弊社NFFサービスはこの度、聖杯戦争への参加が決定致しました♡ 《完結》 作:ルルザムート
時間は巻き戻りミラ・ツールが影月 彼方と遭遇している頃…
J地区 米陸軍駐屯地 医療棟にて…
『──以上が美術館についての報告となります、それと現地で2名民間人を保護しました』
「…分かった。保護、移送はナーガ兵士長に申し送りお前は持ち場に戻ってくれ」
『はっ!』
力無くベッドに横たわりながら通信機越しに部下の報告を聞き、状況を再確認する
発電所と同じように謎の爆発で消し飛んだF地区の美術館…不自然な地下空間があった、という報告から察するにザイルかキャスターのマスター、どちらかの拠点だったのだろう。空間の広さや真名から考えればキャスター、レオナルド・ダヴィンチのものである可能性が高い
ザイルとキャスターのマスターは協力関係のハズだ、だとすると美術館を襲撃したのは誰だ?
「…」
俺だけが考えても答えは出ない、ザイルが裏切った可能性もあるがいくら奴でもキャスターのマスター程尽くしている人物を始末しようとするだろうか…?
「おいバーサーカー」
「なんだ」
聴き慣れた声がするものの姿は無い、少しでも魔力を節約するため実体化を控えているのだろう
構わず質問を投げつける
「美術館の爆発についてどう思う?」
「…情報が少なすぎて結論を出すのは難しいな、だがザイル達にとってキャスター陣営は俺達の相手をするために使える駒だっただろう、それをいきなり始末に掛かるのは考えづらい」
まぁそうだろうな
「…だがもしザイル達がキャスター陣営を手にかけたと仮定するなら答えは1つだ」
「それは?」
「ザイル達にとって看過できない
聖杯だって?
ザイルのことばかり考えていて忘れていたがこれは聖杯戦争、ただ一つの願望機である聖杯を巡る戦いだ、たしかに戦争の最終目標である願望機を前にすればかつての協力者だろうとザイルに限らず魔術師は容赦しないだろう
「そんな物があれば、の話だが…ある前提で話をするぞ」
「いや待て!聖杯というものは6騎のサーヴァントを退去させなければ機能しないとエナは言っていた
少なくともアサシン、セイバー、そしてお前、バーサーカーの3騎が健在している以上、願望機としては使えないはずだ!」
「そうだ、6騎のサーヴァントを退去させるという条件だ。
おかしな言い回しに一瞬混乱するクライム、だが以前接触してきたルーラーのサーヴァント、シャーロック・ホームズ。そしてエナが言っていたキャスター陣営についての違和感のことを思い出し、彼は意味を理解した
「まさか…」
「バルンや遥、お前の弟の情報も含め整理する
アーチャー オリオン
ランサー ヘクトール
ライダー 牛若丸
ルーラー シャーロック・ホームズ
…断定できないのも居るが退去しているのはこれで5騎だ」
「────」
そこに今のキャスターが加われば…
「じゃあザイルは今、願望機を持っている…?」
「そうとも言えない、もし聖杯を手にしたならすぐにでも行動を起こすはずだ、それをしないのは願望機が正常に作動しないとか…ようは思いもよらぬ問題が発生したんだろう」
「その『思いもよらぬ問題』があの爆発か?」
「仮定だ、決めつけるのは早い」
確かに聖杯を手に入れたと言うのなら行動を起こすだろう、なにより俺を真っ先に始末しに来るのは明白だ
…しかしザイルがいつまでも手をこまねいているとも思えない
「出るぞバーサーカー、ザイルを探しに行く」
ベッドから立ち上がろうとしたところでバーサーカーが実体化、起き上がりかけた俺を押し戻す
「やめておけ、手がかりも無しにその身体で動くのは勇気じゃねえ、無謀だ」
お前は今影月 遥と同じ無茶をしようとしている。と諭され、仕方なく戻る
ならばせめて情報だけでも集めよう、バルン・ファクターに連絡を──
ピリリリッ
通信?…バルンか、丁度いい
「自分1人で無茶はしないと誓う、霊体化しろバーサーカー」
「ああ、それでいい」
霊体化するバーサーカーを横目に、呼び出し音を鳴らす通信機のボタンを押して耳に当てる
「クライム・アルバートだ」
『バルンです、今いいですか?』
「大丈夫だ、こちらも聞きたいことがあったからな」
心なしか声の感じが若干慌てている…?
『影月 遥を一度保護しました』
「!そうか」
これで捜索隊の人員を他に回すことができる
「ありがとう、助かっ『そしてその、また行方不明になりました』
「…」
…
「はあ!?」
バルン・ファクターは俺の部下では無い、なので文句や指導をする権利は無いのだが俺は思わず声をあげていた…が、意外な来客により俺の意識はそのから外れることになる
「クライム」
「分かってる、すまないが掛け直す」
『え、ちょっと──』
通信機を置き、ベッドの淵に立てかけてある火縄銃を取る
「誰だ」
俺と実体化したバーサーカーの目線の先、扉の角から現れたのは…少年と青年、青年の方は俺の部下の1人、ナーガ兵士長だ
「待った!こっちに敵意は無い、俺はヘクトール!ただのホムンクルスさ!F地区の美術館でアンタの部下と会ってここに連れてきてもらった、少し話をしたい!」
「身体検査は問題ありません、不審な物、危険な物は持っていませんでした!」
「構わない、お前は持ち場に戻れ」
食い気味にナーガ兵士長を戻らせ、火縄銃を構える
ヘクトール?ギリシャの大英雄の名前だが…こんなのが?
「だから敵意は無いって──「俺の部下に暗示を掛けておいて何を言い出す?」
図星らしく黙り込む少年に照準をしっかりと合わせて警戒する、バーサーカーは…
…?まぁいいか
「やぁれやれ、やっぱり俺に魔術師のマネごとは向かないなァ、なんで分かった?」アンタは魔術に詳しいようには見えないが?
「保護した子供を避難所でなくわざわざ上官のところに連れて行く軍人などいない、子供相手に身体検査するような奴もな」
「ああ、そりゃごもっともだ。俺も甘いなコリャ…だが敵意がないと言うのは本当だ、話がしたい。」
「…」
(俺は良いと思うぞ、目の前のガキはサーヴァントの気配が僅かにするが隠蔽の気配は無い、恐らくまともに戦うこともできないだろう)
なるほど、戦意が無かったのはそういうことか
何かあっても俺なら対処できる、と言い切るバーサーカーに仕方なく話を聞くことにした
「いいだろう、だが訳の分からんまま良いように利用されるのはつい最近経験したばかりでな、知っている情報は全て開示してもらうぞ」バーサーカーは霊体化していろ
「…当然か、あんまし時間が無いから聞きたい事はスピーディーに頼むぜ」
何様のつもりだとは思ったものの、飲み込んで話を促した
「セイバーが斬るべき相手について、彼らから聞いているか?…それがウルフルズアジトに現れた」
斬るべき相手…『鬼』か?最優のクラスであるセイバーが注視するほどの敵なら出現と同時に魔力ぐらい感知できても良いと思うが…とりあえず続きだ
「それで?」
「そしてその『神霊』とザイル・ニッカー及びビーストが接触した」
以前の探偵と似たようなことを口走る少年に覚える嫌悪感と僅かな疑問
…神霊?それにザイルだと?
「…『ビーストを倒したいがザイルと神霊が邪魔だ、だから相手をしろ』と?」
「いや違う、アーチャーでも敵わなかった以上ビーストを今すぐ仕留めるのは余程強烈な隠し玉でも無い限り無理だ
奴さん達の会話や行動から察するに神霊はビースト側の可能性が高い、今はまだ内輪揉めしてるようだが本格的に手を組み始めたら手も足も出なくなる」
「…」
バーサーカーは何も言わない、恐らく話に出た神霊についてだろうが土方歳三は神代を生きた英雄じゃない。答えは出ないだろう
「ザイルとビーストから神霊を遠ざけてセイバーに斬らせる、少々強引だが今潰すにはこれしか──なんだ!?」
その場にいた全員にのしかかる魔力…では無い重圧。そしてそれとは別に一瞬感じた視線のような不快感
何故そう思ったのかはわからない、だがこの視線の主は──
「蛇…?」
ウルフルズアジトの方向から聴こえた喧しい音を界に重圧も無くなったが確かにこれは只事ではない
「神霊と言っていたが…敵はサーヴァントか?」
それまで黙っていたバーサーカーが現れ、少年に質問する
「んー…いや、ありゃ生身に神がくっついてるってカンジだな、だから余計にタチが悪い
さっき言いかけたがザイルとビーストが邪魔できない位置まで神霊を誘い出してセイバーに斬らせる、そのためにアンタらの協力が必要だ」
「協力、ね…」
またこのパターンか、と呆れていたが横で立っているバーサーカーが顎に手を当てて考え込んでいるのがふと目に見えた、神霊についてこれ以上考えても無駄だと思うが…
「お前の言う『アンタら』というのは誰の事だ?」
「…鋭いな」
短く言葉を交わす2人に俺は何を言っているのか理解できなかった
「お前らは一体何を言っている?」
「ま、遅かれ早かれ言わなきゃ駄目か、これを見てくれ」
少年が提示したのは手のひらサイズの小さな端末だった、俺は慣れないから使っていないがスマートフォンというやつだろう
そしてその画面には──
「──なんだこれは?」
工場のような場所に映る大量の死体、しかもどれもこれも尋常じゃない殺され方をしているのが一目で分かる
「コイツらウルフルズ団員か、惨い殺され方をしている…これが何か関係があるのか?」
「やったのは神霊だ、そして信頼できる技術者の解析によれば──ソイツはより人間が多い方に引き寄せられるらしい」
より人間が多い方に…──っ!
少年が言う『協力』の意味を理解すると同時に俺の手は火縄銃を掴み取っていた
「ふざけるな!」
コイツの、コイツの言っていることは──!
「怒るのは分かる、だが今すぐ打てる手はこれくらいしか…」
「勝手な事をペラペラと他人事のように言いやがって!!」
湧き上がる怒りの感情、今にも引き金を引きそうな指を残った理性でなんとか押し留める
「米軍…つまりクライムの部下を囮に神霊を引き摺り出す作戦か、人間に引き寄せられるのなら魔術師である必要は無いしな」
「黙ってろバーサーカー!」
腹が立つ程冷静なバーサーカーを一蹴し、少年を睨む
ふざけるな、ふざけるな…!
「他に方法があるはずだ!」
「ああ、時間をかけりゃ見つかるだろうさ。だが
今やらなきゃ神霊は多分ここにも来るぞ」
付近の避難所にいる民間人を根絶やしにしてからな、と最早脅迫と言っても良い台詞を彼は付け足す
「──死んでくれと、そう言えと言うのか?」
俺が一言命令すればあいつらは間違いなく俺に着いてくる、
影月 遥の捜索等頼ったこともあったがそれは聖杯戦争の、いや魔術師の外だ。
映像を見れば神霊とやらがどれだけ強くて残虐なのかは火を見るよりも明らかだ、それの相手をさせると言うことは…
「…どけ、俺が神霊を殺しに行く」
「その身体で?いや身体なんて関係ない、あれは例えサーヴァントでも正面から戦って勝てる相手じゃない」
コイツ…!
「俺は部下に死んでくれと言うことなんざ出来ない
5秒以内に消えろ、さもなきゃ俺が消す」
引き金にかかる指に力がこもる
ああそうだ、俺がやればいい。これは普通の戦争じゃないんだ。最初から最後までマスターである俺が立っていれば──
「失礼します」
考え事でノックに気が付かなかったが扉の影から顔を見せた男を見て少しだけ驚いた
「アーチ中佐?ここで何をしている?持ち場に戻れ。…それとここで見たことは口外するな、俺以外に知らなくて良いことだからな」
「知らなくて良いこと、というのは聖杯戦争のことですか?」
!
「それとも神霊のことですか?」
「…」
俺は話していない、バーサーカーも同様だろう。とすると──
「ヘクトール、貴様…」
「正直手段を選んでいる余裕は無くてな、ここの様子を中継させてもらった」一応カメラは探しても無駄だと言っとく
ハァ…
「…この事を知った人員はどれだけいる?」
「避難所に派遣された人員等を除く残留している各小隊長全員です」
つまりほぼ全隊か、やってくれるな
「アーチ、各部隊からこの馬鹿で無謀な作戦に参加したいという隊員が何人いるか調べ、早急に報告を「629名、内小隊長4名、班長31名、隊員594名」
「…ああそうか」
ほぼ全隊だと?
「おいヘクトール、仮にお前の言う作戦で俺の部下が動いた場合何割生き残る?いや、何割死ぬんだ?」
もしコイツが名前の通りの人物でかつ敵がなんなのか知っているならある程度の予測は立てるだろう
「中継は切るな、今ここでお前の予測を言え」
「………上手くいって生き残るのは3割弱」
「で?上手くいかなかったら全滅か?このクソッタレが。」
とてもこんな作戦には賛同できない、なんとかして今ここで隊員を説得しなければならない
「隊員の反応が俺にも聴こえる様にできるか?いや、やれ」
「いっぺんには無理だ、600人以上の話を聞いたら脳がパンクする」
「じゃあパンクしない程度に抑えろ、とっととやれ」
困った顔をしながらもOKだと指で表すヘクトールを見て俺は彼らと話を始める
「…こちら対テロ特別捜査部隊隊長のクライム・アルバート。
全残留隊員に告ぐ、聞いての通りこのクソッタレはお前らを捨て駒にして怪物を倒すつもりらしい、それも確実性なんざ無い作戦でな」
「おいおい、まだ作戦について何も──「うるさい黙れ。
…だがお前たちは軍に所属しているというだけのただの人間だ。聖杯戦争も魔術もお前らが踏み込むべき世界じゃ無い」
若干不機嫌そうなバーサーカーの顔が横目に映るがそんなこと知ったことでは無い
「俺は聖杯戦争に参加した、万能の願望機というあるかも分からないものに踊らされてな。その結果俺の妹が死んだ。
ただ死んだんじゃない、身体中を獣のような何かに喰らい尽くされて死んだ。
お前たちは国のためだの、俺のためだのを胸に秘め、銃と大義を抱えてこの馬鹿げた作戦に参加しようと考えているらしいがもう一度よく考えろ
…意味もわからないまま命賭けていいのか?自分の選択で自分の守るべき人間を危険に晒してもいいのか?
考えろ、お前たちはみんなただの軍人だ。大切な人間を守る為に災害や人間と戦う軍人だ。化け物と戦うべきじゃない」
…
何も聞こえない、僅かに息遣いが聴こえることから中継が切れているわけでは無さそうだ
「…発言の許可を」
「構わない、なんだ?」
口を開いたのは中継の向こう側の人間ではなくアーチだった
「…俺は、俺たちは弱いです。1人では戦えません
しかし仲間や貴方と一緒なら戦えます」
…ったく
「それはお前が戦う理由にはならない、恩やら義やら感じているとしても命を捨てる理由にはならない、それどころかそれはただの侮辱だ」
「待てクライム、聞くんだ」
バーサーカー?
「俺は…国というものにあまり執着していません、こう言うのもなんですが隊長のように国を守ることにやり甲斐など感じた事はありません」
「…?」
「…俺には結婚して今年で10年の嫁が居ます、子供も2人居ます。俺は3人を養うためにこの仕事を続けています
銃を握るのは一重に仕事だからです」
アーチ以外誰も言葉を発することはない、皆次の言葉を待ち、静かに彼を見ている
「神霊、ビースト、そんな次元の話をいきなり聞いたところで詳細を理解することはできません、でも分かることもありました」
「それは?」
「…戦う理由です、神霊を止めなければ避難所に居る俺の家族が殺されるでしょう。そんなことさせない、させたくないんです。
クライムさんに恩は感じています、ですがそれとは別に俺は家族が大事なんです
国も他人もどうでもいい、家族を守るため貴方と共に戦わせて下さい」
お願いします、と深々と頭を下げるアーチ
それを皮切りとして隊員達の声が入れ替わり立ち替わり聞こえてくる
『マーピン兵士長です!俺も戦います!』
『ネリス1等兵、戦います!あんな惨く殺されるなんて許せない!』
『プーマ曹長、なんと言われようと出ます。処分は如何様にも。』
反応しきれないほど届く声に俺は最早どうしていいか分からなかった
「…もういい、中継を切れ」
経過したのは数秒か数十秒か、ようやく出た言葉はそれだけだった
「バーサーカーのマスター…」
「クライムだ、これからはそう呼べ。
アーチ中佐、志願兵全員に伝来を。隊と装備を再編させろ、迅速にな。
作戦を確認次第各小隊長に俺から伝える、行け」
「…!ハイッ!」
嬉しそうに病室から飛び出していくアーチ中佐、それを見届けて俺はただただ心が重かった
…クソ
説得できなかった…
「感謝する、クライム」
「お前は戦闘に関すること以外もう喋るな。
…作戦を聞かせろ」
「…ああ、分かった」
痛む身体を動かし、俺はベッドから立ち上がった
寝起きのコヤンスカヤのモフ耳をもふもふしながら最高級の櫛で梳かしたい作者のルルザムートです、ハイ。
このところリアルで嫌な事が続いてましてやる気と文章が起きませんでした
まだちょっと更新が伸びるかもしれませんが失踪だけはしないのでどうかよろしくお願いします
(そしてまた反動でガッツリ長くなってしまった…)