弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
J地区 とある工事現場にて…
「…」
数時間前英雄王に言われた台詞がいまだに頭の中で反響している
『お前は誰でも良かったのだ』
『くはは!
『見ていて飽きんのだ、その手の欲望はな』
『聖杯の泥?反転?たわけ!例え表面がどう変わろうと貴様の本質は変わるまい、ただ表現の仕方が少しばかり変わったにすぎん』
はぁ…
「そこをどけぇっ!」
「うっさい!」
胸に詰まったモヤモヤと飛んでくる銃弾を吹き飛ばすように魔弾を撃つ
「…ッの…!くそったれ!不死身かコイツは!?」
火縄銃を手にコンクリートの地を駆けながら悪態をつく男、クライム・アルバート。もはや作業と化した彼の足止めをしながらもう一度自分を振り返る
…不死身、か
正直なところ不死身、不老不死といった『終わりが無い』恐ろしさはここに来る前YouTubeで散々見てきたから理解しているつもりだった
「…」
しかしだからと言って50年前…
あはは…こうして思い返すと私も結構こじらせてるなぁ
「ダヴィンチちゃん援護お願い!」
「分かった!」
それに元の私はこんなに明るい性格じゃなかったと思うんだけど…50年って長いなぁ、来たばかりの時は割と覚えてたけど…自分自身のこと、今はもう思い出せないや
「…まぁ」
それ以外の事は割と覚えてるもんだからあんまり気にならないけども、今はきっと楽しいし。
…こっちに来る前の事は誰にも言っていない。ザイルにも、ダヴィンチちゃんにも。まぁ忘れてるから打ち明けるも何も無いんだけどね
かつての私を証明するものと言えばこのスマホと…サーヴァントとしてのダヴィンチちゃんだけ。
「それっ!」
ダヴィンチちゃんが雨のように魔弾を降らせてバーサーカーへと叩きつける、が。
「…ッオオオオオ!!!」
まるでダメージなど無いように私目掛けて突進してくる副長に思い切り殴り飛ばされ──
「クライム、今だ!」
「ッ!」
地面に激突するよりも早くクライムの火縄銃から放たれた弾丸が私の頭を吹き飛ばす
うええ…気分わる…
そう悪態をつきながらも吹き飛んだ頭部が数秒で再生を終え、元に戻る
「ノーアちゃん…!」
「大丈夫大丈夫!だってホラ、不死身だし?」
心配するダヴィンチちゃんを宥めるつもりで言ったけどどうやら彼女が心配しているのは別のことだったらしい
「もう、やめようよ?彼らと戦ったって意味無いよ?それに英雄王がここに来るかもしれない、早くここから離れた方がいい」
「意味はあるよ、今ザイルがオリオンと決着を付けようとしてる、それまでここを動かなければいいんだ」
倒すとかならともかく逃げるだけなら例えギルガメッシュが相手であろうと私ならできる
「ダヴィンチちゃんっ、バフお願い!!」
「…!」
渋々援護してくれた彼女の魔力を右手に纏わせつつ中距離にいた副長目掛けてステップ、瞬間移動の如く距離を詰めて彼の腹部に掌打を食らわせる
「がああああっ!?」
彼の身体は大砲の弾のように道路を挟んで向かい側にある米陸軍駐屯地の正門まで吹き飛び、静かな街にけたたましい音を立てて鋼鉄の門をブチ破る
「土か──「次」
地を蹴ってもう一度ステップ、バーサーカーのマスターと鼻が触れ合う程の距離まで急接近。
ゴッ
「オあっ…!?」
振り上げた肘で彼の顎を強打し、意識を失いかけたその身体を思い切り蹴り飛ばした
蹴り上げた身体は山なりに低く飛んでいき、工事現場と駐屯地の間にある道路へと叩きつけられる
「…うん、これでいい」
あれで起き上がれるとすれば何処ぞの戦闘民族くらいだろう、とひとまず胸を撫で下ろす
アーチャーとの決着もそろそろつきそうだしあっちに行ってみるかな…?
「…ね、ノーアちゃん。一つ聞いてもいいかな?」
ふと、不意にダヴィンチちゃんが聞いてくる
「ん?いいよ、なに?」
「何か…私に打ち明けたいこととか無いかな?」
「────」
打ち明けたいこと──
「────うーん、特にないかな?」
「そう…うん、分かった」
そう言ってはいるものの、彼女自身が納得していないらしい
表情の僅かな変化と硬直、生前のレオナルド・ダ・ヴィンチがどのような人間だったか殆ど知らないがサーヴァントである彼女との付き合いは長い、それくらいは分かる
そして、私に分かったということは彼女にも私のことが少なからず分かったかもしれない
「…」
「…」
嫌では無いが苦手な沈黙、誰かに叱られた時のような沈黙と言えばいいのか
…むず痒いなぁ
──どうしよう、打ち明けるべきかな…でも──ぬ!?
「わ!?」
本能でダヴィンチちゃんの手を引っ張る。──とその直後、たった今ダヴィンチちゃんが居た場所をナイフのような手刀が貫いていた
「ダヴィンチちゃんに2回も不意打ちとはいい度胸だね!?このゲドーマーボー!」
相変わらずの外道神父、言峰綺礼が少しだけ困惑の表情を浮かべて立っていた
「…?これが1回目のはずだが…いやしかし今の防ぎ方はまるで一度目撃して知っていたかのような…」
王様は付近には居ないようだけど神父が出てきた時点でロクなことにならないのは明白だ
「で?何しにきたの?聞いてからボコるから言ってみなさい」
「サーヴァントを片付けて2人きりで話がしたかったのだが…まぁ構わんだろう。用があるのはキミだ、クランツェル」
「え」
私?
「サーヴァントキャスター、レオナルド・ダヴィンチ、できれば席を外して貰えないか?なに、あなたのマスターを害するようなことはしないさ」
「殺そうとした相手に対して肝が据わってるねキミ、まぁノーアちゃんが良いなら「英雄王ギルガメッシュは今どこ?」
承諾しかけるダヴィンチちゃんの言葉を押しかけて質問を投げつける
「英雄王ならばしばらくはここには来ない、K地区の鋳物工場の方へ向かった」どうも私は足手まといになるようでね
K地区 鋳物工場?ウルフルズのアジトだけど今そこにザイルは居ないし…
一瞬
「…いいよ、ダヴィンチちゃんはここで待ってて」
「おっけー!」
仕方なくダヴィンチちゃんを待たせて神父と一緒に工事現場の裏手へ
…これくらい離れればいいか
「それで?私は今にも貴方の顔面にドロップキックをカマしたくてたまらないワケだけど何が聞きたいの?」
「それは怖いな、手短に済ませるとしよう」
煽るように愛想笑いをする神父に若干イラつきながらも内心油断していた、どうせなんで不死身か、とかいつから生きているのか、とかその辺りだろうと。
「キミはレオナルド・ダヴィンチとはどういった関係なのかね?」
「ファ?」
予想外の恋バナみたいな質問に間抜けな声が吹き出す
いやいやいや待て待て待て!この外道がそんな質問をするわけがない!何が裏がある、ここは…
「マスターとサーヴァント時々、生徒と先生」そんだけ。
「ほう?教師を膝枕する生徒とはな、その図太さは尊敬に値するよ」
ぬぐっ…そういえば見られてたんだった
「それで?茶々を入れにきただけ?もう殴っていい?」
「待ちたまえ、質問はまだある。…キミは聖杯に何を願う?」
あー、その手の質問ね。神父の場合何を願うかじゃなくて願いがあるかどうか、だし…とっとと『つまらない』って言ってもらえればいいけど…
「聖杯?いりません、願い?ありません、神父?殴りたいですねぇ、他に質問は?」
これは本心だ、私の願いは50年前に既に叶っている。今更願うものなんて無い
「だろうな、恐らくキミの願いは50年前の聖杯戦争で既に叶っているのだろう、そこで提案するが私と共に来る気は無いか?」もちろんサーヴァントも一緒に。
「えぇ…」
私を連れてったところでコイツにどんなメリットがあるっての…?うん?
ふと頭を過ぎる疑問、違和感。
何か、見落としているような…
「聖杯の泥によって永らえている生身の者は今のところ私とキミの他には居ない。なに、ただの仲間意識さ」
「さっきから似合わない台詞ばっかり吐いてるなぁ…普段の外道っぷりは何処行ったのさ」
ここまで来ると普段にも増して不気味である、何かしら企んでいるのではと…いや、普段から何かしら企んでいるから程度が低いことを願うだけなんだけど
「ならばその期待に応えるとしようか○○ ○○?」
「は?」
今なんて──
「キミは生前の記憶を一部喪失したと思い込んでいるようだがそれは間違いだ、こうして説明している私自身も信じ難いがキミは…これが2回目の人生だろう?」
…っ
「…なんの話かサッパリピーマンなんだけど?」
「同じ泥を被った者の仲じゃないか、恥ずかしがることは無い」
後ろで手を組み、微笑む外道神父
英雄王の入れ知恵?でも英雄王でもここまで踏み込んできた訳じゃないし発電所の一件じゃそこまで察した気配は──あ
「待って」
「ふむ、何かな?」
違和感の正体、疑問。
『恐らくキミの願いは50年前の聖杯戦争で既に叶っている』
『こうして説明している私自身も信じ難いが』
50年前の聖杯戦争はとある事情により極秘事項だ、当時監督役を勤めていたハヴェルカ・アルバート以外に教会側で全てを掌握している者は居ない、それ以外で当時の状況を知り、かつ生き残っているのは私とイギリスの王子様、あと拳法家のおじいちゃ──あ、彼はザイルに殺されたからこの2人だけか
そして私自身も信じ難いという言葉から事実を又聞きしたのも間違いない、王子様から教会に接触があったという話は聞いてないし私も聞かれていない、だとすると誰が──
「誰からそれを聞いたの?」
「キミ自身さ、○木 ○○…言っただろう、同じ泥を被った者の仲だ。記憶共有くらいできるとも」
!!!
うわぁ…!やりやがったなコイツ!!
手間は掛かった上にまだ不鮮明なところはあるがね、と外道神父が私の顔を見て微笑む
…彼が微笑むということは余程酷い顔をしていたのだろう
まずい…!
不鮮明な部分…抑止力が介入するレベルの記憶は見ていないようだがもしそれ以外の記憶、私が今どう思っているかの記憶は見たのだろうか?いや見たとしか思えない、でなければここまで愉悦顔をする理由が無い
「令呪!キャスター、その場で待機!」
『え?ちょっと──』
胴体を真っ二つにするつもりで放った回し蹴り、避けられても構わず2発、3発と距離を詰めて打つ
「キミはザイル・ニッカーなどどうでも良いのだろう?キミが彼に惹かれると思い込んでいるのは彼が世界を変えるに足る力を持っているのでは、と期待しているだけだ」
「ちょ、ちょっといい加減黙ってくれない!?」
魔弾と格闘の合わせ技を食らわせようとするが簡単に避けられる
攻撃する気が無いのか殺気は無い
「っのお…!」
こう避けに徹せられると攻撃が当たらない、そしてそれが益々自分をイラ立たせる
「友人、親友と思っておきながらそれを確かめることもない、50年もの間1回たりとも。降って沸いた知識を己の物のように振る舞って騙し続けた」
「そろそろ黙らないとマジでぶっ殺すよ!?」
「まともに戦ったところで殺せないのはキミ自身がよく分かっているだろう?」
ぐ…!
「死ぬ事も無く、これから永久に怯え続けるかね?それも良いだろう、最も事実を知った彼…いや彼女?がなんと言うか…流石に同情するよ、ああ本当だとも」
もうあーだこーだ考えてられない、今すぐ黙らせなければ
「そこで1つ聞きたいのだが…キミは生前、レオナルド・ダヴィンチの何にそこまで惹きつけられたのか私に話してくれないかね?迷える少女よ」
「やっかましいっ!」
特大の魔弾を思い切り地面に叩きつけて自分諸共神父を吹き飛ばす──つもりだったが
「おっと」
腕を掴まれて不発に終わる
くっそ、殴りたい、この笑顔…!
「誰も見た事のない物を創る…それは本当に才のある者にしかできない事、そしてキミはただ運が良かっただけの凡人だ。
人理に刻まれ、人理を守るために存在する英霊に好かれたいがために人理を崩壊させかねない男に手を貸す様は誰が見ても破綻していると嫌でも分かる」
「く、の!離してよ!」
両手を掴まれ、身動きが取れないながらもメチャクチャに暴れる
が、いくら私でも代行者に押さえつけられては引き剥がせない
「だが死ねない以上、キミは嘘を吐き続けるしかない。時代が場所が周囲が変わろうとも…そうだろう?」
「……そろそろ気は済まないの…?」
「ふむ、確かにそろそろ引き時ではあるか、後は2人でゆっくりと話したまえ」
え…!?
ふと顔を上げると目の前にはさっき令呪で命令したはずのダヴィンチちゃんが立っていた、目は私と合わさずあらぬ方向を向いている
…私の腕を掴んでいた神父は何処かへと消えた
なんで──
「…仕組みさえ分かれば令呪の縛りをすり抜けるのはそう難しいことじゃないよ」
────
「…聞いてたの?」
「うん、ざっくりとね」
「そう、なんだ」
終わった、終わっちゃった。彼女との関係が、楽しいだけだった関係が。
打ちひしがれていた私をよそにダヴィンチちゃんが口を開く
「…実を言うとね、ノーアちゃん。…知ってたんだ、結構前から」
──え?
「具体的にはホームズを退去させたあたりかな?キミ、あの時一瞬だけ私に記憶を写したでしょ?」
「あ…」
〜
あ、ヤバい!この探偵、推理の邪魔になると判断してダヴィンチちゃんをブッ殺すつもりだ!
「そうはさせるか!くらえ!」
私自身にひっそりと掛けていた対粛清防御を一瞬、ほんの一瞬だけ解き、ダヴィンチちゃんと記憶を共有させる
「あれ?ホームズ?」
「っ…!?」
ダヴィンチの霊核を狙っていた手刀がビデオを一時停止したかのように固まる。
私はその隙を逃さず──
「ふんっ!」
──渾身の力で彼の霊核を砕いた
「っ!」
そして即座にパスを通じて記憶を回収し、
「えーと…ダヴィンチちゃん?」
「………あれ?今…あ、マスター?もしかして令呪を使ったかい?」
〜
「やっぱりそうなんだ、うん。色々納得できたよ」
「な、んで…いや、そもそも記憶は回収したのになんでホームズを知ってるの…?」
「バックアップさ、記憶が移された瞬間コピーして保存したんだ」
な…!
あの瞬間、ダヴィンチちゃんに記憶を写したのは精々長く見積もって5秒強だ、そこからコピーするなんて──
「普通ならコピーは無理だ、けど私ならできる。なぜなら私が…天才だからね!」
ふふんと得意げに笑うダヴィンチだったがすぐに元の真面目な表情に戻る
「…キミがここに来る前の記憶も見た。いや、読んだと言うのかな?正直現実味が湧かなくてね、今でもフィクションか何かだと錯覚しそうだよ」
砂の上にもかかわらずコツコツと綺麗な音を立ててダヴィンチちゃんがこっちに歩いてくる
「──」
声が出ない、緊張のせいか諦めているせいか、もう分からない
「…○○ちゃん」
「だ、ダヴィンチちゃ「どっせい!!」
!!??
シリアスな空気と最もかけ離れた黄金のハリセンが私の脳天を直撃する
「いだあっ!?」
「全く…神霊に立ち向かう勇気はあるのに告白する勇気は無いなんて変わってるなぁキミは。」
あ、でもそれだけ私に魅了されていたってことでもあるのかな?むふふ、それなら仕方ないね〜
「…!?…?…?」
痛い頭を抑えて何を考えたらいいか考える
えっと、あの…
「…確かにキミは私のマスターとしてはやや格不足かもね」
「…!うん…」
「この世界の核に迫るような記録を持ち合わせていたとしてもキミはただの女の子だ、いつかこうなることはキミ自身分かっていたかもしれないね」
…やっぱり私じゃ──
「でも」
?
「サーヴァントとかマスターとかの関係以前に、キミは私の友達だよ?」
「え?」
トモダチ?友達って言うと──
「えええっ!?」
あえ?あの、はい!?
「なんだい、不満?」
「いや、あのっ…とんでもございません、その…えっと…」
不意打ちが過ぎて言語が崩壊し始める、だが不思議とこっちの喋り方の方が私に合っているような気がした
「わ、私…天才でも何でもない…ただの女の子だよ?友達って言っていいの…?」
「もー!キミは私を何だと思ってるんだい?天才かどうかで友人を作ろうとしたら私永久に一人ぼっちになっちゃうよ!」
だって私と並び立てる天才なんてこれまでもこれからも存在しないし?と戯けた様子で彼女は言う
「あはは…ダヴィンチちゃんらしいや」
心が軽くなっていく、50年溜まり続けた罪の意識が消えてゆく
「つまらない」
ん!?
その時外野から聞こえた空気を読まない声で私は振り返る
「うえっ、外道神父!」
いつの間にか外道神父が戻ってきていたらしい
「…稀代の天才、レオナルド・ダヴィンチ。キミは凡人と関わる事を避けていると思っていたが。」
ため息をつきながら言う神父だが私と神父の間にダヴィンチちゃんが割って入る
「生前はね、そういうこともあったよ?…でもいくら天才だって人並みの感情はある。」
微笑みながら振り返る彼女は偽りの天才である…ノーア・クランツェルではなく、私自身をしっかりと見据え、そしてすぐに神父へと振り返って言った
「50年間変わらず好意を寄せてくれる女の子だよ?それはそれで才能の1つじゃないかな?」
…!
「…天才の理屈は理解し難いな」
「だろうね、天才の考えはいつだって理解されない事が殆どだ、だから凡人の
「あ…」
前に立つダヴィンチちゃんのその背中。可愛いとか美しいとか思ったことはあったけど、今日初めて別の感想が頭に浮かんだ
「京子ちゃんは私の親友だ、侮辱するなら許さない」
かっこいいな、と…
イベントにコヤンが出るのはまだかなーと思っている作者のルルザムートです、ハイ。
ハイ。7000超えてますね、ハイ。
…今日(2022/04/11)から2週間身動きが取れなくなりますので更新がしばらく止まります、スミマセン