弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
第35話です、お楽しみください
18年前
???にて…
「…」
お前のせいで。
どうして戻ってきたの。
消えてしまえ。
死んでしまえ。
ああ、また──
お願いだから消えて。
お願いだから死んで。
消えて、消えてよ、消えろ。
死んで、死んでよ、死ね。
何度も聞いた母親の声、その心無い言葉は私に向けられたものでは無いにも関わらず──いや、自分に向けられたものでは無いからこそ、痛いほど心に突き刺さる
「やめて!」
靴も脱がずドタドタと居間へ向かい、耳を塞いでうずくまっている彼方を抱きしめる
「う、あ…?遥?帰ってたの…?」
フラフラと虚ろな目で母親…
「お母さん!どうして彼方を虐めるの!?彼方はなにも悪いことしてないのに!」
…お母さんは私には優しかった、いや──彼方以外の全てに優しかった
「それは、だって…彼方は遥と違って人間じゃないのよ…!化け物じゃない!」
「それは目の色が赤いから!?近所の男の子に怪我させたから!?喋らないから!?そんなの私だって同じだよ、私も目が赤だし、それにそういうことする時あるもん!」
妹を抱きしめる両腕からは抑えようの無い震え…怯え、畏怖の感情が伝わってくる
妹が何をしたというのか、私には優しくして彼方には辛く当たるその理由が分からない
「っ…お母さんは、少し休むわ…」
もうずっと着替えていないワンピースの生地を握りしめ、苦虫を噛み潰したような表情でお母さんは部屋を出てすぐそこにある洗面所に姿を消した
「…お母さん」
母親の嘔吐する
…また掃除しなきゃ
気を持ち直して妹の顔を見る
「彼方、大丈夫?」
「う、うん…へいき…どこもケガしてないから…」
当然『平気』なんて言える様子ではなく、私は涙でぐしゃぐしゃになった彼女の顔をハンカチで拭きながら彼女が眠ってしまうまで、ずっと背中をさすっていた
「…寝たかな?…うん、よしよし…」
母が彼方を嫌っているのは見ての通りだが…だからといって彼方が母に直接的な傷害…暴力を加えることは一度として無かった。それだけはまだ救いだったが…同時に違和感でもあった
「お母さん…」
以前から感じていた母親の違和感。母親の彼方の嫌いっぷりはおよそ普通ではない、顔を見ただけでさっきのようなことが毎度のように起きる。──にも関わらず母は手を上げようとはしない、振りかぶることはあってもすぐに引っ込める
もちろん彼方が少しでも傷付かないのであれば遥にとって喜ばしいことなのだが普段あそこまで言葉で憎しみをぶつけている母親が握った拳をあっさりと戻すのが不思議だった
──そう、この時はまだ『お母さんも流石にそれは堪えてくれてる』と思うだけだった。
〜
ある夜のこと…
ん…
ふわりと身体が持ち上げられる感覚、と思ったらすぐに降ろされる
眠りたい身体と脳を無理矢理覚醒させ、目を開ける。すると飛び込んできたのは──
え…!?
「…けほっ………あ"…」
「はっ、はぁっ…!もう、限界…!今、ここで、死んでちょうだい…!」
普段の虚ろな表情とは違う、生気のこもった顔の母親が寝ている彼方の首を絞めていてる。彼方も何故か抵抗していない
それを理解した瞬間、眠気も完全に吹っ飛び、私は飛び起きた
止めないと──
「お母「ひっ!?」
声をかけるよりも早くお母さんの手が彼方から離れる
「…お母さん?」
月明かりで照らされた母親の目にはハッキリと恐怖の色が浮かんでおり、震える身体を押さえつけながら後退りし始めた
「いや…!嘘よ、うそ!殺す気なんて無かったの!だ、だってほら!途中で止めたじゃない!」
涙を流しながらまるで見えない何かに懇願するように叫び出す母親
まさか──
「彼方っ!!」
最悪の事態が頭をよぎる
それだけは──
「彼方!彼方大丈夫!?」
「………」コク
仰向けになったまま頷く妹を見てひとまず安堵する
生きてた!良かった…
「は、遥!?何してるの!?逃げなさいっ!」
と、そこでようやく母親が遥が起きているのに気付いたらしい
「お母さん…!自分が何をしようとしたか分かってるの!?」
この時は母親が何に怯えているかよりも、彼方を殺そうとしたことに対する怒りの感情の方が上回っていた。
「お母さんは遥を守ろうと──ヒィッ!?や、やめて…!もうしないから…!」
家具につまづくいて転ぶのも構わず後退りを続ける母親、その視線の先は目の前で横たわっている彼方──ではなく、その少し上を向いている
「お母さん一体何を「この蛇が見えないの!?早く逃げなさい!山から離れてどこか遠くに──あ…や、め…来ないで、許して…ごめんなさい、ごめんなさい!ごめんなさい!!」
見えない何かに怯える母親に遥はなんと声をかければいいか考えていたが数秒もしないうちに耳をつく音がして我に帰る
「いやあああっ!ザイルっ!たすけてザイルっ!!」
あの痩せ細った身体のどこにそんな力があったのか、母親は体当たりで縁側のガラス戸を突き破り、腕や足を破片で切りながら外へと飛び出して行ってしまった
いくら彼方を殺そうとしたとはいえ実の母親、探しに行こうかと思ったが彼方を置いていくわけにも行かない
しばらく悩み、とりあえず明るくなってから教会や学校に掛け合って一緒に探してもらう、と結論を出した
「ごめんね彼方…怖かったよね?次はちゃんと守るから…今は目を閉じて、ね?」
「………うん」
まだ僅かに震える彼方の頭を撫でながら布団を被せる
何があっても…私はあなたの味方だから…
子供の自分が情けなかった、近くに居ながらできることと言えばこうして頭を撫でたり一緒に遊ぶくらいしかできない自分が。
「早く…もっと大きくなって彼方を守れるように──っ!誰!?」
背後に感じた気配、一瞬お母さんが帰ってきたと思ったけど私より後ろに家の出入口は無い
「…?」
振り返ってもそこには壁があるだけ、見える限り何も無いし誰もいない。──けど
「 ふふ ふ 」
たしかに私はその声を聴いた
「 じつに ゆかい 」
私の知らない声を。
…
…そこからはどうやって朝まで過ごしたか覚えていない。
眠ってしまったのか、朝まで起きていたのか、気付いたら外は明るくなっていた
お母さんは…あれ以来帰ってきていない、帰れない。わざわざ禁足地まで捜索してくれた教会の人達は言葉を濁していたけれど、その対応はお母さんがどうなったのか理解するには充分すぎた
「…」
その日、私と彼方は互いに唯一の家族になった。
〜
時間は移り変わりオリオンとの契約解消直後…
J地区 米陸軍駐屯地 医療棟にて…
「落ち着いた?」
「まぁ…うん、なんとか」
拭いても拭いても溢れていた涙がようやく収まり、気分も落ち着いてきた
ならばヨシ!と笑うお姉ちゃんだったがその表情にはどこかぎこちなさが浮き出ているように見える
「…何かあったの?」
「何かあったの?ってそりゃそうでしょ!妹が死にかけたんだよ!!」
がおお、と怒るトールに悪いと思いながらも言葉を遮ってもう一度質問する
「それ以外に、さ?…何かあったんでしょ?」
そう言うと彼女は一瞬黙り込み、
「…分かる?」
そう短く呟いた
「なんとなく」
「うん…うん、そっか」
頷きながらもまだ迷っているのか目をつぶって唸るトールだったがやがて決心したように口を開いた
「…さっきね、家に魔術師が来たの、多分聖杯戦争関係者。」
「え!大丈夫だったの?」
「それは大丈夫、参加者じゃ無かったから」
…?教会の人なら教会の人だと言うだろうし…じゃあその人は一体…?
「その人が教えてくれたの、遥がここに居ること、死にかけたこと、そして──このままじゃグランドアーチャー…オリオンが
っ!
グランドアーチャーという単語に一瞬困惑するも、直後の言葉に思考がそこに集中する
オリオンが…殺される?
「ビースト…人類悪コヤンスカヤは犯罪組織集団ウルフルズリーダーのザイル・ニッカーと共謀してオリオンを殺す気よ、カウンターで本来絶対に勝てるハズのグランドクラスがビーストに敗北するようなことがあれば世界は間違いなく終わるわ」
「ま、待ってよ!そんないきなり色々言われても!グランドクラスって何!?」
「彼には使命がある、それは分かってたんでしょ?…早い話彼は、彼だけは聖杯を勝ち取る為ではなく世界を護る為に召喚されたの」
オリオンの、使命…
たしかにそれは分かっていたつもりだった、でも──
ビルの屋上でオリオンの宝具によってズタズタになっていた女性を思い浮かべる
だとするとあの人がコヤンスカヤ…?耳と尻尾以外はどう見ても普通だったけど彼女が世界を滅ぼすの…?
「回りくどいのは嫌いだから単刀直入に言うわね、遥」
「う、うん」
「あなたの中には月女神アルテミスの力が残置されているの、その力を使って不意を突けば今のコヤンスカヤなら間違いなく倒せる、幸いビーストがどこで仕掛けるかも分かってるからあとは力だけ。だから──その力を私にちょうだい」
「え?えっと…」
…とりあえず情報を整理しよう
「そんな細かいことまでその魔術師が…?一体誰なの?」
「ごめんね、いくら遥でもそれは言えない約束なの。『情報を提供する代わりに正体について絶対に口外しないこと』それが魔術師の出した条件」
破ったら私が死ぬのよ、ごめんね?と頭をかくトールに遥も追及をやめて次の質問を投げる
「月女神アルテミス様の力が残置されているっていうのは?」
「…これも聞いた話だけど遥、あなた死んでもおかしくない重症だったってここの人の誰かに言われなかった?」
「それは、言われたけど…」
やってきた医師、看護師が口を揃えて『奇跡』とか『生きているのが不思議だ』とか言ってた記憶がある
「死んでもおかしくない、じゃないの。
「え」
それって…
「ここに魔術に精通した人間が居なかったから誰も気付かなかったみたいだけど…今のあなたは神の気配…神性を纏ってる」あまり強くは無いけどね
「…」
神の気配、と言われてもよく分からないけど確かに自分の中に自分以外の温かい何かがあるのが集中すると感じ取れた
「その力を私に譲って欲しい、そうしたら後は私がビーストを倒す。それで全部終わりよ」
「…譲るって、どうやって?」
「力を形にして身体から取り出して私に打ち込む、多分金の…いえ、銀の弓矢として出てくると思うわ」
「…」
「酷かもしれないけど時間が無いの、今ここで月女神の力を抽出する。心の準備はいい?」
「待って」
ベッド横から顔を覗き込むお姉ちゃんに私は最後の疑問をぶつけた
「もし月女神の力を使ったら…どうなるの?」
「………さぁ?神様の力なんて使ったことが無いから分から「ちゃんと答えて」
目を逸らそうとするトールの頬を痛みの響く両手でがっしりと掴む
「……祝福も受けてない、寵愛もされてない人間が使ったら…間違いなく死ぬわね」
「…っ!最初から死ぬ気だったの!?」
「私だって死にたく無いわよ!!でも他に方法が無いのっ!」
限界が来たように怒鳴るトール、その目は涙で潤んでいた
「じょっ…」
冗談じゃない…!これ以上家族を失ってたまるもんか!!
「あるよ、方法…祝福されてればいいんでしょ!」
それならお姉ちゃんよりも私が──
「その身体で何が出来るのよ?あなたには妹を助けるっていう目的があるでしょ!?世界なんてもの背負う必要は無いのよ!」
「そんなのお姉ちゃんだって同じ──ゴホッ!え"ほっ…!」
興奮しすぎたせいか身体の痛みが増し、喉の奥から血が溢れ出る
「ああもう!言わんこっちゃ無い!誰か呼んでくるから大人しくしてなさい!」
「…」
「聴こえた!?もうっ!」
「…うん」
来た時と同じようにドタドタと音を立てて病室から出て行くお姉ちゃんを尻目に身体へ力を込める
「…ッ」
…もの凄く痛い、けど──
「はっ、はあっ…く…!」
動ける
身体に付いている医療機器(?)を外し、お姉ちゃんが置いていったコートを羽織り、ベッド下の自分の靴を履く
「…オリオン」
行かないと…
満身創痍の身体を引きずり、窓に手をかける
ここが1階で良かったと思いながら窓枠を乗り越える
ドサッ
「〜〜〜ッ!!!」
着地に失敗して全身に激痛が走る
──痛みなんかどうだっていい、立ち上がる。立ち上がれ、立ち上がらないと…!
「…う?」
コートの中からこぼれ落ちた1枚の紙、そこには綺麗な文字でこう書かれていた
『明日の午前0時0分 W地区 中央公園』
この場所に…ビーストが…!
紙を握りしめ、立ち上がり、歩き出す、フラフラと頼りなく。それでも確実に前へと。
「はっ、はっ…」
時間までほぼ丸1日あるとは言えこの身体じゃ移動に時間がかかる
…急ごう
リメイクextraでは玉藻と結婚できるルートを作って欲しい作者のルルザムートです、ハイ。投稿遅れてすみません!このところ仕事が忙しく中々時間が取れず…また来月(4月10日)あたりから2週間ほどスマホが触れなくなる可能性が高く恐らく更新が止まります、ご了承ください