弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
第124話《A》です、御楽しみください
F地区 美術館跡地 地下施設
擬似鋳物工場内 製造ラインにて…
『
…ペンテシレイアの持つ2つ目の宝具。
かつてトロイアを救うために率いた12人の戦士達を真名解放と共に呼び出す召喚型宝具
規模は違えど土方歳三の『誠の旗』やイスカンダルの『
また解放と同時に『アマゾネスの戦士』から『アマゾネスの女王』としての側面が強くなるからか霊基にも変質が認められ、かつてのアキレウスが見惚れたような美しさが前面に現れるという
もちろんバーサーカーとして現界した彼女自身それを認められないため、解放すれば瞬く間に霊基は崩壊し退去を始めるだろう
だが月女神との約定を果たすため、彼女は自分自身のルールを迷いなく破ったのだった
「ザイルさんっ!!」
『殺戮技巧 A』
鎖を引きちぎり展開可能な銃器を最大展開、女王とアマゾネス12騎を蜂の巣にしながら影月 遥の首を蹴り砕く
「ごほっ…クソ、どいつも、こいつも邪魔ばかり…」
ぐらりと崩れ落ちかけたザイルの身体を滑り込みで抱き支える
数えるのが面倒になるレベルで急所を複数…これはもう──いえ
「時間がありません、率直に言います。このままでは貴方は死にます」
「…知ってる」
「まだ生きていたいですか?」
「………」
「カルデアのマスター…藤丸立香と同じやり方で私が貴方を取り込めば延命はできます。ただ私自身が人間に対して猛毒でもあるので人間性は間違いなく喪失するでしょう」
「──いい、やめておく」
助かる手段が残っている以上一応は提案したが…ザイルの返答は予想通りのものだった
「人間性の無い怪物は蛇神みたいな反面教師でうんざりするほど見たし…多分お前の言う人間性の喪失っていうのはそれより酷いんだろう」
「ええ、その通りです」
「なら、俺はこれでいい」
「………そうですか」
「それにしても、ここで遥が来るのは予想外だった」
「生死確認の際、念入りに頭でも踏み潰しておけばこうはならなかったでしょう。…責任は全て、この私にあります」
「遥の状態は俺も知っていた、あれで動いてくるなんて普通は予測できない、気にするな
…バーサーカー、そこにいるか?」
「ああ」
「俺の後ろの扉、その先に核発射データを送信している通信室がある。ロックも外した。…止めたければ好きにしろ」
「そうさせてもらう」
こちらを見ることもなくバーサーカーが扉の向こうに消える
止め方なんか知らないだろうが残り時間を考えれば破壊し尽くして止めるのは難しくはないだろう
「あとは…そうだな…コヤンスカヤ、お前はこれからどうする?」
「そうですね…貴方との契約もこれで終わりな以上この世界に留まっている理由はありませんし、また新しい取引先を見つけますよ」
「………『貴方以外に仕えるつもりは無い』とか言って欲しかったが」
知らないうちにやたら図々しくなったザイルにほんの少しだけ笑ってしまった。契約当時と同一人物とは思えない
「流石に自惚れすぎでは?…ワタクシは常に需要のある場所でビジネスを展開する。今回はまぁ、少し長く同じ場所で商売していただけですから」
「やれやれ…」
目の前の契約者から血と熱が急速に失われていく
おそらく3分、いや1分後にはもう彼はこの世に居ないだろう
「ですが契約はまだ継続中です、最後に何か望みがあれば。」
「望み、か」
そのまま死んでしまいそうに瞳を閉じ、何かを考えるザイル
そして──
「…ボーダーの俺の部屋、角のタンス下から2段目に服が入ってる
遺体を葬る時、その服を一緒にしておいてほしい」
服…?
「分かりました」
「あとは…もういい、もう充分貰った。
充分楽しんだとは言えないし満足行く終わり方でも無いが…これでいい。ありがとう」
「文句言いたいのか感謝したいのかどっちか振り切ったらどうですかねぇ?」
「やれやれ…感謝してるさ、仕事のことも…娯楽のこともな…これで契約終了だ。今までご苦労だったコヤンスカヤ」
「………お疲れ様でした、ザイルさん」
獣は動かなくなった契約者を抱き締め、もう届かない労いの言葉をかけるのだった
〜クライム・アルバート 死亡〜
〜影月 遥 死亡〜
〜バーサーカー ペンテシレイア 退去〜
〜ザイル・ニッカー 死亡〜
〜タマモヴィッチ・コヤンスカヤ 消息不明〜
〜
J地区 米陸軍駐屯地 車両倉庫内臨時執務室にて…
「カドックさん、また魔術師が遺体を巡って抗争を…!」
「またか?ったく、戦争が終わって殆ど時間も経ってないのに…この時間ならバーサーカーが居るはずだ、連絡して指示を仰ぐんだ」
「了解!」
米軍の英雄クライム・アルバートとバーサーカー土方歳三の奮闘により戦争が終結してから1ヶ月が経過した。
大勢の人間とサーヴァントが関わり、数えきれない死者を出したこの戦争のその後を簡潔にまとめようと思う
・魔術師と米軍について
両陣営大きな被害を受けたものの人的被害は開戦前の予想より低かった、これは魔術師と米軍が上手く連携を取って戦えたのが大きい
…が、あくまで人的被害のみだ。米軍はクライム中将という核を失って殆どが心神喪失状態、また魔術師達もキリシュタリアというリーダーが意識不明になってからというもの神秘の独占…特に神霊伊吹童子を宿していた影月 彼方の残骸(ほぼ原型無し)を奪い合っている始末
道満とカイニスが抑え込んでいるようだがキリシュタリアでなければ沈静化は難しいだろう
・現存しているサーヴァント達について
現界し、力を貸してくれたサーヴァントにも例外なく多数の犠牲が出たが生き残った者もいる
まず土方歳三、現在は死亡したクライムに変わって米軍を立て直そうとしており新撰組隊士も時々見かける、何があったのか彼は多くを語らないがクライムに託されたのだと…
ギリシャで召喚されたサーヴァントで生き残ったパリスとアスクレピオスは戦争終結から間も無くパリスのみ退去、役割を終えた以上残っている理由も無いとアポロン神も言っていた
アスクレピオスは相変わらず軍医として今日も基地と街を走り回っている。たった1日だったとはいえ戦争の爪痕が1ヶ月で消えるはずもなく、一帯から患者が居なくなるまでは残ると言っているらしい
カイニスと道満は土方歳三の持つ聖杯で現界中だ、道満はともかくカイニスに至っては隕石破壊の際に両腕が霊基ごと欠損した上に獣の持つ呪いの侵食を受けて退去寸前だったがキリシュタリアの無事を確認するまで残ると決めたらしい
バーヴァン・シーは妖精の怪力と譲り受けた魔術を活かして破壊された街の復興作業に勤しんでいる。もちろん現存する妖精なんて魔術師達にとって伊吹童子に劣らず宝の塊みたいなもので狙う奴も出てくるだろうがバーゲストと彼女のマスター、そしてカルデアのモルガンが睨みを利かせている限り心配はしなくていいだろう
茨木童子は…分からない、受肉している以上どこかで生きてはいるはずだが戦争後に姿を見たものは居ない
…余談だが伊吹童子が使っていた草薙の剣は彼女が持ち去っているとバーヴァン・シーが教えてくれた。少々不安ではあるが一般魔術師の手にうっかり渡ってしまうよりはいいだろう
・生き残った人々、及びビースト陣営に加担していた2名について
HOPEボーダーはNFFボーダーに撃墜されており、僕が見たのはボーダーの残骸だったが幸い撃墜直前まで生き残っていた乗組員は殆どがボーダーから脱出しており、重傷を負ってはいたもののオフェリアも生きていた
正直心強かった、キリシュタリアが目覚めずペペロンチーノも死んでしまった今、魔術師のまとめ役が僕になってしまってとても荷が重かったから
現在は復帰したオフェリアを僕とウェイバー・ベルベットで支えながら魔術師達をなんとか統率している
次にベリル・ガットと間桐慎二のことだがベリルに関しては敗戦の空気を早々に感じ取ったのかNFFボーダー消滅と同時に姿を消しており消息不明、本人の性格からこれ以上攻撃してくることは無いとオフェリアは言っていたが…
間桐慎二はビースト側に加担していたことを認め、現在は基地地下の留置所へ自主的に入っている。米軍魔術師問わず彼に殺された者も大勢いるため所在どころか生死も秘匿扱いになっており知っているのは僕とオフェリアとウェイバー、土方歳三と…あとは何故か間桐慎二と共に自主謹慎している衛宮士郎、そしてそれを説得する遠坂 凛と間粡 桜の7名だ
・カルデアについて
異世界から救援のために駆け付けてくれたカルデアだがNFFウェポンにより被害を受けており特にボーダーへダメージは深刻なものだ
美術館地下の兵器廠を利用して修復作業に移っているがまともに飛ばすのにあと半月、元の世界に戻るには1ヶ月かかるらしい
もちろん魔術師達に知られるわけにはいかないのであまり進んでいないと言うのもあるが。
あと書くかどうか迷ったが一応書いておくと僕に出会った
何を言っているのか自分自身理解できないがカルデアの一員として動いているカドック・ゼムルプスと今こうして米軍内で資料をまとめているカドック・ゼムルプスが出会い、会話をした
姿形はもちろん使う魔術、言葉に声、魔術回路まで完全に同じだったのは今思い出しても鳥肌が立つ
…だがここまで同じというなら自分を知ることのできる良い機会でもある、帰る前に模擬戦を申し込んでみるのもいいかもしれない
向こうの僕にとっても絶好の機会のはずだ、断られはしないだろう
・冬木市の聖杯について
まもなく儀式が始まる時期のはずだが予測に反して沈黙を守ったままだ
とりあえずはこのまま様子見を続けるしかない
…あわよくばこのまま何も起こらなければいいんだが
・ザイルとコヤンスカヤについて
土方歳三によると獣のマスター、ザイル・ニッカーはクライムと彼に続いた30人の兵士とミラ・ツールにより撃破されたらしい
クライム含めた32名の決死の攻撃により、知らず知らずのうちに終焉に向かっていた人類史はなんとか生き残ったと言う
またマスターであるザイルを失ったコヤンスカヤはそのまま退去…ということになっているが事実はもちろん違う
これもまた土方歳三からの情報だがコヤンスカヤ自身に人類を攻撃しようとする意思はそこまでなく、ザイルの意思を尊重して彼の望みを叶えようとした結果の行動のようだ
彼が死んだことでこの世界に残っている理由も無くなり『近いうちに完全にこの世界から手を引く』と先日土方と僕の前に現れて宣言した
(現れた瞬間気が気じゃなかった)
「………こんなところか」
ペンを置いて軽く背伸び、傾けた椅子から転げ落ちそうになったのを慌てて戻す
大変なのは恐らくここからだ、もちろん戦争よりはずっとマシだがビーストという強大な敵が居なくなった今、魔術を知りすぎている米軍と既に抗争が始まっている魔術師達の着地地点をそろそろ考えなければならない
「カドックさん、緊急です!キリシュタリアさんが目覚めました!」
「! そうか、すぐに行く」
軽く身支度を整えて医療棟へ走る
…そういえばコヤンスカヤは『近いうちに手を引く』と言っていたが…ザイルがいない今、彼女は何をしているんだ?
「カドックさん?」
「ああ、今行く」
〜
そして…
I地区 米陸軍管轄下墓地にて…
「──ここで銃ぶっ放すのはやめてくださいよ?」
「お前が撃たない限りそれは無いから安心しろ」
時計は午前3時少し前、奇妙な時間に墓参りに来た土方歳三とばったり出会した
「ワタクシをなんだと?…まぁ、丸腰なのは信頼の証と捉えておきましょう」
「…結局ここに埋めたんだな」
「ええはい。本人の希望で。ワタクシもどうかと思いますが」
クライム・アルバートと同じ墓地に…それが以前の契約者最後の願い。
「まったくもう、なーにが『服を一緒に』ですか。管理がずさんすぎて修復に手間取ってしまいました」
10年前の服なんかとっくに捨てたと思っていたのに律儀に保管…言って下されば虫食い対策くらい教えましたのに
かつて自分が買ってあげた洋服1セット。
緑と灰色のラインが交互に入ったボーダーTシャツに青いイージーパンツと白いカラーシャツ、スニーカーも添えて今この下でザイルは眠っている
「米軍管轄下の墓地にどう埋めようか考えてましたが…まさか手伝っていただけるとは思いませんでした
どういった風の吹き回しで?」
「…下手に問題を起こされるよりはいい、今お前とトラブルを起こしている余裕は無いからな」
どうやら米軍も米軍で戦争の爪痕は深く残っているらしい。…新撰組副長が米軍の復興というのもおかしな話ではあるが。
「というかこのまま米軍で第二の人生を始めるつもりですか?」
「…どうだろうな、少なくとも奴に変わる次の世代を見つけるまでは
「クライムさんが死を選ぶぐらいですからてっきり米軍を託されたのかと思ってたんですけど?」
「…土方歳三は別の時代の別の国で既に終わった人間だ、道は作るが歩くのは俺じゃない
俺がやるのはクライムから託された肩書き背負える奴を見つけて渡すことだ。あいつは遂に最後まで見つけられなかったからな」
「…ご立派なことで。」
「お前はどうする?近いうちに手を引くと言っていたが」
「用は今ので完全に済みましたし、これでこの世界とはサヨナラです
望月千代女さんの退去も確認済ですしワタクシの役目はもうありません
また気長に需要がありそうな世界を探しに行きますよ」
「そうか」
…おっと、そうでした
「1つ忘れ物がありました」ポイッ
「忘れ物?…っ?」
キープしつつ結局使わなかった聖杯の片割れを彼に投げ渡す
聖杯といえど片割れでは商品価値もダダ下がり、
それならさっさと手放すのが吉でしょう
「10年前諸事情で真っ二つになった聖杯の片割れです
埋葬支援のお返しはそれでしておきます」
ではこれで。と土方さんに軽く挨拶をし、墓地を後にする
…また暇になりましたねぇ
とはいえ仕事というものは与えられるものではなく探しに行くもの、ここでこうしていても始まらない
「さて、次はどこへ行きましょうか」
新たな仕事、新たな契約相手、新たな取引先を探しにNFFサービス代表は1人呟き──
『単独顕現 EX』
その世界から、姿を消した
最後の時はコヤンスカヤに膝枕されながら「…よく頑張りました」って考えの読めない表情で言って欲しい作者のルルザムートです、ハイ。
ええーというわけでAパート《人類勝利END》はこれで終わりです
もちろん話自体はこれで終わりではなく、Bパート…つまり《人類敗北END》も書いていき、それが終われば正真正銘この2次創作は終わりになります
Bパートでは人類が負けた後の話の他にAパートであまり描写していないHOPEボーダー、NFFボーダー、ストームボーダーの後半戦の様子を書いていきたいと思っているのでよろしくお願いします