弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
F地区 ノーア秘密基地 ザイル専用スペースにて…
ビーッビーッビーッ
2個目のいちごミルクにストローを刺したところで鳴り出す警報音
「やれやれ、今度はなんだ」
「ふむ?どうやらここを嗅ぎ付けた方がいる様子で。…おっと?」
「勿体ぶらなくていい、誰が来た?」
まだここのヒントは出してなかったハズだが
「映像ありますよ、ご自分でどうぞ♪」
「見せろ………やれやれ、お前か。…地下基地内に出せるだけNFFスペシャルを出せ、シャドウサーヴァントもだ
ボーダー側に出してる物も今すぐ全て呼び寄せろ、もう隠す必要もないからな」
「かしこまりました♡…では迎え撃ちましょうか」
それぞれの持つ飲み物を飲み切り、支度を始めるコヤンスカヤとザイル。
そばにあるアナログテレビの画面、そこに映された映像には10年前と変わらない軍人の姿が見えていた
「早くここまで来いクライム。人類を救いたいのなら、な…」
〜
戦艦兵器廠にて…
「シャドウサーヴァントには近付くな!
「お前達はヤガとカリを片付けるんだ!アトランティス兵は俺と土方でなんとかする!」
一歩、たった一歩兵器廠に踏み込んだだけでシャドウサーヴァントとNFFウェポンの強烈な歓迎を受け、クライムと土方率いる米兵新撰組混合隊の動きは完全に止められていた
「なんてこった…最悪のパターンだ!」
「副長、突破は無理だ!一旦退くしか…!」
「だめだ。新撰組とクライム隊を撃退するためだけにここまで出してくるのは異常だ、ここで退けばコヤンスカヤとザイルの思惑通りに事が進む
何がなんでも突破しろ!」
確かに土方の言う通り、ここに投入されている戦力はざっと見積もっても米軍基地にバラ撒かれた質量の倍以上はある。恐らくHOPEボーダー側の戦力をこちらに回されているのだろう
ボーダー側は既に決着がついたのか…?乗務員達は無事なのか…?
「! 中将!」
「…! があっ!!」
振り抜かれた棍棒を払いのけ、一瞬無防備になったアトランティス兵の口に向けて2発撃ち込む
「クソが…!キリがない!」
新撰組とクライム隊、兵器廠に入る前から既に疲弊している彼らにとって無尽蔵に湧き出すサーヴァントとNFFウェポンはこの上ない障壁として立ちはだかっていた
こっちが1体アトランティス兵を倒している間に新しい個体が3体出現…これじゃ進むどころか全滅だ…!
「せめてあと少しこっちに戦力があれば…!」
殲滅はできなくとも道さえ開ければいい、ほんの一瞬開けば──
「ッ、天井を落とす!ロケット弾持ちは集まれ!土方、援護を!」
「ああ分かった!」
「崩落と同時に俺と土方でここを突破する!以降は新撰組と共にNFFウェポンを足止めしろ!」1体も通すな!
「「「了解!」」」
全員でここを通り抜けるのは不可能だ、ならば極限まで戦力を絞って少しでもすり抜けるしか道はない
…果たしてそれでザイルとコヤンスカヤを止められるのかどうかは──
「──止めるしか無い!無反動砲射撃用意!」
「俺とクライムでビーストとマスターを止める、ついて来れそうな隊士は来い!」
「撃てェッ!」
6発のロケット弾が型をくり抜くように隅へ命中し、HOPEボーダー発進によって崩壊しかけていた天井は完全に崩落、そして──
「ついてこい土方!」
「ああ!」
瓦礫によってほんの一瞬動きが止まったNFFウェポンの隙間を縫うように走り、そのままロケット弾を発射。扉付近に落ちてきた瓦礫を吹き飛ばして転がり込む
「突破したのは俺たちだけか」
「らしいな…山南、指揮を頼む」行くぞ
「………」
瓦礫で塞がれた向こうからは今も戦いの音が続いている
──命が尽きる声も、僅かながら混じり始めていた
「クライム!今は「分かってる!!」
これで最後、これで最後なんだ。俺は自分のために仲間を裏切るんだ、希望を裏切るんだ。最後だからそれができる。
弾の無くなった無反動砲を捨てて走る。マシンピストルから弾丸を廊下にばら撒き前へ、前へ
カンッ
「空洞…!そこだ!その壁を破壊しろ!そこに通路がある!」
「任せろ!」
壁にしか見えないそれを蹴り抜いて隠し通路に突入。殆ど使われた形跡のないそこを突っ走る。突っ走って──辿り着いた
「やれやれ、お前に言うべきことは2つだ
まず扉を蹴り開けるのはやめたほうがいい、足を痛める
そしてもうひとつだが──ああクライム、10分遅かったな?」
遮るように懐の通信機が鳴り響く
…っ?同行した部下じゃない、基地から…?
「………出ないのか?」
「敵の目の前で呼び出しに出る奴がどこにいる!!」
「出てやったらどうだ。心配するな、もう何もしない」
いちご、と日本語で印刷されたパックにストローを刺し『待ってるさ』と上機嫌なザイルに腑が煮えくり返る
「何を言っている…!ふざけたことを「土方だ。要件はなんだ」
どういうつもりか土方は俺の通信機を取り上げ、当然のように応答。
「おい土方!」
「っ………自分で聞け。連中は俺が見張っておく」
顔色の悪い土方から通信機を奪い返す、相手は基地在留の空軍伝令役で──
「・・・なんて言った???お前今、なんて言ったんだ?」
基地や街、とにかくアメリカのどこかを狙われたと言うのなら分かる。まだ分かる。だが…その、どう言う意味なんだ?
『………フォーリナーのものと思われる宝具がロシア首都へ落下。首相官邸を中心にモスクワが、吹っ飛びました…!』
フォーリナーの宝具で?モスクワが?何故そんな場所を…?
『まだ終わりではありません!諜報員によればロシア空軍はこのモスクワへの攻撃をアメリカからの核攻撃と断定…!既に核搭載のICBMの発射体制に入っています!
ばっ…!?
「馬鹿な!?いったい何故そんなことになってる!?」
馬鹿げている!フォーリナーの宝具で攻撃されたロシアが何故アメリカを狙う?そもそもいくら知らないとはいえ宝具を核兵器だと誤認するのか?
「空軍は!?」
『まだこの事実を知りません!し、しかしこの現状伝えるということは──』
アメリカ空軍は間違いなく反撃する…!核戦争になりかねない!
だがどうする!?ロシアが撃つ瞬間まで何もしなければどう足掻いてもレーダーに引っかかる。つまりそこで空軍もこの事実を知る!
アメリカのICBMと性能に差が無いのなら発射から着弾まで20分と少し…アメリカ空軍がミサイルを探知して報復攻撃に移るには充分すぎる時間だ
元を絶たなくては…!
「軍、魔術師問わず技術者を集めてロシア空軍に繋げ、今すぐに!俺が話をする!」
『それがフォーリナーの宝具の影響で磁場が不安定になっており全く繋がらず…!』
!! くそったれめ…!
「………ビースト、これはお前の仕業か?」
「半分正解、ですかね?色々と準備はしましたが計画を立てたのは私ではありません」
たらりと冷や汗を流しながら質問する土方に、普段と変わらぬ
そんな、まさかこいつらの目的は──
「ふふ…さて、どうする?クライム」
「こ、このクソ外道が…!」
自分や獣ではなく、他でもない人類の手で人類を終わらせるつもりか!?
「ぐ…!」
このままでは全面核戦争だ、それだけは阻止しなくては…!
そしてそれができるのはこの事実を知り、彼らに命令できるクライム・アルバートのみ。
『指示をください中将…!空軍には伝えますか!?隠しますか!?』
人類全滅を防ぐには核による報復攻撃を止める他無い。そのためには──
…こっちには軍人だけじゃない、ダヴィンチのような魔術師側の技術者もいる。レーダーを誤魔化すのは不可能じゃない。だがそれは全面核戦争阻止と引き換えにアメリカにある全ての命を見捨て、殺すことだ
何もかもが一方的に焼き尽くされ、残るのは灰の雨と神秘で守られた英霊達、そして──
「聖杯の魔力を持った、俺だ…!?」
その事実に気付いて、俺は震え上がった
俺は30人の部下を犠牲にするつもりで、希望を裏切るつもりで来たのに。30人分の覚悟しか持ち合わせていないのに、それがいきなり3億人に膨れ上がった
いざ核戦争になれば被害はロシアとアメリカだけじゃない、世界中に飛び火して人類は滅ぶ。だがアメリカが何も知らず、一切の抵抗をしなければ滅ぶ人類はアメリカにいる人間だけで済む
数だけ見れば隠し通すのが正解であり、小を切り捨てて大を助けるという分かり切ったトロッコ問題だ
「う、うあ…!?」
それを、今突き付けられている。厄災の獣と──
「ん…ロシア空軍は1分のカウントダウンに入った。早く決めた方がいいぞ。クライム」
ザイルに。
「許してくれ…!やめてくれ…!そんな決断、俺にはできない!!!」
これまで呪いのような希望を背負って戦ってきたのに、人類を守るために今まで背負ったものを殺し尽くして、俺だけが生き延びろと言うのか!?
最後の最後まで隠して、騙して、俺だけが!!!
『ちゅ、中将…!』
「いやだ!いやだ!いやだ!!こんなことがあってたまるか!こんな結末認められるか!」
助けて、助けてくれ、誰でもいい!代わりに決めてくれ、俺の代わりに3億人のアメリカ国民を見捨てて世界を救ってくれ!誰か『クライム・アルバート』として俺の代わりに生きてくれ!
それが駄目なら今すぐ俺を殺してくれ!
もうこんなの耐えられない!!!
「ううっ、うっ!うあ」
「あああああっ!!!」
NFFスペシャルの使い魔に脇腹を噛み砕かれながら「どれだけ持ちますかねぇ」とコヤンに言われたい作者のルルザムートです、ハイ。
ロシア空軍の様子も書こうかと思ったのですが難易度が高すぎて断念。一応メタルギアソリッドPWとか参考になりそうなのはありますけどよくよく見たら展開かなり似通ってるな、って…