弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
正真正銘これで最後。125+零です、お楽しみください
………あと後半ちょっぴりリョ◯注意
CPC 離島特別区画
『元』NFFサービス本社社長室にて…
「……………」
ひたすらにパソコンと向き合い続け、終わらない業務…いや作業を進める間桐慎二。
目の下には大きな隈ができており、登ったばかりの朝日がそれを見えやすく照らしていた
『シンジくん、そろそろ休んだ方が…』
「うるさい、ダヴィンチはアシストを止めるな
それとまだ生き残っている魔術師とサーヴァントのリストを早く渡せ」
──ザイルとコヤンスカヤが消えた。義手の連絡網に反応は無く、この世界のどこにも2人が居ないことが確定した今は少しでも優位に立てるように情報を集めなくてはならない
島内のサーヴァントはモルガンを入れたとしても僕の狂化オリオンとバーヴァン・シーだけだ。外の情報が殆ど入ってこない関係で島外の判明している戦力は草薙の剣で武装した茨木童子と満身創痍のカイニスだけ。
「連中がいつ戻ってくるか分からない以上、手は止められない。…モルガン、そっちはどうなってる?」
ダヴィンチの端末とは別の機材に質問を投げる。もちろん手は止めない
『バーヴァン・シーと衛宮士郎、遠坂凛、間粡桜の4名はこちらで保護しました。これでようやく反撃できる…と思いますが』
「なんだ、はっきり言ってくれ」
この非常時に歯切れが悪いのは誰だってストレスが溜まるもの、僕は半ば怒鳴り気味に次の言葉を促す
『恐らく、獣──もう──には』
「っ!」
ぐらりと視界が揺らぎ、声が聞き取れない。次第にこれまで抑え込んでいた睡魔が襲ってくる
義手のアシストがあるのに…?いや、効果が切れている…!?
「だ、ダヴィンチ…!」
『悪いけどこちらから切らせてもらった、既に6日間不眠不休のキミをこれ以上酷使させることはできない
モルガン陛下、悪いけど回収してもらえるかい?』
『ええ。構いませんよ』
とんっ
「お待たせしましたね、彼には随分無茶をさせたようで…」
『うん…』
ふわりと女王の肩に身を預けたところで僕の意識は消えてゆく
まだ、やれること、が………
………
『眠った?』
「眠らせました。…それにしてもここまで衰弱しておきながらざっと見ただけでも仕事に一切の不手際が無いのは賞賛すべきでしょう
…ダヴィンチ、生存者のリストを」
『うん、どうぞ』
設置してから一度も使われていないであろう印刷機からガーガーと出てくる紙を手に取る
「現代的ですね」
『魔術の痕跡を残したくないし、そもそも今の私はAIだからね。これくらいしかできないのさ』
………ふむ
どうやら外で残っているサーヴァントは茨木童子、カイニス、芦屋道満、アルテミスとパリスの5騎だけらしい
…バーゲストの名前は、載っていなかった
『ところで陛下、さっき《獣達はもうここには戻ってこない》って言ってたよね』
「………ええ、先ほどまでは疑惑の線を出ませんでしたがここに侵入できて確信しました。
獣達はここを…いえ、この世界を放棄しています。間違いなく」
意識のない彼を抱き上げながらモルガンは朝日を眺めて呟く
「でなければここまであっさりと事が進む訳がない、警報装置も私が手を加える前から解除されていましたから」
『……どこにいったんだろう』
「分かりません、ですが消えたと言うのならコヤンスカヤの単独顕現を使ったのは予想がつきます。たとえ現有戦力での立て直しができたとしても追跡は不可能でしょう、殲滅は…彼女らが降り立ったその世界の人間に託すしかありません」
『………』
「………」
AIとの間に流れる嫌な沈黙。確かに目前の問題は解決したが根本はまだ何も変わっていない
相変わらず世界は進化した動物たちで埋め尽くされているし、CPC内の獣化も止まっていない
一応、NFFサービスが主軸で行っていた生活物資確保としての機能はまだ動いているようだが間桐慎二がパソコンから引き上げたデータによると期限…あと1週間の契約期間が終了すると停止してしまうらしい
場合によってはここから人類が全滅してしまう可能性もありえる、モルガンにとってはどうでもいいことだが別世界のバーヴァン・シーが悲しむと知ってしまった今、見捨てる選択はありえない
「……我々だけでは手に余る、キリシュタリア・ヴォーダイムに協力を要請しましょう
それと茨木童子にも、この世界環境で唯一全力を出せる英霊ですから」
『うん。分かったよ』
あと伝えておくべきことは…ああそうだ
「ダヴィンチ、消失前のNFFボーダーからこんなものを回収しました。現代の端末のようですがデータは全て消去されており復元ができません。何か分かりますか?」
『端末…?…あ、これって確か…』
「見覚えがあるのですか?」
それなら話が早く済むのですが。
『記録として保存されているだけだよ、でもよく知ってる。これは──』
ノーアちゃんの…鈴木京子のスマートフォンだ
〜
年代不明 岐阜県 岐阜市 とある2階建て一軒家にて…
嫌いでは無かった。ただ怖くて、恐ろしいだけ
憧れはある、そうだったらいいなという憧れは
けれど。
「っ…絆創膏、どこだったかな」
痛む身体を引き摺りながら救急箱が置いてある洗面所に向かう
「………包帯も必要かも」
少し血のついてしまった制服を脱ぎ、鏡の中に見えたのは数えるのが面倒な量の打撲痕や切り傷、打ち傷…
私はいわゆる『いじめられっ子』というやつだった
今日は階段から突き落とされちゃったけど…幸い大きな怪我はしてないみたいだし運が良かったかな、えへへ…
だが幸運はそこまで続かないみたいだ
「…あんまり残ってない」
今日はまだマシだったが、ここ最近特に酷くやられてしまい家に置いてある医療品の補充が追いつかなくなってきた。父は事を大きくしたくないようで私が頼めば薬は買ってくれるがいじめからは守ってくれない、母も同様だ
「帰ったぞ」
「あっ…恭弥、さん…おかえり、なさい…」
「挨拶とかどうでもいいから、どうせ切れてるんだろ?薬。買ってきてやったからそれ使ったら?」
と、どうやら弟が薬局で買ってきてくれたらしい。袋の中には包帯や絆創膏、消毒液に眼帯も入っている
「あっ、ああ…あり、がとう、ございます、恭弥、さん…」
「礼なんかいらないから可能な限り話しかけないでよ、外とか特に。お前のせいでグループから追い出されたらどうしてくれるんだよ」
「そ、そっ、そうですよね…うん、ごめんね、ごめんなさい…」
一切目を合わせることなく、弟は2階の自室に消えてゆく
「きょう、や…」
弟も初めからああだったわけではない、むしろ積極的に私を助けようとしてくれていた。
…それを壊したのは紛れもない私。
何度も助けられる内に私は怖くなってしまった。
『もし弟に見捨てられたら』と
それから私は家の中でも外でも弟の機嫌を伺い、いつしか対面で敬語でしか喋れなくなってしまった
…向こうにとってそれがどれほど嫌なことだったか、私に想像する力は無かった。今更気づいても、この敬語のクセは体に染み付いた痣のひとつのようにこびりついて消えない
もうどうしようも無いのか、それとも私が諦めてしまっただけなのか
「…ねぇ、どう思う?ダヴィンチちゃん」
携帯を取り出してアプリを起動、フォン…とタイトル画面をタッチするとそこには彼女がいた
ゲームアプリ『Fate/grand order』…今はもう全く着信が来ないスマートフォンにダウンロードしたゲームに登場するキャラクター
サーヴァントキャスター、レオナルド・ダ・ヴィンチ…唯一、私が敬語無しで話しかけられる人物
当然返答なんて返ってくるわけがない、けれど…いや、だからこそ気軽に話しかけられたのかもしれない
【やぁ クランツェル ちゃん!お休みのところ申し訳ないが新しい特異点だ!】
「また弟に嫌な思いさせちゃったんだ、ああは言ってるけど今でも恭弥は私のことを思って薬を買ってきてくれたんだと思うし」
…鈴木京子はそれが自分自身を騙すための嘘だと心のどこかで気付いていた。かつて自分を『姉』だと言って慕ってくれた彼は居ない、私が消した。彼の目には厄介者しか映っていない
けれどそれを認めてしまったら私はもう生きていけない、だから私は誤魔化す
画面の向こう側にいる貴女に、精一杯の笑顔で話しかけて。
「いつか、仲直り、したいな…それと、昨日、えっとね、『Fate/Zero』っていうのを布団の中で見たの。まだ最初の方しか見てないけど」
元々Fateを見ていたのは弟で、私は興味どころか存在も知らなかった。だが弟に話題を合わせることに必死で見るようになったのがきっかけだ
…私が手を出し始めたと知った弟は早々に離れてしまったけど。
「父さんも母さんも海外出張でしばらく帰ってこないし、弟も今日の夜から1週間友達の家に泊まりに行くって彼の友達と話してるのを聞いたから…しばらくダヴィンチちゃんと一緒にFate見たいなって」
テレビを付けてNetflixを起動させる
弟は基本的に私が使う物を使おうとはしないから大丈夫、だと思う
それから毎日テレビに向かった。Fate自体にはあまり興味は無かったけどダヴィンチちゃんが出てるかもって思ったら興味が湧いた
「………」
──うん、面白かった。神父ってあんなに強かったんだね。次は…時系列的に1番近いstay nightを見よう
少しお腹が空いたけどちょっとご飯を抜いたぐらい何も問題はないだろう
「………」
──そうなんだ、FGOだと殆ど描写されてなかったけどこれがアルトリアってキャラクターなんだ。次は…そうだ、魔獣戦線バビロニア。FGO路線の話だからダヴィンチちゃんも出るはずだ
喉が渇いたけど少しくらい大丈夫だろう
「………」
──英雄王とウルクの民…最初は敵対してきた女神達も最後はみんな力を貸してくれて、人類悪を打倒…いいなぁ、傷付くのは怖いけど…でもあんなふうにお話し相手がいるのなら、いくら傷付いてもいいから私もそこに行ってみたい。次は…あ、キャメロットは無いのか。うーん…
「おっ…と」
どうしようかと立ちあがろうとしてひどい眩暈に襲われる
そういえば数日飲まず食わずだった、睡眠はしっかり取っていたけれど何か食べないと…
「なにか、あったかな…痛っ、え?」
ふと気がつくと足が濡れていることに気付く、だが水じゃない
肉を削ぎ落としたように痩せた足からべたべたした液体が滴っている
どうやら傷の処置が甘く、切り傷の1つが化膿していたらしい。いや、1つだけじゃない
「うわ」
身体中の傷、至る所から膿が出ていた。唾をつければ治るような傷も栄養失調のせいか治っておらず、代わりにべたべたしたものが…
「あう」
転んだ。頭が痛い。手をついて立ちあがろうとする…起き上がれない、力が入らない
「………じゃ、いいかな」
起き上がれないのなら無理して起き上がる必要はない、少し疲れたしひと眠りしよう
こんな状態でそのまま眠ったら永遠の眠りにつくことになると普通は分かりそうなものだが今の彼女の思考は『普通』からあまりにも下回っていた
いや分かっていた、このままなら多分死ぬだろうと
だがあいにくと彼女はあまり生への執着が無かった
『ああ、こんなアッサリ死ぬんだ』
感想と言えばそれくらい
「………」
老人の孤独死のような状態で彼女が発見されたのは、おそよ2週間後の出来事であり、発見者の弟によると電源の切れたスマートフォンを握りしめていたという
…ここで鈴木京子という少女の人生は幕を閉じた。
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『荒御魂に捧ぐは贄の巫女』
(+0)第零話『伊吹山の英霊達』
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???にて…
「………」
さわさわ
「………」
さわさわ
「………?」
ふと身体を撫で付けるおかしな感触に目が覚める
…?そうだ、私寝ちゃってたんだ。早く次のFateを見よう
「あれ?」
Netflixのリモコンを探そうとしたが周りに広がるのは明らかに自分の家では無いお屋敷の畳部屋、上には蛍光灯付きの白い天井ではなく木造の天井が広がっている
え、え?なに、これ?
幸いスマホだけは手元にあったが時刻も日付も文字化けしており、アンテナも圏外で役に立たない。これはいったい…
ピカッ
「うやっ…!?」
状況を理解しようとするよりも早く新しい情報が光となって目前に現れる
壁が、いや!私のスマホが光ってる!
「まさか」
そんな、そんなはずはない、あれはあくまで作り物で、ゲームで、ただのシナリオだ。これは夢か何かの冗談だろう
見覚えのある召喚陣も、手の甲にある令呪も現実じゃないと思い聞かせるが痛いほど眩しい光と肌で感じる神秘的な気配はこれが現実だと言い聞かせてくる
「あっあっあっあっ」
向こう側にしか居なかった彼/彼女、それが目の前にいる
果たして私が向こう側に入ったのか、それとも彼/彼女がこちら側にやってきたのかは分からない
分かっているのは──
「やぁやぁやぁ!召喚に応じたよ!
クラスキャスター、真名を──」
「ダヴィンチ、ちゃん…!?す、凄い!本物…!本物だ!ね、ねぇ!触ってもいい!?ねぇ!?」
「ちょ、ちょっと!?落ち着いてって!」
返答が帰ってくる前に触る、触りまくる。おでことか黒い腕とか杖とか服とか、とにかく触りまくる
「す、すごい、モナリザだ!ダヴィンチちゃんだ!本物だ!」
ゲームのキャラクターに過ぎなかった彼/彼女に、こうして触れられるという事実だ
「はいはいお触りはそこまで。ちょっと落ち着こうか」
「はっ、はっ、ご、ごめんね?興奮しすぎちゃった」
「完成された芸術を前にしちゃ無理もないさ!
…それにしてもこれは、もしかして私、相当期待されてるね?これは頑張らないとなぁ」
「??? 頑張るって、何を?」
「そんなの決まっているだろう、だいいちキミが呼んだんじゃないか」
そんなこと言われても呼んだ記憶が無いから分かるはずが無い、もちろん来てくれて嬉しいのだけれども
「この聖杯戦争、絶対に勝ってみせるとも!」
「────」
──セイハイセンソウ???
〜
伊吹山 とある村にて…
「契約したからには貴様の幕下に入る。だが私のマスターとして軟弱なマネは許さん。力量が足らないと私が見なした時は私の判断に従ってもらうぞ。弱者は強者に守られて然るべきなのだからな」
「もちろん、分かっているよバーゲスト。キミの足を引っ張らないよう、僕も全力を尽くすからね」
「ああ、励むがいい」
「うん。一緒に聖杯を掴もう」
〜
伊吹山 山奥の洞穴にて…
「ひいいいいっ!やめて、許して!殺さないで!」
「どいつもこいつも分からん奴じゃのう、殺しはしないと言っておろうに」
「アサシン、まだ次世代の傷薬は出来てないんだから拷問は程々にお願いだよ」
背中に聞こえる悲鳴をよそにやんわりと注意するが彼女には堪えていないようだ
「それは此奴次第じゃのう?くっふっふー♪貴様がランサーのマスターと繋がっていることは知っておる。妾はそれより先の話を聞きたいのじゃ、話してくれるな?」
「そ、それは…「ぶっぶー!時間切れなのでお仕置きタァーイム!」
…直接見てはいないが今のは酷いんじゃ…1秒も無かったよ…?
「そんな!?な、なんてひどい…」
「人間、喋る意志があれば1秒未満で喋るが無いやつにいくら時間を与えても話さんからのぅ。なぁに時間はある、すぐに自分から話したくなるじゃろう!くーっふっふー♪」
「やめ──んぎぃいいいいっ!!?」ギチギチギチッ
「………はぁ」
早く薬を作らないと…
〜
伊吹山 とある川にて…
「マスター、案内人のことだが…」
「分かってる、多分敵に捕まっているな」
とはいえ助けに行くことはできない、今手を出せばそれは俺が他陣営に対して開戦前から不正行為をしていたとうつる。他の魔術師もやっているだろうがそれをわざわざ露呈させるようなことはしたくない
「アイツには耐えてもらうしかない」
こう見えて案内人の弱みを握っている以上裏切りはないだろう
さて、そろそろ行くかな…
〜
伊吹山の麓 とある教会にて…
「──ではここに、アーチャー…ジェームズ・モリアーティとそのマスターの参加を監督役であるこの私、ハヴェルカ・アルバートが認めます
残りの参加者が揃いしだい連絡させていただきますのでよろしくお願いします」
「はいっ!こちらこそお願いしますっ!」
「…ヨロシクね」
にぱぁぁぁ、と明らかに不釣り合いな笑顔の横で頭を抱えるアーチャー
だがそんなことお構い無しに少女は初老の英霊を連れて教会を出る
「来たばかりでコレとは、先が思いやられるヨ」
「なに言ってるんですか!彼女は監督役…つまりルールを作る人!審判なんですよ!その彼女に変装までしていきなり『自分はシャーロック・ホームズだ』なんて嘘を言うからバチが当たったんです!」
ふんす、と振り上げた少女の手の甲からは1画分の令呪が消えており、たった今監督役に剥奪されてしまったものだ
「あのネ、マスターくん?戦いはもう始まってるんだよ、相手が誰であろうと迂闊に自分の正体をバラしちゃうのはちょっと…」
「わかっていますとも!でもルールは守らないとだめです!私の友達はみんなルールを守ってるのですから!!」
「………いやホント、先が思いやられるナァ。というかあのシスターはどうやって私の嘘を見破ったのかナ?」
「………行きましたか。ハヴェルカ、交代です」
自分以外の誰も居ない教会の中で1人呟くシスター、だが今を生きる彼女の内側にある本来の人格がそれに答えを返す
「いきなり出ていったから驚いたよ?…それにしても便利だねぇ、妖精眼って」
(貴女が思っているほど、良いものではありませんよ)
バーサーカークラスからルーラークラスへと霊基を改造し、擬似サーヴァントとしてハヴェルカの内側へと隠れた女王。自ら作り出した聖杯を用いて本来起こり得ない聖杯戦争を引き起こした張本人
聖堂教会の一員としてはこのことを上に報告し、いずれ顕現するであろう聖杯を万全の体制で迎え入れるのが正しいが…
女王ではなく母親として貴女がここにいるのなら、同じ母親として見捨てることはできないから
(ハヴェルカ…すみません、感謝します)
「あ…!?心読むのは卑怯だよ!?」
(妖精眼以前に擬似サーヴァントとして身体を借りている以上、嫌でも分かります。重ねて感謝を。)
「………どういたしまして、陛下」
〜
伊吹山 山頂 祭壇にて…
「………」
大きな蛇の身体の上にいるような、不思議な祭壇の上で私は何をするわけでもなくただ夜空を見上げていた
ここに私の権利は何一つとして存在しない。あるのはただ神の気まぐれだけ
「────寄れ、巫女よ。喉が渇いた」
薄く開いた蛇の目をこちらに向けて、神は私を手招きする
ああ、今日も来たんだと、私は特に言われることも無く服を脱ぐ
着込んだところで最初の頃のように破り捨てられるだけだ、それなら…と諦め気味に服を畳んで神の元へ
しゅるしゅると蛇部分の半身が私を押し倒し、神の顔が近付いて──
「あー…んむっ」
「ウっ…!」びくっ
首筋に噛み付いた
いつもは腕や足で満足してくれるが今日は機嫌が悪かったらしく、手足、腹部、首の中で1番最悪な首を噛まれた
「く、ふーっ…ふーっ…うっ…!」
ぐりぐりと食い込む牙にただ耐える
痛みはもう慣れた、けれど首を狙った後必ず行う行為の方が辛いし嫌だ
「っ………ぷは、んっ」
「ひっ…!んぶうっ…!」
指先が巫女に触れないよう、器用に腕を回して固定。そのまま巫女の口に自分の口を重ねる
神は首に噛み付いたあと、必ず接吻を行う。理由は知らない、知っているのはただひたすらに苦しいという事実だけ
「お"…ごぼっ…!!あ"あ"っ…!」
蛇のように長い舌が口をこじ開け、無理やり侵入してくる
口内から食道へ、ついでに気道も塞ぎながらもなお神の一部が体内に──
「──!────!!」
体内の異物を吐き出そうと身体は痙攣し、波打って反応するも神はそれすらも許さない
まだ楽しみが終わっていない、まだ味わっていたい、文字通り次元の違う上位種の娯楽はそれくらいで中断されない
「んむんむんむ」
染みついた涙の跡をまた涙が流れ、酸素を取り込めない身体は意識を保てなくなっていく
…ただ影月家に生まれたというだけで、どうして、こんな
なぜこんな理不尽な目に合わなければならないのか、理由も無く。こんなのは絶対に間違っている
「こご 、 んな、 の 間違 って」
「此方ァ!オラァ!」
「!!??」
ばしーん!と誰かが神に体当たり、ぬるりと突き飛ばされた神と状況の理解が追いつかない私。
そんな中私に手を差し伸べたのはあのお節介だった
「えぼっ…!げぼっ、けほっ!はーっ、はー…な、んで、ここに来たの…!」
あれだけ冷たくしたのに、あれだけ突き放したのに、それでも目の前の少年は私に微笑みかける
赤い刺青の入ったその手を差し伸べて。
「やっぱり俺さ、巫女の使命とか決まりとか、細かいこと考えた挙句見捨てるなんて嫌だし、嘘をつきたくない。だからここに来た!
清姫さん!此方ちゃんをお願い!」
「安珍様、私というものがありながらこのような──仕方ありませんね…」
「…コハクの馬鹿、大馬鹿、あの蛇がなんなのかも知らないで」
知らない女の人に抱き抱えられるがそんなことより怒りが湧いてくる、危機感の無い彼に…私がどんな思いでここに残ってるかなんにも知らないのだから
「うるさいから黙って助けられてろ、それと琥珀なんて名前はダサいから呼ばないでって「なんだ、人間」
ぞわりと氷柱を背中に押し込まれたような悪寒が走る
寝付けないとか酒が回らないとか理由は知らないがただでさえ不機嫌だった神の機嫌がこれまでに無く悪いのはここからでもよく分かった
…だが彼は震えこそすれど立ち向かう
「俺の名前はザイル・ニッカー!
この子の友達だ!!!」
伊吹童子にはエッッッな理由で食べられたいも、どちらかと言うと言葉通りに喰べられたい作者のルルザムートです、ハイ。
というわけでほんとのほんとにこれで最後。蛇足+『50年前の聖杯戦争』として7.8話時点で温めていたネタを入れ込んで終了とさせていただきます
書きたいは書きたいんですがD・モルガンとかウマ娘とか色々書かないといけないし書きたいのがたくさんある上、マルチタスクができない人間なので特に反応なければ永遠に書かないと思います(←おい)
にしても最後だからか9000文字近く書いちゃった。ま、是非もないヨネ!