弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
第47話です、お楽しみください
「──」
彼、セイン・オルドルには尊敬する人間が居る
米軍内に存在する対テロ特別捜査本部…と名目上なっている『対ウルフルズ捜査本部』のトップ、クライム・アルバートである。彼にとって、かの勇者の存在は人生の大きな分岐点だった
父も母も軍役だった彼は軍に入り、腕を磨き続けた。その意義を見出せぬまま淡々と。
自分は何の為にここにいるのか?自分には本気で国民を守る気持ちがあるのか?そんなことを日常的に思いながら『何かを守る』という局面に遭遇しなかった彼はその疑問を常に先延ばしにしていた
だが軍を続ける以上必然と言うべきか、その場面はやってきた
とある地区の、反政府軍討伐指令。
その意味を深く考えないまま彼は現地に赴き、銃を取る
だが木の的相手にしか弾丸を撃ったことの無い彼にとってそこはまさに地獄だった
倒れる仲間、吹き飛ぶヘルメット、鳴り止むことの無い爆発音、いつの間にか孤立している自分
『セイン隊長!!指示を下さいっ!セインさ──ぎゃっ!!』
そして何よりも──
『いやだ…いやだ…!』
彼には命を懸けて成すべきことが無かった。
額に押しつけられる赤熱した銃口、火傷したことすら気付かずにみっともなく命乞いをする
──まだ死にたく無い!
『×××××××!?××××××!!!』
言葉の通じない敵兵は怒っているようだった、それもそうだ。彼らだって仲間を殺されたのだ。
──でも俺は誰も殺してない
基地の中では体力が有れば良かった、頭が良ければ良かった、銃を扱えれば良かった、仲間と仲が良ければ良かった。
──殺しにくる奴を殺さなければいけないことなんて、一度も無かった
こうなると分かっていたら、逃げていたのに。
敵兵の引き金を引く指に力が入って──
ドンッ
『…!?』
その敵兵は頭に風穴を開けて倒れた
『×××!?×××!!…××、×××××!!??』
その異常事態に気付いた敵兵が集まってくるがすぐに1人目と同じようにバタバタと倒れていく
『これ、は』
『全く…戦闘経験の無い奴を送るとは本部は何を考えている!?』
自分の着ている軍服とほぼ同じ種類の米軍戦闘服を着用した、俺とは10代は歳が離れていそうな若い男が銃口から僅かに煙を上げるアサルトライフルを持って立っていた
『っと、今はそんな事を言っている場合じゃないか。
クライム・アルバート曹長です、セイン上級曹長ですね?お怪我はありませんか?』
『──』
『──無さそうですね、後はこちらでやるので10メートル後ろの塹壕に避難をお願いします。
…お前ら、間違っても殺すつもりでやるなよ!
彼らウルフルズはあくまでザイルの被害者だってことを忘れるな!!』
『『『了解!!』』』
圧倒的だった、クライムと共に現れた彼の部隊は誰一人臆する事無く銃を構え、既に隊から残党へと変貌した敵兵達を薙ぎ倒していく
それも殺さずに。その事実は彼らの実力とこの仕事に対する熱意を知るには充分だった
………
その後、本部の手違いということで俺が地元の基地に戻されるまでそう時間はかからなかった、医療班はPTSD…つまりトラウマにやられてないか検査していたが俺の中に残っているのはあの惨状を完璧に上書きするクライム・アルバートの姿で──
〜
J地区 住宅街 クライム隊vs影月 彼方の戦場にて
「やあああああっはははははっ!」
「…」
未だに死は恐ろしい、いや克服できる人間なんて居ないだろう
「こちらセイン、第4射軍迫撃砲射撃用意。」
だが克服は出来なくとも歯を食いしばり、堪えて進むことはできる。
俺には…いや、クライム隊の誰1人として、自分達が何と戦っているか完璧に理解しているものは居ない、サーヴァントだの神霊だの言われたところでそれは既に理解の範疇から逸脱している
それでも戦える理由はただ一つ…『クライム・アルバートが戦っているから』だ。
「射撃と同時に現在地の迫撃砲は破棄、多段誘導携行ミサイルに装備を切り替えて撃ちなさい」
みんなが隊長に感謝している、みんなが隊長に憧れている、みんなが隊長の帰りを待っている…そしてみんな、ただ1人戦う貴方の力になれないことを悔いている。…いや、悔いていた。
その貴方がようやく俺たちを頼ってくれた。7割以上は間違いなく死ぬと、葛藤に苦しみながらもそれでも頼ってくれた。
「あなたがここらへんのリーダーかな?」
なら応える他ない、皆もう充分すぎるほど貴方から頂いた物がある、これで返せるか分からないが俺たちの無知な命で世界が救えると貴方が言うのなら全力で使おう
「 つかまえた 」
「俺はここまで、ここからはアーチ中佐の指示で戦いなさい」
通信機がそれを持つ手ごと化け物に握りつぶされ、濃厚な死の匂いが眼前に迫る
「──」
死ぬのは恐ろしい、けれど。
「────ふ」
最後に思い描くのが死ではなく、尊敬する貴方の姿ならその恐ろしさも半減するらしい
「後をお願いします、クライムさん」
ボチャッ
〜
同時刻 クライムvsザイルの戦場にて…
『〜!〜〜〜!』
通信機から次々と、否応にも聞こえて来る最悪の知らせに彼の握り拳は血が溢れる程力がこもっていた
「セイン、お前まで…!!うっ!?」
滑り込むように真下から振り上げられるナイフの一撃をなんとか身体をそらせて回避。顎の先から微量に滴る血液は戦い以外の何も考えるなと警告しているようで、実際にその通りだった
「心配しなくてもお前もすぐに
「黙れ!!」
追い払うようにハンドガン(ベレッタ)で銃撃、そこからナイフを交えた格闘で応戦する
ビーストは倒せなくとも──
「お前だけはここで殺す!!」
「『お前だけはここで殺す』…か?」
ザイル…!
「全く分かりやすいな、分かりやすすぎて──」
また瞬間移動──
「ウンザリだ。」
カッ
炸裂する閃光手榴弾に完全に虚を突かれ、ほんの一瞬無防備になってしまう
万全ならば例え目が眩んでも対処できただろうが今の彼はその『万全』からはほど遠かった
バリン
「ぶっ…!?」
顔面に感じる衝撃と何かが割れるような音、そして
「なぁクライム、フッ化水素酸って物質を知ってるか?」
濡れた口元とそこから登る妙な煙、そしてザイルの言葉が結びつき最悪な事実が脳裏によぎる
「まぁ…それがどういう物質かコヤンスカヤのように説明できるほど俺も詳しくない、知りたいならそういう方面に強い部下でも探して聞け──地獄でな」
瞬間──
「ウギィヤアあ"あ"あ"アあっ!?」
爛れる顔面の皮膚、焼けつく舌、溶けていく歯、口内から噴き出る真っ赤な煙。
人体にとって猛毒であるフッ化水素酸によって発生したこの世の終わりかと思える激痛がクライムを襲う
「アの…カプせルの中身…フッ酸、とは…」
なんてことを思い付くんだ、コイツらは…!それよりもこれを何とかしないと本当に死ぬ…!
「グ…があっ!!」
痛みで砕けそうな理性を振り絞り、持っていたハンドガンで力の限り自分の腹を殴りつける
「…!?何を──」
「グ、お…おえぇっ…!」
夜食としてとった
「ぶ、ふぅ…!」
さらにその嘔吐物の一部を手で受け止め、洗顔するように口元をそれで拭う
まだかなり痛いが…さっきよりは、マシだ…!
「…パージ」
そう呟くと彼の左腕の義手から破損した4つのカプセルが外れて地面に落ちる
「お前をひたすら戦わせるその意思、本当に胸クソ悪い。
自分を信じて疑わないその狂信とも言える正義、恐らく死んでも折れることはないんだろうな」
弾丸を再装填しながら、彼は心底うんざりとした表情で言葉を続ける
「ああ、お前の勝ちだ。俺にお前の正義は折ることはできない。
だから死ね。地獄でいくらでも正義に酔っていればいい。だからもう…さっさと死ね。」
「フーッ、フーッ…!」
体力も弾丸もロクに残っていない…令呪は既に残り1画だけ…
まだ、まだ…なのか…!?
〜
同時刻 土方歳三vsコヤンスカヤの戦場にて
「────」
手応えはあった、だが
「大して効いちゃいねぇか…!」
「命知らずな特攻も極まれば宝具ですか、全く忌々しい…」
右肩から左脇にかけて輪切りにする勢いで放った斬撃は殆ど効いておらず、またそれがビーストの権能や能力など関係ない、単純な力の差によるものなのは彼もすぐ理解した
ヘクトールの言った通り、霊基に差がありすぎる…!
何度もミサイルを打ち払い、その度に攻撃を浴びせるがコヤンスカヤにダメージは見受けられない
「それにしてもコーンな美女を迷いなく斬りにかかるとは、ワタクシは又聞きならぬ又見しただけなんでアレですがアナタそんな人でしたっけ?」
…
「…確かに中身がどうあれ美女を斬るのに思わないところがない訳じゃ無い」
「まぁ♡」
「だがお前らはクライムの敵だ。
それだけ知ってりゃ…斬るのに微塵も躊躇いは無ぇ」
「ふーん、そうですか」
似た者同士ですねぇと笑ってるのか呆れているのか分からない顔で戦車を再生、再起動させるコヤンスカヤ
まだ来るか…だがこれで俺が立っている間、ミサイルがあいつらのところに飛ぶ心配は無い
AIダヴィンチが立てた準備完了予測時間まであとどれくらいだろうか?
完了まで宝具が保つかどうか──
「──いや」
知ったことか、宝具があろうが無かろうがコイツは絶対に足止めを
ギシッ
「グ…お、おおあ…!」
身体か霊基か、あるいはその両方か、廃屋が軋むような不快な音が外にまで聴こえそうな程大きく響く
くそ、が…!
──生前の彼ならばまだ立ち上がれていただろう。だが今ここにいる彼はサーヴァントである。どれだけ強くともサーヴァントという枠組みから外れることはできない
バーサーカーとして現界した彼の身体は深刻な魔力不足により既に限界を迎えていた
「おっと、宝具の効果が無くなりました?…いえ、単に魔力不足で霊基にガタが来ただけですねコレ。
しかし脆いバーサーカークラスとは思えぬ耐久力…ええ、ちょっと気に入りました♡」
ぴょんぴょんと戦車から降りた獣はかがみ込み、倒れ伏す最後の新撰組の顔を悪戯っ子のような表情で見つめる
「『アルビオン』や『アフロディーテ』と比べるとものすっっごい見劣りしますがここまで強いなら
「があっ!」
もはや身体のどこに残っていたか自分でも分からない力で刀を振り抜く
「きゃーん♪暴力はんたーい♡」
しかし渾身の力を込めたソレを、獣はまるで粉雪を払うように手の甲で弾き返し──
「あら、つい手元が(棒)」
「!」
ぽとり、と眼前に落ちる桃色の手榴弾が反応する暇も無く炸裂する
くそ──
もはや意思など関係なく反射でコヤンスカヤの首を掴み、諸共爆風を浴びせる
が、
「ゴホッ、な、に…?」
「おやおや、まぁまぁ…自爆対策、してないと思ったんですか?」
埃すら付いていないコヤンスカヤが余りにも弱々しく掴む彼の手をやんわりと退かす
「ぐ グギ、ぎ…」
痛みなんかどうでもいい、鉛のように身体が重いなら鉛を動かす気概で動かせ。
俺はまだ終わる訳には──
ざざっ
(あー、あっ!こちらダヴィンチ!土方くん、クライムくん、そして米軍のみんな!聞こえるかい?)
完了予定時刻から2分半ほど過ぎた時、突如頭に響く聞き覚えのある声
「よう、やくか」
「ん?何かおっしゃいました?」
(準備完了だ!逃げる準備しといてね!)
〜
同時刻 米軍vs影月 彼方の戦場、その2ブロック隣の住宅街にて…
「よし…!ザイルとコヤンスカヤから影月 彼方が充分に離れたよ!」
「あいよ、それじゃあまぁ…やりますか。」
コヤンスカヤのサーヴァントとしての能力値、俊敏さからAIダヴィンチが計算した距離だ
もし彼女が異常を察知してから彼方の元へ駆け付けるというのであれば単独顕現を使う以外に方法は無い
「宝具再現準備完了、投射用意。」
目が眩むほど明るい戦場の中で無知な兵士達を屠る少女に狙いを定め、かつてランサーとして現界していたホムンクルスは協力者の元、自身の切り札を発動させる
これは道だ。俺の宝具、米軍のトップであるクライムと新撰組 鬼の副長の土方歳三、敵味方の殆どが存在を認知していなかった
そして──何も知らないまま、それでも戦うと言ってくれたクライムの兵士達が作る道
「壊れず折れず曲がらず、我が槍はすべてを射貫く」
身体のスペックを度外視した強引な宝具発動。急遽用意した外付け魔力タンクから自身の許容量をゆうに超えた魔力を取り込み、大英雄の槍を顕現させ──
「行けェ!『
影月 彼方へ、全力で投擲。
「うわ!うわぁ!なに、なに!?」
サーヴァントの時と比べるとかなり破壊力は落ちてるが…ま、鱗の防壁は壊したし充分でしょ
突然の横槍に慌てる少女を遠目で見ながら彼はその場に腰掛ける
「────ふぃー…」
俺が作れる道はここまでだ、後は彼らを信じよう
〜
同時刻 米軍vs影月 彼方の戦場にて…
「…」
ドゥリンダナは影月 彼方にダメージこそ与えられなかったが鱗の防護壁を完全に破壊していたのをその場にいた彼と彼のマスターははっきりと感じ取った
(セイバー)
「──ああ」
米軍の部隊に紛れ込んでいた自分のマスター、バルン・ファクターの声を聞き、霊体化を解く
俺は冠位サーヴァントじゃないが…
ざざっ
(魔力反応変化!コヤンスカヤが来るよ!)
まさかビーストが(神霊とはいえ)人間1人を助けに来るとはこの瞬間まで信じておらず若干面食らうセイバーだったがすぐに思考を戻し宝具解放へと入る
「獣の足止めは私に任せ、君は宝具に集中したまえ」
「そうさせてもらう」
神父であり代行者、言峰綺礼に礼を言い詠唱を開始…といっても俺の場合魔術的意味ではなく自身を鼓舞する意味合いが強いが。
「金剛針、大金剛輪」
『単独顕現 EX』
「っとと、まさか鱗の防護壁を壊せるとは「『金剛8式』」
出現場所を(何故か)完璧に読み切っていた神父の一撃がコヤンスカヤに入る
「へ──ってぇ!?なんなんですかもう!!」神父っていう生き物はホントにもう!
人間の放つ打撃がビースト相手にロクに通じないのは明白だが宝具発動までの時間稼ぎには充分だったようだ
「外獅子、内獅子」
──不思議なものだ
騎士王など人同士の戦いにおいて歴史を作った英雄とは違い、俺は
…しかし大部分は鬼殺しの武士としての姿だろう。
「外縛、内縛」
神秘の薄れた現代において魔性の者はゼロではないが限りなくゼロに近い。
魔性を屠るという血生臭い長所が現代で役に立つことなど無いと思っていた
「智拳、日輪、隠形」
影月 彼方…呪われた──いや、望んで呪いを受けた一族、影月家の末裔。
何も知らぬまま鬼と化してしまったことに同情はする。だが迷いは無い
「────行くぞ」
彼女はかつて俺が斬った
──それならば、俺がやることは決まっている。
あの時、あの時代と同じように。そこに怒りや喜びといった感情は無い、鬼を殺すのに感情は必要ない。
(令呪を持って命ずる。鬼を斬れ、セイバー)
マスターが切った令呪の魔力を纏った彼は水溜りに落ちる水滴のように静かに、だがよく聞こえる…そんな足音を1つ立て、斬るべき者へと駆ける
「……?──あ」
未だ混乱している影月 彼方を完全に間合いに捉えた英霊、『渡辺綱』が腰の刀に手を掛け──
…せめて、安らかに。
『 大江山 菩提鬼殺 』
──斬った
激務によりつい机で居眠りしたコヤンスカヤに毛布をかけたい作者のルルザムートです、ハイ。
セイバーが影月家について普及している部分はオリ設定なのであしからず。
にしてもこのままじゃ60話超えそうだネ…