弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
コンテナ置き場北部にて…
「…何か来るぞ!」
「分かってるッ!警戒しろ!」
バーサーカーにザイルを拘束させ、一旦周囲を警戒する
先まで無かった僅かな音、それが耳に届いたからだ
サーヴァント…は違うな、サーヴァントにしては気配が無い上に遅い、とするとウルフルズの仲間か?だとすればザイルはまだ殺せない…いくらこっちにバーサーカーがいるとはいえ──いや、バーサーカーだからこそ慎重にならなければならない
ザイルの持つ異常なカリスマ性に惹きつけられる者は少なくない…そのザイルを殺した後速やかに離脱できなければ怒り狂ったウルフルズ団員…つまりアメリカ国民と俺が殺し合いをする事になる可能性がある。
「…」
それだけはダメだ!何人居るか分からない敵対勢力を全て殺さずに無力化という芸当はスタミナの無いバーサーカーはもちろん俺でも難しい、結果ザイルを殺した後安全に離脱するための退路確保が必要だ
「さぁ…何人来るか…」
エナから一切連絡が無いのも気になる、あの剣がある以上戦えはするだろうがあいつ自身の実践経験が少なすぎる、連れてくるべきでは無かったのかもしれないな…
「ザイルから絶対に目を離すなよバーサーカー…今まで何度追い詰められても悉く打開してきた男だ」
「ああ…」
近付いてくる『何か』の音、なんとなく聞こえるだけだったそれが次第に鮮明に聞こえ始める
この音は…バイクか?それも大型だ、一台だけだが…
「…?」
こういう時に戦場で培った経験…感覚は役に立つ、どうやっているのか?そう聞かれると答えにくいが案外こういうカンが外れた事は殆ど無い、そのカンによれば接近してきているのはバイク一台のみ
囮にしては雑すぎる、だが他に気配は無い…
…よし
「バーサーカー、もういい!今度こそ殺せ!」
音から察するにあと6〜7秒でバイクが来る、それを待つ必要は無い!
「くっ!?アサシ──」
「遅ぇ!」
悪足掻きの令呪を切ろうとするザイルだが間違いなくバーサーカーが首を吹き飛ばす方が早い!
地獄で詫びろ…!この国と国民全てに──
「…む!?」
バーサーカーが剣を振り下ろす寸前、コンテナの影からバイクが突っ込んで来るのが見えた、だが──肝心の運転手が乗っていなかった
バイクだけ…!?
俺だけではない、恐らく気を取られたのはバーサーカーも同じだろう
そしてその直後、バーサーカーのすぐ隣に出現する気配
やられた、そう思った時にはもう遅い
「はぁーい!ギリギリのところで残念でした〜♡」
ライダースーツを着た、狐のような耳と尻尾を生やした女サーヴァント。
それはなんの前兆も無く現れて…そして煙のように消えた、ザイルを…連れて──
「なッ…!?」
あまりに突然すぎたその事態に、突っ込んで来た無人バイクへの対処が遅れてしまったが──
「セェア!!」
即座に反応したバーサーカーがバイクを真っ二つにしたことて事なきを得た
「チッ、これは追えないな…おいマスター?」
ガンッ
「フーッ、フーッ…ザイル………ザイル…!!」
行き場の無い怒りと苛立ち、コンテナを殴りつけたところで意味は無い、殴りつけた右手の皮は擦りむけて血が出るが怒りのあまり彼は気付かない
また…またしても…!くそ!
「マスター」
「うるさい!」
くそ、くそ!少し考えれば分かったはずだ!ザイルと契約している『獣』が気配を消せる能力を持っているという可能性があることくらい!
「探偵め…獣の相手は任せてくれなんてテキトーなことを言いやがって…」
思えば俺たちは利用されたのだろう、ザイルの所在を何故奴が知っていたのかは分からないがそれに気を取られてそれ以外の追求を忘れてしまっていた
「ホームズと連絡が付かない…いや、最初から連携する気は無かったのか」
「おいマスター…」
「分かってる、エナと合流しよう」
奴も気になるがエナが先だ、どうも不安感が拭いきれない…
「行くぞ」
エナと合流したのち、バイクの残骸を調査しよう
端末からエナに(無断で付けた)発信機の信号を頼りに、俺達はそこへと向かった…
〜
「────」
──おい
なんだこれは?
信号を頼りにたどり着いた駐車場、そこには敵の姿も探偵の姿も無く、あるのは戦場でも見たことが無いほどグチャグチャにされた肉の塊1つだけ
…その肉塊から信号が発信されていると気付くまで少し時間がかかった、かけたという表現が正しいか
「──エナ?」
もしエナが気付き、発信機を外せば通知が来るようにしてある、その通知は来ていないということはエナは発信機を外していない
「は、はは…」
じゃあ…何か?目の前の、獣の食い散らかしたような、人型に似た肉塊がエナとでも?
────
「ッ…!のッ…くそったれがァァァア!!!」
この、こんな…
「畜生…ッ!」
そこが身体のどの部位だったのかもはや分からなくなった肉塊を抱き上げる
「エナ…うう、あ…」
これまで散々ザイル…ウルフルズとは戦い続けてきた、その過程で俺の部下も大勢死んだ、何人も何人も…
俺と同じ、犯罪組織を許せないという志を持った者達
「…」
親友を失った青年は、まぁアイツ馬鹿だからいつかこうなるんじゃないかと思ってたよと笑った
夫を失った婦人は、あの人の決めたことですからと子供をあやしながら言った
息子を失った老人は、あなたの元で戦えてあいつも本望でしょうと頭をかいた
誰も俺を責めなかった、だから戦い続けた
「…」
何が最高のアメリカ軍人だ、何が国の勇者だ、家族1人守れないで…何が──
「おいマスター、立て、帰るぞ」
崩れ落ちそうになった俺の身体が強引に引っ張り上げる
「は…?おい?」
「少し周囲を調べてみた…戦闘の形跡が全く無いというわけじゃねぇが殆ど無い、恐らく戦いにすらならなかったんだろうな」
淡々と言葉を続けるバーサーカーに俺の情報処理能力は追いつかない
「お前の弟が持っていたあの嫌な感じの剣が無いのも気になる、すぐに戻って対策を考えるぞ…災厄の獣とザイル以外にも厄介なのがいるかもしれん、あの手の連中に時間をやるわけにはいかない」
「は、離せ!お前、お前!ふざけてるのか…!?」
バーサーカーの手を振り払い彼の顔を睨む
「何もふざけていない、とりあえず適当な部下を呼んで死体を処理させた方がいい、目に付く」
「ッッ!!!」
振りかぶる拳、それをあっさりとバーサーカーは受け止める
当然と言えば当然だ、人間如きの打撃がサーヴァント相手に通用するわけが無い
──それが俺の怒りを加速させる
「マスター、気持ちは分かるが──」
「気安く言うなッ!!俺はお前らサーヴァントみたいに聖杯以外どうでもいいなんて割り切れるクソじゃないんだよッ!!」
「──」
ほんの一瞬、流れる静寂をすかさずバーサーカーが破る
「──クライム」
「なんだ──ガッ!?」
ゴギリ…と嫌な音と感触が肩から伝わる
腕が折れ──いや、外されたのか?
「バーサーカー…!」
「いい機会だから言っておく、俺は聖杯なんていう与太話は信じていない」
「は?」
「俺が召喚に応じたのはな、お前の志に惹かれたからだ」
…?
「…なんの話だ?」
言っている意味が分からない、だがバーサーカーは構わず話し続ける
「ザイルという男を殺す、何故そこまでお前が奴に執着してるか知らんが…これまで何があってもその志が折れることは無かったんだろ?」
「当たり前だ!」
奴こそ異端…国の、いやこの世界の癌細胞だ、絶対に殺さなくてはならない
「なら立て、ぐずっているヒマは無い」
「だ、だからといってエナをこのまま野ざらしにしろと言うのかお前は!?」
「そうだ」
〜ッ
「ふざけ──『うるせぇ!』
…!?
召喚してから一度も見たことの無かった彼の怒鳴り声、少し面食らってしまい、言葉を飲み込む
「お前1人でここまで来たわけじゃ無いだろう、そしてその過程で何人も死んできたのも知っている」
「何故それを知って、いや、知っているなら尚──」
「お前が立ち止まったら、お前が戦うことを一瞬でも放棄したら、お前を信じて死んだ連中の思いは、無念は誰が持っていく?」
…!
「殺したい相手がいた…というわけじゃないが生前、俺もお前のような折れない志を持ってお前のように部下と共に戦場を走った、その途中で同志が何人も死んだ」
「…」
「だから俺は死んだ奴の分まで走った、死んだ奴の分まで銃を撃った、死んだ奴の分まで刀を振った」
「お前…」
「死んだらそれまでだ、何も出来ない…なら生きている奴が、死んだ奴の代わりに前へ進まなくちゃならねぇ」
──前へ、進む…
「弟を弔うのは全て終わった後だ、今は獣と、それ以外の脅威への対策を練るぞ」
「…」
無茶苦茶を言っている、そんなことを本気で思えるとは流石バーサーカー…いや、コイツは最初からこういう奴だったのだろう、英霊になってまでそんな志を貫き通せるというのはもはや呪いではないかと疑うレベルだ
──だが
「ああ、そうだな」
それで納得している俺も非人間であり、狂っているのだろう
「…わかりゃあいい。肩、戻すぞ」
「手短にな…グッ…!」
外されていた右肩が戻される
「随分と…慣れた手つきだな」
「まぁな」
軽く肩を回しつつエナの遺体に背を向ける
「…」
埋葬くらいはしていいんじゃないかと一瞬思ったが…今は聖杯戦争真っ只中、彼の言い分も分かる
「許せエナ…帰るぞバーサーカー」
「了解だ、マスター」
そして俺は、バーサーカー…土方歳三と共に、その場を後にした
〜
…ありゃ?逃げちゃった
クライム達がいた場所から200メートルほど離れた場所に建てられたビルの上で、白衣の女性…ノーアは握りしめていたキューブのペンダントを離す
「引っ掛かってくれると思ったんだけど意外と冷静なんだ?ま、いいや!ザイルにとって邪魔なのは間違い無いし、また次の機会で殺そーっと!」
今頃ダヴィンチちゃんがザイルの義手の整備をしている頃だ
「私も帰るかな〜」
のんびりとあくびをしながら彼女もまた、その場を後にした…
スカディ来て有頂天の作者のルルザムートです、ハイ
とりあえず4000以内には収まった…いままでのどう考えても長いですし…それと年末忙しくなるのでまた投稿ペースが空くかもしれません
感想、評価等お待ちしております