弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》   作:ルルザムート

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7000越えちまったァァア!
長い第36話です、お楽しみください


第36話 身の程知らずの少女の愛矢

G地区 路地裏にて…

 

 

グ…!

痛む身体を動かし、路地裏に逃げ込む

「はっ…はぁっ!あ"…!」

黒ずんだ壁に背中を預け、大通りの様子を伺う

 

 

「何か変わったことは?」

「特に報告すべきことは何も…強いて言えば明かりが欲しいですね」

軍人…恐らくクライム・アルバートの部下であろう2人組が懐中電灯を持って何かを話している

 

 

「停電とはな…まぁそれは置いとけ、司令部からの情報だ、ハル・マトンという例の傷病者が病棟を脱走したらしい、治療もロクに済んでおらず危険な状態という

わざわざ封鎖中のこちらに来るとは思えないが基地は目と鼻の先だ、一応覚えておいてくれ」

「了解です、班長」

 

 

「…」

基地を出てからまだ30分も経っていないというのに脱走したことを感づかれたらしい

いや当然かな…お姉ちゃんが居たし…

 

 

…そろそろ移動しないと──

「ん?アナタそこで何をしているんですか?」

っ!

さっき会話していた人達とは別の人の声に振り返る

 

 

「ここは封鎖中で…うん!?キミもしかしてハル・マトンか!?」

まずい!逃げないと…!

無茶な力を込め、貫くような痛みも熱さを堪えて走り出す

「待ってくれ!」

 

 

が、瀕死の一般人が鍛え抜かれた健康な軍人から逃げられるような道理は無い

「離してください!私には、やらなきゃいけないことが…!」

腕が砕け散りそうなのも構わずデタラメに振り回す

「暴れないでください!これ以上無理をしたら本当に──」

 

 

バシッ

 

 

「う…!?」

私を掴んでいた力が急に抜けて目の前の彼は崩れ落ちた、どうやら気絶したらしい

でも腕が当たったとかそういう訳じゃない、彼を気絶させたのは…

 

 

「はぁ…ボロボロですね、影月 遥さん?」

するりと現れたのは白いロングコートを羽織った女性だった、暗さとフードで顔は見えないが声の感じからかなりの美人であることが伺える

 

 

「あなた、は?」

「…情報提供者とだけ言っておきます、それ以上の詮索は無用です」

無愛想にそう言うと彼女は懐から錠剤のような物を取り出し、遥に差し出した

「一時的に痛みを抑え込む薬です、とはいえダメージ自体を無かったことにするわけではありませんので身体の管理は今以上に気をつけてくださいね」

「あ、ありがとう…んぐ」

 

 

ということはこの人がお姉ちゃんの言ってた情報提供者なのかな?

もらった錠剤を飲むと身体を焼き尽くす勢いだった痛みが急速に落ち着いていき、筋肉痛とさして変わらなくなっていた

「礼はいりません、こちらとしてはコヤンスカヤを排除してもらうまで倒れられては困りますので。動けますか?」

「うん、大丈夫、です」

 

 

足回りに不快感を覚えるほどの違和感は感じるものの、痛みが無いというだけで歩き易さはかなり変わる

…行けそうだ

「大丈夫そうですね、目的地まで護衛します」

 

 

こうして私は謎の女性に連れられ、闇に包まれた街をゆくこととなった…

 

 

W地区 とある民家にて…

 

 

そして着いた先は小綺麗な一軒家、生活感からつい最近まで誰かが使っていたことが分かるが今は空き家のようだ

「ここがあなたの家?」

「隠れ家の1つです、とりあえずソファかベッド…どこでも良いので横になって下さい」コートはこちらに。

 

 

言われるがままコートを預け、奥の寝室に入ってベッドに寝転がる

…もう薬の効果が切れてきたのか身体が若干痛くなってきた

「具合はどうですか?」

「薬が切れてきたみたいでちょっと辛いかな…」

「乱用すれば効かなくなります、我慢してください」代わりにこちらをどうぞ

 

 

薬の代わりに貰った栄養剤のジュースを一口含む

うええ、苦い…

「しかしこうして見ても未だに信じられない、貴女からは確かに月女神アルテミスの神性を感じます。」

 

 

顎に手を当てて首を傾げる女性からは疑問や不明瞭な情報から来る違和感、不快感よりも興味をそそるような感情が感じ取れた

正直なところ、オリオンと契約したとはいえ何故月女神アルテミス様が私を守ろうとしていたかは分からない、私もそれには興味があるけど…

 

 

今はそれどころでは無い、と考えを振り払う

「何故そうなったのか探るには時間がありません、どちらにせよ我々は貴女に宿るその力に頼る他無いのです」

「…?」

我々…?

 

 

「コホン、私がこちらに居られるのもあまり長くはありません、手短に説明と物資の配布を行います」

自分自身を急かすように武器や薬といった物資をコートの内側から取り出し、近くのテーブルに並べていく女性

…素朴な疑問なんだけど、どっから出してるの…?

 

 

最初に貰った薬と同じ物(2錠)に赤いフレームのシンプルなメガネ、小さな何かのリモコン、そして明らかにコートの内側に収まりきらないような大きさの黄金の弓が床に並ぶ

「薬については仮眠の前に1錠、狙撃前に1錠飲んでください」

「分かった」

 

 

「こちらのメガネは視覚補助、遥さんは片目がありませんので奥行きを感じ取ることが難しい状態…狙撃においてそれは致命的ですのでそれを補助するものを配布させていただきます」掛ければ勝手に発動するのでご心配無く

…ベッドの上からよく見てみるとメガネにはフレームだけでレンズは入っておらず、パッと見た感じは伊達メガネだが魔力を感じるあたり礼装の類だろう

 

 

「こちらのリモコンは押した使用者の身体や魔力、気配や殺気などを外部から完全に遮断させるものです。

しかし効果はもって10秒強な上に使い捨て…使用は慎重にお願いします、内部から外の状況はしっかり見れますのでそこはご安心ください」

確実に不意を突けと言わんばかりだ、見た目はただのおもちゃだが中に魔力が詰まっているのが分かる、これも礼装らしい

 

 

「最後にこちら、黄金の弓です」

「そのまんまだね」

「重量軽減以外の魔術的細工はされていませんが月女神アルテミスの力を行使するのなら金か銀の弓が最も適しているでしょう」

そっか、確かアルテミス様って金の弓矢を持ってて…あれ?銀の弓矢だっけ?

若干記憶があやふやな私をよそに女性は説明を続ける

 

 

「今のあなたならこれに少し魔力を込めるだけで月女神の力を矢として放つことができるでしょう、これで私からの説明は終わりです。…そして最後に1つだけ質問させて下さい」

無愛想だった表情が見かけは変わらずに真剣な、緊張を持ったものに変わる

…表情はフードで見えないままだけどそれは分かった

 

 

「…月女神アルテミスの矢を放てばほぼ間違いなくあなたは死にます、魔力行使に身体が耐えきれないか…それよりも早く月女神の呪いによって自壊するでしょう」

人間が神の力を行使するとはそういうことです、と付け加え少し間を置いて彼女は言った

 

 

「それでも…あなたは射ちますか?まだ大人になったばかりで人生がこれからだというあなたの全てを…捨てるつもりはありますか?」

明確な言葉は出てこなかったが『嫌ならやめても良い』と女性は私に言っているのは間違い無かった

…正直、彼方という心残りはある、けど──

 

 

「あの子がまだどこかで生きているのなら、私が命を投げ出して世界を救う道理は充分あるよ…射つ、絶対に」

「………決断、ありがとうございます、我々はあなたに救われました」

深々と頭を下げる女性に『まだ救ってないよ』と愛想笑いをし、大きく深呼吸する

 

 

「時間までまだ余裕があります、今のうちに仮眠を取っておくと良いでしょう」

「うん、そうする」

貰った薬を1錠飲み、目を瞑る

 

 

「あなたの戦いに同行できないことをお許しください、私は…そろそろ行かなくてはなりません」

「──あの」

フードを深く被り直し、玄関へと向かう女性を私は咄嗟に引き留めていた

 

 

「はい、なんでしょうか?」

彼女は詮索無用と言っていたけど、こうしてこの人と会話するのはこれが最後な気がし、意を決して私は聞いた

「…あなたは誰?」

 

 

正直回答拒否されるかはぐらかされるかのどちらかだと思っていたものの、答えは案外あっさりと返ってきた

「…私は…かつてザイル・ニッカーの部下だった女。…それだけです」

彼女はそれ以上話すことは無いと踵を返し、玄関から出て行った

 

 

 

 

「ん…」

窓から差し込む月明かりに目が覚める

時間は…23時28分、目覚まし時計が鳴る寸前に目が覚めたらしい

 

 

時計の電源を切り、痛む身体を起こして手探りでテーブルの上の物資を取る

黄金の弓って言っていたから重いのを想像していたけどそんなこと無かったな…

思い出してみると重量軽減の魔術がどうとかって言ってたから多分それだろう

 

 

納得して人生初となる眼鏡を掛け、貰ったリモコンと薬をコートのポケットに入れる

「おお、すごい…」

月明かりの差す場所以外何も見えなかったが眼鏡を掛けた途端に一気に視界がクリーンになる

 

 

「うん、行けそうだ」

あとはビーストが現れるのを待って──

 

 

ドズン

 

 

「!」

そう遠く無い場所から聞こえた何かが落ちる音、それを聴くと同時に私は直感で魔術を行使していた

「聴力強化…」

 

 

静かに魔術を起動させて耳をすませる

 

 

 

 

『よお、また会ったな?』

「あっ!」

オリオン!

まず聴こえたのは何度も聞いたオリオンの声、直後風を切るように何かが彼から飛んでゆく音が2つ

 

 

間違いなく戦ってる!オリオンの他に…足音が2種類。

『マスターは不在らしいが、さて…』

と、思う間もなく聴こえるオリオンとは別の声

ビーストのマスター、ザイル・ニッカーで間違いない

 

 

じゃあ爆発音に近い方がビースト、コヤンスカヤか…

だとするとモタモタしてはいられない、今爆発音に混じってバイクのエンジン音が聴こえた

「逃がすもんか…!」

 

 

強化魔術を解除し、私は隠れ家を飛び出した

「ギッ…!」

軋む身体に鞭打つように最後の薬を飲み、走る

魔力反応が近付いてくる…大通りか!

 

 

おおよそまともなバイクには出せない速度で街を移動する魔力反応を感知しつつ近くの5階立てマンションへ飛び込み、階段を駆け上がる

早く屋上に…!ッ!?

ドクン

 

 

「え"ぼっ…う…あく…っ!!」

強い吐き気がして屋上まであと1階分というところで転倒する

薬のお陰か痛みは無かったものの、凄まじい不快感が胃から逆流してくる

「足が…!」

手に力が入らず足も重い。痛みは無いのに動かない身体。そして自分でも生きているのが不思議と思える量の吐血。

 

 

あと少し、なの、に…!

「げほっ、う…?」

壁で囲まれた非常階段、その外部から感じる異常な質、量の魔力。そしてそれはオリオンのものでは無かった

 

 

『水天日光天照八野鎮石』

 

 

耳に染みる鈴の音と女性の声、そして弱っていくオリオンの魔力反応

…それが引き金となったのか、ほんの僅か、足に力がこもる

「〜〜〜!」

吐血とは別に血が出るほど歯を食いしばり、屋上の扉へと手をかける

 

 

「ふっ…ふっ…オリオン…!」

爆発音で早る気持ちを抑え屋上から身を乗り出して見えたもの。

「お前は!いい加減──」

「ここで退場してくださいまし!」

 

 

ザイルとビーストに前後から挟撃され、何かで刺されたオリオンの姿が飛びこんできた

──まずい

 

 

何をされたのか分からないが彼の魔力が大きく乱れている、退去にはまだならないだろうがここまで弱体化した彼を2人が見逃すハズが無い

 

 

「──」

…射つなら、今しかない

ポケットの中のスイッチを押し、黄金の弓をゆっくりと構えて魔力を込める

 

 

「…世界のため、彼のため、そして──ただ1人の家族()のため…月女神アルテミス様、あなたの力をお借りします」

ギシッ

 

 

込めた魔力は自分でも何故そうなったのか分からないまま、黄金の1本の矢を形成し弓に添えられた右手へと収まる

よし…!

 

 

矢を引き絞り、ビーストへと狙いを定める

…どうやらオリオンとの戦闘はビースト側もただでは済まなかったらしく、逃走の意思が感じ取れた

「させる、か…!」

ここで逃せば次は無いだろう、なんとしてもここで──

 

 

ずるっ…

「──え」

最初に異常を感じたのは右腕だった、薬の効果なのか最初から痛みなんて無かったのかは分からないが分かろうとする余裕も無かった

 

 

──二の腕の肉の一部がずるりと腐り落ちた

「ま、さか…あ ああアアア" ア"あ ア"ア …!?」

怪我がどうこうとかそういう問題じゃない、右手からまるで毒でも回っているかのように人の形が保てなくなっていく

 

 

「これ、わ…つき、めがみの…」

まるで月に照らされたように真っ白になっていく右腕、それが、その『月明かり』が腕を登って身体を侵食していく

 

 

あたまがいたい

いまなにをしてたんだっけ

わたし、なんでここにいるんだっけ

わたし、わたし  わたし は

 

 

狂気と呼ばれるものに沈んでいく心、精神

──でも

 

 

「──れるか」

 

 

「     あ…  」

それを引き止める、彼の声

 

 

「終われるかあァァア!!!」

 

 

──ああ、そうだよね

 

 

祝福(呪い)に侵され崩れ掛けた身体を持ち直し、弓を持つ左手に、矢を引き絞る右手に、力を込める

このまま終わることなんて出来るわけが無い

 

 

強い光、閃光弾の類が下の方で弾けて目が眩む──しかしそんなことはもう関係無かった

 

 

アルテミス様、勝手に力を使ってごめんなさい。あと嫉妬とかもしてました、ごめんなさい。でも──

「ビーストは私が倒す。私の、全てをかけて。だから今、今この時だけ、力を使わせてください」

 

 

矢の光が増してゆく──

 

 

狙いもしっかりとビーストを捉えている

 

 

「ッ…!くらえコヤンスカヤ!!」

月明かりがついに私の全身を照らし尽くし弓の影から新しい弓、銀の弓が現れ、重なり、1つになる

 

 

スポットライトと誤認しそうな程の月の光が降り注ぎ、直後限界を迎えた偽造礼装が砕け散って光が散らばる

 

 

身の程知らずの少女の愛矢(トライスター・プリモアモーレ)!』

「遥!?」

 

 

蒼く、白く、輝く黄金の弓矢が放たれる

月明かりを帯びて、宙を裂いて、黄金の矢は当たるべき者へ一直線に──

 

 

「    」

 

 

──射った

閃光弾の影響で視力はまだ戻っていないが当たったのは間違い無い

終わりだ、これで全部終わり──

 

 

「──まったく、あれだけお膳立てしたというのに来るのが遅いんですよアナタ」

…ッ!!??

 

 

視覚を封じられた彼女に届いたあり得ない声、この場に女性は私を除けば1人しかいない

「な、んで…」

コヤンスカヤの、声がする、の?

「ご自分で確認されては?遥さん♡」無事ですかザイルさん?

 

 

摩耗した身体に無理矢理魔力を流し、視力を強制的に戻す

「────」

自分の目が信じられなかった、確かにビーストを狙ったのに

う、そ

 

 

「………ハル、お前……アルテミスの、力を…」

私が放った黄金の矢は、オリオンの霊核()を完全に貫いていて──

 

 

「お、オリオ…あっ、あ…そ、そんな!?」

なんで、こんな──

ばしゃりと地面に張られた鏡のような水面に彼の巨体が倒れ、動かなくなる

 

 

目を離したら消えてしまいそうな弱々しい魔力反応に私はマンションから彼の元へ飛び降りていた

 

 

ぐしゃ

 

 

着地の瞬間右足から聴こえる嫌な音と崩れるバランス、それでも構わず這って彼の元へ向かう

ありえない、こんなこと…!矢が曲がりでもしない限り──

「やれやれ、これがお前がしていた準備か?」

「あ、分かります?説明の手間が省けて助かりますわ♡」

 

 

ッ!

「コヤン…スカヤ…!彼に何をしたの!?」

会話する2人に割って入り揺らぐ意識を覚醒させながら怒鳴る

「グランドアーチャーには何もしておりませんが?ワタクシが細工したのはアナタ自身ですよ遥さん♪」

 

 

「ふざけ、ないでよ!」

こっちはビルの屋上以外で彼女と会敵した覚えは無い、彼女がアサシンクラスでも自分自身に細工されれば気付かないハズが無い

「はい?全くふざけておりませんが?だいいち遥さん、つい最近ワタクシと既に会っていますよ?」

 

 

「は…?」

意味が分からない、その内情を感じ取ったのかコヤンスカヤが心底愉快そうに口元を歪め、水面を這う私に近付いてくる

「遥さんには妹を助けるという目的があるのにお姉さんの言う事も聞かずに病院を飛び出し、情報提供者としか名乗らない不審な女の口車に乗ってここまで来たではありませんか、そう──お2人はこんな姿でしたっけ?」

 

 

しゃがみこみ、ニンマリと恐怖を煽る笑顔で私の顔を覗き込むコヤンスカヤの姿がお姉ちゃんへと変わり直後フードの…情報提供者の女性へと変わり、そして元の姿へ戻る

 

 

あ…!?

「アナタのお姉さんとして病室で、情報提供者として隠れ家であれほど警告して差し上げたのに…ま、そのおかげでワタクシ達は助かりましたが。」

唇が触れそうなほど近い距離でコヤンスカヤは私の頬を優しく撫でる。…まるで賢い犬を褒めるように。

 

 

「…お姉ちゃん、は?」

「トール・マトンですか?邪魔されても面倒なので殺しましたがそれが何か?」

…ッ!

スッと立ち上がりそう吐き捨てる彼女に対して生まれた憎しみが弓を持つ腕を振り上げる、が。

 

 

ぼとりと水を吸った粘土細工のように肘から先が崩れ、弓と腕が水面に落ちて波紋を作る

「ああ、別に嬲って殺したりはしてないのでご安心を!ドアを開けていただいたところを撃っただけですから♡」

 

 

「あ、ああ…!」

利用されたと気付くと同時に脳裏に浮かぶ私のものでは無い記憶

『おい…泣くなよ、アル…テミス』

『イヤ!嫌!ダーリン死んじゃだめ!どうしてこんな…!あうっ…えぐっ…!』

 

 

そう、か、確か神話じゃオリオンとアルテミス様は…

 

 

「さ、グランドアーチャーは排除しましたしすぐにワタクシの権能も戻る事でしょう、ひとまず艦に戻りましょうかザイルさん♡」

「随分上機嫌だな…まあいい、影月 彼方との約束は任せるぞ」

ッ!?今…!

 

 

「いま、なんて──「お姉ちゃん」

ザイルが、犯罪組織集団のリーダーであるはずの彼が、大量殺戮者であるはずの彼が、まるで家族と会話するかのような穏やかな表情で私を見つめて『お姉ちゃん』と呼ぶ

 

 

頭の理解が追いつかない、何故ここで彼方の名前が出てくるのか、何故彼が私を『お姉ちゃん』と呼ぶのか

「──」

いや、分かっている。私をそう呼ぶのは1人しか居ない、でも認めたく無かった

 

 

「お姉ちゃんは()だけじゃなく目に見える全ての人間のために戦ってたのを今知った、もう充分だよ。

もう充分人の為に、世界の為に戦った。

これ以上傷付かなくていいの。

だからもう──全てを忘れて眠ってくれ、後のことは()が全部やるから」

 

 

そ、んな…そんなに人間が憎かったの…?無関係の人まで大勢殺してしまうほどに…

去ろうとする(彼女)の背中に崩れかけの右手を伸ばす

 

 

──せっかく、会えたのに──

 

 

しかしその声も、伸ばした手も間に割って入ったコヤンスカヤがニンマリと笑って遮った

「ま、そう言う事ですので。生まれ変わったら約束を守れる人間になれると良いですね♪約束も、家族も、恋人も、何一つとして守れない哀れなお姉さん♡」

去り際に投げキッスをしてコヤンスカヤはザイル──いや、私の妹…影月 彼方と共に何処かへと行った、行ってしまった

 

 

「かなた………私、は…」

 

 

場に残ったのは消滅を待つサーヴァントと死を待つ女性(少女)、後にはもう──何も残されていない




Wコヤンの尻尾乗せになりたい作者のルルザムートです、ハイ。
まず今回めっちゃ長くなってしまった理由ですが区切る場所を考えておりませんでした
次からは…少なくともコヤンスカヤシリーズではこれ以上長くならないように努めます…
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