弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》   作:ルルザムート

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第29話です、お楽しみください


第29話 実らない恋

R地区 マトン宅にて…

 

 

「停電なんてツいてないわね…」

明かりのつかない家の中で眠たい目を擦りながら手探りで懐中電灯を探す遥の義姉のトール・マトン、暗くて見えづらいその表情には隠す気の無い苛立ちが浮かび上がっている

 

 

停電か爆発音かどっちかにしなさいよ…

眠くて判断力が鈍っていた彼女が『魔術で適当に明かりをつければ良いのでは?』と気付いたのは10分かけて懐中電灯を探し当てた直後だった

 

 

「ああ…ホント最悪──ん?」

ドンドンと何かを叩く音が聞こえて反射的にそちらにライトを向ける

玄関…誰か来たの?

 

 

こんな時間に?と思ったものの今は停電真っ只中、救助隊とか消防隊とかが見回っているのだろうと勝手に納得して扉の方へ

ドンドン

「はいはい今開けますよ〜」

 

 

だが、

「停電の見回り?ウチは特に問題無いから──え?」

扉の向こうに立っていたのは救助隊でも消防隊でも無かった

「────」

 

 

J地区 米陸軍駐屯地 医療棟にて…

 

 

規則的な機械音で目が覚め、最初に見たのは白い壁。

それが壁でなく天井だと気付くのに少し時間がかかった

 

 

「………生きてる」

身体は痛いっちゃ痛いけど命の危険を感じるような痛みじゃ──

みしっ

「〜〜っ!!??」

 

 

起きあがろうとほんの少し力を入れた瞬間、電流でも流されたような痛みが走りベッドの上を転げ回る

「ちゃっ、ちょ、痛い痛い痛い!」

が、そんな激しい動きをすれば痛みが強くなるのは当然なので無理矢理にでも我慢する他無かったのだが。

 

 

「死ぬかと思った…」

かろうじて動かしても痛みが無い手で額の汗を慎重に拭う

多分病院、だよねココ…

 

 

あやふやな記憶をなんとか呼び起こして何があったか再確認する

…そういえば

「私死にかけて──あ」

ふと感じた気配、その方向を見ても誰もいないが遥には存在を察知できた

 

 

「オリオン?」

「!……よう、ハル」

気まずそうに姿を現すオリオン、そこに普段の陽気な彼は居なかった

 

 

「…」

「…」

重たい空気に流れる静寂、不気味なほど静まり返った病室には私とオリオンの2人だけ

何か、話さないと──

 

 

「身体の具合はどうだ?」

「えっ?え、うん、メチャクチャ痛いけど死ぬようなカンジじゃない、かな?」

「…そうか」

 

 

「あ、その、そうだ!オリオンがここ(病院)まで運んでくれたんだよね?」

途切れそうだった会話を強引に繋げてお礼を言う、その時は自分から会話を始めるのがとても難しいように感じたから

「俺だけじゃねえ、バーサーカーのマスターとセイバーのマスターが協力してくれたおかげだ」

「あっ、そうか!そうなんだ!じゃあまたあとでお礼を言って「マスター」

 

 

真面目──悲痛とも取れる表情をしたオリオンが真っ直ぐに私の顔、そして1画だけ残っている令呪を順に見つめる

「──」

なに?と聞き返すことができない、本能で『聞きたくない言葉』が来ると遥は理解してしまった

 

 

「あの、あのさ!ウチの近くに凄い美味しいケーキ屋があるんだ!」

言わせたくない、聞きたくない、そんな思いからどうでもいい話を即興で作って引っ張り出していくが全て無意味だった

「今度…一緒、に」

 

 

彼の顔を直視できない、見れば見るほど舌が回らなくなっていく

「マスター」

「………なに?オリオン」

目線を合わせては逸らしていた彼だったが最後はしっかりと遥の目を見据えて言った

 

 

「契約を切ってくれ」

「」

予想はできていたというのにいざこうして言葉にされると何を思えば良いのか遥には理解できなかった

 

 

「え、えと…」

「これ以上、巻き込みたくない」

短く、はっきりと言い切る彼の言葉には私を気遣う気持ちが目に見えるほど込められていて、

 

 

「…そっか」

そしてそれは英雄が一般人を気遣うものと同じものだった

まぁ…いつかこうなるんじゃないかとは思っていたけど

特に秀でた面の無い魔術師がいきなりグランドクラスのサーヴァントと契約したところで上手くいくわけが無い

 

 

「うん、分かった…令呪を持って、命ずる

軽度の痛みを無視し、令呪が刻まれた右手を掲げて彼に最後の命令する

「今から少し…話をしよう?」

最後の令呪が消える、遥とオリオンの間にあった繋がり(パス)が消える

「おう、いいぜ」

 

 

彼がこの場から消えれば私が彼と出会うことはもう無くなるだろう、つまりこれが最後の会話。

最後だから、そう思うと言いづらかったことも意外とスラスラ言葉が出てきた

「オリオンはさ、楽しかった?」

「ん、あーと…デートのことか?」

「契約してからのこと全部かな」

 

 

サーヴァントは遊ぶために現界するのではない、それがグランドクラスとなれば尚更だが遥にとってこの質問はとても大事なものだった

「おう!楽しかったぜ!」

お前の姉ちゃんに蹴られた時とかはサーヴァントなのに死が頭によぎったりしてヤバかった時もあるけどな!と人差し指で鼻をすすりながら彼は笑う

 

 

「じゃーさ…ナンパとかも楽しんでた?」

「ぶっ…!」

不意打ちだったのか鼻から変な咳みたいな音がして少しだけ笑えたのは秘密ね

「…見てた?何回くらい?」

「それ聞いてる時点で自白してるようなもんじゃん!あはははっ!」

 

 

割と契約初期から彼のナンパ癖は知っていたけど特に怒りとかの感情は一度も浮かんではこなかった、なぜなら──

「別になんとも思ってないよ?だってオリオン、誰に対しても本気じゃなかったし」

小さい頃から僅かな表情や仕草から他人の考えを読み取っていた私だから分かる、彼は()()()()()()本気で女性と付き合いたいと思ったことは無かったんだ

 

 

最初から…何百年も何千年も前から彼の意中の女性は1人だけ、それも女神なんだから私が入り込む余地なんて無い

あの時無茶をしたのは苦しんでたビーストのマスターが妹に似ていたというのもあったけど、彼の役に立って振り向かせたかったという思いもあった

結果として足引っ張っただけだけど。

 

 

…こうして思い起こしてみると私も大概だね!?

自分のメンヘラ化に若干凹みつつも1番聞きたかったことを聞いてみる

「ねぇオリオン」

「なんだ?」

「アルテミス様ってどんな神様(ヒト)?」

「いきなりだな!?つーか知ってたのか…んーとな…」

 

 

良い言葉が見つからないのか私を気遣っているのか、顎に指を当てて考え込むオリオンに一言。

「そんな難しく考えないで一言でホラ!令呪を持って命ずる!遠慮も躊躇もナシ!」

「令呪もう無ぇじゃん!…まぁシンプルに言うなら──」

素早いツッコミを入れたのち、恥ずかしそうに言った

 

 

「アルテミスは…『いい女』だな、これ以上短くするってなるとちょっと難しいぜ」

「ええ…」

私はてっきりこうこうこういう神様で〜〇〇を司る神で〜という返答を予想していたが予想斜め上の発言に少々面喰らってしまう

 

 

「後にも先にもアイツよりいい女は出てこねぇだろうな、俺はそう思ってる」

「それは…神様だから?」

「いや?女神だから好きになったのとは違うが…いやまぁアイツが狩猟の神やってたから出会いがあったのはそうなんだが好きになった理由とはまた違う」

…うーん?

 

 

「…よく分かんないや」

「まぁこんなフワフワした説明で理解しろって言う方がアレだしな」

理解できるところは少なかったものの、できたところもあった

「本当に魅力的な神様(ヒト)なんだね」

「おう」

 

 

恋人の話をする彼は本当に嬉しそうで、褒めると自分のことのように照れて頭をかく様子はアルテミスという神様──いや、アルテミスという女性がいかに魅力的かを物語っていた

それを知った私が言うことは1つだけだ

「…そこまで胸を張れる恋人が居るなら浮気なんてしちゃダメでしょ、オリオンのバーカ」

「ぐ、返す言葉も無ぇ…」

 

 

ま、その浮気癖のお陰でデートができたりしたワケだから悪い事ばかりじゃ無いけどそれを言ったらアルテミス様が怒りそうだからやめておこう

「私が言いたいのはこれで全部、聞いてくれてありがとう」

「いや、これくらいはな?そっちこそ話してくれてサンキューな…その、色々すまなかった」

「反省してるならヨシ!でもアルテミス様が悲しむから2度としちゃダメだよ?」

「ああ、覚えとく」

 

 

もう──私から話すことは何もない

「…オリオン」

「どうした、ハル」

 

 

後は見送るだけだ

「──気を付けてね」アルテミス様によろしく

「おう」

扉から去っていくその後ろ姿を、私は見えなくなった後もしばらく見つめていた

 

 

「…」

どれくらい経ったか、私の意識はドタバタとした足音で引き戻された

この落ち着きのない足音は…

直後扉を破壊する勢いで開いた義姉、トール・マトンが入ってきた

「ハルっ!!アンタ相当ムチャをしたって──ハル?」

「お姉ちゃん?よくここが分かっ──「アンタ…なんで泣いてるの?」

 

 

「──え?」

堪えていられていた涙は、とうの昔に溢れ出していた

 

 

J地区 とあるビルの屋上

 

 

明かりの消えた街、本来もっと暗い筈だが彼のいるその場所だけは不自然に明るい月の光で明瞭に照らされていた

 

 

「…いつもみたいに殴ったりチョークスリーパー決めたりしねぇの?」

「やったところでなんにも意味ないじゃない、ダーリンのばか」

マスターと決別したサーヴァントは自分以外誰もいないはずの屋上で、それでもたしかに存在する誰かと会話する

 

 

「反省してる?」

「してるさ、今回は…色々と堪えた」

今まで色々と浮気してきたが最終的に自分が酷い目に遭えばうやむやに出来ていたので、自分以外が傷付くという経験が殆ど無かった彼には今回の一件は堪えたらしい

 

 

「そう…ハルちゃんが笑顔で見送ってくれてたから今はそれで許してあげる。霊基の調子はどう?」

「冠位の資格は完全に消えた、一応冠位相当の魔力は残っちゃいるが…その魔力も減り続けてるな」

対獣の切り札『我が矢の届かぬ獣はあらじ(オリオン・オルコス)』は撃ててあと1回きり、それも冠位相当の魔力が維持できるまで…それ以降は恐らく決定打にはならないだろう

 

 

「…行くか」

 

 

決戦の時はすぐ近くに。




NFFサービスの社畜になりたい作者のルルザムートです、ハイ。
オリオンが兄貴と同じ声だとつい最近知ってビックリしてます、だからよく死んじゃうのねアナタ…
あと関係ないですがメリュ子のバレンタインボイス聞いて吹き飛びました
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