内 加工ラインにて…

 

 

「っと」

八極拳女の残骸に足を取られかけながら、クライムの攻撃を受け流す

 

 

 ──思ったよりダメージが大きい

左側の義手は完全にただの重りと化しており指先1つ動かない、どうやら神経接続部分を狙われたようだ。これではいくら義手を付け替えたとしても無意味だろう

 

 

コンバットナイフ1つで攻め、守り、返し、牽制全てを担って戦うには少々無茶が過ぎる、おまけに──

 これは…多分眼球の神経もやられてるな

 

 

 今の自分は左腕と左目を失った状態だ、普通に考えて戦うべきじゃない

それにクライムは既に最後の令呪を切っている、一旦逃げて身を隠せば動力源である魔力が尽きて勝手に死ぬだろう。──だが退かない

 

 

データ送信を妨害されるから。…違う

この場所を知られたから。…違う

俺とコヤンスカヤの真の目的をバラされるから。…違う

 

 

 違う違う違う、そんなちっぽけなものじゃ無い

 

 

 あいつは、クライムは勇者すら捨てて立ち、俺を殺そうと向かってきている

 大切な何かを失い、その後に手に入れたものさえ捨て去った勇者でもなんでもない男が、ただ俺への殺意という執着心だけでここにいる。そんな奴から逃げるなんて、そんな奴との殺し合いを避けるなんて

 

 

()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()

 

 

互いに弾切れ、残っているのは今も尚甲高い音を立ててぶつかり合っている2本のナイフのみ

 ──そうだ、これでいい

 

 

「まだ終わるな、まだ楽しんでいたいんだ」

死体へと急速に向かっていきながらもその意思も、殺意も、決して衰えない

 

 

「お前の瞳に、俺が映っている。いいぞ、まだ終わっていない」

10年前…いやもっと前から演じていたであろう勇者の仮面は既に砕け、今日初めて見る『ただのクライム』には勇者と変わらずザイルの姿しか見えていない

…それを見て頬が釣り上がる

 

 

 ──これまでとは全く違う感覚

 

 

奴のナイフが額をかすめ、血が流れてくる

 

 

 殺してやるという執着心が人の形をして俺を見ている

 

 

「ガフッ…ゴボッ、お、オオオオオ!!!」

 

 

 崩れたかけた身体を跳ね上げて、俺の命を刈り取ろうとしている

──それがうれしい

 

 

コヤンスカヤに出会う以前、殺すこと以外に道を選ばなかったザイルという人間をずっと見つめ続け、追い続けた男の最後の選択

 

 

 …なぁクライム、本当は気付いているんじゃないのか?

 

 

「ぜっ…ぜえっ…ぐ、やれやれ!これが軍の英雄の姿か!?」

「もう勇者は終わりだ。俺は…クライムだ!!!」

 

 

 お前の妹を殺したのが俺じゃないってことを。

 

 

 ケリをつけたいんだろ?分かりやすい(目的)としてお前の勇者生命を支えていた俺と。…実は俺もなんだ。

 

 

「やってみせろ…!クライム・アルバートが初めて通そうとしたワガママが俺に届くかどうか…!」

 

 

 ずっと俺を追い続けてくれたお前とケリをつけたいと思っていた。

 

 

「届く…届かせる!お前をバラバラに切り裂いて、俺は俺の全てに幕を引くんだ!」

 

 

 ありがとう、俺を憎んでくれて。でなければきっとザイルという人間は影月 彼方という怪物に喰い尽くされていたに違いない

 

 

「ハッ…できないことを言う癖は、未だに治らないらしい」

「最後に治ればそれでいい!」

「ふふ、言うようになったな?」

 

 

 さぁ、行くぞ。…最後の殺し合いだ




コヤンスカヤのドレーになって調教と評して顔面膝蹴りを喰らいたい作者のルルザムートです、ハイ。
クライムと土方の会話の一部分を以前に少し書いていたのですが見返してみたら78話…実に40話以上前でした(20話くらい前の感覚だったんですがねぇ…)
あとHOPEボーダー&ストームボーダーvsNFFボーダーの描写は迷いましたがAルートでは書かないことにしました。Bルートでぜったい書くし似たシーン何度も書いても、ねぇ?
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