弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》   作:ルルザムート

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第39話です、お楽しみください


第39話 セイバー陣営

コヤンスカヤの戦艦内にて…

 

 

「…全く、よくもまあこんなことを思いつくもんだ」

コヤンスカヤに渡された資料と端末を交互に見ながら称賛の意味を込めてため息をつく

 

 

「こう見えてワタクシもアルターエゴですので?自身の概念の応用など霊基が戻れば容易いのです♡」

きゃーん♡と尻尾と身体をくねらせながら自慢げに言う彼女の姿ははっきりいって気持ち悪い…というか不気味である

 

 

「霊基が順調に戻ってきて気分が良いのは分かるがそのフザけたダンスをやめろ」敵と間違えて撃ちそうだ

「申し訳ありませーん♡」

…やれやれ

 

 

「まー、霊基が戻ってテンションが上がっている、というのもありますが…正直要因はもう一つの方でしてぇ…」

もう一つ?…ああ

 

 

「彼方のことか?」

「ええ、正直今から楽しみで堪りません♪」

「まぁなんでもいい、時が来た時に動いてくれればな」

端末から一つの映像をピックアップして閲覧する

 

 

…そこにはアジトにある俺の部屋の映像が流れており、部屋の3分の2を占拠する大きさのカプセルが乱雑に置かれている

形を見るに俺が使った医療施設のカプセルと同じに見えるが…

 

 

違いはその中身、俺の時と違うのは中身が水(奴の用意した物だ、ただの水では無いだろうが)で満たされていて、その閉鎖空間にて幽閉されるように少女と翡翠の剣が沈められている

 

 

客観的に彼方()を見たのは初めてだな…自分で言うのもなんだが遥にそっくりだ

もっとも当の影月 遥は23歳で端末の向こうの彼方()は精々4歳か5歳といったところだが。

 

 

「あとは覚醒まで待てば彼女との契約は完了、ザイルさんも彼方さんも1人の人間として…いやまぁ彼方さんを人間とカウントしていいのかはイマイチ疑問ですがそれはそれで。」

今更だが何故彼方のカプセルを艦内に入れなかったのかは聞かなかった、聞くまでもなく彼方の存在が物語っていた

 

 

「…やれやれ」

神秘に疎い俺でも分かる──彼方(あれ)は厄災だ

「さて、とりあえず急ぎの用事は無くなりましたが…この後はいかがされます?」

一息ついでに艦内のカジノルームにでもどうですか?と満面の笑みで提案してくるコヤンスカヤに若干の不吉さを感じながら誘いを断って自分の端末を開く

 

 

「現時点で潰れたと判明している陣営はランサー、アーチャー、ライダーの3つか?」

「4つですね、ノーアさんが本来のキャスター陣営をかなり早い段階で駆除していらしたので…ついでに言えばイレギュラーではありますがルーラーのサーヴァントも1騎、退去しています」

ルーラー?…ああ、報告にあった探偵か

 

 

「5騎のサーヴァントが退去しているにも関わらず未だ聖杯は現れない、そもそも聖杯は器であって聖杯戦争で勝ち取るのはその器の中身だ、器自体は最初からどこかにある」

──にも関わらず聖杯戦争開始前に切嗣から送られてきた、聖杯が成り得る条件を満たした霊脈…その全てをコヤンスカヤに確認させたが聖杯は確認できなかった

 

 

「とすれば…」

もはや考えられる場所は1つしかない

「聖杯の確認、また状況を見て器の一時回収に出る、行くぞ」

「かしこまりました♡ではでは、早速──」

 

 

…?

「待て」

「どうされました?」

単独顕現発動直前、頭痛のように頭に引っかかった疑問

 

 

「影月 彼方は俺の中から完全に離脱したんだな?」

「え?ええ、それはもう、ハイ。」

「いつの時点で?」

「へ?」

 

 

そのタイミングによっては…

「よく聞けコヤンスカヤ、直感だが──」

 

 

W地区 大通りにて

 

 

「っと」

お世辞にも上手とは言えない弓矢の連射を叩き落としながら距離を詰める

「だあああっ!」

「ハル落ち着け!闇雲に撃ったって無駄だ!」

 

 

先の戦闘…グランドアーチャーであるオリオンとそのマスター、影月 遥との戦いを終え、ザイルと共に艦内へ戻ったハズのコヤンスカヤは30分もしないうちにその場へと戻ってきていた

『影月 遥が生きている──かもしれない』

彼女の契約者(パートナー)が漏らしたその一言の真相を確かめる為である

 

 

「…まさか本当に復活してるとは思いませんでした」

(やっぱりそうか、やれやれ…)

彼方が邪魔をしてこない時点で気付くべきだった、とウンザリしたような彼の声が念話で届く

 

 

「宝具撃った時を思い出せ!5本連射するより1本に意識を込めろ!」

「…っ!はあぁっ!」

かつて人間だった少女の手元から放たれる蒼い弓矢

おっと、これはまだ落とせませんねぇ

 

 

瞬き程の時間の中で意識を切り替えて迎撃の体制から回避へ

(それで?状況は?)

んー、そうですね…

 

 

追い越すように遥の側面へ回り込む

「っ」

首元へ薙ぐように放った手刀を右腕で防御する遥、だがそれはあくまで『手刀』を防ぐという意識での防御。

 

 

霊基の調子も完全とは言えませんが8割弱戻ってきていますし…

 

 

パシッ

 

 

腕が触れ合うまでコンマ数秒といったところでコヤンスカヤの手の平に展開されたサバイバルナイフが──

 

 

ゾバッ

 

 

薄っぺらい防御をした遥の右手首を切り落とした

「ハル──!「ッ…!!うりぃやぁぁぁ!!!」

「おっ!ととと!?」

右手を失ったにも関わらず寸分も怯むことなく放たれる超至近距離からの連射。

元々争いごとに向いているような人物ではないことを聞いて知ってるが故に少しだけ驚いたものの、すぐさま取り直して彼に伝える

 

 

このまま続ければ終わりますね、いかがされますか?ザイルさん

(…遥と決着をつけてくれ、それと──)

それと?

(──できることなら殺すな、殺さず再起不能にできれば1番いい)

ホーント『お姉ちゃん』には甘々ですねぇ?ええ、ええ!お任せくださいませ♡

 

 

なんとでも言え、とヤケクソ気味な声を聞き流して戦況をもう一度確認する

霊基は8割…いえ、既に9割強戻ってきている、ここまで戻ったなら女神モドキを1人無力化するなど容易い

「とりあえず意味不明な方向で弱体化したアナタはあっちへ行っててくださいまし♪」

 

 

一般的な人間の頭がある位置よりも少しだけ上、しがみつくように少女の頭の上に乗っているクマのぬいぐるみを空手家が使うような上段回し蹴りで吹き飛ばす

…魔力反応とかで分かってはいましたが元がグランドアーチャーとは思えませんねぇ

「オリオっ──「他人の心配しているヒマは無いと思いますよ?」

 

 

──固有結界展開、愛玩の檻──

ザイルの鍛錬に使ったものと同じモノ…違いは結界の主である彼女の霊基状態が万全に近いということ。

遥とコヤンスカヤを残して世界が塗り変わる。静かな真っ暗闇の街から透くような青空の下へ曝け出される灰色の大地が現れる、そして──

 

 

「うっ…!?か、はっ…!」

…まぁ、こうなりますよねぇ

 

 

アサシンのサーヴァントとしてではない、明確に人類の敵としての姿。

視線、匂い、動作、感情、ありとあらゆるものが『人間を殺すもの』としての概念を纏う者と目を合わせた少女は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる

 

 

──だが

「ウ ウ"ウ"ウ"あ…!」

「   へぇ   」

この姿を見て尚立ち上がろうとしますか、これは嬉しい誤算です、立ってくれたほうが──

 

 

金色白面──とは違う伝承に囚われない新しき獣は4本の足でゆっくりと被食者へ歩み寄り、その巨大な口を開く

一息で噛み砕けますから

ヒトにとって硫酸にも匹敵する獣の唾液を垂らしながらその小枝のような華奢な身体を獣の顎が覆っていき、そのまま足の先まで噛み砕い──

 

 

「今すぐ攻撃を中止して結界を解け」

「…?」

ふと聞こえたザイルの声に辺りを見回す

今のは念話ではありませんね、ザイルさん?

予定では彼は別行動で聖杯の確認しに行く、という手筈ですが…

 

 

「結界のすぐ外にいる、とにかく今すぐ攻撃を中止しろ」

「…かしこまりました」

また情が湧いたのかと若干呆れつつも姿と周囲の環境を元へ戻す

そこで彼女は彼の言動が情では無いことを悟った

 

 

「…一体そちらで何が?」

「見ての通り遥にあれ以上の情が湧いたわけじゃない…湧いたのは横槍だったがな」

表情や顔色こそ常時と殆ど変わらないものの、彼の左腕が…肘から先が無くなっていた

 

 

「間に合った…アサシン、たった今お前のマスターに交換条件を提示させてもらった」

「おや、アナタは…」

仕事柄、一度見た顔や聴いた声は瞬時に覚えられるようにしている、それが最近会ったばかりの相手なら尚更だ

 

 

「切嗣から最優のクラスと聞いていたセイバー、そしてそれを使役できる程のマスターが何処かにいる、そう思っていた…やれやれ、見つからない訳だ」コヤンスカヤ、再処置を頼む

どこかにいるであろうセイバーを警戒しつつ、雑に処置された彼の左腕の包帯を取り、しっかりと応急処置する

 

 

「クライムに遥と続いて…今度はお前が邪魔しに来たか?バルン」

「…痛み分けです、ここは退いてください」

彼がギャングとしてウルフルズで最も信頼している──いや、信頼していた部下、バルン・ファクターが苦虫を噛み潰したような表情でこちらにトカレフを向ける

 

 

コヤンスカヤという例外を除けば本来聖杯戦争の場において銃なんて有って無いようなものだ、それが横にサーヴァントを侍らせたマスター相手なら尚更。

今あの銃は敵を殺すための物ではなく、自身の使役するサーヴァントへ戦闘開始を伝える鉄砲のようなものだ、引き金が引かれた瞬間どこからともなくセイバーが現れて戦いが始まるだろう

 

 

霊基が戻った今、戦って負けるなんて微塵も思っていないがそれでも油断は禁物であることをコヤンスカヤは忘れない

恐らくセイバーとバルンさんはワタクシが結界を貼ってザイルさんと分断されるまで待っていたのでしょう、とすると対ビーストに関してある程度知識はある、ということでしょうか…?

 

 

アジトで何度か見た『コヤンスカヤファンクラブ会長』なんてフザけた気配は目の前の青年からは微塵も感じない、もしや彼がウルフルズに入った動機は──

「…退くぞ」新しい腕が必要だ

「かしこまりました♡」

 

 

正直セイバーの顔くらいは拝みたかったがそれを察したように彼の念話が届く

(腕を落とされた瞬間セイバーが何かの名前を叫んでいた、恐らく宝具かそれに類する何かだろう、後で調べてくれ)

そのように、で…ええと…どうされます?当初の目的である聖杯の回収については?

(…決行する、飛んでくれ)

承りました〜♪それではピョンピョーン、と!

 

 

『単独顕現 EX』

 

 

 

 

「退いた、か?…ハァー…ボスもコヤンスカヤも、なんて圧をかけてくるんだ…」

あれがつい最近まで仲間だった人間に向けることができるとは恐れ入る

 

 

バルン・ファクターの知るザイルはギャングのボスとして無慈悲ではあったが機械ではなかった

銃を取り、仲間を鼓舞し、アスファルトの大地を掛けて軍や警察を手玉に取る『どんな場所に居ても説明ができるギャングの大物』であった、だが──

 

 

「あれは…」

本当にザイル・ニッカーその人なのだろうか?

まだ中学校に通うような歳から彼を支え続けた者として、他の構成員が気付かないようなことも察することができる彼が感じ取ったモノ

 

 

…彼の中にあった一握りの、最後の…優しさ?温かさ、ともいうものが完全に欠如してしまったように俺には見えた

人間として必要なモノ、俺を見るルビーのように赤い眼は俺をどういった『存在』として認識していたのだろうか?

 

 

少なくとも仲間を見る眼で無かったのは確かだ

「あの、貴方は…?」

「あっ?ああ!すまない、すぐに止血する!」

影月 遥の声で我に返り、急いで腰の救急バッグの中を弄る

 

 

「血は大丈夫、もう止めたから」手首は流石に生やせないけど

「え?あ…血が止まってる…」

一体どういう術を使ったのかは分からないが確かに切り落とされた彼女の右手首の出血は止まっていた

 

 

「マスター、無事か?」

「セイバーか、すまない…判断を誤った」

付近の建物から睨みを効かせていたセイバーが戻ってきた、肩には…なん、だ?テーマパークのお土産屋とかで置いてそうな熊のぬいぐるみ?まぁそれは置いておこう

 

 

「今更言っても遅いが…先の宝具は令呪を切るべきだった」

魔力のパスからこちらの存在が感づかれるのを恐れての措置だったが…結果としてザイルの左腕を切り落とすまでにしか至らなかった

 

 

「いや、マスターが令呪を切らなくて良かったと思う

…俺は初めはあの男を斬る為に呼ばれたと思っていたが違うようだしな」

令呪の温存は正しかった、と刀を収めながらセイバーは言う

 

 

「え?セイバー…さんは宝具使ったの?」

「そうなのか?その割には魔力とかまるで感じなかったが…」

!?

「ぬいぐるみが喋っ…動いてる!?」

ぴょこぴょこと男性の声で喋りながら動くクマのぬいぐるみに驚きつつも『後で説明してもらおう』と言うセイバーの一言にとりあえず黙って続きを促す

 

 

「彼は…ザイル・ニッカーは人間だ、いや人間になった…と言えばいいか」

珍しく歯切れの悪いセイバーだったがやがて答えを見つけたように言葉を絞り出す

「俺が斬るべき存在は既にザイルの中に居ない…また探すしか無い」

「…そうか」

 

 

バーサーカーのマスターから預かった手掛かり…稲妻のような歪な形をした紫のナイフ、に似た物を握りしめて空を見上げる

「もう聖杯戦争も終盤だ、探し出せるかどうか…」

「探し出すんだ、それしかない

その『』の主が現れた時、俺は必ずその場に居なければならない」

 

 

そうでなければ大勢の人間が死ぬことになる…そうはさせない、させるわけにはいかない、と低く、小さく、それでいて炎のような覚悟を宿した目でセイバーは言った

 

 

「なぁ、そろそろ仲間に入れてくれないか?」俺もハルもイマイチお前らの目的が見えづらいんだ

ムスッとした声で文句を言うクマのぬいぐるみに意識を戻す

「…ああ、全て話すよ、そちらも知っていることは教えてほしい」情報交換だ

 

 

恐らく今は…いや、ザイルがコヤンスカヤを召喚したその時から、既に聖杯戦争は破綻していたのかもしれない




第三再臨闇コヤンの尻尾にぐるぐる巻きにされて誘拐されたい作者のルルザムートです、ハイ。
タイトル変えた影響かゴールデンウィークだからか分かりませんがお気に入り数がめっちゃ増えてる…?
うおおお!輝け私のサンシャイン!やる気がミチミチ湧いてくる!ありがとうございますッ!
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