弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
…第122話です、お楽しみください
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世界は変わった
ロシアの誤解と、アメリカの迅速な報復によって世界は核の雨の下に埋もれ、人類と人類が築き上げた文明は焼き尽くされた
生き残った人々も地上に蔓延する放射能によって次々と倒れていき、人類史は終わりを迎えた
滅んだ人類に代わり、新たに支配者として地球に君臨したのはそれまで生態系ピラミッドにおいて上から2つ目に位置する肉食動物だ
破壊し尽くされた地上の世界はたった1年で緑に覆われ、ヒトの痕跡が消えていくと同時に爆発的に動物達が増えていき、人類は絶滅したかに思われたが──
人類はまだ終わっていなかった
核と放射能から生き延びた一握りの人類達、数はかつての世界人口の2%にも満たなかったが確かに生き延びていたのだ
しかし、新たな支配者達は人類の生存権を許さなかった
1年で異常なまでの進化を遂げた肉食動物達が生き残った人類への攻撃を始めた
始めは『動物に負けるわけがない』と思い込んでいた人類は徹底抗戦したが銃やナイフはおろか、携行ミサイルでさえ殆ど意に返さない動物達の前になすすべなく蹂躙、鏖殺、捕食されていった。そもそも文明崩壊によって新たに武器を作ることが困難になった現状で進化した動物達を相手にできるわけが無かった
──ここでようやく人類は気付く
今まで狩り、殺し、喰らう側だった人類のヒエラルキーは、動物達の下へと押し込められたのだ
他ならぬ、人類の手によって
〜
CPC 第一区画 大通り バス内にて…
『と、このように人類は過ちによって自らの生存権を失いました
しかしご安心ください!我々NFFサービスが日本をお借りして用意させていただいた人類文化を守る国、
『ここに住まわれる1人1人が人類の歴史を、文化を紡ぐ希望です!昨日を振り返るあなたを、今日を生きるあなたを、明日を見据えるあなたを、NFFサービスは全力でサポートします!』
『共に人類の未来を取り戻しましょう!』
『────』
CMが終わり、バス内に設置された小型テレビの映像がニュース番組へと切り替わる
…降りるバス停は次の次だな
ゆったりと動くバスの中で外の景色と腕時計を交互に見ながら確認する
「すぅ…すぅ…」
こちらの肩にもたれかかって静かに寝息を立てる
バスが止まり、降りる客と乗る客で少し車内が揺れる…
「ん、シロウじゃねぇか──っと悪い、桜も一緒か」
と、乗客の中に見知った顔が2つ
「バーヴァン・シー、それにぺぺさんも」
「久しぶりね、衛宮くん」
左腕で杖をつきながら、にこやかに挨拶してくれるペペロンチーノにこちらも挨拶を返す。
5年前の戦いで負った火傷の跡は完全には消えていないものの、バーヴァン・シーの献身的な治療によって魔術無しでも出歩けるようになったらしい
流石に失った右腕と左脚は戻らなかったようだが
それにしても2人がここにいるということは…
「今日、お店は休みですか?」
「ええ、この子を説得するの本当に骨が折れるのよ?」
「
確かに、彼女の仕事に対する熱意を知ってる身としては誰かがストッパーにならないと休みそうにない
「そうなんだな、2人はこれからどこに?」
「予定なんてねーよ、バスにもとりあえず乗っただけだ」
…どうやら以前のようにぺぺさんが強引に連れ出しているようだ
「それなら一緒に来ないか?今から藤ねぇの家で昼食会をするんだ、予定が無いなら一緒に食事しよう」
「は、はぁ?なんであたしが──「まぁ!いーじゃない!」
ぶーたれかけた彼女を押しのけ、ぺぺが代わりに答える
「あ、でもそうなると2人分の食料買い足ししないといけないわね
衛宮くん、必要な食材教えてくれる?シーちゃん、一緒にショッピングに行きましょ!」
「ちょ、おい!あたしは行くなんて言ってねぇぞ!?」
「こらこら、他のお客さんもいるんだから、バスの中は静かにしないとダメよ?」
「あ、ごめんなさい…じゃねぇ!ぺぺ!勝手に話を進めんじゃ「動くな!」
「「「!!!」」」
赤信号でバスが停止したのとほぼ同じタイミングで聞こえてきた怒鳴り声に自然と彼らを含めた乗客達の視線がそちらへ向く
今叫んだのはあの人?…桃色の軍服着てるってことは境界警備隊か?
ワイヤースタンガンを手に境界警備員が路地裏に向かって呼びかける先にはうずくまって震える男が…
「…なんか様子が変じゃないか?」
「シーちゃん」
「分かってる」
「その身なり…第30区画以降の者だな?IDを照合させてもらう!」
「………」
──男の震えが止まった
「IDカードを提示しろ!さもなくば身元不明者としてNFFスタッフに回収依頼を出さなくてはならない!
…IDを出せば送還だけで済む、頼むから──」
「────グルル…!」
懇願する警備隊の男に対し、そいつは威嚇するように唸りを上げる。その様子はまるで獣のそれであり──
「くそ、もうだめか…!」
ビンパンパンポーン
『第一区画において一名の人間性喪失を確認。以後、彼が人類史へ文化貢献することは不可能と判断されました
NFF本社より回収班を派遣いたしますので応対した警備員は到着まで対象を拘束、市民の皆様におかれましては危険ですので半径25メートル圏内から速やかに退避をお願いいたします』
「な」
なんだ、あれ…?
「…やっぱりその様子だと知らなかったみたいだな」
呆れ気味に首を傾げるバーヴァン・シー、だがそんなことを言われても初めて見る現象を俺が知るはずもない
「…あれは『獣化』だ、長いこと人間らしい行動を取らないと人間性が無くなって
私は元々人間じゃねぇから変質はしねぇが」
「ガギッ…!ガアアアアッ!」
「こっ…のっ…!大人しくしてくれ…!」
腕を振り回したり、噛みつこうとする男を警備隊の男はのしかかって押さえつけている
「そういえば衛宮くんと桜ちゃんはここに来て早々に仕事が決まって働いてたし…ここの区画はCPCでも最も治安の良い場所、知らないのも無理は無いわね」
「その、ぺぺさん?ああなった人は、ちゃんと治るのか?病院とかで…」
俺の質問に彼はまだ火傷跡が残るその顔を僅かに曇らせた
それを見れば答えは…聞かなくても分かる
「…『労働』『物や権利の売買』『生活レベルを上げる発明』『多数から認められた芸術』…平たく言えば人間でしかできない、人間しかやらない行動を長く取っていないと理性が無くなって獣化、2度と元には戻らない。…一度獣に堕ちた人間が辿り着くのは、処分場よ」
「ッ!!」
だとすれば彼は…!
ちょうど桃色の制服を来た職員…NFFスタッフが到着し、尚も暴れ続ける彼を慣れた動作で縛り上げて連行していく
それを見て俺は──
「アナタが行ったところで…いえ、誰が何をしたとしてもどうにもならないわ、やめなさい」
「死ぬと分かっていて見過ごすことなんて──待ってくれ、ぺぺさん達はいつから知ってたんだ?」
「それは「言う必要がねぇから黙ってた。それだけだ」
「な、なんだよそれ…!」
もっと早く教えてくれていれば救えた命も…
「知ったらお前はどうしてた?お前の牧場に招き入れて仕事でも分け与えたか?」
「当たり前だろ!それで救えるのなら!」
「その結果、横で寝てるお前の後輩が獣になってもか?」
な──
「桜は関係ないだろ、あくまで俺が決めることで」
「お前が仕事を他人に譲ればそれだけお前も獣に近付く、そうなったらそいつは…桜は自分の仕事をお前に譲りだすだろうな」
「…!」
「そうなって初めてお前は他人に仕事を譲ることに抵抗を覚えるだろう、だがなんの損得も無く助けられた奴らはそれを決して忘れないし、衛宮士郎という救世主のことを広めていく
そうなったらもう避けられない、その先でお前は必ず『誰を助けて誰を見捨てるか』という選択を迫られ続ける
…だから間桐慎二はこのことをお前に伝えなかったんじゃないのか?」
「いや、でも…」
ガクンッ
そうこう言っているうちにバスが動き始めた、外は…もう警備隊の男もスタッフも獣化した男も消えていた
「それでも納得できないっつーなら間桐慎二ともう一度話せ、向こうから来るのなら機会くらいあるだろ」
「………」
『誰かを助けるということは、誰かを助けないということなんだ』
かつて自分を救ってくれたヒーローの言葉がみたび脳裏をよぎる
どんな理由があろうと手を差し伸べられるのなら助けるべきだ、だがそれによって…横でいつの間にか寝息を立てている桜や藤ねぇ達を犠牲にできるかと言われれば違う
5年以上前の俺ならなんとかして両方を救おうとしただろうが…あまりにも人が死にすぎたあの戦争は、それが無理難題であることを突きつけるには充分すぎた
「それと桜は私の魔術でひとまず眠ってる、この会話は聞かれていないから安心しろ。だがいくら先延ばしにしようといつか話す時が来るぞ」
「………」
もう一度、慎二と話そう
そう決心するのと、バス内のテレビに彼が映ったのはほぼ同時だった
『──ナーガさん、ありがとうございました。
続いて、マトウ大統領より各区画における入国者及び新規住民の公表です。マトウ大統領、お願いします』
『国民の皆さんこんにちは、CPC大統領の間桐慎二です。本日は都合により中継で出演させていただきます、ではまず47区画から…』
偽りの安息、それが誰にもたらされたものなのか殆どの者達が知らないまま、新しく定着した日常は過ぎていく
中に居る者はだれもそれに疑問を抱かない、いや疑問を抱いてもすぐに忘れるように努めている
変化が怖いからだ、ただでさえ世界は壊れ切ってしまったというのに下手なことに疑問を持ったり変革をしようとして、今わずかに保たれているこの平和が崩れ去ることが怖いからだ
故に『中』の人間達は与えられる平和をただ傍受するのみ
だが見渡せば変革を望む者は確かに存在する、それは海の向こうに──
〜
元トルコ共和国領土 アルテミス神殿にて…
「戻ったわよー、やっぱりアナタの予想通り集落があったわ!数は少ないけど生存者もいるみたい!」
「重ね重ね申し訳ない、月女神に斥候を任せてしまって」
「いーのよ、彼以外に残ってるアーチャーは私だけだし…それにこれでも狩猟の女神だから!」
影月 遥…によく似た女神は纏う神秘に見合わずケラケラと笑ってみせる
「そう言ってくれると助かるよ、さて…それじゃ会議に行こう
道満、済まないがまた頼むよ」
「お安い御用にて、マイマスター」
既に令呪が無くなった今でも自身をマスターだと認めてくれる彼に車椅子を押してもらい、待ち合わせ場所へと向かう
「…ところでカイニスは?彼はまだ戻ってきていないのかい?」
物資調達のためアルテミスよりも前に出発した彼がまだ戻ってきていないのが気になる、そう遠い場所には行っていないはずだが…
「あら?そういえば──「キリシュタリアさん緊急です!」
元米空軍の男が息を切らせて飛び込んできた、どうやら何かあったらしい
「何事だい?」
「カイニスさんから救助隊派遣の要請です!以前調査した集落跡にまだ生存者が…!」
「…分かった、カドックとペンテシレイアを呼んでくれ、隊を編成して彼の元に。ヘリを飛ばしても構わない、急げ!」
「ハッ!」
…よし
「道満、僕らも準備しよう」
「…身体の具合はよろしいので?」
「うん。今日は調子が良いからね、後方支援くらいならできるさ」
腰から下は全く動かず、片腕も失ったが…それでも生きている以上できることはある
………行こう
コヤンに思いっきり腹パンされて呼吸を奪われてみたい作者のルルザムートです、ハイ。
一般人とは別にCPC区画外で活動している組織のうちの1つをチラ見せ、もう一つもすぐに…