弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
ザイル/影月 彼方の心象世界にて…
「いきなり何の話だ?」
半ばイラついたように聞き返してくるザイル
「こう見えてワタクシ、受けた恩は忘れませんので♡」
「…言葉が足りない、説明しろ」
「そうだよ、それじゃ全く分からな──」
「彼方が分かる必要は無い」
矛先が戻ったのか彼は喋る隙すら与えず対物ライフルを影月 彼方へ向けて連射していく
「うわっ!?」
驚いていたもののすぐに立て直してブンブンと剣を振り
「もー、殺し合わずに済むと言っているのに短気ですねぇ」
おまけに非生産的…自分同士で殺し合うとかギャグにもならない骨折り行動ですよ?
「結論を言え、お前は何をしようとしている?」
「え?それはもちろん、お2人が殺し合わずに済む道の開拓ですが?」
「結論になっていない」
殺し合いの手を止めることなくザイルが言う
「…ホントにそんな方法あるの?」
食い気味だった彼方も若干の不信感を募らせているがお構いなしに言葉を続ける
「ええ、ザイルさんと彼方さんが殺し合っている理由はこの
「…そうだ、今までは俺の方が強く、こうして自分と争うのはもっと先になるハズだったが影月 遥の出現でそうも行かなくなった」
まーそんなところですよねぇ
「ワタクシならそれを解決することができます♡お2人が殺し合うよりも有益な結果を残して、ね」
ただ実行するには彼方さんの協力が必要ですが、と付け加えて彼女の方を見る
「焦らさないでよ、それで?私がどうすればお兄ちゃんと殺し合いしなくて済むの?」
「具体的に言うと…彼方さんの人格にはもうしばらく身を潜めて欲しいのですよ」
このまま彼らが殺し合いを続ければ外の、ザイルでも彼方でも無い人間が死んでしまうだけ
「察するにザイルさんは彼方さんの人格を今まで無理矢理抑えつけていたのでしょうが…ここは穏便に話し合いで退いていただけませんか?」
「…難しいな、私もお兄ちゃんもこの場では人格であって物事を記憶できる生物じゃない、ここで退いたところでそう遠くないうちにまた殺し合いが始まる」
ええもちろん、ただ先延ばしにするというわけではありません
「48時間です」
「え?」
「48時間…2日時間を下さればこの問題はワタクシ、コヤンスカヤが解決致しましょう♡」
交渉において期限設定は重要である、いつ終わるか分からないものより決められた期限を設定し、それに納得できるだけの信用があれば契約は圧倒的に結びやすい
そして交渉するにあたってその期限は短ければ短いほど相手を納得させやすい
コヤンスカヤ自身やザイルの身体的状況、彼方の信用を得られる範囲、敵マスターの数、ここ以外で対処すべき問題、不確定要素に対応できる余裕等を考えた上で練り出した数字…
少々ハードスケジュールにはなりますがワタクシなら充分実現可能、妥当なところでしょう
「如何ですか?」
「コヤンスカヤが外から私を消さないという保証は?」
「後から形成されたザイルさんの人格ならともかく元からある人格をどうこうする都合の良い方法はありませんし…そもワタクシにとっては貴女も恩返しの対象です、恩を仇で返すような仕打ちなんて出来ませんよ」
「…私はあなたに何かした記憶は無いよ」
「ええ、貴女は何もしていない」
今の状況を引き起こしたのはグランドアーチャー戦が原因と見て間違いありません、ということはあの時点で彼女の人格も表に出かかっていたと見るべきでしょう
「ワタクシにザイルさんが全令呪を切って自身の血液を差し出した時、貴女は彼を止めなかった…そうでしょう?」
「まぁ…そうだけど」
バツが悪そうに目を逸らす彼方
もちろん彼女には同情なんて感情は無かったでしょう、ザイルさんの単調な願いならともかく、人類の再構成なんて彼女1人でどうにかできるものではない…身体を勝ち取った後でワタクシを利用するために彼を見逃したと言ったあたりでしょうね
ま、ワタクシとしては同情なんていう生ゴミ同然の感情よりそちらの方がずっと良いですが。こちらも信用できますし♪
「繰り返し言いますがワタクシ、受けた恩は忘れませんので。必ず2日以内に貴女の元へ戻るとお約束しますわ♡」
「…でも、うーん」
いつの間にか彼女らの殺し合いの手は止まっていた
もう一押し必要でしょうか?いえ、これ以上言うと逆に不信感を買いますし時間の問題──
「く、ふふ、ふふふ…実に愉快、客人よ」
それまで蚊帳の外だった案内人が口を開く
「おや?貴女は話に入ってこないと思っていましたが」
「ふふ…そう言うな、客人がどうするか気になったまでよ、余は決めたぞ彼方よ」
「今考えてるからちょっと静かに──」
「2日後、この時間になって尚変化が無かった時、余はお前に付こう」
「「!」」
案内人の発言に硬直する2人
彼方に付く、というのは身体の奪い合いに案内人も参加する、という意味で間違いないでしょうが…2人のフリーズっぷりを見るにこれまで案内人は一切動いていなかったのでしょうね
「分かった、しばらく私は引っ込むことにする」
案内人の助力が響いたのか彼方はあっさり身を引き、煙のように姿を消した
「さて、そういうことですのでザイルさんも」
「…信用するぞ」
そう一言、感情を見せないままザイルも同様に姿を消す
…ひと段落つきましたか
「ふぅ、ありがとうございます、お陰で滞りなく進みました」
「ただの気まぐれよ」
図らずも案内人が最後の一押しをしてくれた、後はここから出るだけ──
「おおそうだ客人よ、先の戦いでそなたには何が見えたか聞かせてくれ」
「あーそんな話もしましたねぇ」
とはいえ彼女にとってアレは別段考え込むようなことではない
強いて言うならば──
「…あの場に善も悪もありません、自然界と同じく単純に『多く群れているから』群れの中で最も弱い者を切り捨て、生き残っている
そして人間もその自然界の一部、おかしい点も思う点もありませんわ」
「ふむ、そうか」
言葉を返しつつマニュアルプログラムから受け取っていた退避プログラムを起動させる
ん…
「いえ、一点訂正しましょう」
「?」
退避が完了する数秒前、コヤンスカヤは一つだけ自然界において当てはまらない人間の特性を思い出した
「自然界において強さとは生き残り、子孫を残し、繁栄すること…この世界に生きる生物全てに当てはまるその常識だけは人間に当てはまりません。
先導する人間やその群れを構成する人間の性質によって強さと正義の形は常に変化し、枝分かれしていく…
共通しているのは最終的に必ず自然界にとって不要な形として残るということです」
だからこそワタクシは人類を
「ふふ、ふ、善も悪も無いと言った上で正義を語るか」
「ええ、正義と並ぶものは正義だけですし?」
どうやら案内人には返答を気に入ってもらえたようですね
プログラムが完全に起動し視界が白くなっていく
「では失礼いたします、案内ありがとうございました♡」
「良い良い、余も久方に楽しかった」
また2日後に、と案内人と言葉を交わし、ワタクシは心象世界を後にした──
〜
ザイルの私室にて…
「っと」
ぺいっと投げ出される感覚、それと同時に身体のバランスを戻して着地する
…さてはノーアさん、出てくる時のこと考えてませんでしたねコレ。
「コヤンスカヤ」
服の埃を払っている途中で聞き慣れた声が背後から聞こえる
「は〜い♡あなたのサーヴァント、コヤンスカヤでーす♡」
「やれやれ…」
ベッドから上体を起こして頭部に巻いたタオルを気怠そうに取るザイル
タオルにべっとり血が付いてはいるものの、額からの出血は既に収まっていた
「色々と言いたいことはあるがまずは礼を言わせてくれ、全令呪を使いマスター権限を失って尚ああして助けに来てくれたこと…感謝する。
あの場じゃザイルも彼方も極端に言えば思想が形を持ったただの
殺し合いを続ければ肝心の肉体が死ぬかもしれないという事実を受け止められていなかったからな」
割と素直に感謝を述べるザイルに少しだけ驚いたものの、コヤンスカヤに優越感は無い。彼女はただ自分のルールに従っただけだ
「それに関してはお互いサマということで。
動機がどうあれワタクシは
そもそもワタクシは令呪が無くなればハイさよならの薄っぺらい契約なんてした覚えはありませんし。
「そうか」
そう呟いて起きあがろうとするザイルさんを慌てて静止させる
「お待ちください!確かに窮地は脱しましたがグランドアーチャー戦の負傷は決して軽くありません!」
慌てて止めたせいでミシッとか聴こえた気はしますがここは必要経費で。
「
「その通りです…なので今日から1日はザイルさんの療養に当て、残る1日で障害を取り除きます」
「なに…?」
「これを。」
ポケットから1枚の写真を取り出して彼に渡す
「これは…?空母…いや戦艦か?それにしては…」
「ワタクシの所有する兵器の1つでこの世界には無い技術で建造されています
内部には様々な設備があり、もちろん医療設備もございます」
彼の手を取り、単独顕現使用準備に入る
唯一の懸念は獣の証とも言える
「今からこの船へザイルさんを護送、船のリソースを医療機関へ集中させて1日で貴方を戦えるだけの状態に治します!」
一応鹵獲してから一通り設備の使い心地は試しました、1日あれば万全とは行かなくとも充分回復はできる…
「確かにこれじゃ戦えないな、分かった…だがその1日、お前はどうするつもりだ?」
同意を求める前に彼が口を挟む
「情報収集及び工作ですね…そのためには最初の令呪の命令により許可が必要となっていますがよろしいでしょうか?」
「令呪が無いのに律儀なもんだな
…いいだろう、現時刻を持って単独行動禁止の命令を解除する」好きにしろ
「ありがとうございますザイルさん♡さて、では行きましょうか」
さァ、タイトなスケジュールになりそうですが…あの頃のように1人で張り切って行きましょうか!
『単独顕現 C』
NFFサービスの求人広告を探している作者のルルザムートです、ハイ。
25話にもなってようやくコヤンスカヤ視点のみの回が書けたという事実…
ここからはガッツリ周りを振り回し始めますよぉ〜…うん、そう思う、きっと…!